連載小説
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お前らだって一度は妄想しただろ(後)
脳内BGМはミッション・インポッシブルのテーマ。
右手にカ○リーメイト、左手にエロ雑誌(空き教室より拝借)、そして段ボール!
俺の潜入は完ぺきだ。

「そんな装備で大丈夫ですか」「大丈夫だ、問題ない!」

ヘンルーダには「人とエンカウントしたらいきなり外国語で早口にまくし立てる」というかく乱作戦を担ってもらう。
だいたいの日本人には有効である。
俺だって、「これは飛行機ですか?」「いいえ、トムです。」ぐらいの会話しかわからん。
「とにかくさっさと教室から俺のお宝を回収しないといけないんだよ!手伝え!」
俺は焦っていた。
どのくらい焦っていたかというと、焦りの余りなんか覚醒して水を操る能力に目覚めた!
と、錯覚しちゃった程すんごい量の手汗が出ているくらい。
お宝奪還作戦など生命をかけてまでやることかと言われそうだが、逆である。
今、奪還しないと社会的に生命が終わるのだから。

犯人確保→警察捜査→お宝発見→学校バレ→親呼び出し

この地獄のコンボ阻止こそが俺が危険も顧みず、無謀な潜入作戦に打って出た理由である。
『スッチー・ローザと皮かぶりの囚人』『ナースの動く尻』『インラン』『女医ストーリー』
その他もろもろ、ほぼ痴漢監禁凌辱盗撮ものである。勧められたからって安易に手を出すべきじゃ無かったよ!
でも、女優がいかにもお姉さま系で好みだったんだもん。

「おい、見てみろよ!『痴女と宅配便』だってよ!」「どこのエロガキが持ち込んだんだこれ!」

なんか遠くから大爆笑するおっさんの声が聞こえた。
俺オタワ
じゃなくって、俺オワタ

犯人が触る→警察が指紋取る→押収物→学校に返却→親呼び出しルート確定。

いやむしろかつ丼コース?真っすぐかつ丼コース行っちゃうのか?
「親御さんが泣いてるぞ」とか中年のくたびれた刑事に諭されちゃったりしちゃうのか?
そのまま、ご近所で性犯罪者扱いされ後ろ指さされまくる一生を送るのか?
素敵なお姉さまとイケないこともしないまま、神聖童帝になってしまうのか?
今の俺にはどうなるかわからない。
しかし、そんなのは嫌だ。
そんなのは嫌だ
そんなのはいやだ
そんなのは……いやだ……?

「忘れっないでっゆっめっおおおおおおおお!こぼさっないでっなっみっだあああああああ!」
そうさ俺は行くんだ微笑んで!
「え!あれ?お兄さーん!どこ行くんですかー?」
俺は段ボールをかなぐり捨て疾走。
今、奴らからお宝をもぎ取り、警察の来る前に完全にお宝の存在を抹消すればセーフ!
俺は今、風になる!



「すみませんすみませんすみませんころさないでくださいごめんなさい」
まあ、こうなりますよね。
謎のテンションのまま教室に突っ込んだら、眼だし帽被って武装したおっさん五人にフルボッコにされた。
アウトである。
どう考えても人生アウトである。
社会的にじゃなくて物理的に、ざんねん おれ の じんせい は おわってしまった ! である。
頭取り替えて人生リセット出来るパン人間の言葉なんて信じるんじゃなかった!
命は投げ捨てるものを地で行ってるもの、あのあんこパン!

「どうする?こいつを人質にしてアシを用意させるか?」「でもこいつアホそうだしな…妙なことしたらそれこそ詰みだぞ?」

牛丼チェーン店から強盗とかアホなことしたおっさん達にアホと言われる俺。
くやしいっ!でも言い返せない!びくんびくん
付け加えて言うならば、おっさん達のかわいそうなものを見る目が痛い。
エロDVD回収に来たばっかりに人質になったアホ学生とか、俺だってYahooニュースで見たら同情するか爆笑する自信がある。
まあ、そいつって俺なんだけどね。

「そこまでです!」

バーンッと扉を開け立ちはだかる、凹凸の乏しい影!
「不肖、私も魔物娘の端くれとして、眼の前で人間が傷つけられることは許せません!」
ほんのりと赤く光る杖を構え、魔女の三角帽をかぶったヘンルーダが呪文を唱える!

「黄昏よりも昏きもの、血の流れより紅きもの、時の流れに埋もれし、偉大なる汝の名においt」

「「「「「「スレ○ヤーズじゃねえか!!」」」」」」

俺とおっさん達の突っ込みが見事にハモッた。
「だって私転移魔法以外はさっぱりなんですものおおおおおお」
手足をじたばたさせて、逆切れしながらパンツ丸見えでぎゃん泣きするヘンルーダ。

「もう人質はこっちのちっこいのにするぞ!」「そうだな、運びやすそうだし」「こっちの学生はどうする?」

ぎろりと男たちの眼が俺の方に向く。
あのアホ魔女「人質になる」という最後の生存フラグまで圧し折りやがった。
天国のひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん、アホなひ孫でごめんなさい。なんか今からそっち行きそうだけど怒らないでね。

「まあ、転移魔法だけは一級品なんですが」

転がっていたチョークを握りしめ、床に描かれた図形を前に呟くヘンルーダ。
瞬間、七色の光が教室内を照らし、図形から弾丸のように何かが飛び出てきた。

「みんなー!今日は私のライブに来てくれてありがとー!」

七色の光の中、舞う青い羽根と俺たちと校庭でざわめいている警察官に手を振りながらくるりと回転し宙に浮かんだ少女。
立体映像にしてはあまりに生々しい息遣いと羽ばたき。
「今回は魔界を飛び出しての初ライブでーす!精一杯頑張るから応援してねー!いっくよー!」

「失くしてた鏡の向こう側覗いても、灰色の渦がくるりくるり、ソラの音忘れた機械仕掛けの楽団が、陽気にアルペジオ奏でてた♪
 夢中に引いていたまっ白いチョークの道は、黒猫が横切って昔の昔に消えちゃって♪
 ぼやけて薄れてく発条と螺子の記憶、壊れた回転木馬で通り過ぎて♪
 もう消えてしまった幼い君の、硝子の眼に映る姿どう見えているの?影法師♪いつの間に躓いて転げ落としてしまったのかな?夢見てた私♪」

なんかうまいのか下手なのかはよくわからん。歌詞もさっぱりわからんが、とてつもなくアップテンポな歌を息切れ一つしないでかなりの声量で歌い上げる。
気付けばふらふらと音楽に合わせて手拍子とかしていた。
校庭の方から聞き覚えのある声で「ヤック・デカルチャー!」とか聞こえてきたが、お前だな体育のゴリ山、日本語でおk。
なんか知らんが、おっさん達泣いてるし。今のうちにお宝持ち帰っておくか。

「こんな至近距離でセイレーンの魔力浴びたらしばらくは骨抜きですよー。いろいろうやむやになってるうちにさっさと帰りましょう」「洗脳かよ……えげつねえ」
「洗脳じゃないですってば、リアちゃん協力ありがとー」
手羽先少女に手を振るヘンルーダ。と、リアと呼ばれた少女が駆け寄ってきた。
「あのね、この人私の歌を聴いてファンになった!追っかけしたいって言ってくれてるんだけど……連れ帰っちゃっていいかな?」
おっさんと思ってたら眼だし帽とったら意外に若かった茶髪の兄ちゃんが、手羽先少女にべったりくっついている。おい、そいつ強盗犯なんだけど。

「あ、じゃあ式場に直通通路作っとくね」「ちょ!強盗犯!警察!逮捕!誘拐ダメ絶対!」

さっさと警察に引き渡さんと、見知らぬ兄ちゃんが異世界に連行されてしまう!慌てて警官隊のほうをうかがうと
「よっ!この幸せ者ー!」「嫁さん泣かすなよー!」「ぐすっ……良かったなあ。足を洗って真っ当に暮らすんだぞ!」
まだラリっていらっしゃった。
12/10/12 21:12更新 / 佐野
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■作者メッセージ
歌は替え唄です。邪巣らっくには通報しないでください。
ご都合主義上等

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