連載小説
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第一話 白
それは、彼が幼い10歳ごろのことだった。

 「ポテチうまー」

 親の忙しい彼は、彼の住んでいる村から少し離れている訓練所へ一人で歩いて帰っていた。
 冒険時代ほど荒れてはいない穏やかなご時世だ。子供が一人で家に帰るには、危険が全くなかった。
 教団は、国境からだいぶ離れている、というよりも、真後ろが魔界であるこの村にはやってこないし、一応このあたりの害獣や、害虫はほとんどいなくなってる。
 その上、この辺りの魔物の人たちは彼のことを知ってるので、彼が大きくなるのを虎視眈々と狙ってはいるが、今は見かけても手を振ってきたりと見守ってるだけで、発情しすぎて襲おうとした同族を制裁してくれてたりもするので安心だ。(主に『抜け駆け』として)
 その日も、帰りに近所のサキュバスの「おねーさん」(そういうように怒られた)からもらったポテトチップスをぽりぽり食べながら、公園の脇の道をあるいていると

 「にゃー・・・にゃー・・・」
 「ん?」

 このあたりでは珍しいジパング特産の赤い布地に白い華が描かれた着物を着た一人の女の子が猫のような泣き声をあげながら、公園の中央に立つ大きな木の上に取り残されていた。
 彼はそれに気付くと、慌てて木の下に駆け寄った。

 「だ、大丈夫ーっ!?」

 木の大きさは3mほどだったが、まだ8歳の彼にはとても大きく感じられた上に、太さは彼が抱きついても両手が届かないほどだった。だが、大声で呼びかけると、木の上の女の子はビクッと震え、恐る恐るこちらを見た。
 
 「だ、誰・・・?」
 「僕の名前なんてどうだっていいからさーっ!なんでそんなとこにいるのーっ!?」

 本当は彼と女の子程度の距離なら大声を張らなくてもいいのだが、それだけ彼は幼く必死だったのだ。
 
 「き、木登りしててっ、気付いたらこんなとこに・・・っ」
 「ぁー・・・」

 ここら辺の女の子(魔物娘)はやたらと活発だからなぁ、と子供らしくなく考えながら、彼は女の子に向かって大声で呼びかけた。

 「ゆ、ゆっくり木の枝をつたって降りられないーっ!?」
 「む、無理ぃ・・・こ、こわいぃ・・・」

 彼女は下を見ようとした瞬間、にょろっと服の下から出てきた白色の毛の生えた二本の尻尾が棒のように一直線に固まりV字のようになると、はしっと木に頬を擦りつけるように抱きついた。

 「じゃ、じゃぁ、僕が下で受け止めるから!こっちに飛び降りてきて!」
 「下ぁ・・?」

 ぐしゅぐしゅと半泣きになりながら、女の子は彼を見た。
 女の子とあまり大きさのかわらなそうな小柄な男の子、線が細く、まだあまり男女の差が現れにくい歳とは言っても女顔な彼の顔をみて、女の子の金色の目が不安げに揺れた。
 
 「だ、だめだよぉっ。あ、貴方がつぶれちゃう・・・」
 「だ、大丈夫だって!これでも一応、知り合いのデュラハンさんに剣を教えてもらってるんだから!」

 と、彼は両手を挙げながら、彼女を受け止めるために丁度下あたりの位置につき、上を向いた瞬間、むせた。

 「ごっほぉっ!?」
 「ふにゃぁ!?」

 ビキンッっと彼の突然の咳き込む声に尻尾がまっすぐになるどころか、腰までの長い白髪をした頭の上から、白い三角の耳が突き出した。
 その様子に彼は慌てて謝るが、若干顔を赤くして目をそらしたままだった。

 「ご、ごめん!で、でも・・・・下は穿いた方が良いと思うよ・・・?」
 「下?」

 キョトンとした顔で、彼女は聞いてきた。彼は。その純粋な顔に言いづらそうにしながらも、

 「だ、だから・・・そのぱん、いやっ下着を!」
 「・・・???」

 なんで?なんか問題でもある?とでも言うように小首を傾げる女の子に彼はぅーとうなった。
 近所にそういう系の魔物娘さんがたが多い(サキュバスとかダークプリーストとか)ので、そういう方面の知識が多くなってしまってませた子供となってしまってる彼にとって、幼いとは言え同年代の下半身まるだしは刺激が強すぎた。

 「ぁーも!いいから飛び降りて!ちゃんと受け止めるから!」
 「ぅーっ」

 まだ不安なのか、その大きな猫目いっぱいに涙をためながらも、女の子がためらっていると

 ズリッ

 「にゃ?」

 彼女の立てていた爪が、木の皮から外れ、そのまま乗っていた木の枝から足を滑らせた。

 「ぎにゃーーーーーーーーっ!?」
 「わわわわわーっ!?」

 そのまま忘れ物−とでも言いそうな勢いでわわわ言いながら、彼は慌てて落ちてきた彼女の下辺りにダイブした。
 と、次の瞬間、肺の中の空気をすべて吐き出そうか、という程の衝撃が彼の背中に突き刺さった。ごふっと咳き込みながらも、常々の鍛錬をつんできた彼は、落ちてきた女の子が怪我しないよう、背中に力をこめ、姿勢を安定させた。
 その分増した痛みが彼に突き刺さるが、我慢して堪えた。痛みで涙が浮かびながらも、彼は背中に乗った女のこの方へと身体を捻った。

 「だ、大丈夫・・・?」
 「わ、私よりもっ貴方は大丈夫なのっ!?」
 「平気だよ・・・ごっほ」
 「大丈夫じゃないじゃない!」

 彼女は慌てて彼の背中から降り、その背中を白い毛のうっすら生えていう上に肉球のある猫のような手でなでた。しっぽも心配からか、さっきまで棒のようだったのに、今はペタンと地面に倒れている。

 「ご、ごめんねっ、私まだ治療できるような魔法使えなくてっ」
 「だ、大丈夫だって。大分楽になった」

 心配して覗き込んでくる彼女の顔に彼は、安心させようと笑いかけた。
 先ほどは遠めだったが、やはり綺麗な女の子だった。
 小顔で軽く目尻のさがった金色の瞳は、一心に心配してくれてる今は不安げに潤んでいて、優しくなでてくれる手や足は肘や膝の辺りまで白い毛が生えそろっていた。彼女のうしろで揺れる尻尾は不安で力がなく、さっきはピンッと三角にとがっていた耳もペタンと頭にくっつくように倒れていた。その絹のように艶やかで細く長い銀色のような白髪も、今は覗きこむ形になっているため、その一部が垂れ、さわさわと彼の頬に触れて、彼の頬をくすぐっていた。
 彼女のその憂いだ表情を見た瞬間、彼の胸はこれ異常ないというほど高鳴り、顔に血液がたまっていくのを感じた。ここらへんじゃ見ない種族だなぁ、と彼が思いながら、彼女を見ていると、本当に痛みが減ってきた。
 このくらいの痛みだともうちょっと長く残るはずなのに、と訓練所のデュラハンたちにさんざん痛めつけられてるため、痛みには慣れてる彼だったが、彼女に触れられているとなぜだか痛みの引く速度が速かった。
 動きに支障がないほどになると、彼はすくっと立ち上がり、顔が赤くなっているのがばれないようたったことに安心しながらも、まだ心配そうにしてる女の子に笑いかけた。

 「もう、大丈夫。ありがと」
 「こ、こっちこそ・・・助けてもらったし・・・」
 「ここら辺じゃあんまり見ない顔だけど、引っ越してきたの?」
 「うぅん、私、一人で渡りしてるの」
 「渡り?」

 あまり聞いた事が無い言葉だ、ジパング独自の何かだろうか、と思って彼が首をかしげていると、彼が何を考えているのかわかったのか、彼女はその様子を見てくすくす笑った。

 「渡りって言うのはね。一人で安定の地を求めて探し回る、一族独自の風習だってお母さんが言ってた」
 「へぇ、たった一人で・・大変じゃないの?」
 
 いくら大分安定した時代とはいえ、こんなちっちゃい女の子一人では大変じゃないか、と彼は思ったが、女の子はそこまで大変じゃないよ、と首を振った。

 「この姿と変身した姿を上手く使い分けるとね。あっちはもっとすばやく動けるから逃げるのにも便利」
 「へぇ!変身できるんだ!見せてよ!」

 彼はよく朝にテレビでやってるバフォメットとそのサバトによる変身魔法少女戦隊を思い出して目を輝かせた。だが、彼女はニッコリと笑って

 「ヤダ」

 といった。

          †               †                †

 「!」

 ビクンっと身体を震わせて、彼、イース・ブリュンギルドは目がさめた。
 ちゅんちゅんちゅん、と朝鳥の声が響くなか、ガバッと上半身を起こしいつも以上に黒っぽい色の髪が爆発した頭を押さえた。

 「なんであそこであんなこといったああああああああ!!!!!!おれえええええええ!!!!!」

 あの夢を見たときのいつも通りの後悔。
 あの後、彼女は気付くと公然といなくなってしまっていた。つまり、あのときの自分のセリフが彼女の機嫌を損ねたのだ、とイースはいつも後悔する。
 はっきり言ってあれがいままでで、たった一度の恋だった。ようやくそちらの知識に身体が追いついてきたイース、17歳だったが、いまでもあの女の子以上に胸の高鳴った女の子はいなかった。

 「はぁああああああ・・・・」

 だんだんと落ち着いてきて、頭から手を離すが、まだ頭からあの女の子の事が離れないイースは、あの子は渡りをしてるといってたけど、今どこにいるんだろうなぁ、とイースが考え、窓の外から青い空を眺めていると、

 ニャー

 「ん?あぁ、おはよう」

 彼のベッドのすぐ脇に小柄な真っ白い雌猫が綺麗な姿勢をして座っていた。
 イースの飼い猫で、かれこれ8年ほど飼っている猫だ。飼い猫、といっても飯時に帰ってきて、あとは自由にさせているため、どちらかと言うと通い猫のようなもので、イースの感覚としては付き合いの長い同居人といったところだ。
 すぐいなくなると思っていたので名前は付いていないが、ずいぶんと長くいるのでいいかげん名前が必要かと思ってる。だが、これだけ外面のいい猫だ、それ相応の名前がいるだろうと思って考えているのだが、いい名前が思いつかないので、結局そのままだ。
 さすがのイースも、あの女の子の外見的特長からネコマタということには行き着き、一時期はこいつがあの子なのでは!と疑ってかかった時期があったが、知り合いの魔物娘のみんなに魔力を感じない、と言われたのであきらめた。

 「朝飯はいまから用意するからまっててくれ」

 なーぉ

 言葉をわかってる節があるこの猫は、返事をするように鳴くと、ぴょいっと窓枠に乗っかり、だらーんと尻尾をたらして横になった。
 この猫はいつもそうなのだ。毎晩毎晩、どこかへ遊びに行っては、イースが仕事に出かけて帰ってくるまでの間ずぅっとここで寝ていて、帰ってくると起きだして、彼にエサを求める、彼女の生活スタンスだった。

 「全く、毎晩どこでなにをやってることやら」

 み゛や

 ぼーっと見栄えだけは綺麗なこの猫を眺めていると、首を上げ、怒ったような泣き声を上げた。
 さっさとエサをつくってこい、ということらしい。

 「わかったわかった」

 イースは苦笑しながらキッチンに立ち、冷蔵庫の中身から鳥のささみや野菜をとりだして、ぶつ切りにして皿に盛る。ついでに、自分の朝飯も作ってしまう。
 十数分経ったころ、ようやく朝飯が完成した。

 「ぉーい、できたぞー」

 なー

 イースが呼びかけると、颯爽と猫が現れ、定位置である食卓のロアの脇に置かれたエサ皿からサラダやささみをおいしそうに食べはじめた。
 イースもそれをみながら、炊いた米や味噌汁をすすり、豆腐を口にする。そして最後にお茶でながしこみ、彼の食事は終わりだ。
 なんとも簡素だが、あまり食事に興味がない彼には十分だった。
 猫を踏まないように気をつけながら、食事の後片付けをして、てきとーに爆発した髪を直すと愛剣と動きやすいので愛用している皮鎧を着込んだ。

 「いってくるからな」

 にゃー

 猫の鳴き声に送られながら、彼は家を出る。
 バタンッと木製の扉が閉められた後、立った一匹残った白猫がうにゃ、と鳴いた。


          †               †               †

 タタタッと軽く走りながら、彼は仕事場へと向かっていた。
 と、その横にピョンピョンピョンっと木を飛び移りながら、駆け寄ってくる影があった。
 
 「イースー、今日はどこで獲物を狩るの?」
 「ミアスか。そうだな、今日は東の森だ。そろそろあっちの方でいいキノコが採れる」
 「キノコぉ?もっとさー、鳥とか獣とか狩ろうよー」
 「鳥は昨日獲ったし、獣はこの前獲っただろ?そんな頻繁に獲ったら、森から獣がいなくなっちまうよ。俺ら以外だってケンタウロスとかも獲るんだから」

 木からイースの隣へと降りてきたのは、肩までの金髪に、黒色の毛の生えた尻尾と耳をもった少女、ワーキャットだった。
ミアスは、イースの隣へと降りてくると、彼に合わせて走り出した。

 「ちぇー、キノコとかってあんま面白くないんだよねー」
 「そりゃ、お前は動き回るのが好きだからな。だけど、森の狩人としては節度をもって狩らねぇとな」
 「わかるけどさー、むー」

 不満げに言うミアスに、イースはその三白眼をさらに細めて糸目のようにした。

 「で?仕事にも開始直前に現れたお偉いワーキャットさんはどこ行ってたんだ?」
 「姉御のとこー。なんか元気ないから見に行ってきた」
 「姉御って・・・あぁ、ニアさんか。で、どうだった?」

 獣との対峙の仕方や斧の使い方を習った身としては、あのいつも元気なミノタウロスが調子を崩してるとなれば気になるものだ。

 「ぅーん、出てきてすらくれなかった。まぁ、クロアさん引きづってったから大丈夫だと思うけど」
 「お前・・・怒鳴り込んでないだろうな・・・?」

 あの人は確か喪中のはずだったが、こいつなら喪中の男の家にでも突撃しかねん、と思ってイースが聞くと、なぜかミアスは立ち止まり、ガクガクガクと震え出した。そのあまりの反応に、さすがのイースも立ち止まってしまう。

 「ど、どうした・・・?」
 「く、黒い女の子が・・・・っ」
 「はぁ?クロアさんの家に女?」

 あの悪女に溺れるほどに妄執してたここらへんの領主の息子がそう簡単に女を乗り換えられるとは思えんが、と怪訝に思ってイースが胡乱な目でミアスをみていると、

 「い、いやあああああああああああああっ!!!」

 と、突然ミアスは走り出し、森の方へと掛けて行った。ここで家に帰ろうとしないだけ、彼女も狩人としての自覚があるのだろう。
 だが、事情をしらないイースは彼女をかわいそうな子を見る目で見ていた。

 
 やがて、二人は村を抜け、その脇にある森へと入っていく。
 鬱蒼を木々の茂る森の中は、木の葉がしげってるというのに、不思議と明るかった。

 「うん、今日もいい感じだね」
 「そうだな。お前、今日は間違えてマタンゴとか踏むなよ?なだめんの大変だったんだからな?」
 「あはははー、そのままイースが胞子吸ってくれれば、アタシはイースをお持ち帰りできたのになー」

 くふふ、と笑いながら言うミアスに冗談じゃねぇ、こっちは村を守るためにガチで必死だったんだぞ?とイースは呟きながら、森を歩いていく。
 その隣を、ミアスは下唇を突き上げながら歩いた。

 「んー、なんでイースはアタシの方向いてくれないかな?」
 「ぁ?見てんだろ、今も」

 何言ってんだこいつ、とばかりに見てくるイースにそうじゃなくてー、と彼女はぱたぱたとその猫手を振った。そしてその手で自分の毛皮に覆われていながらも存在感のある胸や引き締まった腰、細い手足を触った。

 「こー、男と女の目っていうか、そんな感じの?一応スタイルには自信あるんだけどなー」
 「・・・お前に興奮することなんてねぇよ」
 「だったら、ほかのヒトたちなら興奮するの?」
 「・・・」

 しない、かもしれない、と思うとイースは返事ができなかった。
 いなくなってしまったというのに今だにあの女の子の事が頭から離れない自分は、やはり異常なんだろうな、とイースにも自覚があった。
 自分もクロアさんのことが笑えないな、と苦笑していると、ミアスが半眼でみてきた。

 「てかさー、まだそのネコマタの事想ってるの?もうどっかの男に擦り寄ってるって−」
 「・・・」

 確かにそうかも知れないな、とイースは思うが、それを認めたくなくてイースはミアスの言葉に返事をしなかった。
 その様子に、ミアスは悲しげな顔をしてイースを見たが、すぐにそれを消して前を向いた。

 「ふぅ・・・まぁ、いいけどねー。ぁ、そうだ、イース。最近村で有名になってる話、聞いた?」
 「ぁ?しらねぇ。なんかあったのか?」

 突然話題を変えたミアスにイースは木の根元に生えたキノコを採りながら興味なさげに聞き返した。 

 「なんか最近、夕方は何もなかったのに、朝になると家の裏の岩が割れてたりするんだって、地面にも何かを突き刺した後かも残ってたらしいし」
 「はぁ?なんだそりゃ?」
 「知らないよー。だから村でも噂になってんだし。あぁ、あと夜中にうなり声が聞こえたりするんだって」

 うなり声ねぇ、とイースは採ったキノコを腰につけた皮袋に押し込み、次の獲物を探し始めた。

 「で、ちょっと前からあったんだけど、最近はなんか岩をぱっくり割ってたのが粉々に砕くようになったらしいから、気を付けろって。今のとこ割っても問題ない岩だけ割ってるみたいだから、どーせどっかのリザードマンかなんかが剣の修行でもしてるんだろうってみんな見張りを立てたりしようとは言ってないらしいし」
 「ふぅん・・・」

 剣の修行で岩割るなんていつの時代だよとか思うのは置いといて、夜中の間にこんなさびれた村で岩割りなんてどこの暇人だろうな、と思いながらイースは木の枝についた実をとり、袋に押し込んだ。

 「そういえば、次の狩りで多く獲った方が、今度酒おごるとか前言ってたよな」
 「ぁ、そうだったね」

 あぶないあぶない、酒を飲み損ねるとこだったと、慌てて地面みたり、木の枝を見るミアスにイースは自分の皮袋を示した。

 「ほら、話してる間に俺はもうこんだけ採ったぞ?」
 「うそっ」

 ミアスが慌ててみると、イースの腰にいくつかついている皮袋は、その全部にいっぱいのキノコや、木の実が詰まっていた。

         †                 †                †

 「ふぃー、ただいまっと」

  イースが家に帰ってくる頃には、辺りは暗くなっていた。
 あの後、結局イースほどとれなかったミアスはうーうー鳴いて、悔しがって森に残ろうとするのを引き摺って帰って来たのだ。
 単独行動が好きなワーキャットの癖にやたらと俺をコンビを組もうとするのは何でだ?俺がアイツに興奮しないのは、アイツだってわかってるんだろうから、他の男でも探せば良いのに、とイースは不思議に思うが、一度他の魔物娘達にそれをきいたら馬鹿にされたのでもう聞いてない。

 にゃー

 気付くと、玄関の中央に白猫が鎮座してこちらを見ていた。

 「おう、出迎えご苦労」

 に゛ゃー

 「そんなんじゃないって?」

 なー

 「さっさと飯だと?俺は帰ってきたばっかだぞ?」

 ふきーっ!

 「わかったわかった。だからそんな荒ぶるなって。背中の毛ごわごわになってんぞ」

 ふにゃぁ

 ハッと気付いたかのような泣き声をあげて、白猫は器用に身体を捻り、背中の逆立った毛をなめ毛並みをそろえていた。
 それをイースはククク、と笑いながら通り過ぎると、足元にまとわり着いてくる白猫をあしらいながら、台所にたった。

 「なんだ?今日はやたらと絡んでくるな?発情期か?」

 ふかーーーっ!!

 「わかったっ!わかったから!発情期じゃないって言うのはわかったから、足に爪立てんなっ。地味に痛ぇ!」

 激怒した白猫の攻撃を掻い潜りながら、イースは晩飯を作り終えると、それぞれの定位置にエサと夕飯をおき、席についた。

 「いただきます」

 にゃー

 一人と一匹でそろって挨拶をし、食事をはじめる。

 「・・・」

 ・・・

 別にイースはそこまで礼儀にうるさく育てられたわけではないので、食事中に会話なども普通にするのだが、なにぶん相手が足元の猫以外いなく、自然と静かになってしまう。

 「・・・話し相手なんていねぇしなぁ・・・」

 イースの脳裏に一瞬ミアスの顔が浮かんだが、あいつはだめだ、と一蹴する。春になり始めたこの時期にワーキャットなど家に呼んだら、こちらが興奮しないといっても何をされるかわかったもんではない。
 となると、と考える。
 近所の知り合いは魔物娘だけで、男の友達となると、隣の村に住むクロアしかいないが、あいつは確か今喪中だったはずだしな、と自重する。ミアスが何かいってた気がするが要領を得なかったので、どーせあいつの勘違いかなんかだろうと、イースは思う。
 自分の交友関係の狭さに、はぁ・・・とイースがため息をついたときだった。

 「イースはいっつも寝てるかミアスと狩りに行ってるか、だからだよ」
 「!?」

 ぼそっとどこからか聞こえてきた言葉に、イースはあわてて周りを見るが、そこには誰もいない。

 「気のせいか・・・?」

 にゃー

 イースが慌てていた間にも、足元の白猫は自分の夕飯を食べていた。



 夕飯を食べ終え、イースがそろそろ寝るか、とベッドに横になろうとした時だった。

 にゃうー

 「ん?」

 ベッドの脇で猫が起きろーとでも言うように鳴いた。ゆらゆらとゆらす尻尾の先には、猫が外に行くときにいつも使ってるが、今日は閉まってる窓があった。
 閉めたっけか・・・・と疑問に思いながらも、イースは身体を起こした。

 「あぁ、外行きたいから窓開けろってか」

 なぁ

 わかったわかった、と窓枠に手をかけた時、ふとミアスが最近へんな事件が起きてるってうわさしてたよなぁ、と思い出し、イースは、すっと窓枠から手を離した。

 う?

 と不思議そうにこちらを見る白猫だったが、心配してのことなんだからわかれ、という気持ちを込めて猫を見る。

 「今日はお前、うちにいろ」

 うにゃぁっ!?

 白猫はイースの言葉に驚いたように鳴き、慌てて玄関の方に走り出そうとしたのを、イースは下から掬い上げ、自分の膝の上に乗っけた。
 猫はうにぃいいいいい!!!!!と聞いたこともない必死の声をあげ、イースの手から逃げ出そうとするが、さすがに人間と猫、逃げ出すことはできず、しばらくもがきつづけやがて静かになった。
 その姿に若干かわいそうに思うが、イースはわざとらしく丁寧な言葉づかいで猫に語りかけた。

 「夜にへんな奴が出るって言うしな。同居人としては、一応家の中にいてほしいわけですよ」

 うにぃ・・・

 耳をペタンと倒れさせ、白猫はあきらめたかのように、イースの膝で手足をのばしてうつぶせになった。
 わかってくれたみたいだな、とイースは思うとそのまま横になり、眠りについた。

             †               †              †

 なぜだかやけに腹が重い

 「んぁ?」

 腹部に違和感を感じ、イースが目を覚ますと、なにやら白いものが股のあたりで揺れていた。
 あぁ?あいつ何やってんだ?とイースが思って手を伸ばし、首根っこを掴もうとすると

 「ひゃぁっ!」
 「っ!?な、なんだぁ!?」

 なにかぷにっとしたものが触れ、その白いものが声をあげた。
 その声にイースの意識が一気に覚醒し、慌ててそれとつかんだまま起きあがると、股間辺りにイースの手にほっぺたを摘まれた白い少女がいた。

 「ぇ、ぁ?」
 「おはよう、イース」

 ニコリッと笑ってきたのはミアスのような猫の耳と尻尾、毛で覆われた手と足を持った女の子だった。だが、黒猫がベースらしいミアスとは違い、その色も、髪の色も白。そして、来ているのは赤地に華を彩ったジパング産の、キモノだった。彼女の着ている紅い花柄の着物の下から伸びた二股の尻尾が、楽しげに揺れていた。
 やけに腰を高く上げているのが気になるが、イースの意識はそんなことよりも、彼女の存在に驚いていて、ぶるぶると突き出した人差し指を震わすしかなかった。だが、その反応に彼女は不満げな顔をした。

 「んー?もっと面白い反応してくれると思ったのに。やっぱミアスとかに獲られちゃったのかな?」
 「そ、そんなわけあるか!た、ただあの猫が、お、おま・・・・君だったなんて・・・」
 「あははは、いまさら君なんて言わなくて良いよ。そっか。イースって私があの猫だったって知らないのか」

 くすくすと笑いながら、イースの腹に頭を擦りつけていた少女は、ぽんっとその猫の手をポンっと打ち合わせた。そして、彼女は改めて、と息がかかりそうな距離まで顔を寄せて、イースの上で四つん這いになった姿勢になった。

 「木に登って下りられなくなってたのを貴方に助けてもらって、さらにこの八年間、貴方に飼い猫として飼って貰ってました、ネコマタのミウです。漢字だと未来の未に宇宙の宇ね」
 「や、やっぱり・・お前があの女の子だったのか・・・」
 「そうだよ、あんまりこれだけ真っ白い猫は他にいないと思うんだけどなぁ」

 あの時よりも伸びて地面に触れてしまいそうな程になった白銀の髪を一房つまみ、彼女は自分の毛を眺めた。
 イースはようやく気付いたが、やはり彼女もあの時から成長していて、さすがに身長は大人になったイースよりかわ頭ひとつ分小さいが、その赤い着物によって浮いた身体のラインは、子供とはかけ離れていた豊満な女性の身体の曲線を描いていた。しかし、彼女が童顔な為か、それだけ身体が成長していても、そのあどけない笑顔はあの時から変わっていないように感じた。

 「い、いや・・・前疑ってたことはあったが、ミアスとかが違うって言ってたからな・・・」
 「ミアスは、あのこ魔法の才能ナイから簡単に騙せたし、他の人たちは事情を話したら面白そうな笑顔で黙っててくれたよ?」
 「・・・ぐぉぉ・・・」

 あんのおせっかいどもめぇええええ、とイースはそういう悪巧みに嬉々として参加する近所の魔物娘たちの顔を思い出しながら頭を抑えた。
 何気にミアスがひどい事を言われてた気がするが、それはまぁ置いておくとして、とイースは髪を掻き毟るとミウを見た。
 
 「わ、渡りはいいのか?安定の地を探すんだろ?」
 「んーと・・・」

 彼女はどういえばいいのかなぁ、と呟きながらイースに覆い被さったまま考え込んだ。
 しばらく思案顔になったあと、彼女はそのぼーっとしたような色の目で、イースをじーっと見ると、めんどくさいやっ大声で言って、イースに抱きつき、その勢いのまま、彼の口を自らの唇で塞いだ。
 んぶっ!?と驚く彼からゆっくりと離れるとニコリッと笑った。

 「これがその答えっ」
 「は?」

 あまりに突然な出来事が続いたため、イースが把握しきれず、へんな声をだすとむーっと彼女は下唇を突き上げていった。

 「だからっ好きなイースの隣が、私の安定の地なの!」
 「はっ?す、好き!?」
 「うん、私はイースが好きだよ?」

 言いながら、彼女はぺろっと舌をだし、さらにイースへと顔を寄せると、その脂肪の薄い頬をぺろっと舌の先で舐めた。その感触が妙にざらついていて、やっぱ猫だなぁ、いや、そうじゃなくてっとイースは混乱しきった頭で必死に目の前の彼女に聞いた。

 「す、好きって、じゃあ、なんでいままで・・・」
 「それは・・・」

 と、彼女は言いずらそうニ真っ赤になりながらも、その二本の尻尾は妖しくうねっていて、妙にそこだけ高く上がった腰もわずかに物欲しげにゆれていた。
 鼻もスンスント時々鳴っていて、やたらとイースの匂いをかいでいる。

 「だ、だから・・・っ」

 そういいながらも、ミウの息はどんどんと上がっていき、その金色の瞳も何もしてないというのにぼんやりとした蕩けた色になっていく。
 イースはその様子に彼女が風邪か何かではないか、と心配になった。

 「ど、どうした・・・?」
 「ぅ・・・ぅ・・・っもー!!!我慢できないぃぃ!!」
 「!?」

 彼女はそう叫ぶと、またもやイースに力強く抱くと、彼にわずかに朱が差しあるのかほんのり紅い自分の唇を押し付けた。だが、今回はすぐに離れた前回とは違い、いつまでたっても離れず情熱的な口付けを続けた。

 「んちゅ・・・・っく・・・い、ひーすのにほいぃ・・・」

 彼女の舌は、何度もイースの歯茎の裏や歯を下の先でなぞり、あまりの驚きにイースが固まって動けなくなってる彼の舌に自分のを絡めた。

 「ぁふ・・・んむ・・・っぷ・・・ちゅ」

 彼女が口に吸い付いたままその細くくびれた腰をせつなげに動かすたびに、イースの鼻は彼女の香りなのか漂ってきた芳しい華の様な甘い香りを感じていた。その花の匂いと口に押し付けられた柔らかい唇の感触が、どんどんと彼の混乱した頭のなかへと忍び込んでいき、彼の理性を混乱ごと瓦解させていった。
 すっとイースの腕がうごき、彼女の頭に手を添えた。
 そのままぐぃっと自分のほうへとひっぱり、触れ合っていた唇をさらに密着させた。ミウは一瞬、驚き、目を見開いたが、すぐに嬉しそうにその目元をゆるめ、絡み合っていた舌をさらにそのままひとつになってしまうのではないかというほどきつく絡め合わせた。

 「んぶっ・・・くふ・・・っちゅく・・・ふ・・・」

 口と口が奏でる淫靡な音が、部屋中に響き渡り、イースの魅了され始めた頭をさらに犯した。
 ミウの白く柔らかい髪の毛の感触を味わっていた手を、彼女の纏う着物の胸元へと持っていった。イースの手が彼女の着物を掴み、着物の上からでもわかるほどの存在感を出す胸のその頂点をぎりぎり隠すところまで下げたときだった。そのまま彼女の着物を剥ぎ取ってしまおう、と彼は手に力を込めるが、しゅるるっとその手首に何かが絡みつき、その動きを止めた。

 「?」
 「まだだーめ」

 見ると、ミウの白く長い二本の尻尾がイースの手首それぞれに絡みつき、その動きを止めていた。
 力をこめ、無理やりにでも引き剥がそうとするが、その手首に絡みついた尻尾の拘束自体はゆるくとも、その尻尾に込められた力は、狩人とはいえ人間程度にはがせるものではなかった。

 「ふふ、もう我慢できないみたいだね・・・」

 ミウは獣欲に囚われたイースが、必死に彼女の尻尾を引き剥がそうとしているのを見て、楽しげに笑った。そのまま、彼女はイースの腹の辺りに座ると、
よく見ててね、とつぶやき、肩に引っかかるような位置まで下がり胸元をあらわにしていた、赤く白い華のあしらわれた着物を下に落とした。

 「っ・・・」

 肉欲に捕らえられ、今にもミウを襲おうとしていたイースですら、彼女の夜に映えるその美しさに手を止めた。
 彼女の肌は、シミ等欠片もなくまるで雪のように白くそしてまっさらで、人形のように細かった。だが、そのうちにあっても強く存在感を強調する大きな胸は、まるでメロンか何かをつけたか、というほどの大きさだった。その頂点で屹立する濃いピンク色の乳首は、まるで雪原の中に落ちた二輪の梅の花のようだった。
 そのまま下に降りていき、折れてしまいそうなほど細くくびれた腰、うっすらと脂肪のついた腹部を越え、そして、髪と同じ色で、白い肌の上ではわかりにくいほどうっすらと毛の生えた股があらわになった。
 ミウはイースの視線に恥ずかしそうにしながらも、その瞳に期待の色を宿していた。

 「イース・・・どう?」
 「き、綺麗だ・・・」

 出会ったときをさらに上回る激しさで打たれる鼓動を感じながら、イースは恥らうミウから目を離せなかった。
その抑え様も無い興奮に、イースの心どころか体まで麻痺してしまっていく。
 つつっとミウの白く細い指先がイースの胸を通り、下っ腹を伝い、そして彼の膨張し切ったものを覆ったズボンへと辿り着く。

 「あはっ。イースももうおっきくなっちゃってるんだね・・・」
 「も?」

 イースは不思議に感じ、視線を下げた。その視線に気づいたミウはポッと頬を染めながら、自分の秘部へと右手を向け、その指先で秘部をわずかに開いた。
 彼女の慰み程度にしか毛の生えていない明るいピンク色の秘部は、透明な液体をとろとろと滴り落としていた。

 「ぬ、ぬれてるのか・・・?」
 「うん・・・ネコマタってね、好きな人の匂いとか嗅いじゃうだけで、こんなになっちゃうの・・・」
 「そうなのか・・・」
 「うん。イースも良さそうだし、もう・・・するね」
 「うわっ・・・お、おまっ」

 ミウはとろとろと表情を蕩けさせながら、ぽぅっとイースのペニスを見つめ、その上へと腰を当てた。
 そのとき、急に辺りに漂っていた甘い花のような香りが強まった。それと同時に、イースの頭に掛かっていた靄がさらに濃くなり、わずかに戻った理性すらも獣欲へと消えていった。
 ミウの突然な行動への戸惑いも、驚きもすべて消し去る。
 ただ、目の前の雌猫を犯したい、という欲望だけに飲み込まれる。

 「い、いれるよ・・・?」
 「・・・あぁ・・・」

 そんな異常な感覚の中、イースの期待に応える様にミウが腰を落とし始めた。彼女の腰から伸びる白く長い二本の尻尾がくねる。
 ミウのトロトロと淫らな液を滴らせる蜜穴の入り口が、ゆっくりと彼のペニスの先端を咥え込み包み込んでいく。

 ちゅぷっ

 「くはっ・・・かぁっ」
 「はふぅ・・・ああんっ、はっ入ってくるっ、い、イースのが私の中にっ・・・入ってきてるよ・・っんんっ・・・あふぅぅ、入って、入ってくるぅぅっ」

 ぐちゅっと粘膜同士が触れる淫らな音とともに、イースの期待と獣欲によって脈打つ肉棒が、淫靡なネコマタの腰の中にズブズブとハメ込まれていく。

 じにゅうぅっぅぅっっっ

 「くああああっっ!」
 「はうぅぅぅっっっ」

 ミウの膣の中の絶妙の締まりと絡みつきと、それによる快楽が一気にイースの体に襲い掛かる。まるで何百もの動き回る軟体が絡みつくような、暴虐的な問答無用の気持ち良さ。
 何より、目の前で自分の性器によって快楽を覚えている相手が、八年も前から想い続けてきた相手だと言うことが、イースだけでなくミウも快楽を加速させていった。

 「はんっあんっ・・・きっ気持ちいぃ・・・気持ち良い・・・い、イース・・・わたしの中、勝手に動き始めて、イースのをのみこんでっるよぉぉっ・・・」

 心のどこかが、危険と告げているのを感じながらも、彼女の膣に締められ股間から脊柱を通って脳天まで静電気のようにビリビリと走る快感とがイースの思考のすべてを支配している。
 そして、ズンッと衝撃がくるとともに、いままで以上の快楽がイースとミウに雪崩れ込む。彼女の最奥にイースのペニスが辿り着いたのだ。
その明るい桜色の唇を艶やかに濡らしながら、イースの上で騎乗位でまたがるネコマタは幸せそうに頬を染めながら、トロンとした瞳で俺を見つめている。

 「あんん・・・イース、気持ち良い・・・? んっ、あふぅ、ふふふ、八年間も我慢したんだもの、まだ、ぜんぜん足りない・・・あんっ、あっ、イースの熱いの、私の奥にはいってきてるよ・・・」

 ミウはそう言うと、その猫のような形の白い毛のうっすらと生えた手をそっとイースの胸元につき、その二本の尻尾を期待に揺らめかせながら、腰をくねくねと動かしだす。

 じゅちゅ じゅちゅ じゅちゅっ

 愛液によってぬれそぼり、痛いほどに締める膣肉に包まれたイースのペニスが左右にシゴキ上げられ、締め上げられ揉みくちゃにされていく。

「あふっ、イースのが・・・わ、私の奥を突いて、ズンズンって、いいよっ・・・ううぅ、んあっ、もっもうっおかしくなりそっ、あひっ、腰とまっ・・・とまんないよぉっ」

 ミウはその存在感のある大きな胸を激しく揺らしながら、まるで舞踊を舞っているかのように、めちゃくちゃに、それでいながらも淫らに綺麗に腰をクネクネと動かしまくる。
 その可愛らしい淫蕩な美貌は、汗を撒き散らし頬を染めていた。

 「ぐあぁ・・・だっ・・・だめだっ・・・激しっ・・・くぁっ、もっとゆっくり・・・」

 イースはミウの淫らな膣内でペニスをシゴかれ、頭の中を白く染め上げるような快楽に、必死に歯をくいしばり、ペニスの根本から湧き上がる射精感に堪えていた。

 じゅちゅ じゅちゅ じゅちゅ じゅちゅっ じゅぶっ じゅちゅっ

 二人の結合部では、ミウの柔らかな肉の間に根元まで潜り込んだイースのペニスがしっかりとくわえ込まれ、二人の愛液と我慢汁の混ざり合ったモノを垂れ流しながら激しく出入りを繰り返す。
 その度に、ミウのお尻が振られ、長い猫の二本の尻尾がビクンビクンと官能の刺激と痙攣し、くねりあい、螺旋を形作っていた。
 イースは、その濃すぎる霞のかかった意識の中で、目の前の少女と激しい快楽の渦に包まれながら、ただひたすらにこの最高の肉の感触を味わい続けていた。
 ペニスにからみつく膣肉を掻き回すように、無意識、本能的に腰を突き上げ、目の前で腰の動きと共に弾み揺れるミウの胸に両手をかける。そして、しずくとなって汗が滑り落ち、濡れ光る淫らな胸を揉みしだく。

 「はぁぁぁぁんっ!!!い、イースっいいよぉっ!そ、それぇ!もっとっもっと強く揉んでぇっ!」

 その刺激にミウは恍惚とした笑みを浮かべ、自分の胸を揉むイースに愛しそうな目を向け、そのしなやかな身を丸め、今まで以上に腰をビクビクっと小刻みに震わせ、咥え込んだイースを膣肉全体でシゴきながら、すっとした腰をしなやかに振り、こね回してくる。

 「くぁぁっ・・・俺・・・もう・・・」

 ぎゅうっと根元か絞り上げられるよう感触と、亀頭を包み込む今まで以上の淫蕩な肉の感触に、イースは根本に溜まったものがいまにもペニスから噴き上がりそうだった。

 「だ、出していいよっ、イース。がっ我慢しなくて・・・なっ中にだしてぇ・・・っ、イースの精液いっぱいほしいよぉっ!」

 ミウはにっこりと淫らにイースへと微笑むと、その腰の動きを加速させた。

 「ぐ、かぁぁっ!っで、出る。出すぞっ!」
 「う、うんっきてっきてぇぇぇっ!!」

 イースはぎゅうっとその柔かく心地よい体を抱き締め、肉棒を根元まではめこんだ姿勢のまま腰をふるわせ、ミウの奥にむかって欲望をためらうことなく放出する。

 「あっああっ・・・でっ出るっ」

 ドピュドクドクッ ビュルゥビュクビュク ドビュッッッ

 「イースぅ!はあぁぁんっ!イースッ、出てるぅ、中にぃっ!好きっすきぃ!イースぅ!!!」

 ミウは俺に抱きつき、感極まった声を出しながら、猫のようにのどを鳴らしイースの胸に頬ずりをした。その間にも時折、あっあっと途切れ途切れに喉をふるわせて、イースのペニスから出る精液をお腹の中で受け止め続けている。

 「あっ、あっ、あっ、うううっ、いいぃ、とっ、止まらなっ・・・すごく、気持ち・・・良いよっっ」

 ドクドクドク ドビュッ ビュビュビュビュッ ドビュ ドビュッ ビュッ ビュッ

 「ふぁ、あーーーーっ」

 ミウは感極まった声を上げ、パタンっとイースの胸に倒れ伏した。それと同時に、イースのペニスから吹き出る精液も勢いを衰えさせ、そして止まった。

 「い、イース・・・気持ちよかったよぉ・・・」
 「お、俺もだ・・・ミウ・・・」

 あまりの快楽の突撃に忘我の境地になりながらイースがいうと、ミウの大きな金色の瞳からぽろっと涙の粒が零れ落ちた。
 それはミアス以外の女性経験が少ないイースにとって十分忘我の境地を吹き飛ばすものだった。

 「ど、どうしたっ!?」
 「う、うぅん。なんでもないよ?た、ただ」

 ぐしぐしと目元を猫が顔を洗うかのようにこすり、涙を拭くとミウは一変してほころんでいった。

 「ただ、ようやくイースが私の名前呼んでくれたから。それがうれしかっただけ」
 「・・・あぁ・・・」

 すぐいなくなると思って名前を付けなかった自分をイースは呪うべきなのか、褒めるべきなのかわからなかった。だが、

 「悪かったな・・・これからは何度も呼んでやるよ・・・ミウ・・・」
 「うんっうんっ」

 ミウは笑みを濃くして何度もうなずくと、猫が匂い付けをするかのようにイースの胸にポスッと頭をあてるとぐりぐりとなんども頬擦りをした。やっぱ猫だな、とイースは思った瞬間、何か引っかかるものを思い出した。
 なにか、この状態だと途轍もなく危険になるような何かが・・・とイースが獣欲によって葬られかけていた何かの糸口をつかんだ気がした。

 「ねぇ、イース・・・もっともっと、気持ちいいこと、しよ・・・?」
 「・・・あぁ」

 ミウが二本の尻尾で胸元をくすぐりながら、しなだれ掛かってきた。
 そのときに、ふわっとまたあの甘い匂いがイースの思考に靄をかけ直し、ミウの背に手を這わせた時だった。


 「イースーっ!来ったよーっ!」

 ドガァンッ!と扉を割らんばかりに押し開き、玄関から入ってきたのは、黒猫をベースにしてるらしい黒い三角耳と長い尻尾をゆらしているワーキャット、ミアスだった。
 と、イースの靄の掛かった記憶がその声によって靄が晴れ、ようやく気に掛かっていたものを思い出した。 
 そのイースが慌てる様とミアスが家に来たことに、ミウはイースをキョトンとした瞳で見つめた。

 「???」
 「やっべぇ!!!」 
 「なんでミアスがうちにきたの?」
 「きょ、今日の昼間、夜這いかけるとか言ってきてたんだよっ。冗談と思ってたが、まさか本気とは・・・」
 「へぇー?夜這い、ねぇ・・・」

 ミウはイースに聞くと、だんだんとニヤーリと八重歯が剥き出しになるほど口を大きく開いて笑っているような形にした。だが、その瞳はまったく笑っていない、というか、それどころか目元に髪がかかり暗くなっているというのに、そのなかの瞳がぎらぎらと光っていて怖い。

 「い、いやっそんなんいいからっ隠れてくれ!」
 「なんで?」
 「なんでってお前・・・」
 「だって、私はイースの恋人だもん。あのワーキャットよりも、イースは早く射止めたんだもんっ、隠れる必要なんてないよ?イースは私のこと好きじゃないの・・・?」
 「ぅ・・・」

 見た者はすぐに罪悪感に苛みそうな、うるうるとうるんだ金色の瞳で見上げられ、しかもそれが八年間も懸想していた相手となれば、知識ばかりで女性経験のまったくないイースを陥落させるには十分すぎるほどだった。
 と、そんなことをやってる間に、イースー?どこー?というお前本当に夜這いに来たのかよ、と突っ込みたくなるのんきなミアスの声がだんだんと大きくなり、やがてキィッとドアをきしませ、寝室に入ってきた。

 「もう寝ちゃってるの?それはそれで好都合だけど・・・って、えぇっ!?」
 「ぁー・・・ミアス、これは・・・」

 イースは目を見開くミアスに片腕を上げながらも、いつの間に俺はこんなリア充な目に・・・と内心頭を抱えた。
11/08/26 17:47更新 / うぃる こと 7
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■作者メッセージ
 ようやく書き上げられました、ネコのお話です。
 荒削り感がなー…拭えないなー、とか思っているのですが、今のうぃるの限界はこの辺りのようです…
 次のSSやこの後の話はもっとちゃんとできるようにがんばっていきたいと思います。

 追記:次さっさとこの次を書けよ、と思われるかもしれませんがインスピレーションが沸いたキャラがいるのでそちらを先に書きますー。
 これの続編を待っている方がいたら、すみません…(いるといいなぁっ!)
 次は短編の予定なので早めにあげられると思います(そう言ってうらぎる可能性の高いうぃるです)

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