連載小説
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第漆章 復讐者は梟の如く夜を舞う
復讐者
お前はどうして復讐する?
お前はどうして憎悪する?

復讐者
お前は悲しい存在だ
お前は虚しい存在だ

復讐者
お前の行為に意味は無い
復讐という行為に意味は無い

―復讐者は梟の如く夜を舞う―

「ちっ……コイツも外れかよ!」
足元に転がる元人間だった肉の塊を、俺は苛立ちを籠めて蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた肉の塊のコメカミには、ナイフの刃が根元までズップリ突き刺さってる。
クソッタレが……今度こそ当たりだと思ったら、まぁた外れかよ!
俺は外套のポケットから煙草を出して火を付け、紫煙を吐き出す。
何時になったら見つかるんだ、あのド腐れ野郎はよぉ!

×××

〜二日前〜
「御呼びでございますか、飛鳥(アスカ)様」
訓練をしていた私は急な呼び出しを受け、私の上司であるクノイチ・飛鳥様の元を訪れる。
片付けが苦手な飛鳥様の部屋は常に散らかっており、辛うじて入口から執務机までの道が出来ている程に汚い。
「お、やっと来たね、葉月(ハヅキ)! ま、適当に座ってくれよ」
適当に座れと仰られても、座る場所が見当たらないのですが。
座る場所に困った私は尻尾を伸ばし、先端を天井に突き刺してぶら下がり、蝙蝠のような体勢になる。
「……アンタねぇ、幾等アタシの部屋が汚いからって、ソレはないんじゃない?」
天井に蝙蝠の如くぶら下がる私を見て、飛鳥様は大仰な溜息を吐く。
ソレが嫌なら、一刻も早く部屋の片付けをした方がよろしいかと。

「ま、いいけど……アンタを呼んだのは、頼みたい事があってね」
そう仰りながら、飛鳥様は私に向けて一枚の手配書を手裏剣のように投げる。
手裏剣のように投げられた手配書を私は受け取り、手配書を見る。
その手配書の似顔絵に描かれているのは、黒眼鏡を掛け、黒い外套に身を包んだ男だった。

「今回、アンタに頼みたいのは手配書の男の捕縛だ」
「捕縛、ですか……」
「いやぁ、奉行所勤めの知り合いから頼まれてね。コイツ、かなり厄介みたいでさ」
飛鳥様曰く、手配書の男は『蟲眼』と呼ばれている罪人で、医師を兼業し、多少なりとも妖術を使える学者を狙って殺しているらしい。
動機は不明、『蟲眼』と呼ばれている理由も不明。
分かっているのは、月のない晩でも投擲用の短剣で正確に頭を貫く程の凄腕である事。

「んで、奉行所がお手上げ状態になった以上、アタシ達クノイチの出番って訳だ」
ケラケラと笑う飛鳥様だが、笑い事ではないかと。
幾等身体能力に優れた私達でも、コレ程の凄腕を相手にするのは難しいと思います。
「アンタが、ウチの里の現役で一番強いんだ。期待してるよ」
期待されても困りますが、任務を請け負った以上、全力を尽くすのみです。
私は尻尾を外して床に下り、飛鳥様の部屋を後にした。

×××

「かぁぁぁっ! しつこいんだよ、テメェ! テメェは金魚の糞かよ!」
全く、災難だぜ!
裏街道の酒場で自棄酒呷ってたら、いきなり棒手裏剣が飛んできやがった!
流れ弾、じゃなくて、流れ棒手裏剣に吃驚した酒場の騒ぎに紛れて逃げたないいがよぉ、棒手裏剣投げてきた奴はしつこく俺を追い掛けてきやがる。
俺は投げナイフを召喚、追い掛けてくる奴に投げるんだが、走りながらだから狙いは適当、綺麗に外れちまった。

「お覚悟を……」
夜闇に紛れながら俺を追い掛けてくんのは、声からして女か!?
畜生! 俺は女に追い掛けられるような事は……してたなぁ、そりゃタップリと。
遊郭で料金踏み倒したり、手八丁口八丁で金を騙し取ったり、暗い裏道に引き摺りこんで恐喝したり、色々やったが、いきなり棒手裏剣投げられるような事はしてねぇ!

「クソッタレがぁ。兎に角広い場所、広い場所……って、うおぉっ!?」
ゴミ箱の中に隠れ―生ゴミなのが最悪だが、この際文句は言わねぇ―、この辺で見渡しの良い場所がどの辺りかを思い出そうとしてると、ゴミ箱の蓋に棒手裏剣が刺さる。
畜生! ちったぁ、考える暇を寄越しやがれ!
ゴミ箱から転げ出た俺は、頭に糞生意気にも乗ってやがったねぶりの果実の皮を投げ捨て、勢い良く走り出す。

「ひゃん!?」
背後で何だか知らねぇが驚いた声がして、走りながら振り返ってみりゃ、転んだ女と女の足元に転がる、踏んづけられたねぶりの果実の皮。
皮、踏んづけて転ぶって何処のお笑い小説だよ! 腹を抱えて笑いてぇが、今はトンズラかますのが先だ。
女が転んだ隙に逃げさせてもらうが、何でだろうなぁ? 
何で、俺はクノイチに追い掛けられてんだ?

「えぇと、クノイチってな、確か……」
何とかクノイチを撒いた俺はゴミ箱の中に隠れて、クノイチが何なのかを思い出す。
然し、まぁた生ゴミのゴミ箱かよ、生ゴミに縁でもあんのか、畜生が。
クノイチってな、確か……魔王の代替わりの時に、魔物化した一部の女忍者達が始祖になったサキュバスの亜種、だったよな?
翼が退化した分、原種よりも身体能力が高くて、忍の里とかいう場所で暮らしてんだっけ。
んで、傭兵として大陸とかに派遣されてるとか。

「……貴方、ゴミ箱に隠れるのが好きですね」
「へ? うわぁおっ!?」
頭の上から声掛けられて上を見りゃ、外した蓋を持って、呆れた顔してるクノイチ。
俺はゴミ箱の中の生ゴミをクノイチ目掛けてブチ撒け、生ゴミに驚いてる隙にゴミ箱の中から飛び出して逃げる。
「くぅ!? 待ちなさい!」
待てと言われて誰が待つか、畜生! つぅかなぁ、俺がゴミ箱の中に隠れてんのはテメェの所為だろうが!

「はぁ、はぁ……漸く、諦めましたか」
ゴミ箱の中に隠れんぼしながらクノイチから逃げ続け、俺はやっと目当ての場所……街の中央広場に辿り着いた。
俺を追い掛けていたクノイチは肩で息してるが、俺を逃がす気はねぇみてぇだ。
「ったく……何で俺を追い掛けんのか、知らねぇけどよぉ。いい加減、テメェが諦めろ」
「任務ですので、諦める気はありません」
やっぱり、糞真面目なクノイチに諦めろっつうのが無理か。
仕方ねぇなぁ……ちょっくら、痛めつけてやらねぇとな!

×××

「お覚悟を……」
私は片手毎に三枚の円月輪を召喚、計六枚の円月輪を同時に投げる。
私の円月輪は芋の皮を剥くのがやっとの切れ味ですが、くらえば痛いのは確実。
私の妖力の籠った円月輪は一枚一枚が複雑な軌道を描き、蟲眼と思しき男に殺到する。
「遅過ぎんだよ! このマンカス女!」
蟲眼と思しき男は口汚く叫ぶと投擲用短剣六本を召喚し、私の円月輪目掛けて投げると、六本の投擲用短剣は全て私の円月輪と衝突、一枚残らず撃ち落とされる。
僅かな街頭しかない広場で、複雑な軌道かつ高速で飛ぶ私の円月輪を撃ち落とした蟲眼と思しき男の技量に、私は感心する。
感心はしますが、手加減は致しません。

「忍法 多重影形(エイギョウ)」
私は妖力を体内で循環、循環させた妖力を私の影に七等分に分配する。
妖力を与えられた影は私と寸分違わぬ―元が影なので、色は黒っぽいですが―姿で立体化、本体である私を含めた総計八人の私が蟲眼と思しき男の前に立つ。
そして、八人の私は蟲眼と思しき男の周囲を囲み、四人は地上から、残る四人は空中から六本ずつ、計四八本の棒手裏剣を一斉に投げる。
地上と空中からの一斉投擲……幾等技量が高くとも時間を止めない限り、全ての棒手裏剣を撃ち落とすのは不可能です。

「はっ! 舐めんじゃねぇぞ、このアマァ!」
不可能だと私は思っていましたが、蟲眼と思しき男は不可能を可能にしました。
身体を回転させながら投擲用短剣を投げ、私達の放った棒手裏剣を全て撃ち落とす。
信じられません……細く、小さく、夜闇に溶け込む色の棒手裏剣を全て撃ち落とすなんて。

「今度は、コッチの番だ! 『弓聖の一矢、船上の扇に届かず(The Paradox Of Yoichi's Fan)』」
蟲眼と思しき男は投擲用短剣を三本召喚、聞いた事の無い術式を詠唱して私へと投げる。
私は影の一体を盾にしますが、三本の投擲用短剣は盾にした影を弧を描きながら避けて、私に向かって飛んでくる。
私は後ろに跳躍しますが、それでも三本の投擲用短剣は執拗に私を追跡する。
その執拗な追跡に焦る私は、木陰に隠れる、姿を忍術で消す、棒手裏剣で撃ち落とす等、様々な方法を試すが、どれも意味がない。
まるで猟犬の如く、投擲用短剣は私を追跡する。

「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ! しつこいだろ、ソレ! 折角だ、クノイチ! 俺が『蟲眼』って呼ばれてる理由を教えてやらぁ!」
奇妙な笑い声を上げる蟲眼は黒眼鏡を外し、何故か閉じられていた両目を開く。
開かれた両目を見た私は、恐怖で身を震わせた。

×××

「ひっ……!」
クノイチが恐怖に満ちた声を上げるが……まぁ、誰でもビビるよなぁ。
『複眼』、知ってるか? 無数の小さな目玉が集まり、一個の大きな目玉になってるアレだ。
俺の目はソレなんだよ、複眼って奴だ。
オマケに、ただの複眼じゃねぇ……人間の目が何個も集まって出来た複眼だ。
仄かに光る真っ赤な瞳が何個もギョロギョロ動く様は、誰がどう見ても気色悪ぃ。
この複眼が、俺が『蟲眼』って呼ばれる理由なのさ。

「げぁぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ! 逃げろ、逃げろ! ビビりながら、逃げやがれ!」
逃げ惑うクノイチに気分が良くなった俺は、近所迷惑になりそうな高笑いを上げ、高笑いしながらも、俺は逃げるクノイチを視界に捉え続ける。
『弓聖の一矢、船上の扇に届かず』、俺の複眼を最大限に活用した俺だけの魔法で、簡単に言っちまえば、俺の投げた物は俺の視線の動きに合わせて動く魔法だ。
何が言いたいって? つまり、だ……俺が視界に敵を収めている限り、俺の投げたナイフからは逃げられねぇって事なんだよ!

さぁて、俺のナイフとクノイチ鬼ごっこを見てんのも、飽きてきたなぁ。
つぅか、滅茶苦茶目が痛ぇし、ケリつけるとすっか。
俺は複眼の一つを別に動かし、クノイチの太腿を狙うように投げナイフの一本を動かす。
一本だけ違う動きをしてるのに気付いてねぇクノイチは、相変わらず逃っげるっだけぇ♪
「……っ!?」
気付いた時にはもう遅ぇ……クノイチの太腿にナイフが刺さり、体勢を崩したクノイチに残る二本が迫る。
残る二本の内の一本は刺さってない方の太腿に、最後の一本はクノイチの右腕に刺さる。
体勢を崩して転がるクノイチに、俺は恐怖を煽るようにゆっくりと近付く。
「んじゃ、何で俺を追い掛けてたのか……説明してもらおうか、ク・ノ・イ・チちゃん♪」

×××

「ふぅん、成程ねぇ……」
俺を追い掛けてたクノイチ曰く。
奉行所連中が俺を捕まえらんねぇから、コイツの上司へ俺を捕まえる為に誰か寄越してくれと頼んで、コイツの里で一番強いコイツに白羽の矢が立ったんだと。
ソレを聞いて俺は納得したぜ、納得したけどよぉ……
「捕縛、成功しました」
「放せや、ゴルァッ! テメェのマ○コ、グチャグチャに壊れるまで犯すぞ!」
こんのアマァ! 話を聞いてる間に、俺に尻尾巻き付けてやがった!
クノイチを甘く見てたぜ、畜生!

「奉行所から捕縛成功した際、事情聴取するようにも命じられました。なので、問います。何故、貴方は学者を狙い、殺していたのですか?」
「けっ……話したら、情状酌量の余地有りってか?」
「ソレは知りません。私にソレを判断する権利はありませんので」
はっ……あぁ、そうかい、そんなら話す義理はねぇな。
テメェの尻尾引き千切って、ぶっ殺して逃げてやらぁ。
そんな意思を籠めた目で俺は睨む―黒眼鏡掛けて、目ぇ閉じてんだけどよ―が、クノイチは平然としてやがる。
「話さないのなら、強引に聞き出します」
そう言いながら、クノイチは俺に顔を近付けてきやがった。
オイオイオイ! テメェ、何をするつもりなんだ!?
慌てる俺を無視して、クノイチは自分のデコを俺のデコにくっ付ける。
「忍法 記憶潜行。貴方の記憶、覗かせてもらいます」
にゃ、にゃにぃっ!? オイ、ちょっと待ちやがれ!
引き剥がそうにも、尻尾が巻き付いてる所為で身動きがとれねぇ。
くっ付けた部分が、ほんのりと温かくなって、俺はコイツに俺の嫌な記憶を覗かれた。

×××

さぁて、我輩の昔噺の時間がやってきたぜ。
あ? 今回も真面目そうだって?
我輩も学習したんだよ、昔噺でハッチャケトークかましても、白けるだけだってね。
だから、これからは昔噺の時は真面目にいくんで、よろしく。
今回の昔噺は、蟲眼君の過去だ。

蟲眼君に、名前は無いんだ。
何でって? 実は、蟲眼君も以前話した連八君と同じなんだよ。
あぁ、そうだよ、あのマッドなファザコン野郎のエラトマの研究の犠牲者でさ、蟲眼君はエラトマに依頼された、人身売買を生業にしてる悪い奴等に誘拐されたんだよ。
『試験体二八七号』、ソレが人体実験されてた時の蟲眼君の呼ばれ方だ。
因みに、『蟲眼』の由来は、自分の目が虫の目みたいだからだってさ。

エラトマに蟲眼君がされた改造は、視覚強化。
蟲眼君の目玉を魔法で弄くり回してデカくして、ついでに肥大化した目玉を収める眼孔もデカくして、今の目玉になったのさ。
んで、複眼を構成する小さい眼球がハイスペック通り越してオーバースペック。
赤外線探知、サーモグラフィー、スターライトスコープ、X‐線スキャナー、魔法看破(グラムサイト)、スーパースローモーション、目標の拡大縮小、と視覚に関わる機能が詰めこまれてんのさ。
あ、魔法看破ってのは姿を隠したり、幻覚を見せる魔法を見破る魔法付与の事だぜ。
そんなオーバースペック気味な小さい眼球が集まった複眼じゃ、どんなに姿を隠そうが、どんなに速く動こうが、蟲眼君には丸分かりって訳だ。
ま、こんな魔改造に副作用・欠点は付き物だ。
オーバースペックな所為で視神経と脳に負担がデカ過ぎて、長時間の使用は厳禁。
長時間使うと、過負荷で視神経が焼き切れて失明しちまうんだ。
そんな欠点抱えてたから、連八君と一緒に奴隷商人に売り飛ばされたんだよ。

失明を避ける為に、蟲眼君は普段は目を閉じてて、「何で目を閉じてんの?」っていう周りからのツッコミを避ける為に黒眼鏡を掛けてんのさ。
因みに、目を閉じてても赤外線探知のお陰(?)で、周りの状況は何となく分かるんだとさ。

んで、蟲眼君は自分の目を魔改造したエラトマが許せなくてさ、奴隷商人の元から脱走、復讐に走るんだけど、肝心のエラトマの事をよく憶えてないんだよ。
憶えてるのは、表稼業で医者をやってた事、魔法が使える事だけ。
微かな記憶を頼りにエラトマに復讐する為、大陸やジパングの彼方此方を巡りに巡って、今に至るって訳だ。

蟲眼君の過去は、こんな感じだけどさ。
蟲眼君、エラトマはもう死んでる事、知ってんのかね?
死んでる事を知ったら、蟲眼君はどうするつもりなんだろ?
ま、その辺りは、話に戻ってからのお楽しみって事で。

×××

「……成程、そういう事情があったのですね」
デコを離したクノイチは、俺が何で学者を殺してんのかを納得したんだが、俺は滅茶苦茶気分が悪ぃんだ。
なにせ、忘れたくても忘れられねぇ嫌な記憶を掘り返されて、オマケに覗かれたんだぞ?
コレで気分が悪くならない奴は、何処を探してもいねぇだろ。
「事情は理解しましたが……貴方、エラトマ・ヴィツィオーネは既に死亡している事を、知らないのですか?」
「………………はぁ?」
おい、ちょっと待てよ。
コイツ、今、何て言いやがった?
エラトマ・ヴィツィオーネハ、スデニシボウシテイル?
エラトマは、とっくの昔に死んでいる?

「なんじゃそりゃぁぁ――――――――――――――――――――っ!」
「……大声を出さないでください。今は夜中ですよ」
あまりの衝撃に月までブッ飛びそうな俺に、クノイチは顰めっ面で注意するがなぁ!
コレで大声出さねぇのは、幾等何でも無理だっつうの!
あんの糞野郎、とっくの昔にくたばりやがっただとぉ!?
んじゃぁ、俺の復讐はどうなる!? そもそも、あの糞野郎、何時の間に死にやがった!

「三ヶ月前、帝都沖の小島にある闘技場で首無し死体を発見、妖術による検死及び発見者の証言により、国際指名手配犯エラトマ・ヴィツィオーネである事が判明しました」
瓦版を読んでねぇから、んな事があったの知らねぇし。
あの糞野郎、保身と脳味噌のイカレ具合は忌々しい程にバッチリだったから、死んだとは思ってもみなかったぜ。
「だぁぁぁ……俺の復讐、一体何だったんだよ」
「無駄でしたね。無差別殺人の罪が残っただけです」
このアマ、冷静に俺の心を読んでんじゃねぇ!

「私は記憶潜行により貴方の事情、無差別殺人の動機を理解しましたが、情状酌量の余地があるかどうかは分かりません」
「あぁ、クソッタレ……もう、どうでもいい。死刑にすんなら、さっさと死刑にしやがれ」
仮に情状酌量の余地があっても、俺の生きる意味だった復讐は波に浚われた砂の城みてぇに無くなっちまったしよぉ……あぁ、死にてぇ、さっさと死にてぇ。
生きる気力が空っぽになった俺だが、クノイチは何でかは知らねぇが巻き付けてた尻尾を解く。

「今の貴方に、拘束は不要と判断しました。それと、私をおぶってもらえますか?」
あぁ? テメェを背負えってな、どういう訳だ?
「移動しようにも、貴方の短剣の所為で動けません。ですので、おぶってもらいます」
あ、そう……俺はクノイチに刺さってるナイフを抜き、簡単な手当てをしてからクノイチを背負う。
背中の柔らかい感触に、数分前なら「ヤッフゥッ! 柔らかいオッパイだぜ!」って喜んでっけど、正直今の俺にはどうでもいい。
生きる気力も意味も無くなった俺は、クノイチを背負ってトボトボ歩き始めた。

×××

「生きなさい」
「無理、死にてぇ」
どのくれぇ、歩いてたんだろな……背負ってたクノイチが、俺の耳元で生きろって言うが、俺はソレに無理と即答。
生きろって言われてもよぉ、生きる意味だったエラトマへの復讐が果たせなかった俺は、生きてても何もしたくねぇ。

「生きてください」
「お願いされても無理、死にてぇなぁ」
さっさと死ねば、勘違いでぶっ殺しまくってた俺は地獄に落ちるよなぁ。
んで、地獄にゃ、あの糞野郎もいるだろうから、地獄であの糞野郎を殺してさ、勘違いでぶっ殺しちまった奴等に土下座で謝りてぇ。

「死んで罪を償うのは、逃避です。貴方は生きて、罪を償うべきです」
「ハァ、サイデッカ。あぁ、さっさと死にてぇ、くたばりてぇ」
生きる気力暴落中の俺は投げやりな返事ばっかで、死にてぇ、死にてぇと連呼する。
クノイチは何か苛立ってるみてぇだが、どうでもいい。

「死にたい、と言わないでください。貴方には、生きてもらわないと困ります」
「おい、クノイチ……何で、生きろって説得すんだよ。俺は、さっさと死にてぇんだよ」
何で、コイツは俺に生きろって言うんだ?
生きる意味も気力も無くなった俺が生きてても、何の意味もねぇだろ。

「勝手に、死なないで……貴方が死んだら、私はどうすればいいのですか」
「ソレこそ、勝手にしやがれ」
「貴方は私に、全力で戦った私に勝ちました。私は、貴方が……欲しい」
俺が欲しい? 阿呆だろ、コイツ。
自分で言うのもアレだが、こんな気色悪ぃ改造人間より、もっと良い男がいんだろ。

「私達クノイチは亜種とはいえ、淫魔です。淫魔は、殿方に惚れっぽいのです」
背負ってっから分からねぇが、多分コイツの顔ははにかんでんのか?
「私は、貴方に惚れました。だから、惚れた殿方が死にたい、死にたい、と譫言(ウワゴト)のように言われるのが、私には辛いのです」
そう言うと、クノイチは俺の首に回してる腕に力を籠める。
死なないでくれって、言ってるみてぇだが……タンマ、絞まる、絞まってる、首が絞ってるぅ。

「あっ……申し訳ありません」
「プヘッ……このまま絞めてくれりゃぁ、良かったのによぉ」
そうは言うが、無理だろな。
魔物ってなぁ、人間が死ぬのも、人間を殺すのも嫌うって聞いたし。
「生きる意味を失って死にたいと仰るなら、新たな生きる意味を探して、生きてください。貴方は、まだ若いのですから」
全く、それだけ俺に死んでほしくねぇってか。
死にてぇ、死にてぇって連呼してた俺が、阿呆みてぇじゃねぇか。
分かった、分かったよ。

「はぁ……新しい生きる意味、ねぇ。探してみんのも、悪くはねぇか」
「思い直して、くれたのですね……感謝します」
俺の耳元で嬉しそうな声でクノイチは囁き、俺をギュッと抱きしめてくる。
傍から見りゃぁ、俺達はどう見えんのかね?
恋人同士に見えてたら、コイツは喜ぶかもな。

×××

「蟲眼殿、ご奉仕させてもらいます……」
俺はクノイチを背負ったまま歩いて、辿り着いたのは俺が根城にしている廃屋。
根城に着いた俺達は裏にある池で水浴びをしてたんだが……どうして、こうなった。

「ん、しょ……殿方は、こうして、胸で挟まれるのが、好きと、聞きました」
お互い素っ裸になって水浴びしてたら、俺はクノイチにやんわりと押し倒され、池の淵に腰掛けた俺の足元にクノイチは跪いた。
んで、コレだよ……見るからにデカい胸で、俺のチ○コを挟んできやがった。
フニフニと胸を動かしながら、クノイチは上目使いで俺の顔を見る。

「気持ち良いのですね、嬉しいです……はむっ、んちゅ…ん、れる……れろ…」
俺が気持ち良さそうな顔をしてたもんだから、クノイチはご機嫌になったみてぇだ。
胸からはみ出すチ○コの先端を咥え、胸で扱く動きに舌で舐める動きを加えてきた。
俺のチ○コを躊躇いなく飲み込んで、口の中じゃ舌がネットリ舐め回してくる。
ヤベェ……気持ち良過ぎるぜ、こりゃぁ。

「ん、あぁ……私の胸の中で、んっ、また大きく……やはり、ん、殿方はコレが好きなのですね……んぅ、れる、ちゅずる…」
気持ち良くて膨れたチ○コを、嬉しそうに胸で包み込み、クノイチは舌を這わせる。
口の中から零れた唾液がチ○コに滴り、月明かりでヌラヌラと光ったと思えば、胸の谷間に唾液が吸い込まれてく。
何ともエロ過ぎる光景に、射精しねぇように俺は歯を喰いしばる。
もうちっと、味わってたいんだよ、この気持ち良さをよ。

「ん、ふぅ…れろ、ちゅぅ……ちゅる、んぷ、んちゅぅ…れるる、んむぅ…」
クノイチは亀頭を吸い上げ、雁首を舐め、鈴口を舌で突っつく等々、責めを激しくする。
ちょっと待てや、其処のクノイチ!
気持ち良くねぇからじゃなくて、もちっと味わっていてぇから我慢し
「んちゅ、んぱっ、ふぅ……じゅぶ、ぢゅるる、んぶ…んぁ、あっ、じゅるるるるっ」
うほぅっ!? タンマタンマ、それ、タンマ!
音を立てながら、クノイチはチ○コから溢れた先走り汁を吸い上げてくる。
勿論、胸で扱くのも、舌でチ○コを責めるのも忘れずに、だ。
あまりの気持ち良さに、俺の背中にゾワゾワと快感が駆け上ってきた。
不味い、不味いですぞぉ!

「んっ、ちゅっ…どうしました、蟲眼殿? 気持ち良くなかったのですか?」
射精寸前の俺は、胸で俺のチ○コを責めてたクノイチを引き剥がすと、クノイチは不安げに俺を見上げる。
逆だ、逆だ……射精すんなら、コッチにしてぇんでな。
俺は尻が俺の方に向くよう、クノイチの体勢を変えさせる。
いやぁ、絶景かな、絶景かな♪ 準備万端なヌレヌレマ○コが、物欲しそうに口開いてらぁ。

「ん、はぁ…このような、格好……全て、丸見えで恥ずかしいです……」
恥ずかしさに悶えるクノイチのマ○コに、俺はクノイチの尻を掴んでチ○コを入れる。
「ん、あぁぁっ……深い、です…」
一気に奥までチ○コを入れると、クノイチのマ○コからツゥッと血が……って、うおい!?
お、お前、処女だったのかよ!
「ん、あぁ……そう、です。私は、まだ処女だったのですよ」
俺の方に顔を向け、クノイチは苦しいのか幸せなのか、よく分からねぇ表情を浮かべてる。
んで、クノイチはソレを誤魔化すみてぇに腰を振り始めた。

「ん、んく、ふあぁ…あ、あんっ、んぅ……凄い、ですっ……奥まで、届いて…あぁぁ、苦しい、くらいですっ❤」
おい、待てっ……初めてが無理すん
「んぁぁ、あ、あぁ……ん、奥に、刺さってぇ…私、ふぁぁ、変に、なってしまいそう、あぁぁぁっ❤」
にゃぁぁぁぁぁっ!?
熱いくれぇに滾ってたクノイチのマ○コは、そんなに俺のチ○コが欲しかったのかよ!
クノイチは我慢出来ねぇみたいで、腰の動きをどんどん激しくしてきて、嬉しそうに喘ぐ。

「ひんっ、んっ…あぁ、見えて、ますかぁ……んっ、私が、んあっ、蟲眼殿の、モノを、咥えて、いるのをっ、んっ、あぁぁっ!」
見えてる、見えてるっ……丸見えだ、俺のチ○コを根元まで咥えこんでんのがよぉ。
そう答えたら、クノイチは嬉しさと妖艶さの混じった笑みを浮かべ、益々腰を激しく上下させてくる。

「感じて、んぁっ、くれてますかっ……ん、あ、蟲眼殿も、気持ち良く、なってますかっ」
あぁ、気持ち良いぜ……何度か娼婦とヤった事はあるんだが、今までヤった娼婦とは比べものになんねぇくれぇに気持ち良いぜ。
俺はクノイチの尻を掴み、コイツの動きに手を加える。
「ひゃぁん! ふ、深いですぅ……奥に、あんっ、奥に当たってぇ…ん、あぁ、こんなに、あぁん、激しくっ、あぁぁ!」
いきなり激しくマ○コを突かれたクノイチは、驚き混じりに激しく悶える。
俺はクノイチの恥ずかしさを煽るように、わざとデカい音を立てながらチ○コを出し入れさせる。

「はぁぁぁんっ、駄目ですっ……んぁっ、そんなにっ、激しくされたらっ、あぁっ、私っ、どうにかっ、なってしまいますっ❤」
重量感あるクノイチの尻をしっかり掴み、引き寄せるみてぇにチ○コを奥へと突き刺すと、手裏剣ぽい髪止めを外した黒髪を振り乱して、クノイチは弓なりに身体を反らせる。
俺がチ○コを突き上げる度に、クノイチの身体が、デカい胸が、肉付き良い尻が、快感でプルプル震える尻尾が揺れる。
あまりの激しさにフラフラになりながら、クノイチは俺の方へと頑張って振り返って
「愛して、ますっ……ひぅっ、ん、あぁっ、あんっ……愛してますっ、んあっ……愛してますぅっ……私はっ、蟲眼殿っ、をっ、愛してますぅ❤」
其処で愛の告白よ! ちっとは状況を考えやがれ!

「ふぁっ、んっ、くぁんっ、あっ、あぅっ、駄目、ですっ……あぁっ、イってぇ、しまいますぅっ、やぁっ、あっ、あぅっ、きゅふっ❤」
ガクガク震えながら、我慢出来ねぇとばかりに、クノイチは俺に助けを求めるような声を上げる。
丁度良いぜ、俺もどうやら限界っぽひ。
「はいっ、はいっ…イきますっ、ん、あぁっ、気持ち、良いっ……ん、はぁぁっ、イく、あぁっ、イってしまいますっ、あぁっ❤」
ビクビク痙攣し始めたクノイチのマ○コの奥に向かって、俺は爆発寸前のチ○コを乱暴に押しつけて
「あっ、あぁっ、あぁぁ――――――っ❤」
根元までズッポリ入ったチ○コが精液を子宮へとぶつけて、クノイチは一際デケぇ嬌声を上げながら絶頂を迎える。

「あふっ、気持ち、良かった、です……ん、蟲眼殿の精液が、溢れてきます」
そう言いながらクノイチが身を捩ると、繋がった部分から血が混ざった精液がツツゥ―と垂れてくる。
あ〜あ、処女相手に激しくヤっちまったぜ。
なのに、俺のチ○コは、まだまだヤれるぜ! と言わんばかりにギンギンだしよ。
「ふぁぁ……蟲眼殿のモノは、まだ元気ですね❤」
ギンギンなチ○コの感触に嬉しそうだな、お前。
しゃぁねぇ、赤玉出ちまうってビビりそうになる程にヤるか!
そう思った俺は、未だに滾るチ○コでクノイチのマ○コを再び突き上げ始めた。

×××

「そう言えばよぉ……」
「んぅ、何ですか?」
「お前の名前、まだ聞いてなかったなぁ、と」
体力尽きて寝ちまう程にヤり合った後、俺は池に足突っ込んだまま、俺と同じように隣で座るクノイチにすっかし聞き忘れてた事を聞く。
あんだけヤり合ったのに、隣のクノイチの名前を聞いてなかった。
「私の名は葉月、葉っぱに月と書いて『葉月』です」
「ふぅん……」
葉月、ねぇ……中々、良い名前じゃねぇか。
俺なんて『蟲眼』だぜ? いや、まぁ、自分で付けたんだけどよ。

「蟲眼殿」
「んぁ?」
自分で付けた癖に変な名前である事にヘコみかけた俺に、俺の左肩へと頭を乗っけながら葉月は話しかけてくる。
「これから、私と共に『生きる意味』を探しましょう」
「あぁ、そうだな……」
全く、コレだから男は現金で困るぜ。
女の笑顔を見て、ヤル気を出すんだからよ。
ま、勘違いでぶっ殺しちまった奴等への償い兼ねて、ノンビリ探すとすっかね。

「私は、何時までも、何処までも、蟲眼殿の傍にいます」
そう言いながら葉月は俺の腕に自分の腕を、俺の胴体に尻尾を絡めてくる。
そりゃ、アレか? 一生離れませんよって、言ってるつもりか?

何時、如何なる刻(トキ)も、私は貴方と共にいます

葉月の宣言に、俺は葉月の髪を梳く事で答えた。

×××

さぁさぁ、どうでしたかな?
複眼の復讐者と女忍者が紡いだ物語は?
折角なんで、二人のその後を教えてあげようじゃないか。

葉月ちゃんと一緒に、生きる意味を探す事にした蟲眼君。
先ずは償いだって事で、警察に自首しにいったんだ。
キチンと事情と自分の過去を話して、さぁどうなるんだとビビってた蟲眼君だが、結果は意外や意外! なんと、条件付きで無罪だってさ!

ソレに驚いた蟲眼君に、警察のお偉いさんは「エラトマの研究の犠牲者には温情ある判断を、と翠鱗様に言われたからだ」って説明したのさ。
オイオイ、翠鱗姐さん、手回し良過ぎだって。
んで、肝心の条件は「指名手配犯五〇名の捕縛」、指名手配犯が指名手配犯を捕まえるって皮肉だねぇ。
だけど、ソレで無罪になるんだから、蟲眼君張り切ってくれよ、葉月ちゃんの為にも!

無罪放免目指し、蟲眼君は葉月ちゃんと一緒にジパングを駆け巡る!
エラトマに改造された目と葉月ちゃんの情報収集能力のお陰で、何処に潜もうとモロバレな指名手配犯を捕まえるなんて、お茶の子さいさい!
あっ! という間に五〇人の捕縛完了、晴れて無罪放免の蟲眼君に、葉月ちゃんも大喜びさ。
ま、蟲眼君はちょっと複雑な気分だったけどな!

無罪放免された蟲眼君は葉月ちゃんに連れられて、葉月ちゃんの故郷たる忍の里へご招待。
今じゃ、蟲眼君は葉月ちゃんと一緒に後進の育成を頑張ってるぜ。
あ? 蟲眼君の生きる意味は見つかったのかって?
ちっ、ちっ、ちっ……ちゃ〜んと見つかってるぜ、生きる意味。
葉月ちゃんと一緒に生きる、ソレが蟲眼君の生きる意味になったのさ!
いやぁ、惚気てまんなぁ、蟲眼君!

ま、こんな所かな?
それじゃ、次のお話を用意しておくから、それまで諸君は楽しみにしてくれたまへ。
それでは、Have a Nice Day(より良い日々を)!
12/09/16 10:51更新 / 斬魔大聖
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■作者メッセージ
東方魔恋譚 第漆章はクノイチでお送りしました。
第捌章は提灯おばけで執筆する予定ですので、よろしくお願いします。

第陸章の連八と今回の蟲眼は時間軸は異なれど、同じ人物に改造された改造人間です。
そして、蟲眼の目及び魔法の元ネタは、ニトロ○ラス様の装甲○鬼 ○正。
初めてアレの目を見た時は本気で怖かったですが、今では個人的なネタでアレンジして使わせてもらう程に気に入ってます。
まぁ、元ネタ以上に蟲眼の目は多機能ですが。

ついで。
筆者個人の設定ですが、私の執筆する魔物娘達には「人間と争ったり、傷付けるのは嫌だけど、守りたいモノを守る為ならソレも厭わない」という性質を持たせてます。
第伍章のアカオニ&アオオニ、第陸章の白蛇が良い例です。
本能は嫌がるけど、ソレをねじ伏せてでも大事なモノを守りたい。
なんだか、○ラ・ヤマトみたいですね。

それでは、次回も精進しながら執筆しますので、よろしくお願いします。

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