連載小説
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中編
楓による凌辱事件から一カ月が経った。
事件から数日は男子たちはやけに騒いだし女子も怖がって集団での行動率が上がったが、二週間経って続けて被害が出ることもなく迷宮入りになるとすぐ沈静化した。
彼女もいない人間の男子が逆レイプされることはあまり珍しくない学校だから、被害者が魔物のレイプ事件が発生したことが騒ぎになったという要素も強いだろう。
あの日以降、楓は学校に来ていない、和希と顔を合わせづらく感じているのか、それとも他に理由があるのかはわからないが、関連を疑った生徒もいたようだ。
そして当の和希はと言えば、
「楓さん、なかなか出席してこないね………」
「そうだな……」
女子と一緒に昼食を食べる仲になっていた、和喜の頃だったのなら楓に確実にぶち犯されていただろう、今となっては当たり前のように実行していることだが、最初は会話もかみ合わずそれなりに苦労した。
服装も女性の服を着ることに慣れ、お気に入りの服や下着も何着か存在する。こちらも最初は不気味で仕方なかったのだが、努力で慣れた。
そんな苦労をしてまで和希が女子たちに馴染んだのは、友人だった男子たちのセクハラに耐えかねたからと、「和喜」の居場所に自分が居座ることが何か違う気がしたからだ。
「市尾和希」と「市尾和喜」がどちらも自分で同一人物なのは理解している、しかし違和感があった。
「やっぱり和希君は楓さんのこと心配?」
「当たり前だろ。振ったとはいえ彼女だったんだ。」
別に言葉で振ったわけではないが、和喜が女子に成った時点で恋愛関係は解消だろう。
実際、楓はそのことについてかなり怒り、和希を凌辱するという暴挙に及んだ。
それを知っているのは、和希と楓の本人二人だけだが。
(やっべ、思い出しちまった)
股間が滲みそうになった瞬間、記憶を振り払う。
楓の凌辱はさすがに女性の体を知り尽くしたサキュバスだけに反則的に気持ちよかった、思い出すとあれだけひどい目にあったことも忘れ濡れてしまうほどに。
「今でも、楓さんのこと好きなの?」
「………わかんねぇ、こんな風になってるんだから。」
和喜は楓のことを真剣に愛していると思っていた、しかし、アルプになるには一定の、女性になることもしくは男性と結ばれることを願う感情が必要と聞かされ、それを疑わしいと思ってしまったのも事実だ。
この体になった今、実は自分が本当は楓のことを愛していなかったのだと言われたら、それを否定できない。否定できるだけの事実を用意できない。
「ふ〜ん、ところで女の子になったんだし男口調はやめた方が」
「訂正無理。試したけど気持ち悪くて不可能だった。」
多少女性に馴染んだし女体に余り興奮もしなくなったが精神はやはり男性のまま、女性らしい口調を試みたがあまりに気持ち悪くて数秒で止めてしまった。
もっと女性に染まれば自然と女性らしい喋り方もできるのかもしれないとも思ったが、しかし試してみる気にもなれなかった。そもそもどうすればいいのかも見当がつかない。
「そんなもんなんだ、もう見た目はしっかり女の子だし平気かと思ってた。」
「中途半端だよ、表面上は女だし女にムラムラしないけど芯はしっかり男が残ってる感じだ。女体化アルデンテ?」
「わけがわからないよ」
自分なりに上手くたとえたつもりだった表現を訳が分からないとあっさり切り捨てられて若干不満にも思ったが、しかしこれはもう仕方のない感覚だろう。
「そうそう、遊びに行こうよみんなで、勿論和希さんも。」
これは初めてのお誘いだった。
「………いや、行きたいところもあるし、遠慮しとく。」
そう言って帰宅の準備を整えると、和希は学校を出た。


楓の家、澤宮家は市尾家から徒歩十分という歩きには少し遠いが車で行くには少し近すぎる気もする、そんな中途半端な距離にある。
和喜と楓が付き合いだしたのは今の学校に進学する少し前のことで、それから二年間性的なものも含めて交際していた、その間和喜は頻繁に澤宮家まで歩いて行っていた。
それを機に澤宮家と市尾家は親しくなった。
両親も兄弟も公認の仲、しかしその関係が消失すると、澤宮家は市尾家とほとんど交流が無くなった、親しくなった理由を思えば仕方のないことかもしれない。
そして和希は、その交流もなくなった澤宮家に向かっていた。
自分なりに、楓に向き合うためには来る必要があると思ったからだった。
家の前に来た和希は、すぐに目当ての女性の姿を見つけることができた。
楓は庭先でぼんやり空を眺めていた。目には泣きはらした跡があり、空を眺める目にも生気は薄い。この状態を和希も想定しなかったわけではないが、予想よりひどい。
「かえで。」
思考するより先に声が出た、振り向いた楓の目つきに哀愁を感じる。
「会いたかった、会えてよかったよ。」
「なに? またひどい目会いたいの!? なんで私の家に来るのよ!」
明らかに動揺して虚勢を張る、脅しだけでする気がないのが見て取れる。
その彼女の反応を気にせず、
「お前の部屋、入っていいか?」
と言って、あっさりと澤宮亭に侵入、許可も得られないまま楓の部屋に入ると、彼女の持っていた数冊のアルバムを確認し、そこから「市尾和喜」の写った写真を一枚も残さず抜き取ってゴムで束ねた。その数百と九枚。
「小父さんのライター借りるぞ。」
ベランダの灰皿近くに置かれていたライターを拝借すると、庭に置いた写真の束に点火した。最初は焦げ目がつき、少し経つとジリジリ写真が燃えていく。
「ちょっ! えっ!? 貴方一体何してるのよ!! 止めてよ!!」
写真を火から救出しようと楓がとびかかるが、和希はそれを止めた、力はどうやら互角か背の高い和希が若干上回るようだ。犯されたときは罪悪感があったから抵抗しなかったが。
「いい加減。昔の男を吹っ切れ、お前の『カズ君』はもういない。いるのはお前の目の前にいる市尾和希だ、前を向け、学校に戻って来い。」
「居なくした張本人が何都合いいこと言ってるのよ! お願いだから火を消してよ! カズ君がほんとにいなくなっちゃう!!」
パチン!
しならせた和希の尻尾が、綺麗に楓の顔面を捉えた。クリーンヒットだ。
「いないんだよ、さっきそう言っただろうが。」
言いたいことを言ってやる、そのために和希はこの家に来たのだ。最初は何か目的が違ったような気がしないでもないが、今の和希にとって一番重要なのはそのことだった。
「楓、勝手だと思うが良く聞け! 俺はお前が好きだと今でも思ってる。そして、お前がいつまでも俺のことで鬱々としてるせいで人生台無しにしてほしくない!」
その言葉に楓は和希の顔を真剣に見つめてから、
ゴッ
脛を思いっきり蹴っていた。
「ホンッットに勝手なんだから! カズ君っていつもそうだよね、休みの日に会いに来たと思ったらいきなり『したい』とか言い出して押し倒すし! 私の気も考えずに後ろから飛びついて来たり! 私の迷惑考えてよ!! もう、大っ嫌い!!!」
ひとしきり怒鳴った楓は今はもうしっかり燃えている写真の束を一瞥して、
「これもいらない! 燃えればいいのよこんな記憶!!」
そう言いながら、新聞紙を丸めて火にくべた。
そして今度は携帯を取り出すと、何やら操作を始める。恐らく、「カズ君」フォルダを全消去しているのだろう、力いっぱいカズ君のことを忘れ去ろうとしているようだ。
少し待って操作が終わると、またその携帯をポケットにしまう。
「あーすっきりした、有難うね、和希さん。」
半ば以上ブチ切れた楓が勝手にやったことだが、いつもの調子を取り戻してくれたようで何よりだ。
「……最初からわかってたんだよね、自分がみっともないのは。八つ当たりして、いなくなった彼氏の思い出にすがって家に引きこもって。現実も受け入れずに勝手なことばっかり。」
「……そうか、じゃあ、学校に来いよ。お前が俺レイプしたことは黙ってるから、関係疑ってるやつはいてもお前が犯人って確定してるわけじゃない。」
「そっか、気を遣ってくれたんだね、ありがと。」
礼には及ばない。と言って和希が帰宅しようとすると、その腕に楓の尻尾が絡み付いていた、しっかり巻き付いて、力を入れてもびくともしない。
「おい、これは何の冗談だ?」
「いやぁ、何が言いたいのかくらいわかるんでしょ?」
分かっている、楓が帰宅しようとした和喜の腕に尻尾を絡みつけるのは求めているサインというのが二人の間でのお決まりだった、だが今は和希だ。
行為に及ぶことができる関係ではない。
「わかった上で言ってる意味が理解できないから聞いてるんだよ。」
「決まってるじゃん、しようよ、私の部屋でさ。」
そう言って楓は和希の体にしな垂れかかってくる、その瞬間和希の体の芯が熱くなった。
この程度の接触が原因で発情するとはさすがに思えない、ということは、
「お前……拒否権の行使は許さないのかよ。」
魅了の魔法だ、正確に予想するなら恐らく魅了ではなく発情の魔法、和希を強引に発情させ自分との情事に引き込もうという考えだろう。
陰唇が徐々に濡れ、膝が震えて立っていることすら難しくなってくる。
その和希の状態をしっかり寄りかかって確認すると、楓は和希を家の中に引きずり、階段を上がって部屋まで連れ込むと手早く服を剥ぎ取り、ベッドの上に押し倒した。
「じゃ、楽しもうか♪ いっぱいよがってくれていいんだよ?」
そう言って楓は和希のアヌスに人差し指と中指を突っ込む。
「んひゃぅっ!!?」
以前凌辱を受けてから、頻繁に疼いていた菊門を使って和希は幾度となく自慰に及んでいた、その結果彼女のアヌスはもう性器と考えて差し支えないほどこなれ、発情していれば少しの刺激で快感を覚えるほど開発済みだった。
「あらら、よっぽど使い込んだみたいだね、男の人としたのかな?」
指で門を広げ、空気を混ぜ込むように腸壁をこね回しつつ楓が口を開く。
「してねぇよ」
「じゃあオナニー? 一回でこんなに馴れると思えないしきっとほぼ毎日だよね? 何を使ってやってたの? アナルパール? ディルドー?」
恥ずかしげもなく淫具の名前を口にして和希に質問してくる、普通はこんなもの女子同士でもする会話ではなかろう。和希が答えずに黙っていると、
「わかった、両方だ!」
「んなわけねぇよパールだけだよ!!」
思わず叫んでしまってから、ハッと気づいて口を塞いでは見たものの出てしまった言葉はもう口には帰ってこない、楓の笑顔を見るに、どうやら誘導尋問だったらしい。
「へぇ、アナルパール使って毎日お尻を開発してたんだ、道理でこんなにエッチなお尻の穴してるはずよね、こんなにすっぽり私の指飲み込んで。」
そう言いながら、楓の指はまるでどこが弱いのか知り尽くしているとでも言いたげに和喜の敏感な、特に開発された窄まりを苛める。
ぬぢゅぢゅぢゅぢゅっぬるん、ぐりぐりぐりっ
「くぁあ、ひぃいいぅっひんっ!」
優しく愛情を持っているかのような、しかし的確な責めが気持ち良くてたまらず、和希ははしたない声を上げてトロけた顔を晒した、滑りを良くして更に快感を得るために腸液が分泌され、陰唇にも愛液がにじむ。
ぐぢゅぬぷぬぷずぶっ ぐりぐりぬちぬちにゅるぅううっ
指が暴れるたび菊門からは絶え間なく卑猥な音が鳴り、和希の口から喘ぎが漏れる。
体が勝手に反応し、気づけばベッドの上で丸くなり、楓に尻を向けた姿勢でベッドのシーツを握りしめている。
ぬぽんっ!
「はふぅっ!?」
いきなり指が引っこ抜かれ、和希が奇妙な声を上げる。
「おわ………終わった…ぁ?」
口から悩ましい息を漏らしながら、和希が後ろを見ると、そこには秘部に何かを突っ込んでいる楓がいた。
それだけならまだ、和希はこの凌辱の終わりが見えたと安堵しただろう、しかしその姿を見た瞬間、和希はまだ本番ですらなかったのだと理解した。
楓が股間に突っ込んでいた何かは、明らかに前方に出っ張りすぎている、その出っ張った部分は間違いなく男性器を模していた、見慣れた形だからすぐわかる。
「終わってなんかないの。これからが本番だよぉ 力、抜いてね?」
楓はそう言って和希の腰を抑え込み尻尾を絡みつけて拘束すると、和希の秘部に張りぼての先端を押し付け、そのまま奥まで挿入した。
ずぶぶぶぶぶぶちずぷうううっ こつん
「はぐっ!? んひぃあっぅうううう――――――――――っ!!!」
それだけで、和希は脳天まで貫かれたような快感に身をよじらせる。
ずるぅっずぷぷぷぷぷっ ずぢゅん!
ゆっくりと引き抜かれていき、そしてもう一度一気に奥まで入り込む。その瞬間「カチ」という小さなスイッチを押したような音を確かに和希は聞いた。
(え……今カチって、何だよそ)
ヴイィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイン
疑問が口に出るよりずっと早く、膣に深々と侵入したバイブが猛烈な振動を始めた、
「ひっぎぃ―――――――――――――――っ!!!」
「あはっ♪ きたきたきたきたキタ―――――――――――――――っ!!」
内部で暴れられ性感帯をがむしゃらに刺激される快感に悶える和希とそれすら楽しむ楓。
対照的な二人の反応が女性として、魔物としての性体験の大きな違いを如実に物語っている、経験豊富な楓に楽しむ余裕があるのも決しておかしなことではない。
「んあぁあああっあ゙っアッ ひゃめっらめぇええ!!」
激しく膣内をかき回され、もし先端が子宮口に触れようものなら内臓まで犯されているかのような錯覚を受ける痛烈な衝撃が脳天に突き刺さる
「うふふ、可愛いなぁ和希さん。こんなにガクガク震えてやらしいお汁を一杯出して、そんなにかわいい反応してると、無茶苦茶にしちゃうよ……」
そう言った楓は、腰を前後に振り始めた。肌と肌がぶつかって手拍子のような音が鳴るたび、和希の口からは一際大きな喘ぎ声が漏れる。
それだけに飽き足らず、興奮した楓は和希の体を抱きしめるように組み付き、胸を揉みながらさらに唇も奪う、舌を突っ込み、和希の舌に絡めて唾液を交換する。
「んちゅ……チュ……れる…ちゅぱ…」
くりくりきゅむきゅむ
ずっちゅづっぢゅぶぢゅぬじゅ
子宮を突き上げられ、舌を絡められ、小ぶりな胸を苛められる。
全身を快感に覆われ、耐えきれない和希の体にとうとう快感の限界がやってきた。体中が小刻みに震え、しがみつくように楓の体に抱きつく。
「イクッ!! くるうっ!! でかいのが来るっ!!!」
「うんっ! 私もイクッ! 二人で一緒にっ!」
その言葉に反応してか、それとも無意識か、二人はどちらともなくきつく抱きしめあうと、
「イッくゥ――――――――――――――――――――――ッ!!!!」
「ふひゃぁあんっ! アンあんアんあ―――――――――――――――ッ!!!」
ほぼ同時に今までで一番激しい絶頂に至った。
「はぁ、最高……」
うっとりとそう呟いた楓は、バイブのスイッチを切って膣から引き抜く。
「元気でね、私の、一番大好きな友達。」
そう言って、絶頂のあまり意識の飛んだ和希の頬にキスをした。

澤宮楓が、遠くの魔界へ引っ越したのは、その二日後のことだった。
和希に最後に送られてきたメールには『もう会わないって思ってたのに、来るんだもん。思い出が欲しくなっちゃった。』と書いてあった。

12/06/04 23:36更新 / なるつき
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■作者メッセージ
ブレーキ踏んだのかな?
アクセルを離したのかな?
これがなるつきの臨界です、安全運転が信条の男なので。

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