読切小説
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トランプルド・アンダー・フット
 一口に冒険者といっても、実際の所その生態には多数のバリエーションが存在する。
 堅実な労働を嫌い、国から国へと渡り歩き、必要に応じて現金と引換に自らの武力を振るうレザのような生き方は、冒険者たちの中でもかなり「傭兵」に近いものだった。
 冒険者といえば自由な旅人というイメージが定着しているが、レザには遺跡を盗掘するスキルや骨董品の価値を見極める眼など、冒険の旅の中で金を稼ぐ能力が欠けていた。できることといえば剣を振り回して闘うことぐらいで、その技能を活かせる、則ち武力が求められている戦場や内戦地なんかを回っては日銭を稼ぐ、根無し草の如き暮らしをずっと続けていた。
 そんな彼がある日、旅の途中で田舎の小さな町を訪れた。
 特に見るべきものもない僻地のこと、少し身体を休めたら出発し、新たな戦場へ自分を売りに行こうとしていたレザだったが、宿の主人から一儲けできそうな話を聞いてしまった。
 主人曰く、このごろ村の近くの森にダークエルフが一人出没しているとのこと。
 特に人的・物的被害は出ていないらしかったが、主神教団の教えを信じている宿の主人はレザの素性を知ると、金ならいくらでも払うからあの恐ろしい魔物を追い払ってくれと言い出した。
 金はいくらあってもありすぎるということが無い。とりあえず様子を見て、倒せそうならサクッと片付けて礼金がっぽり、無理そうなら適当にごまかしてトンズラここうかと、そんな気分で彼は森へ向かった。
 村を出て少し歩くとすぐ森にたどり着く。暗くなってくると危ないので、あまり深くまで入らないようにしながら様子を見る。
 しばらく、森の外へ出る道だけは確保しながら適当に散策していると茂みの向こうから音がする。剣の柄に手を掛けて半身になると、果たして褐色の肌の美女が現れた。
 微かに緑がかった長い銀髪や血のように真っ赤な瞳、なにより尖った耳が特徴的なサキュバス、ダークエルフである。
 片手に長い鞭を携え、露出度の高い革ボンテージ服を身につけたその女は値踏みするような眼で森への侵入者たるレザを見ている。上半身には、乳房を半分程度しか隠さず、たわわに実った巨乳の横乳や下乳を大胆に露出している、まさしく痴女と言うべき衣装をまとい、その下にはショートパンツのような形で、更に紐で結われた隙間から肌を魅せる、やはり露出過多な服を履いている。
 体幹がそんな有様なのに、両腕には二の腕半ばまで届く長い手袋をつけ、脚には膝下までのブーツを履いている。
 隠さねばならないところを晒し隠す必要の無いところを隠す背徳的なファッションはレザの思考力を一瞬奪い、彼の眼を釘付けにした。
 露出狂めいた美女の出現で呆けかけたレザはなんとか自分を取り戻し、剣を構えてダークエルフを見据えた。自身に見惚れる男の視線を嬉しげに浴びていた彼女は、闘志を向けられると途端に不機嫌そうになった。
 目鼻立ちの整った、いかにもエルフらしい鋭い美貌が、口をへの字に曲げるという稚気に溢れた表情のせいでどこまでも可愛らしくなる。誘惑されそうなのをこらえながら言った。

「最近ここに来たっていう魔物は……あんたのことだな?」
「ええそうよ、人間さん。私はダークエルフのヘルシェ。何か御用?」
「なに、大したことじゃねえよ。……ちょっと手合わせを、な!」

 相手は魔物、下手に長引かせてはどんな妖術を使われるか分かったものではない。一気に攻勢を掛けて反撃の芽を摘み、制する。もしそれが不可能なら速やかに離脱。金次第でどうとでも動く冒険者らしいプランを胸に、レザは突っ込んでいった。


 そして次の瞬間、剣を一振りする間も無くレザは敗北し、革ベルトで背中側に回された両手首を拘束され、地面に仰向けに突き倒されていた。
 戦闘することすら叶わなかった彼の醜態を冷たい表情のヘルシェが見下ろす。トントンと右のつま先で地面を叩き、問いかけた。

「やれやれ。『手合わせ』ですって? その程度の技量で、よく言ったものね。人間の中じゃあ、まあまあやる方なんだろうけど……魔物相手にそんなの、通用するはず無いじゃない」

 それなりに死線と修羅場をくぐって来たレザにとって、こうまで圧倒的な、言い訳のしようもないほど徹底的な敗北は耐え難いものであり、歯を食いしばって顔を背けてみても屈辱感で死にたいくらいだった。
 そんな彼の様子をじっと見ながら、ヘルシェと名乗ったダークエルフはゆっくり、魅せつけるように右のブーツを脱ぐ。余計な肉も脂肪も無い、細く均整のとれた生足を外気に晒し、獰猛に笑んだ。

「ダメよ、思い上がっちゃ。人間が私に勝てるなんて思っちゃダメ。それは傲慢なことなのよ……身の程知らずの男の子には、お仕置きしてあげる」

 侮られても蔑まれてもレザは抵抗できない。ヘルシェが器用にも、右足指だけで彼のズボンと下着を引きずり降ろし、男性器を外へ取り出したからだ。

「おま、何やって……」
「オシオキ、よ。私の足で、嬲ってあげる」

 萎え切った彼のものを、ヘルシェは優しく踏みつける。軽く力を掛けたまま前後に振り竿を足裏で扱くと、持ち主の意志に反して海綿体が充血し、抑えつける美脚を跳ね飛ばさん勢いで勃起した。

「あらら。節操なしのおちんぽねえ。ちょっと踏まれただけで、もうこんなに硬くしちゃって。これじゃオシオキにならないじゃない」
「だ、黙れ! 離せよ、この……!」
「イヤよ。なんで私が、負け犬の言うことを聞かなきゃならないの。敗者は敗者らしく、踏まれて悶えてなさいな」

 踏むと言いつつもヘルシェはあまり体重を掛けてこず、男性器が潰される痛みはあまり無かった。代わりに彼女は足の指を器用に使って竿を扱き、親指で裏筋をなぞり指の股でカリ首を挟んでいじめ始めた。
 足コキの快感など、普通のセックスは疎か、手コキにも劣るはずである。にもかかわらず、ちょっと踏みつけて男性器を荒々しく刺激し、見た目以上に滑らかな土踏まずでグリグリしただけでレザを激しく勃起させ得たのは、偏に種族の力、彼女が生まれ持った、ダークエルフ特有の技能によるものである。
 今まさに蹂躙されているレザはそのことを知らない。生まれて初めて女性に踏みつけられ、何故自分が勃起してしまっているのか理解できずに戸惑うばかりだ。

「ほら、もう透明なのが出てきた。感じてるのね。乱暴にされて、足で踏まれて、こんなに興奮して……変態さんね」
「感じてる、わけないだろ……! 痛いんだよ、退け、離せよ!」
「痛いのに勃起してるの? それじゃあやっぱり変態じゃない。縛られて踏まれて痛くされて、こんなにカウパー漏らして……ド変態ね。恥ずかしくないの」
「うるさい黙れ、俺は、俺はそんな……」
「勃起させながら凄まれても、みっともないだけよ。……ほら、私の足裏がもうこんなにベトベト。
このおちんぽ、私の脚をおまんこと勘違いしてるの? お馬鹿さんなのね。脚と子宮の区別もつかないで種付けしようとするなんて」

 軽く持ち上げられた足裏と鈴口の間に細い粘液の糸が引いて、レザの欲情をまざまざと示す。
 片足だけでいかにも投げやりに竿を扱かれて、何故気持ちよくなってしまうのか彼は理解できない。自分で抜く時よりも遥かに粗雑な刺激の筈なのに、射精感がもう抑えられなくなってきているのだ。
 こんなふうに足蹴にされて弄ばれて、挙句の果てに絶頂してしまっては彼の敗北は拭いがたいほど決定的なものとなり、自尊心は大いに傷がつくことだろう。
 自我の危機を本能的に感じ取ったレザはなんとかいくのを耐えようとしたが、そんな儚い忍耐すらダークエルフは見透かす。

「ねえ、そろそろ出ちゃいそうなんじゃない? おちんちんが、私の足の下でピクピク言ってるわよ」
「な、わけねえだろ……この、サド女が」
「へぇー、そう。だったらこんなコトしても、大丈夫よねぇ」

 ヘルシェが足の動きを早めて白濁を搾り取ろうとしてくる。唇を噛んで耐えようとしたレザを嘲笑い、絶え間なく先走りを漏らし続ける尿道口を親指で踏みつける。
 敏感な亀頭を指と指の股で責められて、あっさり彼は屈服した。

「く……!」
「ほら、やっぱり。こんなに一杯射精して……これであなたは、マゾで足フェチで早漏の変態に決定ね。ふふふっ」
「あ……く、そ……」

 彼自身、信じられないほど大量の精液が噴き出ている。足だけでこんなに搾られてしまったという現実を上手く認識できない。
 褐色の綺麗なふくらはぎを精液で汚されて、やけに上機嫌なヘルシェが言う。

「こんなにたくさんの精液、きっと女の人の子宮に出されてたら一発で妊娠させられたでしょうね……あーあ、もったいない。
 でも、しょうがないわよね。踏まれて馬鹿にされて、そうでないと勃起できない真性マゾなんだものね。
 ほら、鳴いてみなさいよ。Mなあなたの情けない喘ぎ声を、もっと私に聞かせなさい」

 言葉で嬲りながら、ヘルシェは責める足を緩めない。尿道に残ったザーメンも一滴残らず踏んで搾り出して、そうして彼の男性器にダークエルフの足の味を覚えこませようとするかのように、執拗に土踏まずで竿を扱き上げる。
 射精が終わってもまだ足コキをされ続けて、レザの腰辺りとヘルシェの足裏がドロドロになってやっと、彼は解放された。

「ふう。なかなか楽しかったわね。今日のところはこれくらいにしてあげるから、もうおイタしちゃダメよ」

 屈辱に震えるレザを放って、ヘルシェは森の奥へ消えていった。



 足で射精させられたレザは男としての誇りを完膚なきまでに叩き折られた。
 この屈辱を雪ぐには憎きあのダークエルフを打ち倒すしか無い。彼は当初の予定を変更し、ヘルシェを打倒できるまでこの村に留まることにした。
 魔物を倒せなかったことを知ると宿の主人はあからさまに残念そうな顔をしたが、勝てるまでどこへもいかないと伝えると大変喜び、宿代を割り引いてくれた。 彼としても金は節約したいところだったので、これはまさしく渡りに船といったところだった。

 そして十数日後。冒険者仲間のツテを頼り、大枚をはたいて購入した魔術符を懐に、レザは再び森へ赴いた。
 しばらくうろつくと、前と同じようにヘルシェが現れる。名乗る義理も無く、レザは奇襲を掛けた。
 前回は剣による第一撃を凌がれ、そのまま敗北した。しかし今回は、呪言に反応して巨大な火球を飛ばす魔術符がある。経費はかなり掛かったが、あんな目にあわされて黙ったままで居る訳にはいかない。炎で怯ませ、一気に片付けようとした。

 そして次の瞬間、あっさりと火球を打ち消されたレザは敗北し、革ベルトで背中側に回された両手首を拘束され、地面に仰向けに突き倒されていた。

「エルフ相手に魔術勝負? 何考えてるのよあなた。勝てるわけないじゃない。バカバカしい」
「……うるせえ」

 言い返す声にも力が無い。彼には今から自分が何をされてしまうか、既に想像がついているのだから。

「まあ、別にどうでもいいわ。今日も遊んであげる」

 寝かされたレザの下へ歩み寄りブーツを脱いで、ヘルシェは膝立ちになった。この前とは違う、と彼が警戒した時、右脚を伸ばし膝裏と太股とふくらはぎで男性器を挟み込んだ。
 いわゆるアヒル座りのような体勢での膝裏コキ。適度に肉がついてむっちりした腿肉の感触が、萎えた竿を奮い立たせた。

「ちょっと挟んだだけで、もう硬くなるなんて。本当に脚が好きなのねえ。またすぐに射精しちゃうんでしょう?」

 言葉で嫐られても、もはやレザは反論できない。ただただ、綺麗で滑らかで柔らかい、いかにも女性らしく素晴らしい脚で辱められるしかない。
貪欲なダークエルフはされるがままの男を見て欲望を刺激されたか、脚を上手く操り、男性器を激しく責め始めた。
 ガチガチに勃起したものを捉えた大腿とふくらはぎは、乳房ほど柔らかくもなく手指ほど器用に動けるわけでもないが、それでも肉茎を捕まえて離さない。
 少しずつ漏れ出してきた我慢汁をひかがみとの間で馴染ませながら、膣の壁が男を貪る時のように足の脂肪が竿を搾る。膝裏の腱が貼りでたカリを下から上へ乱暴に撫でると、喘ぎ声を抑えきれない。

「ふふ。そんな可愛い声出して、誘ってるの? もっと気持ちよくして欲しいの? ねえ、変態ぼうや」
「……」
「返事してくれないの? 悲しいわね。それとも、膝コキがお気に召さない? 昨日みたいに、ぐりぐり踏まれる方が好き?」

 無反応を装って抗おうとしても、性器の反応は隠しようが無い。
 機嫌を伺うようなセリフを吐いてはいるが、実際のところヘルシェにはレザの好みに合わせてやるつもりなど無いのだということを、彼もちゃんと分かっていた。 この女は、レザの方を自分に合わせようとしているのだと。
 そう、分かっていたところでどうなるものでもない。モモとふくらはぎの間でムギュッと男性器を刺激され、手コキと同じ要領で上下に扱かれ、膝裏を含めた三点で絶え間なく性感を強制されていると、拘束されているいないにかかわらず逃れることができなくなる。

「ほら、ほらぁ! もう射精しちゃうんでしょう? せっかくの濃いぃ精液、私の膝に搾られて無駄にしちゃうんでしょう? 情けないイキ顔見せなさいよ……!」

 一対の腱が、コリコリした、骨とも肉とも異なる独特の感触でもって敏感な先端を責める。上側に位置する腱がカリ首を思い切り擦り上げ、カウパーに塗れた膝裏の薄肉が亀頭を包み込もうとした時、レザはまたあっさりダークエルフの美脚に屈した。
 脚で踏まれた時と劣らぬ量のザーメンがひかがみを汚し、更に十代少年のような勢いで太股、ふくらはぎまで白く染める。
 射精の間も構わずに脚を動かし続けるヘルシェが優しく微笑んでいるのを見て、慈悲を乞う言葉を思わず引っ込めた。
 精液を絞りとりながらも膝裏コキを続行したせいでベタベタになった脚を離し、拘束を解いてヘルシェは去っていった。前回に引き続きまたしても足で射精させられてしまったレザは、雪辱を果たすまで他に何もしないことを決心した。
 
 それ以来、彼は何度となくヘルシェに闘いを挑み、その度に負けて足でイかされていた。
 彼とて勝つための手段を考えなかったわけではない。夜襲を掛けてみたり、逆に真昼間に襲撃してみたり、村の方、樹の少ない辺りへおびき出してみたり、色々試行錯誤をしたが、どれも全く効果が無かった。
 所持金の大半をはたいて手に入れた、最近開発されたという『銃』なる、火薬で弾丸を飛ばす武器での狙撃も試したが、奇怪なことにあの柔らかい肌が鉄の弾を受け付けず、貫くことも許さず横へ反らしてしまって、結局傷ひとつ付けられなかった。
 大金を投じて手に入れた新兵器が全く通用せず、深く消沈したレザにヘルシェは言ったものだった。

「何、あれ? あんな下らないオモチャで、魔物を傷つけられると思っていたの? ちょっと私達のことを舐め過ぎね」

 そうして彼は、無為な敗北と被虐を重ね続けた。何度も何度も敗れ、その度に足で陵辱され、もはや彼には何のためヘルシェに闘いを挑んでいるのかすら、分からなくなり始めていた。

 何十回目の決闘の後。いつものごとく敗北したレザが地面に倒され、それをヘルシェが見下ろすといういつもの構図。普通ならここから、ダークエルフが男の服を剥いで足コキセックスに突入するのだが、今回は少し様子が違った。

「ねえ。どうして、負けると分かって何度も戦いに来るの?」
「それは、お前、決まってるだろう。お前を倒して、今までの恥を……」
「倒す、って言ってもねえ。もう散々やったし、どうあがいてもそれは無理なことなんだって、あなたもいい加減気づいてると思うんだけど」
「なんだよそれ……俺だって」
「あなたも子供じゃないんだし、『あきらめなければなんでもできる』だとか『がんばればできないことはない』なぁんて、言わないわよね」

 ヘルシェの言うことを理解できないわけではなかった。彼自身、それなりに長い人生を生きてくる上で幾つもの壁にぶつかってきたし、またその壁を他の人間がらくらくと乗り越えていく光景も見てきた。
 努力だけでは打ち破れない厚い障壁がこの世にたくさん存在することは知っていた。しかし今は、今だけはそれを認めるわけにはいかなかった。

「どうして勝てないと分かって、挑んできたの?」
「……勝てないと決まったわけじゃ、ないだろう」
「それは嘘よ。あなた、闘う人でしょう? 多分、身のこなしから言って傭兵か冒険者か、その辺だと思うけど……闘いに身を置いているなら、頑張りなんて幼稚な概念じゃ決して克服できない障害を、何度も見たことがあるはずよ」

 彼女の話を、その結論を認めるわけにはいかなかった。
 未だ彼の中で言語化されていない漠然とした欲求、一度それを明言されてしまえば、気の迷い、単なる妄念として打ち消すことができなくなってしまう。抑えこめなくなってしまう。認識してしまえば否定することも忘れることもできなくなってしまう。
 彼の悲痛な思いも知らぬ気に、やけにあっさりとヘルシェは言った。

「もしかしてあなた、私に踏まれたくて来てるんじゃない? 私の足で射精したくて、会いに来てくれているんじゃないの?」

 彼の中にあったぼんやりとした衝動に形が与えられた。今まで、ほんの気の迷いだとか負けがこんで精神が弱っているのだとか色々理由をつけて無視し続けてきた、誰にも明かせない暗い欲望。求めていた当人にあっさり看破されてしまって、レザの防衛機制は機能不全に陥った。
 咄嗟に否定しようとして、舌を噛みそうになった。

「ち、ち違う、俺はそんな、そんなつもりじゃ……!」
「あーらそう。残念ね。じゃあ、あなたとはこれでお別れ。私はまた別のところへ行って、まだ見ぬ奴隷さんを探すとするわ」

 ヘルシェがいなくなる、もう会えなくなるとそう聞いた瞬間、彼はもう我慢ならなくなった。なんとか自分の想いを押し隠して叫ぶが、きっとそれは無意味な努力だった。

「待て! 行くな、俺はお前を倒して……!」

 言い終えるより早くヘルシェの鞭が飛んできて、レザの両手首を縛り上げる。一瞬で戦闘不能へと追い込まれ青褪める彼に、ダークエルフがじっとりとした視線を向ける。

「『倒す』? こんな簡単に拘束されちゃって、どうやって倒すというの。出来もしないことを大声で言わないで。耳障りよ」

 絶望感と無力感に打ちひしがれたレザは俯いて膝を突いた。跪き、両手を胸元で縛り上げられたその姿勢は祈りを捧げる様にも似ていた。

「悲しい? でも大丈夫よ。あなたが一言、たった一言、『ヘルシェ様に踏まれたい』って言ってくれたら、私はそれを叶えてあげる。虚ろなあなたを永遠に満たしてあげる。
 さ、あなたの本当の気持ちを聞かせて。私のものになりたい? 私に踏まれて、幸せになりたい?」

 レザの理性は口を噤もうとした。しかし魔物の強烈な魅力に当てられた本能は理性と意志の軛を引き千切り、レザの口を通してその想いをぶちまけた。

「……なりたいです。ヘルシェ様、踏んでください、俺を……」

 半ば無意識的に発せられた言葉に、彼はさほど驚かなかった。本当に欲しているのは何か、既に心の底では理解できていたからだろう。
 隷従の誓いを聞いてダークエルフはこれまでに無い程晴れやかな笑顔を見せた。レザの手を縛る鞭を引っぱって彼を立たせると、喜色を隠し切れない様子で言った。

「ようやく素直になったわね。いい子いい子。じゃあ、早速私の家に……私達の家に、帰りましょうね」
 
 刑場へ引き立てられる死刑囚のように、レザはヘルシェに連れられて森の奥へ這入っていった。

 森の中心付近、林冠で太陽の光が遮られて薄暗い辺りにヘルシェの住居はあった。魔法で建設されたらしいそれは中に入ってみると見た目以上に広く、また快適だった。
 レザを連れて寝室へ向かったヘルシェは彼を立たせたまま、簡素なベッドへ腰を下ろした。脚を組み、フトモモの肉づきやふくらはぎの滑らかさを誇示して見せて、女王の如き風格と共に言う。

「……踏んで欲しそうね。もう我慢できない? 足に射精したくてたまらないかしら?
 でもまだダメよ。まず、私の足を舐めなさい。そうして私のものになるって、誓うの。一生私の奴隷として生き続けます、ってね」

 依然として手首を拘束されたままのレザは跪いて、眼前に差し出されたダークエルフの足に顔を寄せた。ブーツを履いて森を歩いてきた割りに、汗の臭いはさほど強くない。微かに香るヘルシェの足はとても良い味がしそうで、彼は躊躇いなく唇をつけた。
 足の甲にキスして薄い皮と硬い腱を舌でそっと舐める。水音を立てながらヘルシェの足を唾で汚していく。女の足を舐めることに一切の嫌悪を覚えないのは不思議でもなんでもなかった。
 ぺろぺろと垢を舐め取るように舌を動かしても、汚いものは全く出てこない。無心に足を舐めるレザを見て、ヘルシェがくつくつと笑っている。もっと彼女に喜んでもらいたくて、レザは更に顔を下げ、ヘルシェの足の親指を口に含んだ。

「そこまでしてくれるの? 本当にいい子ね。後でたくさん、ご褒美あげるからね……」

 咥えた足指の持ち主が身じろぎし、レザの頭を優しく撫でた。その、母が子を労るような、心を蕩かす甘い感触は彼のアイディンティティを砕き、全く別の何かへと作り替えていくようだった。
 指と指の股を一心不乱にしゃぶり続けていると、ヘルシェが足を引いた。両脚を広げ、唾でベトベトになった足をベッドの上で休ませる。主人のシーツが自分の唾液で汚れるのを見て、レザは嬉しいような申し訳ないような気分になった。

「いっぱい舐めたね。じゃあ、今度は奴隷さんの方を気持ちよくしてあげる。こっちへいらっしゃい」

 引っ張られるままにベッドへ上り背中を向け、ヘルシェの股の間へ腰を下ろす。後ろから抱きすくめられてズボンを脱がされ、背後、脇の下から美脚が二本伸び出てきたとき、彼は自分が何をされるのか悟った。

「さ、あなたの大好きなあんよですよ。たっぷり搾ってあげる。何にも出なくなるまで、止めてあげないわよ」

 上半身を抱きしめられて身動きが取れない状態で、一対の脚が左右からレザの男性器を挟み込んでくる。右側の土踏まずは彼自身の唾液で濡れており、それが潤滑液の役割を果たした。
 背中に大きな柔らかいおっぱいを押し付け、むにむにさせて形を変えながら両脚を器用に使って竿を擦り立てる。今までに無かった二種類の責めが激しすぎて思わず身体を反らすと、褐色の巨乳がより強く押し付けられた。

「可愛い反応しちゃって。足奴隷なのに、おっぱいにも興味あるの? 欲張りねぇ」

 ヘルシェの嘲笑が心地良い。浅ましさをどんなに笑われても、一対の足で乱暴に扱かれても、親指の付け根でカリ首をグリグリ刺激されても、苦痛も屈辱も感じない。ただただ、翻弄される快感に溺れるだけだ。
 自分がいつの間にこんな人間になってしまったのかレザには分からなかった。生まれつき自分の中に足への執着と被虐性向が眠っていたのかもしれないし、ダークエルフに調教されて無理やりフェティシズムを植え付けられたのかもしれない。
 しかしそんなことはどうでもよかった。今、彼はダークエルフのご主人様を愛し、その足を偏愛している、そのことが重要なのだ。愛しい足で愛撫してもらえるなら、他のことなどどうでも良かった。

「ほら、ほらぁ! 気持ちいい? 気持ちいいんでしょ! こんなに我慢汁ダラダラ流して、みっともないわねぇ!」
「は、あぁ、ヘル、シェ……」
「様をつけなさいよ、足フェチの変態さん!」
「ヘルシェ様! き、気持ちいい、です……!」
「そうなの。じゃあこれから毎日、一日に最低十回は足で射精させてあげる。私のことを悦ばせてくれたら、その分追加してあげる。
 だからもう、他のことなんか全部忘れて、私の足のことだけ考えていなさいね……」

 ヘルシェの言葉に抗えない。抗う理由も無い。男性器を足蹴にされて罵られて隷属させられて……自分の中からそれ以外の要素が残らず抜け落ちていくのを、レザは感じ取っていた。

「もう、だめ、出る……出させて下さい、ヘルシェ様……!」
「ん、どうぞ。濃くて臭い精子、思い切り出しなさい!」

 許可を貰うと同時にレザは絶頂した。
 両足で強く締め付けられた竿から断続的に精液が飛び出る。射精の勢いはザーメンがレザの顎にまで届くほどで、大量の精子は彼自身の上半身とヘルシェの足をべとべとに汚した。
 激しすぎる射精の最中も、ダークエルフは足を止めようとはしない。尿道に残った精液を搾る、などという程度に収まらない足コキ愛撫は明らかに二度目、三度目の絶頂を狙っている。

「ふふ。いっぱい出てる。でもまだまだよ。何も出なくなるまでするって、言ったわよねぇ……」

 射精が終わっても休むことを許されずに足で責められ続けるレザの心は幸福で満ちていた。



 その後。
 ヘルシェの奴隷となったレザはもうあの村には戻らなかった。森の奥、ご主人様の住居でずっと奉仕し続けていたのだ。
 今夜も彼は、女主人に求められるまま精液を捧げる。両手両足をベッドに縛り付けられて身動きを封じられ、騎乗位で犯されることだけ許された屈辱的な体勢で悶える。嗜虐趣味のダークエルフに跨られて、散々膣内で搾り取られて濃い精液を献上して、更に彼は求める。
 十何回目かの膣内射精の後、息も絶え絶えになりながら言った。

「な、あ、ヘルシェ様……中には、もう、いいでしょう? お願い、次は……」
「しょうがないわねえ。おまんこより足まんこのが好きなんだから、この変態さんは」

 ヘルシェは呆れ顔で立ち上がり、股から精液を垂れ流しながら、ベッドの上、少し離れた位置に座る。長くて細い両脚を伸ばし、土踏まずの間で度重なる膣内射精を経て未だ硬いままの男性器を左右から捕らえる。竿を少し強く締め付けると、尿道に残っていた精液が漏れ出た。

「でも、まあ。美味しい精液たくさん出してくれたし。ご褒美よ……今日もちゃんと、足でいかせてあげる。いきっぱなしにしてあげる……嬉しい?」
「はい、嬉しい、です、ヘルシェ様……!」

 ぐちゅぐちゅと音を立てて、ダークエルフの脚が精子と愛液に塗れた肉棒を扱き始める。
 誰と競う必要も無い、踏まれる快楽だけの世界。レザにとって此処は、紛れもなく楽園だった。
12/12/13 21:50更新 / ナシ・アジフ

■作者メッセージ
先日、大学でとても足の綺麗な女性を見かけました。
余分な肉の無い限りなく完全に近い両脚が私の視線を惹きつけすぎて、どんな顔の人なのかも分からないくらいでした。
顔が分からないことには素性も分かりません。あの女の人を再び見つける方法が無い事に私は落胆しましたが、しかし均整のとれた脚の上、胴体や顔を見なかったのはもしかしたら幸運なことだったかもしれないと、思い直しました。

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