連載小説
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後編
「おーい晶子、光里ちゃんが来てくれたぞ。いい加減出てこないかの?」
「……」
「おいしょーこ。どうしたんだ一体?悩みがあるなら相談に乗るぞ?」
「……」

あのデートから3日が経過した。
わたしは、学校が自由登校期間になったのを良い事に、自分の部屋にずっと引き籠っていた。
ベッドの上でボーっと寝転んで、時折大きな溜め息を吐いては、枕に顔を埋めながら後悔して泣いている、そんな事しかしてなかった。
何故かというと……なんか外に出たくなかったからだ。というか……ベッドの上から動く気力が湧かなかった。
ここ数日まともにご飯を食べてすらいない。そもそも食欲が湧かない。

「晶子、聞いておるのか?」
「しょーこ、聞こえていたら返事をしてくれ!」

何故こんな状態になっているか……答えは明白だった。
あのデートの日の最後、大場君と喧嘩別れをした事に後悔しているからだ。
いや、わたしが一方的に怒っていただけだ……喧嘩とは言わないか……

「反応無し……駄目じゃの……」
「仕方ないですね……」

あの時、わたしはたしかに怒っていた。
無茶をした事、あと少しで死にそうになった事、そして自分の命を軽視する発言に対して怒っていた。
困っている人を助けたい……その想いは尊敬できる。
でも……だからといって無茶なんかしてほしくなかった。
大場君が死んでしまったら……わたしはとても悲しいから……

「あまり乗り気はしませんが、あの方法を取る事にしましょう」
「そうじゃの……」

でも……わたしも感情的になり過ぎた。
大場君がやった事は決して褒められた事で無いにしろ、善意でやった事だ。
結果的には余計な事ではあったが、助けようと思ってやった事だったわけだ。
そこは褒めまではしなくても善意として考えるべきだったけど……あの時のわたしには出来なかった。

「それじゃやるかの」
「お願いします」

今回の事で、きっと大場君はもうわたしに会ってくれないだろう。
会ってくれたとしても、今回の事を謝りにきて、それっきりになってしまいそうだ……
それは嫌だ……けど、わたしが勝手に怒ってしまい、そしてその理由が理由なので、わたしから会いには行けなかった。
そもそもわたしは大場君がどこに住んでいるのか知らない……それもあって会いに行くことは不可能だった。

「はぁ……」
「どうしたしょーこ。悩みなら私に相談してみろ」
「ヒカリ……」

もうあの日から4桁は吐いてるんじゃないかと思う大きな溜め息を吐いた。
そしたら、ベッドの横に立っていたヒカリが相談に乗ってくれると言って……ん?

「…………って待って。なんでヒカリがここにいるの?」

今わたしがいるのは自分の部屋……しかも一人になりたかったから鍵も掛けておいたはず……どうして部屋の中に居るのだろうか?

「なんだ、わざわざ大きな声で会話していたのにそれすら気付かなかったのか。どうやら重症のようだな……」
「わたしが開けたんじゃよ。解錠魔術でな」
「お母様…………ごめんなさい……」

どうやらお母様が魔力を使って勝手に鍵を開けたらしい……勝手な事をとちょっとムカっとしたが、心配そうな顔をしている二人を見たら申し訳なさが上回った。

「じゃあ後は若い者同士での。わたしは次の黒ミサの準備をしないといけないからの」
「わかりました。ありがとうございます」

そのままお母様は部屋を出て、ヒカリだけが残った。

「さて……法子お姉ちゃんから聞いたぞ。ここのところずっと引き籠りっぱなしらしいじゃないか」
「うん……なんかもう……何もする気が起きなくて……」

どうやらお母様から私が引き籠っている事を聞き、わたしを心配して、相談に乗ってくれるらしい……

「もしかして……大場にフラレたか?」
「ストレートに聞いてくるなぁ……まあそこがヒカリらしいけど……」
「う……ま、まあ私は遠回しに聞くのが嫌だからな」

ヒカリはわたしの幼馴染み……わたしが大場君に持っていた想いはお見通しだったのだろう。
相談してないのにいきなりそう聞いてくる事は疑問に思わなかった。

「それで……結局そうなのか?」
「ううん……半分正解だけど、半分違う……」
「どういう事だ?」
「実はね……」

相談に乗ってくれるというヒカリに、わたしはあの日の事を全て話した。

「……という事なの……」
「ふーむ……」

大場君がした無茶も、わたしが勝手に怒って殴った事も……全て隠さずに話した。

「大場君自身は良かれと思ってやったのはわかってるんだけどさ……わたしが身勝手過ぎるのもわかるけどさぁ……」
「な、泣くなしょーこ!落ち付け!!」

話し終えた後、わたしはまた涙が溢れてきた……

「だって……自分の命なんてたいした事ないって言うんだよ!?そんな事言わないでよって思うじゃんかぁ……」
「わ、わかったから落ち着け!」
「うん……」

あの大場君の一言は、わたしは未だに許せなかった。
自分の好きな人がその人自身を大切にしていないなんて……怒らないわけがない。

「落ち着いたか?」
「ひくっ……一応ね……」
「そうか……そうだな……」

わたしが泣きやんだ後、ヒカリは少し何かを考えて……

「……よし、大場をもう一発殴りに行こう」
「……待った。何故そうなったの?」

いきなり物騒な事を言い始めた。
そのせいで涙が全てどこかに飛んで行ったようだ。

「ハッキリ言おう。私はしょーこ贔屓だ」
「いやそれは……」
「それにだ。あいつは怒られて当然の事をしたんだ。贔屓を無くしたとしてもしょーこは正しいと思うぞ」
「……」

どうやらヒカリはわたしの行動に納得しているようだ。
あまり見せた事のない怒り顔をしている程、ヒカリも大場君に怒っているようだ。

「で、だ。私としてはもう大場の事なぞ忘れてしまえと言いたいのだが……」

そんなヒカリは、もう大場君の事なんか忘れてしまえと言ってきたけど……わたしにはそんな事出来そうにも無かった。
だって……

「……ごめん……それでもわたしは大場君が好き……」
「……はぁ……だと思ったよ……」

わたしは……まだ大場君の事が好きなのだから。

「好きだけど……知らないって言っちゃったから……あっちはもうわたしの事どうでもいいと思ってるかも……」
「さあな。私はあれっきり大場とは会ってないから、あいつがどんな奴か知らないからどうとも言えない」
「うん、わかってる」

だからこそ、わたしは自分の発言に、自分が怒って大場君を殴った事に後悔しているのだ……

「まあでも、これから全く会わないでいるなんて無理だからな」
「え?」
「え?って……大学は同じだから嫌でも顔を合わせるだろ」
「そっか……大学一緒だもんね……」

すっかり忘れていたが、わたしと大場君は同じ大学、しかも同じ学部だった。
つまり、ヒカリの言う通り、あと一月もすればいやでも顔を合わせざるをえないのだ。
でも逆にいえば、大場君から会いに来ない限りはあと一月の間は気持ちを整理する期間があるのだ。

「まあそれまでに気持ちを整理しておけばいいさ。やっぱり嫌気が差したのであれば金輪際あいつとは関わらなければいい。でもやっぱり好きなのであれば……私は全くオススメ出来ないが奴にもう一度チャンスを与えれば良い。話し合いなり殴り合いなりでな」
「……うん……」

わたしがこれからどうすればいいか……なんとなくだけどわかった気がする。

「ありがとヒカリ……なんだか元気が湧いてきた」
「それはよかった。暗いしょーこなんぞ見たくないからな」
「わたし、もう少し落ち着いたら大場君と話し合ってみるよ」
「……しょーこがそれでいいならそうするといい……」

ヒカリの言う通り、気持ちを整理させてから、もう一度大場君と話し合おうと思う。

「しかししょーこよ……あいつを殴らなくていいのか?」
「いや、流石に殴るのは……もう既に殴ってるわけだし……」
「そうか……私なら迷わず殴る。おそらく次あいつに会った時は迷わず殴りに掛かると思うぞ?それほど私はあいつに怒ってる」
「うう〜ん……その時はわたしが全力で止めるよ……話がこじれても嫌だからね……」

なんだかさっきまでの鬱が嘘みたいに晴れていく……ヒカリと相談出来て良かった。
まだ大場君に会って何を話せばいいのかとか、考えないといけない事は多いけど……それでも気の沈みはほとんど解消できた。

「あーなんか相談してサッパリしたらお腹空いてきたよ……今から何か食べに行く?」
「ああいいぞ。ほとんどご飯も食べていなかったようだし、食事ついでにケーキバイキングにでも行くか?」
「え?そんなの近場にあるの?」
「自転車で30分だから近いって程近場ではないがな。体力的には大丈夫か?」
「んーまあ……ゆっくりとなら多分辿り着けるかなと。それじゃあ行こうか」
「ああ。でもその前に法子お姉ちゃんにもう大丈夫だって言っておくんだな」
「そうだね。ところでヒカリ、未だにお母様の事を『法子お姉ちゃん』だなんて呼んでるの?あれって小さい頃ヒカリがお母様の事をオバサンって言ってそれに怒ったお母様が強制的にそう言わせたのが始まりでしょ?もうわたしのオバサンだって自覚したみたいだからそれでもきっと気にしないのに……」
「昔からの癖だ。今更オバサンとかしょーこの母上とか呼んでも違和感しかない」
「そう……ま、それならいいや。お母様に言ってから早速行こう!」

その為かわたしの身体はいきなり正常になり、お腹が急に空いてきた。
気分もほとんど晴れた事だし、わたしはいつものようにくだらない話をヒカリとしながらケーキバイキングに向かったのであった……



====================



「卒業証書授与……」

それから更に日は経って、今日は高校の卒業式。
長いようで短い式だけど、とても大事な行事。
三年間通い続けた高校や皆とお別れなのはちょっぴり寂しいけど、一生会えないわけではないから泣く事は無かった。

ちなみに……あれからわたしは一度も大場君に会う事なく、今日の卒業式に臨んでいた。


「……八木晶子」
「はいっ!」





わたしの中であの日の事に整理がついたのかと問われると……正直まだ微妙だ。
悩んだ結果、大場君の事が好きで、怒り過ぎたと言いたいと思った。だけど、大場君を許せない自分もたしかに居る。
そりゃあそうだ。わたしは大場君の事好きなのに、大場君自身が自分の命はどうでもいいみたいな事を言ったのだから、怒って当然だ。
好きだからこそ、その言葉にわたしは怒りを覚えていた。
でも……やっぱりそれ以上に大場君の事が好きで今すぐにでも会いたいと思う自分も居て……どうすればいいかわからなくなっていた。

「卒業証書、八木晶子。以下同文……」

卒業証書をきちんと受け取りながらも、わたしの頭の半分以上は大場君の事でいっぱいだった……



……………………



「さて……この学校は3年になる時クラス替えが無いから2年間ずっと一緒だったが、今日で皆ともお別れだな……先生寂しいよ」
「先生も早く旦那さん見つかると良いですね」
「言うな……実は狙っている男子、この中に居るからな。敢えて誰とは言わんが、インキュバスじゃない奴は校門出た瞬間覚悟しておけよ!」
「はははっ!選択肢少ねえ!」
「まあそれはおいといて……それでは最後の号令、学級委員よろしく!」
「起立!礼!いままでありがとうございました!!」
『ありがとうございました!!』
「おう!皆も達者でな!!後期受ける奴は補習を受けに来いよ!」

寂しさや涙なんか微塵も感じさせない賑やかなホームルームも終わり、下校時間となった。
笑顔で教室を出ていったオーガの担任を見送った後、教室内はまたざわめいてきた。

「はぁ〜、今日でもう卒業か……お前らとも毎日は会わなくなるわけか」
「まあ前期で合格してなかったら補習を受けに行く事になるけどな。そこで3人とも顔合わせたりして」
「ちょ、怖い事言うなよな!つーか俺と有吉は同じとこ受けてるから無事合格したらまた顔も合わせるだろ?」
「俺お前ほど頭良くねえから自信ねえよ……センターの点数もエリカと比べて相当低かったしな……」
「そりゃお前藤木さんはこの学校でも上位だぜ?お前に合わせて自分のレベルより低いとこ受けてもらってるんだからお前が頑張らねえと」
「そうだけどさ〜……」

わたしの席の近くに居た有吉昴(ありよしすばる)君、四阿流二(あづまりゅうじ)君、笹木烈哉(ささきれつや)君のインキュバス3人組が自然と喋り始めた。
3人とも元々は人間だったが、それぞれサキュバス属の彼女が出来で卒業までには立派にインキュバスになった。
わたしも全員何度か話をした事あるし、サバトに勧誘した事もある。皆サバトには入ってくれなかったが、彼女を大切にしている良い人達だ。

「スバル、なんかあたしの名前が聞こえた気がするんだけど……」
「あー気にすんなエリカ、男同士でちょっとした話をしていただけだ」
「ふ〜ん。あ、あたし今から生徒会室に行って後輩達に会いに行くことになってるからさ、帰らないで待っててよね」
「ん、わかった」
「あ、俺も行かねえと。もう少しだけ話をしたら向かうわ」
「わかった。でも笹木君、早くしないと天野さん怒るかもしれないからほどほどにね」

有吉君の彼女であるアリスの藤木愛里花(ふじきえりか)さんが話に割り込み、有吉君にそう伝えて出ていった。
藤木さんも、ついでに笹木君もヒカリと同じく元生徒会の一員だ。今日はホームルームの後で後輩にプレゼントを渡しに行くとヒカリが言っていたし、その招集だろう。

「しかし有吉は良いよな……同じ学校、しかも同じクラスに彼女がいるなんてさ……しかもしっかり者っていう……」
「まあな。精神的にもそこは大いに助かったよ」
「羨ましかったぜコンニャロ!俺達は別の高校だもんな……そのせいでミキなんぞここのところ会う度に全身白濁まみれにしろって要求してくるし……つーか実行する破目になるし……」
「まだいいじゃねえか流二。お前の彼女は頭良いうえに元男……アルプだから引き際を理解してるっぽいしさ……こちとら勉強しないといけないのにレッサーからサキュバスになったからか以前より要求してくるんだぜ?自然と勉強時間も短くなるからサキの学力アップに苦労したもんだ」
「あ〜……なんつーかまあ俺達苦労してるよな……特に彼女を性的に満足させるためにさ。ちょっとずつ違うけど、皆サキュバスだしさ……言うなれば食事だしな」
「とか言いつつ自分の性欲も収まりつかねえんだろ?俺だってそうだしな」
「彼女に求められたら断れないのがインキュバスだしな!」

「……」

なんだかんだ惚気話になり始めた3人。
大場君への想いがある今、惚気話をこんな近くで聞かされて良い気分になるわけが無い。

「しょーこ様!サバトの後輩達に会いに行きましょうよ!」
「ん?ああもう1・2年生も終わった頃か……そうだね。そうしようか」

惚気話を聞く気は無いからどうしようかと考えていたら、同じクラスの魔女がわたしにそう声を掛けてくれた。
時間を見ると、たしかにそろそろ後輩達もサバト本部(という名の部室)に集まっている頃だろう……だから、買ったプレゼントを渡しに行こうと思う。

「私他のクラスに居る子達も呼んできます!」
「ん、よろしく。わたしは用意してあるプレゼントを準備したら直接向かうから」
「わかりました!」

ちなみにこの魔女はわたしが魔女に変えた元人間で、もちろんわたしのサバトに所属している。
元々は陰湿なイジメをしていたような最低な奴だったのだが、当時生徒会長だったヒカリが懲らしめた後わたしが魔女に変え、お兄ちゃんを見つけたらなんとも素直で可愛らしい娘に変わったものだ。

「さてと、それじゃあ行きますか……」

数日前に買ったプレゼントを持って、わたしは部室に向かい始めた……



………



……







「うえ〜んしょーこさま〜!!寂しいです〜!」
「しょーこ様なしでサバトを広げられる自信ないですよ〜!!」
「こらこら、しっかりしなさいって!あなた達が頑張らないと幼女の魅力は伝わらないのよ?」
「でも〜!!」

サバトのメンバーが全員集まった本部。
ガチ泣きしている後輩達を見て、わたし達卒業生は貰い泣きしている者と苦笑いしている者といた。
わたしは苦笑いしつつも、可愛い後輩達の涙に少し感動もしていた。

「わたしも黒ミサが近くなったら、出来る限りここに来るからさ」
「ホントですか〜!?絶対に来てくださいよ〜!!」
「はは……ほら、だから泣きやみなさいって。折角の可愛い顔が台無しよ?そんなんじゃお兄ちゃんも近寄らないわよ?」
「はい〜……ずぴーっ!」

本当に可愛い娘達……3学年で総勢19名、内訳としては魔女10人、それ以外の魔物5人、お兄ちゃん3人であとわたししか居ないけど、皆立派に科学と魔術となにより幼女を愛するしょーこサバトのメンバーだ。
わたし達の代が卒業するのでわたしと魔女3人とお兄ちゃん1人の5人が居なくなってしまうが、この娘達ならそれぐらいの人数すぐに集められると思う。

「そんな可愛い皆に、わたし達卒業生からプレゼントがあります!」
「私達卒業生って言ってもほとんどしょーこ様一人で考えたんだけどね。幼女組には可愛い折り畳み傘よ。まだお兄ちゃんが居ない子達はこの傘で可愛らしさをアピールしてお兄ちゃんゲットよ!」
「お兄ちゃん組はアルバムだ。これに可愛い妹のいろんな姿を保存するんだな!」
『ありがとうございます!!』

そんな後輩達に、わたし(とヒカリ)が選んだプレゼントを渡した。
一人一人、きちんと渡していく……皆良い笑顔で受け取ってくれている。

「実は私達からも先輩やしょーこ様にプレゼントがあります!」
「よくある花束ですが、そのままですと枯れてしまいますし、花粉症の方もおられるかもしれませんので、プリザーブドフラワーとなってます!」
「しょーこ様だけ特別に一回り大きいだけでなく山羊の可愛いぬいぐるみ付きです!」
「わああ!ありがとう皆!!」
「おお〜しょーこ様の笑顔だ!!」
「記念に写メ撮っておかないと!!」

後輩達からもプレゼントを貰った。綺麗なプリザーブドフラワーに小さく可愛いデフォルメした山羊のぬいぐるみが中央に飾られているものだ。
とても嬉しい……思わず笑みがこぼれてしまった。

「それじゃあ皆、次は3月の下旬、大体26から28日頃にお母様が黒ミサやるから一緒に参加よ。詳しい日時が決まったらまた全員にメールを送るからね」
『はいっ!』
「本当はお母様とは別にやるべきなんだろうけど、そこら辺は社会に出てこことは別に本部を作れるようになってからって事でお願いね。それじゃあわたしはもう帰るね」
『はいっ!ご卒業おめでとうございます!これからもよろしくお願いします!!』
「うん、よろしく。それじゃあまたね!」

部室に来てから結構時間が経過したし、そろそろヒカリの方も待っているかもしれないので、この場を後にする事にしたわたし。
サバトの皆の挨拶を聞きながら、荷物を取ってからヒカリと合流しようと一先ず教室に向かった。

「もうヒカリも終わったかな……」
「おーい八木ー!」
「ん?」

ヒカリの方も終わったのかなと考えながら教室に向かっていたら、後ろから呼び掛けられた。
振り向いてみると、可愛らしい黒翼蒼肌幼女……もといダークエンジェルの黒羽美琴(くろはみこと)さんがわたしに向かって飛んできていた。

「どうしたの黒羽さん?」
「天野の奴見なかったか?教室に居ないんだけど……」
「知らない。まだ生徒会室に居るんじゃないかな?後輩にプレゼントを贈るからって今日集めるって言ってたしさ」

どうやらヒカリに用があるらしいけど、ヒカリは教室にいなかったようだ。
ヒカリ……というかエンジェルの事を毛嫌いしてる黒羽さんの方からヒカリに用事とは珍しいなと思いつつ、とりあえず今居そうな場所を言ったのだが……

「いや、さっき村井と赤井のバカップルが二人で下校していくところを見たんだけどさ、その時今の生徒会長のエルフも近くに居たのを見掛けたからもう終わってると思うんだけど」
「えっそうなの?」
「その様子だと八木もわかってないようだね……」

どうやら既に生徒会の集まりは終わっているらしい。
一緒に帰る約束をしているから校外ではないと思うのだが……一体どこに居るのだろうか?

「まあいいや。じゃあ天野にこれ代わりに渡しておいて」
「これ……何?」
「この前美夜(みや)ちゃんが妹と一緒に下宿先まで遊びに来たんだけどさ、その時忘れていった美夜ちゃんのローター。なかなか取りに来ないから姉である天野に渡そうと思ってたんだよ」
「ああ、なるほど……黒羽さんヒカリの家知らないもんね……」
「そういう事」

とりあえずヒカリがどこに居るかわからないからと黒羽さんからローターを渡された。
どうしたのかと思えばどうやらヒカリの妹の美夜ちゃんが天野さんの家に遊びに行った時に忘れていったものらしい……美夜ちゃんはヒカリと違いダークエンジェルだからこれぐらい持ってるとは思うけど、まさかそんなものを学校で渡してくるとは……
いったいどんな『アソビ』をしていたのか気になるところだが……敢えて聞かないでおこう。

「おい黒羽!黒井のやつが探してたぞ!」
「わかった!ありがと小澤!!それじゃあ八木、また会う事があったらその時はよろしく!あと天野にそれ渡しておいてくれよ」
「あ、うん。わかった。じゃあ」

そのまま黒羽さんは親友のドワーフ、小澤梶子(こざわかじこ)さんに彼氏が探していると言われたので、そのまま彼氏に会いに行ってしまった。

「わたしもヒカリを探すか……」

再び一人になったわたしは、4組にヒカリが居ない事を確認してから荷物を持ってヒカリを探す事にしたのだった……



……………



………



……








「ん〜……もう外に居るのかなぁ……」

あれから10分程校内を探していたのだが、ヒカリは見当たらなかった。
教室内に居た藤木さんや笹木君が言うには、わたしが戻る数分前には終わっているので、トイレにでもいるのかと思ったがそうでもなかった。
校内は粗方探したし、考えられるのはもう外で待っている事ぐらいだ。

「下駄箱はっと……あーもうヒカリの靴無いや……」

とりあえずヒカリが使っていた下駄箱を見ると……既にそこにはヒカリの靴はなかった。
つまりもう外にいるという事なんだろう……普段は教室内で待っているというのに、いったいどうしたのだろうか?

「とりあえず外に行くか……」

でもこれでヒカリは外に居る事が確定したので、わたしも外に出る事にした。


「さて……ヒカリは何処に居るのかなっと……」

とりあえず校門のほうに行ってみて、いなかったらグラウンドの方を見に行こうとして、校門近くに来たのだが……

「……なんでノコノコと現れたのか聞いているんだ!!」
「それは……」

「……ん?」

わたしが校門の裏まで辿り着いた時、突然校門の外から怒鳴り声が聞こえてきた。
どう考えてもこの怒鳴り声の持ち主はヒカリだ……どうやら誰かを怒鳴りつけているらしい……いったい誰に?

「俺は…八木さんに会いに……」
「は?もう一度言ってみろ。お前が何をしに来たって?」

「……あれ?もしかして……」

ヒカリに怒鳴られている相手の声が少し聞こえてきたが……どこか聞き覚えのある男子の声だった。
というか、この声は聞き間違えようもない……けど、信じられないのでそっと校門の横から覗いてみると……

「だから俺は八木さんに会いに……」
「どの面下げてしょーこに会いに来たんだと言っているんだ!!大場、お前はしょーこを泣かせたんだぞ!!」

……やはり、そこには大場君がいた。
怒っているヒカリに胸倉を掴まれながら、暗い顔をしている大場君が立っていたのだ。

「私はお前に言ったはずだ。しょーこを悲しませたり不幸な目に合わせたら承知しないからな、と。お前は了承したはずだよな?」
「……ああ……」
「じゃあ何故お前はしょーこを悲しませた!?何故しょーこを泣かせたんだ!!」
「……ごめん……」
「ふざけるな!!私に謝っても意味は無いし私はお前を一生許しはしない!!」

以前言っていたように、今にでも大場君を殴りとばしそうなヒカリ……

「あの後しょーこはずっと部屋に引き籠って泣いていたんだぞ!お前が、しょーこを、悲しませたんだ!!」
「……」
「何か言い訳があるなら言ってみろ!!」
「いや……それは……」
「言い訳するな!!次何か言葉にしてみろ!お前の顔が変形するまで殴り続ける!!」
「ま、待ったヒカリ!!」

こっそり聞いていたらなんだかヒカリが段々と理不尽な事を言い始めたので、わたしは校門から飛び出してヒカリを止めに入った。

「八木さん……」
「止めるなしょーこ!私はこいつを最低1発以上は殴らないと気が済まない!!」
「落ち着きなさいって!!いつものヒカリらしくないわよ!!」

わたしが出てきた事でより申し訳なさそうな顔をしている大場君……
わたしも言いたい事はあるが、まずはヒカリを大場君から引き離す事に専念した。

「そうかもしれないが、それだけ私は大場に対して怒りを顕わにしているのだ!!」
「いいから!それにこれはわたしと大場君の問題でしょ?わたしの事を想っての行動だったら引いてよ」
「ぬ……しょーこがそう言うならまぁ……ちっ……」

なかなか掴んだ胸倉を離そうとしなかったヒカリだったが、なんとか言い包めて引き離した。
滅多にしない舌打ちなんかする程納得はしてないようだが、渋々後ろに下がってくれた。


「八木さん……その……」
「大場君」

ヒカリも下がったので、改めてわたしは大場君と向き合った。

「あのさ……あの時は怒り過ぎてごめん……大場君はあの女の子を助けたいと思って行動した事なのにさ……」

そして、何かを言おうとした大場君の言葉を遮って、まずはわたしから謝り……

「でもね、自分の命なんてたいした事ないとか言わないでよ。少なくともわたしは大場君が死んじゃったら……もう立ち直れないと思うからさ……」
「……」

わたしが怒った理由を、大場君に伝えた。

そして……大場君は一呼吸置いてから、口を開いて……

「八木さん……本当にごめん!」

土下座をする形で、わたしに謝った。

「俺さ、あの時なんで八木さんが怒ってたのか全然わかって無くてさ……ずっと考えてたんだ。でも、この前兄貴に言われたんだ……お前の正義感が強いところは良いが、無茶をし過ぎる事もあるから見ていてハラハラする事があるってさ……そう言われて、もしかして八木さんは俺なんかの事を心配して怒ったんじゃないかなって考えて、今日謝りに行くついでに理由を確かめようとしたんだけど……正解だったようだね」
「そう……そして今もだけどさ、俺なんかとか言わないでよ。大場君はそんな蔑む人じゃないよ。立派な人だよ!」

会わなかった間、どうしてわたしに怒られたのかを真剣に考えていたらしい……その事はちょっぴり嬉しくもあったが、自分を蔑む発言をまたしたので、またちょっとだけムカっとした。
どうしてここまで自分を低く評価するのか……

「それで八木さん……もし俺を許してくれるのなら……今からついてきてほしい場所があるんだけど……」
「お前何勝手な事を」
「いいよ。ついていくよ」
「おいしょーこ!」
「わたしだって非はあるし、それにわかってくれたからね。ヒカリには悪いけど、わたしは大場君を許すよ」

そんな大場君は、もし自分を許してくれるならという条件で、わたしについてきてほしい場所があるという。
まだまだ怒り心頭なヒカリには悪いが、わたしは大場君の事を許す気でいる。
大場君も怒っていた理由をきちんとわかってくれたし……大体わたしが勝手に怒っていただけだ、許さない理由が無い。

「……わかった。これはしょーこ自身の問題だ、私はこれ以上何かをするつもりは無い」
「うん。じゃあ行こうか大場君」
「う、うん……」

だからわたしは、大場君の案内する場所に向かう事にした。

「だが大場、最後に一つだけ言っておく」
「……」
「今度しょーこを泣かせてみろ。問答無用でお前を殴り倒す」
「……ああ……」

歩き始める直前、ヒカリが言った事に対して短く返事した後、互いに口を開かずに歩き始めた……



…………



………



……







「……ここって……」
「うん……今日は1か所だけ、どうしても行っておきたい場所があるんだ」

大場君の後に着いていき、辿り着いた場所は……あの日行った遊園地だった。

「どこ行くの?」
「それは……もちろんあの日結局行かなかった場所だよ」
「え……それって……」

一つのアトラクションで遊べるチケットを2枚だけ買って、1枚わたしに渡した大場君。
いったいどこに行くつもりなのだろうと聞いてみたら、あの日行かなかった場所だと言われた。
それはつまり……わたしが告白に使おうとしていたあの場所……

「つまり……観覧車?」
「うん」

行く途中であの現場に遇い、その後わたしが怒って帰ったため結局行くことの無かった観覧車に向かっていた。

「空いてるようだね。早速乗ろうか」
「う、うん……」

今日は平日で、もう夕方に近いからか、一切並ぶ事無く乗れそうだ。
なのでわたし達は、チケットを係員さんに渡して観覧車に乗った。


「おお……段々地上が遠ざかっていくってのも面白い光景だね!」
「あの……八木さん、俺の話、ちょっと聞いてもらっていいかな?」
「……いいよ。何?」

観覧車に乗りこんだ後、しばらくは上がっていく様子を窓から見ていたのだが、大体6分の1周した辺りで大場君があらたまった様子でわたしに話を振ってきた。

「まず確認したいんだけど……八木さんは今後も俺と話をしても良いと思ってる?」
「もちろん。だって同じ大学の同じ学部になるでしょ?仲良くしていこうよ」

いったい何かと思ったら、当たり前の事を聞いてきた大場君。
それがどうしたんだろうと思いながらも、当たり障りのない答えを返す。

「それじゃあさ、俺に愛想を尽かしたとかは……」
「全く無いよ。ヒカリは大場君の事嫌ってそうだけど、わたしはs……そんな事はないからね」
「そっか……」

危うく流れで好きと言いそうになったけど、どうにか思いとどまり、またしても当たり障りのない事を言った。
丁度観覧車だし、勢いで告白してしまっても良かったが……この流れはもしかするかもしれないのでまだ言わないでいたかった。

「……」
「……」

その後は互いに口を閉ざし、訪れた沈黙の時間……
ちょっともどかしいけど、どう切り出せばいいかわからないまま、更に6分の1程周り……そろそろ頂点に着きそうになった時……

「それでさ八木さん……」
「……何?」

ようやく口を開いた大場君。

「こんな俺だけどさ……」
「こんなとか自分を蔑むの禁止!」
「……わかった」

また自分を蔑むような表現をした事に注意しながらも、その続きを早く言ってほしいと思う。

「俺……」

そして、観覧車が頂点までやってきた頃、ようやく大場君が口にした言葉は……



「八木さんの事が好きです。俺でよければ、俺の彼女に……いや、俺の妹になって下さい!!」



……わたしが言ってほしくて仕方が無かった、わたしに対しての告白だった。

「……」
「えっと……駄目、かな……こんなお兄ちゃんじゃ」


わたしが何も言わない事に、不安がっている大場君。
そんな大場君に、わたしはゆっくりと近づき……

「んっ」
「!?」

返事代わりに、大場君の唇に優しくキスをした。


「ありがとアキトお兄ちゃん。わたしもアキトの事大好きだよ!」
「八木さ……いや、晶子さん。ありがとう!」

そのまま強く抱きしめてきた大場君……いや、アキト。
わたしもアキトの胴体を強く抱きしめ、甘えるように顔をアキトの胸部に埋めた。

「先言われちゃったな……」
「えっ…そう言うって事はもしかして……」
「実はね、この前ここに来たとき最後に観覧車乗りたいって言ったのはアキトに告白したかったからなんだ」
「そうだったんだ!」
「うん。初めて会った時、あの馬鹿達から助けられてからずっと好きだったんだ。強いし、カッコいいし、優しいし……理想のお兄ちゃんだったもん」
「俺も、初めて会った時から晶子さんの事好きだったと思う。初恋だからか最初は自覚無かったけど、ずっと晶子さんの事考えてたからさ……これが恋なんだなって思ったんだ」
「初恋なんだ!?なんだか嬉しいよ!」

ゆっくりと回る観覧車の中、わたしとアキトの二人だけの空間には、溢れんばかりの幸せが満ちていたのだった。



====================



「すっかり遅くなっちゃったね……」
「結局夜ご飯も食べたからね。ここの遊園地の食べ物って美味しいよね」
「うん!とは言ってもアキトと食べるならなんでも美味しく感じると思うけどね」
「それはあるかもね!」

観覧車から下りた後、恋人同士になった事だしと新たにチケットを数枚買い、前回来たときに乗っていなかったものを回っていた。
そのまま夜ご飯も食べていこうとなって、園内にあったちょっとおしゃれなレストランで夜ご飯を食べていたら、もう既に空は真っ暗になっていた。
とは言っても夜の遊園地は華麗にライトアップされていて、とても幻想的であった。

「そういえば今更だけどさ、制服のままでよかったの?」
「問題無いよ。これから着る機会はそうないからね。もしかしたらサバトの活動の一環で着るかもしれない程度だし、普段も制服のまま行動してる事もあるからね」
「なら良かったよ。一刻も早く想いを伝えたくてその事が頭から抜けてたんだよね」

夜の遊園地を十分に堪能したわたし達は、帰るために駅に向かって歩いていた。

「それにしてもやっぱり晶子さんは笑顔が一番だね!」
「なっ!?唐突に何を言ってるのよ!!」
「いや、さっきから晶子さんの笑顔を見てたらそう思っただけだよ。ほら、前は悲しませちゃったからさ……やっぱり晶子さんは笑顔が一番似合うなとね。特に満面の笑みを浮かべた時は八重歯もちらっと出てきて抜群の破壊力になってるよ!」
「もう……照れるじゃんか……」

夜ご飯の前にお母様にメールしたら『朝帰りかのう…』って返信が着たけど、残念ながらそれは次の機会にする予定だ。
いきなりアキトの家にいくのも失礼だし、今わたしの部屋は散らかっているので入れるのは恥ずかしいからね。

「あ、もう駅に着いたか……あれ?」
「ん?どうしたのアキト?」
「いや、なんか駅に人がいっぱいいる」
「ホントだ……どうしたんだろ?」

楽しくお喋りをしながら歩いていたらあっという間に駅に着いてしまったが……何故か駅の中は人や魔物が溢れかえっていた。

「電光掲示板に何か流れてるね」
「えっと……本線で脱線事故が起きた影響により運転を見合わせております……ってええっ!?」
「うっそお!?」

どうかしたのかと思い、電光掲示板のお知らせを見ていたら……どうやら数分前に電車の脱線事故が起きたらしく、全ての電車が運転見合わせになっているようだった。
今のところではあるものの、怪我人は結構出ているようだが、幸い脱線事故での死者はいないようだ。
それでも当分は電車は動く事は無いだろう。

「これは……帰る事は出来無さそうだね……」
「だね……転移魔法なんて使えないし、かといってここから歩くと何時間掛かるか……」
「最悪俺がおぶるよって言いたいけど、ここから家までの距離を考えると電車の運転が再開されるのを待っていたほうがいいよね?」
「まあね。再開がいつになるかわからないけどね……」

つまり、家に帰るのが困難であるという事だ。
電車で1時間ちょっと掛かる距離を歩いて帰るのは流石に辛いし、仕事終わりだろうお父様に迎えに来てもらうのもなんだか申し訳ない。

「どうしようか?」
「カラオケとかで時間を潰すしかないかな……でも復旧までどれだけかかるかわからないんだよな」
「だよね……」

脱線事故という程なのでかなり時間も掛かるだろう。
最悪今日はもう電車が出なく、お母様が言う通り本当に朝帰りになる可能性も……ん?

「……そうだアキト。まだお金持ってる?」
「え?まあ一応……何かあるといけないから多めに持ってたけど……多分タクシーも利用者多いだろうしそんな捕まらないと思うよ?」
「タクシーじゃない。今日はどこかホテルとかに泊まろうかなと思ったのよ。この調子じゃきっと終電後でも運転再開しなさそうだからね」
「あーなるほど……」

朝帰り……どうせなるなら行動に移しても良いんじゃないか?そう思ったわたしはアキトに残額を確認した。
まだ持ってると回答したので、これは行けるのではないかと思う。

「じゃあ探しに行こう!その前にATM寄ってもいい?」
「あ、うん。それぐらいなら……その間に安いホテルの場所聞いてみるよ」
「お願いね!」

善は急げって事ではないが、わたしは急いでお金を下ろして駅を後にしたのだった……



…………



………



……







「えっと……聞いてた場所だと……ここか……!?」
「どう考えてもラブホだねー」

アキトが駅員さんに聞いた情報を頼りにホテルを探して数十分。
ようやくそれらしき建物を発見したが……事情を知ってか知らずか、誰がどう見てもラブホテルだった。

「それじゃあ早速空き部屋があるか聞こうか」
「えっ!?ここでいいの?」
「別に良いじゃん。だってわたし達カップルじゃん。違う?」
「あ……うん……」

入るのを躊躇っているアキトをよそに、わたしはサクサクと中に入っていった。
アキトも覚悟を決めたのか、その後について入ってきた。

「部屋あいてたよ。早速行こっ!」
「うん、わかった」

行動に移るのをを早くしたおかげか、部屋は普通に空いていた。
渡された鍵に書かれている部屋まで、アキトの手を握りながら向かった。

「おーベッドが大きい!」
「たしかに安くて、それでいて内装もきちんとしてるね」

部屋に入った後、わたしが普段使っているベッドより少し大きいベッドにダイブしながら、部屋全体を見渡してみる。
ラブホなんて初めて入ったが、照明が落ち着いていたり、避妊具が置いてあったり、魔界ハーブが置かれている以外は普通のホテルと特に変わったところは見られなかった。

「先にシャワー浴びていい?」
「えっあ、うん。その……もしかしてだけど……えっと……本当にしたりするの?」
「ん?嫌?」
「い、いやそういうわけじゃないけど……」

アキトは顔を真っ赤にしながらずっとそわそわとし続けている。
カルピスの時もそうだが、やはりこういうのは照れてしまうらしい……可愛らしいところもあるものだ。

「だったらさ……いいよね?」
「うん……」

なんて、わたしも冷静に言葉を紡いでいるように見えるけど……実際は緊張でどうにかなってしまいそうだ。
さっきから心臓の鼓動がもの凄い事になっているのがハッキリとわかる……もしかしたらアキトに聞かれてるんじゃないかって程激しく動いていた。



……………………



「……」
「お、おまたせ……」
「あ……き、綺麗な身体してるね。服の上からじゃわからなかったけど、筋肉も程良く付いてるし……」
「兄貴と一緒に鍛えてるからね!」

身体を綺麗にした後、バスタオル1枚を巻いた状態でベッドの上で待機していたわたし。
なんとか落ち着こうとケータイに付けていたアキトと交換したストラップを弄っていたが、同じく身体を綺麗にし終えたアキトが下半身しかバスタオルを巻いておらず、上半身がハッキリと見えた状態で出てきたため余計心臓が激しく動く。

「えっと……じ、じゃあ始めようか……」

でも、それと同時にわたしの期待は上昇していく……
これからアキトと繋がるんだと思うと、下腹部が疼いてくる……

「ど、どうかな……」
「お、おお……!!」

わたしは、巻いていたバスタオルをゆっくりと外し、一糸纏わぬ姿をアキトに晒した。
この状況に少し気持ちが高まっているためかほんのりとピンク色をしている自分の肌、獣毛が生えている手足とは対照的に無毛な秘所、胸の膨らみはほとんどなく、少し勃っている小粒な乳首も全てアキトに見せた。

「ぷにぷにつやつやの肌に可愛らしいおっぱい、裸を見ているだけでも背徳感溢れる姿がまた……」
「にはは……なんか照れちゃうな……」

嬉しさと照れのせいで尻尾がまるで犬のようにブンブンと勝手に動いてしまう。

「じゃあ……始めようか」

でも、それで終わるわけではなく、もちろん次のステップにも行くつもりだ。
なのでわたしは、大きいベッドの上に座り……

「このロリボディ、ロリコンアキトの好きなようにしていいよ。お触りもいくらしても良いし、めちゃくちゃにしても良いよ。でもそのかわり……わたしもアキトの身体を好きにしちゃうからね」
「う、うん……」

恥部を見せつけるようにしながら、アキトを誘惑した。
アキト自身は照れてあまり動こうとしないけど、バスタオルが変な膨らみを形成しているのがここからでも良くわかるので、きちんとわたしの身体で興奮しているのだろう。

「じ、じゃあ……」
「んっ……ちゅ……」

わたしに近付いてきたアキトの身体に腕を回し、顔を近づけて口づけをした。
今度は観覧車の中でしたのとは違い、舌をアキトの口の中に入れて絡ませる深い口づけだ。
アキトは初めてなのもあって動きがぎこちない……けど、そんなの気にならない程わたしは気持ち良さのあまり蕩けてしまいそうだ。

「ぷは……えへへ……アキトとディープキスしちゃった……」

もっと長くキスしていたかったが、一息入れるためにゆっくりと唇を離す……絡めていた舌も名残惜しむように離れていく……

「へへ……ん?アキトのここ、もうガチガチだね」
「うっ」

離したのは顔だけなので、お互いの身体は密着状態である。
そんなわたしの太股に、何か熱く硬いモノ……アキトのペニスがバスタオル越しに押しつけられていた。
そんなアキトのペニスをバスタオルの上から擦る……感じたのか、ピクピクっと小さく脈動した。

「アキト、バスタオル外していいよね?」
「あ、うん……」

このままバスタオル越しに触っててもいいけど、どうせなら生身を扱きたい。
そう思いわたしはアキトに確認した後、腰に巻いてあったバスタオルの結び目をほどき、バスタオルを部屋の隅に投げ捨てた。

「わ……大きい……」
「そ、そんなまじまじと見られると恥ずかしいな……」

わたしの目の前に現れたモノ……それは力強く跳ねる、赤黒く太い男の象徴だった。

「ちょっと思った以上だったけど……あむっ」
「はうっ!?ちょ、ちょっと晶子さん!」

先端からわずかに先走りが溢れており、濃くなったオスの臭いがわたしの鼻腔をつつく。
そんないい匂いを漂わされたら我慢できるはずが無い。
わたしは口をいっぱいに開けて、アキトのペニスを口に入れた。

「じゅぷ、ちゅ、れる……ほう、ひもひいい?」
「あっう、うん。凄い……締め付けてくる……」

わたしの小さな口では先端を咥えるだけでいっぱいになってしまう。
なのでわたしはその状態で先走りを舐めとったり、吸ったりしてみた。
口の中で広がるアキトの精の味……まだまだ薄味だが、癖になってしまいそうだ。

「じゅ……じゃあこれは?」
「え?な、何これ!?すごっ!」

だが、鈴口付近を刺激するだけじゃ射精までには中々至らないだろう。
だからわたしは、両手に着いた肉球でリズミカルに竿を揉み始めた。
胸はないのでそうとは言い切れないが、肉球コキはパイズリより気持ちいだろう……アキトの表情が快感に染まっていっている。

「れる、んあっ」
「うあ、も、もう……」

強く反応するところを重点的に攻めるわたし。
緩急つけて扱くうちに先走りは止まらなくなり、一際大きく膨らんだと思ったら……

「もう……で……あ、ああっ!!」
「んぶっ!?ん、んく……」

これが想像以上に気持ち良いのか、わたしの口に射精を始めた。
どくどくと口に出されるアキトの濃厚な精液……突然だったので少し驚いたが、わたしは注がれたものが精液とわかると夢中で飲み始めた。
溜まっていたのか粘性が高く、飲み込んでも食道をゆっくりと下がっていくのを感じる。

「はぁ……すご……」
「ぷはっ……えへへ……アキトのザーメンおいしい♪」
「ご、ゴメン晶子さん……」

しばらくは吐き出し続けていたが、最後に小さくぴくっと痙攣して止まってしまった。
なのでしばらく吸ったり舐め取ったりした後、アキトのペニスから口を離した。

「あふ……ちょっと口から零れちゃった……」
「……ごく……」
「おいし……ん〜?興奮しちゃってる?また元気になってるね!」
「う、うん……」

少しずつ飲み込んでいたが、結構多く射精したので口から零れてしまった。
零れた分を指で掬い口に運んでいたら……アキトのペニスが、さっき射精したばかりだというのにもう勃起していた。

「じゃあ、そろそろ本番しようか。上と下どっちがいい?」
「え?それってどういう事?」
「正常位が良い?騎乗位が良い?それとも……」
「えーっと……晶子さんの好きにしてくれていいよ」

そろそろわたしの魔物としての本能が抑えられそうにもなくなってきた。
どうにか理性を保ちつつ、アキトに聞いてみたものの、わたしの好きにしていいだなんて言われたので……

「へぇ……じゃあアキト、ベッドの上に寝転んで」
「あ、うん」

わたしは、自分が攻めになる騎乗位で、アキトと初エッチをする事に決めた。

「ほら見てアキト。わたしのロリまんこ、アキトとのエッチを考えただけでもうこんなにびしょびしょだよ」
「わ……凄い……」

横になったアキトの身体に乗り、わたしは自身の秘所を指で広げた。
もはや前戯なんていらないぐらい、わたしの秘所は濡れていた。あそこから流れでる愛液がアキトの身体に垂れている程だ。

「今からここにアキトのおちんちん入れちゃうよ……ひうっ!?」
「う……ど、どうしたの晶子さん?」
「ちょっと擦れただけなのにビクッてなっただけ……心配は無いよ……」

わたしは腰を少し浮かせてアキトの足の方にスライドし、丁度ペニスがわたしの下に来たところで止まった。
力強く反り勃っているペニスを片手に添え、わたしの秘所に軽く当てた。

その瞬間わたしの全身に、まるで電流でも流れたかのように快感の震えを伝えた。

「い、挿れちゃうね……」

入口に触れられただけでもこんなに快感を得た……もし全部挿れたらどれだけのものになってしまうのだろうか。
考えただけでゾクゾクする……期待8割、好奇心1割、そして恐怖1割ってところだ。
わたしはそのまま、ゆっくりと腰を下ろしていった。

「ん……あ、アツい……」
「ふぁっ!き、キツく締めてくる……!!」

少しずつ膣内に入ってくるアキトのペニス。
やはりわたしの身体と比較して大きいので、挿れるにつれて下腹部に圧迫感が生じる。
でも、その分アキトがわたしの中に入っているのを感じられるので嬉しく感じる。

「あ……ん……挿入ったぁんっ……」
「う……あ、晶子さん……」

ゆっくりと腰を下ろしていき……根元まで入りきる事無くわたしの子宮口にぶつかった。
触れた瞬間に軽くイってしまったので、そのままジッとしていたら……アキトが心配そうな顔をしていた。

「血が……」
「大丈夫……痛くない……から……」

どうやら結合部から血が流れていた事に心配していたらしい。
つい先ほどまでわたしは処女だったから血ぐらい流れる……でも膜が破れたときの痛みなんか一切感じなかったから問題無い。
むしろ、膣内をアキトのペニスが擦る度、気持ち良すぎて腰が抜けそうになったほどだっだ。

「動いて……いい?」
「いいよ……」

アキトのペニスを感じながらも、少しだけ落ち着いてきたので、わたしは腰を上下に動かし始めた。
ゆっくりと腰を上げ、もう少しで抜けてしまいそうになったところでまた降ろす……これだけの動作でも、わたしは気持ち良かった。
アキトも気持ちよさそうに喘いでいる……膣内のペニスが、ビクビクと大きく痙攣している。

「はっ、ふっ、あん、あっ」
「やば、締め付けが、つよ、あうっ」
「へへ、ロリマンコ、気持ち良いでしょ!」
「うん、すごく、いいっ!」
「わたしも、アキトのおちんちん、いいっ♪」

自然と速くなっていく腰の動き。アキト自身も込み上げてきたのか、わたしの動きに合わせて下から突いてきた。
一突き一突きがわたしの大きく感じる部分を攻めてくる……相性は最高といえるだろう。

「晶子さ、も、射精るっ!」
「いいよ、ナカに、だしてぇ!」

激しくなる動きに、とうとう限界が来たようだ。
アキトのペニスがよりいっそう大きく跳ねたと同時に、わたしが腰を深く下ろしたら……


「うあ、ああぁ……!!」
「ひゃっ!入ってるっ!わたしのナカにいっぱいだされてるうぅぅ!!」


子宮口をこじ開けるように刺さったペニスから、熱い精液が子宮内に吐き出された。
わたしの子宮を満たそうとするように、さっきよりも沢山の量が出されているのがわかる。


「うあ……ぁ……はぁ……はぁ……」
「あふ……ちょっとイッちゃった……♪」


数十秒ほどでアキトの射精が止まった。
わたしはイッた事で力が抜け、繋がったままアキトの身体に覆いかぶさるように倒れた。

「はぁっ……アキトとのセックス……ん……絶対癖になっちゃう……」
「はぁ……凄いよ晶子さん……まるで膣自体が生きてるかのように絡んできて……あっという間に達しちゃったよ……俺も癖になっちゃうかも……」

少し荒く息をしながら、アキトの身体の触感を堪能するわたし。
筋肉質な引き締まった身体。おもわず頬ずりしてしまうほどだ。

「ちょっとくすぐったいな……」
「だってアキトの身体に触れてると落ち着くもん。アキトもわたしの身体堪能していいよ」
「そういうなら……」
「ひゃうっ!?」

アキトもわたしの耳や背中を触り始めた。

「ちょ、ちょっとアキト!」
「好きにして良いんだよね?」
「そ、そうだけど……ひゃっ!あんっ!!」

アキトの指が背筋に沿って首から尻尾をなぞる度、わたしの身体はゾクゾクと震える……自分でも気付かなかったが、どうやらわたしの性感帯のようだ。
それに気付いたアキトが、少しイジワルな顔をしながらなぞり続ける。

「ん?なんか締め付けがより強くなったなぁ」
「だ、だって……アキトが……」
「はしたない妹だなぁ……これはお仕置きしないとな」
「!!」

何かのスイッチが入ったのか、突然雰囲気が変わったアキト。
自分がマゾだという意識は無いが……お仕置きという言葉を聞いて、わたしはゾクッと身体を震わせた。

「アキトお兄ちゃんごめんなさい!お仕置きはやみゃあんっ!!」
「だーめ。ほら、とりあえずむこう向いて」
「う、うん……」

アキトの突然の変貌がなんだかよくわからないが、とりあえずノッてみる事にした。

謝ってみようとしたら尻尾を強く握られてしまった……当然ここは性感帯なので、わたしはアキトの上で大きく跳ね、秘所に力が入った。
その刺激でまた硬さを取り戻したアキトのペニス……やけに回復が速いが、もしかしたらわたしの魔力でインキュバス化が始まっているのかもしれない。
そんなアキトは、変わらずイジワルな顔をしながらわたしにむこうを向けと言ってきた。

「こ、これでいひゃうっ!?」
「よいしょっと……どうしたんだい喘いで?俺は起き上がっただけだよ?」

言われた通りにアキトの足のほうに身体の向きを変えた途端、わたしを軽く持ち上げながらアキトは上半身を起こした。
そして繋がったまま胡坐をかき、わたしをその上に乗せた……つまり背面座位の型にした。

「さてと……じゃあお仕置きだ」
「ひあっ!」

後ろからわたしの両乳首を弄りまわすアキト。
既に張っていた乳首を抓られ、秘所の周りを念入りに撫でてくる。

「こんなに硬くしちゃって……晶子はエッチだな」
「くぅっ!だ、だってアキトお兄ちゃんが触って……ひあっ!」
「あれ?なんか股間にも硬いものがあるな……」

クリトリスまで触ってきたアキト。

「ひぅっ、お、お兄ちゃ……にゃあっ!」
「ん?俺は今お腹を撫でているだけだよ?どうして喘いでるんだ?」
「わ、わかんにゃい……なんか気持ち良いの……」

初めてだなんてとても思えない程、わたしの身体はアキトの手によって快楽に染まっていた。
もう性感帯では無い部分……今だって子宮の辺りを撫でられているだけなのに、わたしは快感によって震え続けていた。
別に纏いの野菜とか堕落の果実とかを食べたわけでもないけど、身体のどこを触られてもわたしは敏感に反応していた。
秘所から愛液が止まる事無く溢れだす……もうベッドのシーツは水溜りと言っていい程濡れていた。

「ん……アキトお兄ちゃあん……」
「晶子、こっち向いて」
「なあに……んむっ!」

ずっと愛撫しているだけで、一切動いてくれないアキト。
もどかしいので身体を揺らそうとしたところで名前を呼ばれたので振り向いたら、力強いキスをされた。
自分から積極的に舌を入れて絡めてくるアキト……積極的なのは嬉しいが、じらし続けられるのはたまったものじゃない。

「むあ……アキトお兄ちゃん……もうわたし我慢できない……動いてよぉ……」
「しょうがないな……ほら、四つん這いになって」
「うん!」

唇を離した後、わたしは少し涙目でアキトに懇願してみた。
別に悲しいのではなくて、気持ち良さのあまりさっきから涙目になっていただけではあるが……ちょっとだけ申し訳なく思ったのか、アキトがわたしの身体を持ち上げ、前傾姿勢にさせ……

「よいしょっと」
「ひゃうっ!」
「動くよ?」
「うん、いいよ!」

後背位の体勢にされたあと、アキトは始めはゆっくりと……少しずつ速度を上げながら腰を打ちつけ始めた。


「あっ、あっ、いっ、はっ、あっ、んっ」
「く、き、気持ち良い、か?」
「うんっ!キモチいい!!おちんぽがぐりぐりってしてキモチいい♪」


夢中で腰を振るアキト。
わたしの喘ぎ声と、ぐちゅっぐちゅっと卑猥な音が、部屋中に響き渡る。
わたしの膣はもうアキトのペニスに合うようになったのか、回数を重ねるうちに深く刺さり、感じるところを的確に当たるようになっていた。
そして、わたしもあまりの気持ち良さに、自分から大きく腰を振って快感をより大きく得ようとしていた。

「ひあっ、あっ、あっ、んあっ!」

本当の幼女だったら壊れてしまうんじゃないかってほど激しく突き入れられているけど……わたしは気持ち良すぎて頭が真っ白になりそうだった。
上も下も涎が止まらないとはまさにこの状態だろう……腕に力が入らなくなり、頭はベッドに埋もれている。

「ひゃ、あ、い、イク!イクうううっ!!」
「うあっ、ギュッてされると……!!」

わたしのナカでペニスが擦れる度に大きくなる快感は……とうとう限界を迎えた。
背筋を走り、脳を揺らす程の快感に、わたしは身体が震え、潮を吹き盛大にイッてしまった。

「う、うあああああああっ!!」
「あはぁ♪またいっぱいでてりゅ〜♪」

そして、ほぼ同時にアキトも射精した。
わたしの子宮に、今まで以上にいっぱい注がれるアキトの精子……許容量を越えたのか、結合部から愛液交じりの精液が垂れ流れている。

「はぁ……はぁ……」
「はぁ……アキトぉ……もっとぉ……♪」
「はぁ……ちょっと……休ませ……」
「いやぁ♪もっと頑張ってぇアキトお兄ちゃん♪」

何度イッても、まだまだ物足りないと感じる。
力が入らない中、どうにか下腹部に力を入れ、射精を終えたばかりのペニスを刺激してもっと頑張ってもらう事にした。


「はぁ……妹に頼まれちゃあ仕方ないか……」
「やったあ♪お兄ちゃん大好きひゃっ!」
「ほら、俺も頑張るから晶子も頑張るんだよ」
「う、うん♪」


アキトに乳首をまた弄られながらまた始まった性交は、夜が更けても続いたのだった……



====================



「ほんっとおおおおおに、すいませんでしたああああああああああっ!!」
「えっと……き、気にしてないから!むしろよかったから!!」

深夜までずっとセックスを続けた後、疲れ果てて裸のまま抱き合って眠ったわたし達。
日光の眩しさで目が覚めた後、同じく目が覚めたアキトの顔を見たら……開口一番全力で土下座された。
どうやら昨日途中から調子乗って妹を性的に躾ける兄プレイをやった事を相当後悔しているらしかった。
なんでもわたしの事を見ていたら可愛さのあまり暴走したとか……

「調子に乗り過ぎました!!気分が高まって変な事しました!!本当にゴメン!」
「だからいいってば!アキトの意外な一面も見れたし、その……気持ち良かったし……」

でも、わたしは別に怒ってないし、むしろこれからも機会があればやってほしいなんて思ったほどだ。
なぜなら、男の方から積極的になって性行為に励んでくれるのはなんだか嬉しかったからだ。
あの時のアキトを思い出すだけで……なんだか濡れて来てしまいそうだ。

「だから土下座やめて、帰る準備しようよ」
「ありがとう晶子さん!」

でも、そのままシてしまうとまた長々とシてしまうだろうから、ここはグッと抑えて帰る準備を始めた。



……………………



「もう電車動いてるといいねー」
「そうだね……一晩経ったし、復旧してるといいけど……」

身体を洗いあった後、荷物を整理してホテルを後にしたわたし達。
まあ……一緒に身体を洗ったせいで、結局シャワールームで1発身体にぶっかけてもらったうえ更に1発中出ししてもらったため出発は遅くなってしまって、そろそろ10時になるところだった。

「でもその前にどこか朝ご飯……というかブランチでも食べに行かない?」
「んー……わたしはアキトにご飯を注いでもらったけど……アキトはお腹減ってるだろうし、どこか行こうか」

そろそろ電車も復旧しているだろうと思い、駅に向かって歩いている。
でもその前に、朝ご飯と昼ご飯兼用でどこか食べに行こうという話しになった。
わたしはアキトの精でお腹が満たされてはいるが、アキト自身は昨日の夜に食べたきりだし、普通の食事もしたいと思うところはあるので一緒に食べる事にした。

「でもさ、アキトお兄ちゃん……」
「ん?」
「手、繋いでほしいな〜なんて……」
「もちろん、お安いご用さ!はい!」
「えへへ……」


手を繋ぎ、一緒に歩くわたし達は……


「もしかして……俺に甘えたい時はお兄ちゃんって付けてるの?」
「にへへ……そういう事。誕生日はわたしのほうが早いからわたしのほうが若干お姉ちゃんみたいだけど……たまにはいいでしょ?」
「そうだね。こんな可愛い妹からお兄ちゃんだなんて呼ばれたら俺嬉しくてなんでもしちゃうよ!」
「ありがとっ!」


幸せな雰囲気に満ちていた。




わたしのピンチに、駆けつけてくれたヒーロー。
最初はただカッコ良くて、優しくて、頼りになる人だと思って好きになった。
でも、そんなヒーローにも負の面はあった。
やり過ぎてしまい、自分の命を大切にしない、そんな面もあった。
そんな部分に、怒ってしまう事もあった。

でも、それは些細な事に過ぎなかった。
そんな部分も含め、わたしはこのヒーローの事が好きだった。

そんなヒーローは、わたしのお兄ちゃんになってくれた。
普段は対等に、甘えたい時はお兄ちゃんに……そして、時々世話の焼ける弟の様なお兄ちゃんだ。


「あ、いい匂いがする!」
「本当だね。じゃああのお店にしようか!」
「うん!」


そんなお兄ちゃんとわたしは、いつまでも幸せに過ごしていくだろう。
途中で喧嘩したりもするだろうけど、最後は笑顔でいられるだろう。


「さあ行こう!」
「ああ!」


そんな未来を想い浮かべながら、わたしはアキトの手を引いて走り出したのだった。
13/03/16 17:35更新 / マイクロミー
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■作者メッセージ
という事で、今まで僕の現代シリーズ皆勤だったバフォメットの八木ちゃんに無事お兄ちゃんが出来るお話でした。
一応今回で現代読切シリーズは終わりです。卒業しちゃいましたからね。
なので今回は今までの現代タグが付いたSSのキャラが脇役程度に登場してます。まあ何一つ読んでなくても問題無い程度なので気にはならなかったと思います。
ちなみにまたいつかこの舞台で書く事もあると思います……ほら、もう一人の主要人物は未だフリーですしねw

表紙にも書いてありますが、今回このSSでは一部キャラクター……というかアキト周りはネームレス様が原案をくださいました。
実は7月頃(結構長くお待たせしてしまいました……)にメールでやり取りしてる中で八木ちゃんの話になりまして……

マイクロミー(以下M)「八木ちゃんに彼氏出来る予定は全く無いんですよー」
ネームレス様(以下N)「ならば私が考えてやろう」
M「えっマジですか!?」
N「ああいいとも。ただし名前は自分で考えてくれたまえ」
M「ははーっ!」
N「ほら出来たぞ。これならば八木ちゃんにも合うだろう」
M「お、おおーっ!これなら1本書けそうです!ありがとうございます!!」

って感じでアキトのキャラを考えてもらいました(一部誇大表現)。
そのアキトのキャラを纏めたのがこちら↓

・努力型天才理系
・元生徒会長
・爽やかなナイスガイ
・変態(と書いてバカと読む)
・正義漢で自己犠牲を厭わない
・自分を低く評価
・小学校の時いじめられっこ
・万能系格闘家(キックボクシング系)
・鈍感

上手く表現できたかはわかりませんが、このアキトという素晴らしいキャラクターを考えて下さったネームレス様には深く感謝を述べさせていただきます。

なお、おまけというものがありますが、こちらはこの後の八木ちゃんとヒカリの話があるだけで、エロも何も無いので興味のある人だけ読んで下さい。

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