連載小説
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色を知った獣
私の世界にはいつも灰色の雲が漂っていた
私の視界にはいつも灰色の霧が蟠っていた
血を滴らせ
肉を引き裂き
餌を食らう
彼等に罪は無く
私にもまた罪は無く
これは理であり
これは定めであり
母もまた
同胞もまた
私もまた
囚われ続ける
そしてまた
今日も弱者は悲鳴を上げる
















色を知った獣














ミヂミヂ
獲物の肉が裂け血が滴る
ギュププ
私はそれをかまで突き刺し
ジュルル
滴る血を味わう
ギヂヂ
肉を食み
ジュクジュク
咀嚼する
トクトク
喉を通り
トウトウ
身体に浸み渡る

腹を満たし骨を放り
皮を捨て屍を残す
地を蹴り空を切り
走り 眠る

一日を終え
次の一日へ
そしてその次

駆って
狩って
刈って

食って
喰って

眠る





「やぁ、楽しそうだね?お嬢ちゃん」
「?」

女がいた
赤い布を纏い
緑の生い茂る森に朱を刺した様に
新緑の葉に椿が咲き誇る様に

「あんたは獣の様だ」

…シャクシャク

「獣とはあんたの様だ」

…ジュジュル

「獣の視界は灰色だと聞く」

ギヂギヂ…

「あんたにはこの着物は何色に見えるんだい?」

ポイ…

「へぇ。それがあんたの答えか…血の滴る赤い肉」

ハグ…ジュジュ

「なるほど。あんたは獣とは違うようだ」

ミヂミヂ…

「もうすぐ春が来る。春を終えると、あんたは何色になるのか…」


















「獲ってきた…食べて…」
「ありがとう。イル」
「…私も一緒に食べる」
「うん。じゃあ今日は昨日街に行って買ってきた食材と合わせて少し贅沢なものを作るよ」
「うん…楽しみ…」

「ふふ…」
「ん?はむはむ…」
「イルは本当においしそうにご飯を食べるね」
「ウェルの料理、美味しい」
「ふふ。そう言ってもらえると料理人冥利に尽きるよ」


晴れた日は
森を歩く
彼に合わせて
ゆっくり
彼は楽しそうに笑いながら
それにつられて私も笑う
笑うと楽しい
森は緑と赤と茶色と青と黄色に黒に白くて金色で

「あ…」

彼が手を握ってくれる

「ん?」
「何でも…ない」

暖かくて 気持ちいい


雨の日は、家の中で

「んんっ!そこ、だめぇ!」
「う…イルの中、相変わらずきついよ」
「だめ、へんなの!くるよ…くるよぉ…」
「いいよ。大丈夫だよ。僕が抱きしめてるから」
「うん。うん。好き。好きなの!うぇるぅぅぅ!!」

彼の体温に包まれて
彼の匂いにつつまれて
大きくて暖かい
好き


彼は優しい
彼の料理はおいしい
彼と一緒に居ると嬉しい
彼に触れていると温かい
彼が笑うと楽しい
彼を想うと幸せ

私は彼に色を教えてもらった
私は彼に味を教えてもらった
私は彼に彼を教えてもらった
私は彼に女を教えてもらった
私は彼に男を教えてもらった
私は彼に心を教えてもらった

私は 私を知った










「へぇ。あんたの色はそういう色かい。ずいぶんと優しい色だ」




11/03/03 14:01更新 / ひつじ
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■作者メッセージ
えろしってるか
このひろいんはまんてぃすなんだぜ

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