連載小説
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オフ会はお深い
「カロロロロ……」
恐ろしい竜だった。
鋼よりも固い鱗に無数の切り傷を負い、満身創痍になりながらもその目に宿る闘争心は一向に失われた様子がなく。見る者の背筋を凍らせる殺意を撒き散らしている。
「あと一息です……頑張って!」
紫色の光の輝きを放つ杖を掲げ、風に紫紺のローブをたなびかせながら大導師ミステラが言う。
「いきます!」
掲げた杖が一際輝きを増し、竜を照らす。
「グォルルルルル!!」
竜が忌々しげな唸り声を上げる、如何なる魔法も武器も通用しないはずの強固な鱗がこの光によって弱体化されている事に気付いているのだろう。
「よーっしゃ!これで仕上げだよっ!」
腰布をひらめかせ、踊り子のルビィがステップを踏むと全身から真紅の光の粒子が放たれる。
中空を清流のように流れるその粒子は二人の戦士を包み込んだ。
「よし……!」
戦士の一人、黒い髪に切れ長の鋭い目を有した東洋の戦士オギスは全身に力が漲るのを実感し、絶刀「オロチ」の柄を握り締め、構えを取る。
「うん」
もう一人の戦士、白馬を思わせる純白の鎧を纏った騎士アストレイは金髪碧眼の端正な顔立ちに決意を表し、闘剣「アレス」を静かに構える。
「いくぞ」
「ああ」
二人が同時に腰を深く落す。
大きく足を開き、刀をかざすようなオギスの構え。
前後に大きくスタンスを取り、刃に指を添えるようなアストレイの構え。
発祥の違う技術体系でありながらその二人の動きは鏡のようにシンクロしている。
「「クロス」」
同時に呟いた瞬間、二人は閃光と化した。
空気を引き裂くような音と共に閃光となった二人の戦士が竜を貫く。
「ギュァァァァァァォォォォ」
地を揺るがす断末魔と共に轟音を上げ、遂に竜は倒れ付した。
「……」
「……」
長い戦いの終焉を感じながら二人の戦士は剣を収める。
もうもうと立つ土煙が晴れてくると地に長々と身を横たえた竜とその足元にあるものが見えてきた。
古びた大きな宝箱。
オギス、アストレイ、ミステラ、ルビィの四人はその宝箱へ歩み寄ると互いに顔を見合わた。
一度頷きあうと、全員で蓋に手を掛けて持ち上げる。
ギギギギギィ……
古めかしい金具の音を立てながら宝箱が開く。と、開いた宝箱の底から眩い光が溢れ出た。
「おお……!」
「これは……!」







 「っしゃぁー!」
荻須隆文(おぎす たかふみ)はパソコンの前で思わずガッツポーズと同時に声を上げ、我に返って口元を抑えた。
時刻は深夜3時、あまり大声を出すと隣の部屋に迷惑になる。
「うわっ……て言うか3時か……長かったぁー……」
椅子にもたれてぐぐっと伸びをすると全身の関節がぽきぽきと鳴った、3時間も延々画面に集中していたのだから全身が凝っている。
「あー……でも……やったぞぉ……!」
ぐいっと画面に顔を戻して思わずニヤける。
画面に写っているのは一振りの長大な剣。
「神剣レーヴァンテイン」レア度★★★★★★
遭遇率が極端に低い上に最上級の強さを誇る「冥竜イデオン」から極希にドロップするマニア垂涎の一品である。
荻須はとりあえず仲間の賛辞に返信する。

ミステラ :おめでとうございます!

ルビィ  :おめおめぇぇぇぇぇ!

アストレイ:やったね!

オギス  :いやーありがとうございます!皆のお陰です!疲れた!w

ミステラ :まずい……明日仕事……w

オギス  :あちゃー、付き合わせちゃってすいません

ミステラ :いえいえ、この機会逃したらいつエンカウントできるやらですからね

オギス  :ミステラさんの援護無しだと絶対倒せなかったですからね……!しかし話に聞いてたけどマジで三時間も掛かるとはw

アストレイ:途中でバフ効果切れて体力ドットになった時は目の前暗くなったよ……三時間が水泡に帰するかと

ルビィ  :てへぺろ♪

オギス  :まあまあw三時間も集中してたらミスも出ますよw

アストレイ:にしても、やはりオギスさんは持ってらっしゃる……まさかレヴァがドロップするとは

オギス  :びっくりだ……w運を全部使い果たした感

ルビィ  :運を吸い取った感……!これからもついていきますぜ旦那うへへへへ

ミステラ :うへへへへ

アストレイ:うへへへへ

オギス  :任せなさい(白目

 荻須がプレイしているのは「ダークネスロード」というオンラインゲームだ。
昔はこの類のゲームを敬遠していた荻須だったが数年前ちょっとどんな感じか覗いてやろう、とログインしたのを皮切りに今では生活の一部のようになってしまった。
ゲーム内でもすっかりヘビーユーザーの一員である。
つい時間を忘れてのめり込んでしまう作りもそうだが、やはりそこはオンラインの特徴としてゲーム内での見知らぬ人々とのコミニュケーションが長くプレイさせる要因だ。

ミステラ :では、時間が時間ですしお暇させてもらいますねー

ルビィ  :あちしも落ちまーす、ばいばーい♪

大きなとんがり帽子に紫紺の分厚いローブ、おっとりした顔立ちのお姉さんという容姿のキャラがパーティーの補助、回復、属性攻撃担当の「ミステラ」。
露出の高い踊り子服にエキセントリックな色合いの長い髪、溌剌とした元気キャラという容姿の「ルビィ」はバフ、デバフ担当だ。
フィールドで氷属性の敵相手に必死に氷属性の魔法で戦っている魔法使いと魔法使いに物理強化のバフを掛ける踊り子を見かけたのが出会いだ。
始めたばかりで右も左もわからない二人を放っておけずに色々と教えるうち、ログイン時間が被っているのもあっていつの間にかパーティーに加わっていた。
今ではチームに欠かせない戦力となっている。

アストレイ:お疲れさまです……いやー疲れたなぁ、でもすごい収穫だ

アタッカー兼ディフェンダーの白い騎士が「アストレイ」
荻須自身が初心者だった頃に出会ったプレイヤーで、先程の二人よりもずっと付き合いは長い。
このプレイヤーに出会っていなければここまでハマる事はなかったであろうという存在だ。

オギス  :レヴァの初期値パネェw育てるのが楽しみだ……

アストレイ:たまには貸して使わしてくれよー僕のお陰でもあるでしょー?

オギス  :たまにはねー!……基本俺のだかんな!俺がリーダーだかんな!

アストレイ:都合のいい時だけリーダー権限振りかざすのはどうかと思いまーす

画面上だけの付き合いとは言え何年にも渡って毎日言葉を交わしていれば気心も知れようというものである。
仕事の愚痴やプライベートの話題などで駄弁るついでにプレイするような日も多々ある。

アストレイ:でも今日ってさ、色々と記念日じゃない?

オギス  :記念日?

アストレイ:レヴァ手に入れた記念と、あとこのゲームで知り合って三年記念

オギス  :三年もたってたのか……ていうかよく会った日とか覚えてるな、女かよw

アストレイ:HAHAHAHA

オギス  :記念に何かする?次の時超難度クエ挑もうか、折角レヴァ手に入ったし

アストレイ:いやいやいや、もっと建設的な事案があるんだよ

オギス  :なに?

アストレイ:オフ会的な

「あー……」
荻須は思わずキーボードから離れて頭を抱えた。
オフ会、パソコンの電源をオフにしてリアルで会いましょう。
今更説明の必要がないくらいに市民権を得た言葉だ。
しかしこの誘いは荻須にとって……。
「どおしよ……」
困るものだった。

アストレイ:嫌だったら無理にとは言わないけどね?

荻須が頭を抱えている間もアストレイは言う。
気遣いは有難いがその言葉に甘えて「それは勘弁」とも言いづらい。しかし、しかしだ。
「抵抗あるなー……」
三年近くもコミュニケーションを取っては来たがやはり画面の中でのやり取りと面と向かってのやり取りは大きな差がある。
むしろ三年かけて築いてきた相手へのイメージが崩れるのが怖い。
「あー……でもなー……あー……」
暇がない訳ではない、むしろ暇だからこうして休日にゲームをしているのだ。
そしてアストレイには日頃からの恩がある、主にクエストやアイテム的な意味で。
それに共通の話題があるんだからいい飲み仲間になれるかも……?

アストレイ:駄目かなー

と、画面上でアストレイがオギスの前でちょこん、と体育座りをする、どうやら残念がっているみたいだ。

オギス :あー、大丈夫大丈夫、スケジュール確認してただけ、いつ頃がいい?

思わずそう返信していた、と、アストレイはぴょんぴょん飛び上がって周囲に星を撒きはじめる、喜びのジェスチャーだ。
毎度思うがクールキャラっぽいアストレイがこのジェスチャーをするとシュールだ。

アストレイ:やったね!流石だねリーダー!それじゃあ今週末どうかな?

オギス :おけ

アストレイ:いやあ楽しみだ、まあその……会ったらちょぴりビックリするかもだけどね?

「ええ?何だビックリって……」
不穏な一言で急に不安になってくる。

アストレイ:それじゃあ今日は遅いから落ちるね、あ、二人には僕が連絡しておくよ、じゃあおやすみー

「えっ……いやいやいや待て、待てっておい!?」
慌てて入力しようとするが、すでにアストレイは光に包まれてログアウトしてしまった後だった。
「ちょ、待てってもおおお……」
荻須はキーボードに突っ伏してしまう。
アストレイとはいい、まだいい。
だがミステラとルビィは堪忍してもらいたい……何故かと言うと……。
「だってあいつらも絶対男だろぉー……?」
二人はオギスの事をとても慕ってくれている。
初心者の頃からいろはを教えてくれた面倒見のいいオギスを何かと持ち上げてくれる。
そして二人のキャラは可愛い女の子だ。
つまり擬似的にでも女の子二人からチヤホヤされる状況を堪能できていた訳で、荻須としてはこれも密かに楽しみにしていた所なのだ。
しかしその「中身」が女性である確率は極めて低いと荻須は思っている。
そもそもこの「ダークネスロード」ちょぴり性的というか、男性向けな側面がある。
ミステラは分厚いローブを押し上げるような立派な物をお持ちなデザインをしているし、踊り子であるルビィなんて水着の方が隠れてるんじゃないかという露出度だ。踊るといろんなところがこう……揺れる。
わりとあからさまにそういうデザインなので女性プレイヤーは寄り付かないのではないかと荻須は思うのだ。
そんな訳で二人の「中身」は男である公算が高い。
となると、二人のキャラに合わせた喋りも。
「この文章、あの人が打ってんだよな……」
と、微妙な気持ちになること請け合いだ。
荻須はどうにかアストレイとだけ会えるように段取りできないものかと頭を捻ったが何もいい考えは浮かばなかった。







「……よし」
週末、場所は駅構内のトイレ、荻須は鏡の前で普段全然気にしていない髪型などをチェックしていた。
結局のところ荻須は三人と会うために今日、ここに来ているのだった。ミステラとルビィの事は割り切って飲み仲間が増えるだろう、位に思う事にした
しかし相手がどんな相手だろうと画面を介さない対面は初めてなのだ、緊張するものは緊張する。
(あー、えっと……初めまして……初めまして……でいいよな……?いやもっと軽く……いや〜どうもどうもオギスです、みたいな感じの方がいいかな……)
ぐるぐると考えながら待ち合わせ場所である駅構内の時計台に向かう。
先に着いた人は自分たちのパーティーのシンボルマークである盾と蛇のモチーフを表示する、という決まりだ。
約束の時間より大分早めに来たので恐らく自分が一番だとは思うが……。
どきどきしながら鞄からシンボルの描かれた方眼紙を取り出して脇に抱えて……ちょっと遠巻きに観察してみる。
時計台下は待ち合わせ場所としてはよく使われる場所であり、既に人待ち顔の人々がいる。
(ええと……目印……目印持ってる人は……あ、いた…………え?……へ?……)
目印はあった、盾と蛇のマーク、紛う事なきオギスのパーティーシンボルが描かれたスケッチブックが置かれている。
しかしそのスケッチブックの持ち主らしき人物を見て荻須はぽかん、と口を開けてしまった。
二人の女性だった。
一人は長身で長髪の女性。
セーターにカーディガンというフェミニンなふわっとした服装にこちらもふわふわと柔らかそうなボリュームのある髪。
優しくたれ気味な目にあるなしかの微笑の浮かんだ口元。
そしてセーターを押し上げて自己主張する大変立派なアレ。
(……え?)
もう一人は背の低い女の子。
ぴんぴんとしたくせっ毛が特徴的なショートボブにタイトで活動的なズボンとシャツ。
あどけなさの残る顔立ちは利発そうでしきりにきょろきょろと周囲を見回している。
そして身長が低いに関わらずシャツの胸元とズボンのヒップはぱつん、と張っている。
そのくせ腰回りが緩く、ウェストの細さがうかがえる。
トランジスタグラマーというやつだろうか。
違った印象ながらレベルの高い二人がセットになることでより目立つらしく、行き交う人々の視線が引き寄せられている。
(……いやいやいや)
荻須は二人から視線を逸らして周囲を見回す。
置かれているスケッチブックの持ち主は多分、トイレにでも行っていて場所を外しているのだろう。
あの二人は別の無関係な待ち人で……。
と、その二人は顔を見合わせて何やら言葉を交わすと背の高い方の女性が足元のスケッチブックを拾って手に持ち、さり気なく道行く人々の方に向け始める。
(……)
荻須は二人の視界に入らないように紙を後ろ手に持ち、よろよろと後ずさる。不審人物である。
そしてぱっと踵を返して元来た道を戻り始めた。
(いやいやいやいやいや無理無理無理無理無理無理無理)
あまりといえばあまりに想定外すぎた。
荻須がもしコミュニケーションに長けた男だったならラッキーだと思っただろう。
しかし生まれてこのかた女性とさっぱり縁のない人生を送ってきた荻須は免疫的なものが一切無く、とてもあの二人の前に出ていく勇気は持てなかった。
せめて心の準備が欲しい、自分は完全に男かおっさんに会う心づもりでここに来たのだ。
あんな本当に画面から飛び出てきたような女性達に会って会話して盛り上がろうだなんてハードルが高層ビルくらい高い。
ドンッ
「あっ……」
考え事をしながら歩くものではない、向かいから来る人に肩がぶつかってしまった。
「す、すいませ……」
謝ろうとした荻須の鼻腔にふわ、といい匂いが触れ。さらりと金色の糸が翻るのが目に映った。
(うおっすげぇ)
ぶつかった相手の顔を見て荻須は思わずそんな感想を抱く。
外国人の女の子だった。
ブロンドのストレートに真っ白な肌。驚いて開かれる目は碧眼。
瞳が大きい、海のようだ、そしてメイクなどで作ったのとは違う金色の長い長い睫も相まって目を合わせると緊張してしまうほどの目力を感じる。
整っていながらかすかに幼さを感じさせる顔立ちは高校生くらいだろうか。
服装はワンピースだが凝った柄のもので、いかにもデート用という感じだ。
「……」
「……」
(あっ、何してんだろ俺)
見惚れる、という経験は初めてだった。
肩のぶつかった相手を立ち止まってぼんやり眺めるだなんて不審すぎる。
しかしぶつかられた少女もじっと立ってこちらを見ている、いや、顔ではなく荻須が手に持つ紙を……その紙に書かれたマークを見ている。
その視線がゆっくりと上がって荻須の顔を見た、やはり正視されるとたじろぐほど綺麗だ。
「あの……ほんとすいません……あの……」
たどたどしく言おうとする荻須をよそに少女は肩に掛けているバッグの中に手を入れると、スッとノートらしき物を取り出した。
(…………)
そのノートに描かれているマークを見た時の荻須の表情を何と評したものか、「唖然」というタイトルでも付けた絵画にできそうであった。
「ちっす、リーダー」
少女ははにかむように笑うと外観によらない軽い口調で言った。
「あぁ、はぁ」
名画「唖然」と化したままの荻須はかくかくと頷くしかできなかった。
「あっ……来てる」
少女は荻須の背後を見て言った、待ち合わせの二人を見付けたのだろう。
「行こ、リーダー」
そう言って少女は荻須の腕を掴んで時計台の方に引っ張って行った、柔らかい手だった。
(待って、ちょっと待って、たすけて)
心の訴えもむなしく、荻須はこちらに気づいて手を振っている二人の方へ引っ張られて行った。
「初めまして〜」
引っ張って来られた荻須に微笑んで頭を下げる長身の女性、長い髪がさらりと肩を滑る。
自分の人生でこんなに綺麗な人と関わり合いになる機会が訪れようとは夢にも思わなかった。
夢にも思わなかったので対応がわからない。
「あっ、はい、あっ……はじ、はじめまして……」
「んふふっ」
かみかみで答える荻須、それを見て笑う金髪の少女。
(うあああああほらもう笑われたよ駄目だ、無理だって、普通にできないって)
まだ混乱状態から抜け出していない荻須はまともに頭が回らない、いっそ走ってここから逃げ出してしまいたい。
「……」
しかし実はこの場で最も混乱している人物は荻須ではなかった。
「ほら、るーちゃん、挨拶」
(るーちゃん……ルビィ……か?この娘……?)
「るー」と呼ばれた小柄な少女はやけにぎくしゃくした動きで荻須の前に立った。
「……はっ……あっ……あぁっ……り、リーダー……ほんもの……リーダー……」
何やらぶつぶつ言っている、そして顔が今にも倒れそうに真っ赤だ。
「……ほんもの……だ……リーダー……」
「るーちゃんるーちゃん、挨拶」
「はっ」
固まって呟き続ける少女の背中をつんつんとつついて女性が促すと我に返ったらしい。
「あのっ……あっ……!あにょ……あっ……はっ……えぁとっ、はい!あの!あじゅままして!あじゅ、ちっ、はじぇまして!」
多分「はじめまして」と言おうとしたものと思われる。
「あ、はい初めまして」
「いつもぁのっ……あのっ……おしゃーになっつぇ……ます!あの、ほんとあの……!あざざいます……はぃ……あぃ……!」
「だ、大丈夫ですか」
「だーじゃっす!」
「んふふふふふ」
「ふふふっ」
見ていて可哀想なくらいにテンパっている様子の「るー」を見て金髪の少女はまた口元を抑えて笑う。
つられて荻須も破顔してしまう。
少し落ち着いた、人間不思議なもので自分よりも混乱している人間がそばにいると逆に冷静になれるものだ。
「ルビィさん……ですかね?」
「あい!はい!ルビィぇす!はい!」
「こちらこそいつもお世話になってます」
「ひゃららら!そらこと!こっ……こっ……こっ……!」
「はいはい、ちょっと落ち着きましょ、ね?」
見かねたらしい長髪の方の女性はるーの肩を押してそっと荻須から遠ざける。
「えー……私「ミステラ」です」
「あー!どうもどうも「オギス」です」
改めて挨拶をする、朗らかな笑みを浮かべる女性は何というか……キャラクターのイメージがそのまんまだ。
胸のサイズまでそのまんまだ。
(……あれ?……って事は……え?あれ?)
ここに来てようやく違和感に気付いた。
パーティーメンバーは自分である「オギス」の他は「アストレイ」「ミステラ」「ルビィ」の三人。
この場にいるのも三人。
今目の前にいる朗らかな女性が「ミステラ」でその後ろで相変わらず真っ赤でぶつぶつ言っているのが「ルビィ」。
「アストレイ」は……。
思わず隣を見ると、あの金髪の少女は少しバツが悪そうに手を後ろで組んで足をぶらぶらさせながらこっちを見ていた。
「……「アストレイ」は……男、じゃ……」
「さーせん……」
(エエエェェェェェェ)







 荻須は時計を見上げた。
(……四時)
待ち合わせ場所に着く直前の荻須の構想ではこの時間、冴えないけれども気の合う男四人組で待ち合わせ場所から遠くない焼き鳥屋にいる予定だった。
「お待たせしました、ポテトフライとチキンバスケットです」
「お、きたきた」
「飲み物取ってきましたよー、オレンジ誰でしたっけ?」
「あ、こっちこっちー」
「アイスコーヒーは……リーダーでしたね?」
四人のうち二人……「アストレイ」と「ルビィ」が未成年だったため飲み屋に入るわけにもいかず、こうしてファミレスに入る事になった。
そうして酒はドリンクバーに、焼き鳥は焼いたのから揚げたのに変わった訳で……ついでに言うと冴えない男四人ではなく若い女の子三人と冴えない男一名という構成に変わっている。変わりすぎである。
「リーダー?」
「え?あ、はい、コーヒー俺です……っていうかその……「リーダー」ってやめません?」
「えー、リーダーはリーダーじゃないですか」
飲み物を取って来たミステラはニコニコ言いながらコーヒーを荻須の前に置く。
「そうですよぅ、どちらかと言うとリーダーこそ敬語やめて下さいよー」
ルビィが言う、最初の時よりだいぶ落ち着いてきたらしい。
「いや、ゲーム内でも敬語だったのをその……急にやめろと言われましても……」
「えへへ、いいじゃないですかぁリーダー……はぁ……リーダー……」
うっとりした目で見てくる。
「……ハハハ」
今まで向けられたことのない類の視線だ。どう反応していいかわからないので愛想笑いでもするしかない。
「落ち着いて、ね」
そんなルビィの肩に手を置いて言うとミステラはルビィの隣に腰を下ろす。
「……リアルでも友達だったんですね」
「えへへ、そうなんです、二人で興味を持ったもんで一緒にやろうって言って予備知識も何も無しに始めたもので……その節は大変お世話になりました」
「ああ、いえいえ」
「……」
荻須は隣を気にする。
隣に座っているのはアストレイ……と思われる金髪碧眼の少女。まさか髪の色も目の色もナチュラルにゲーム内と同じとは予想外だった。
……性別が違うのはそれよりももっと予想外だったが。
アストレイは店に入った時からずっと借りてきた猫のように大人しい、時折荻須の方を気にするようにちらちらと見ているが基本的に視線は足元を向いている。
「……えー、と、アスト、レイ?」
あえてゲーム内での名前をゲーム内と同じように呼び捨てで呼んだ。
……外国人なので横文字の名前で呼ぶのに抵抗がないというのもあったが……。
ぴく、と反応してアストレイが上目遣いに荻須を見る。
(うわ、この角度から見るとやっぱ睫毛長っ……フランス人形みてぇ、美人すぎ……や、そうじゃなくて)
「ごめん……」
荻須が何かを言おうとする前にアストレイが呟くように言った。
「言い出せなくて……その、わた、ぼく……」
言いかけて困ったように視線を彷徨わせた。それを見て荻須は思わず笑みをこぼした。
気持ちはわかる。ゲーム内のキャラでいくべきか、素の自分でいくべきかで困っているのだ。
「いいって、別に自分は男だなんて言ってなかったろ、俺が勝手に男って想像してただけで……何もウソはつかれてない」
微かに声が震えてしまったが、何とか「ゲーム内の自分」で言い切った。
金髪美少女に対してこのこのテンションで……敬語無しの素の言葉遣いをするのは想像以上に精神力を要したが。
その時のアストレイの表情の変化は荻須の脳裏に焼き付く事になった。
暗い表情をしていた時は無機質ささえ感じさせた美貌がふわ、と崩れ、血の通ったあどけない少女の笑顔に変容する様は荻須の心臓に殴られたような衝撃を与えた。
「へへ、さんきゅーリーダー」
「お、おぅ……」
「……」
「……」
と、向かいから刺すような視線を感じた。ミステラとルビィだ。
ルビィはぷー、と頬を膨らませてあからさまに不機嫌そうにしている。ミステラは顔は笑っている、顔しか笑っていない。
「対応に差を感じるなー、そりゃあ私達二人は後から加わった方だけどぉー」
「まとめ役としてはどうなんでしょうねえ?部下一人を贔屓するというのは」
「や、別に贔屓って訳では」
「じゃ、私達も呼び捨てしてください、敬語もやめて下さい」
「いや、だっ、そっ……」
「んふふ……」
と、詰め寄られる荻須の隣でアストレイが含み笑いをする。
「無駄だよ二人共……この呼び捨ては僕とリーダー二人の関係の深さあってこそなんだ、ねえリーダー?」
「ふこーへーだ!」
「長さではなくて密度ですよねリーダー?」
荻須は混乱しはじめる。
(何?どういう状況?呼び捨てにする事がそんなに重要なのか?というか、目立つからあまり騒がないで欲しいんだけど……)
ただでさえ三人は人目を引く容姿をしている、その上冴えない自分一人がその三人に混じっているものだから余計だ。
「えー、あー、まあ!それは置いておいて!はい、皆コップ持って!」
何とか場を収めようと自分もコップを持って言うと三人は素直にジュースの入ったコップを持ってくれる。
「えー、それでは、えー、そのっ……パーティー初のオフ会を記念して、乾杯!」
「かんぱーい!」
「はい、乾杯」
「乾杯」
完全に酒の席のノリだが幸い皆も乗ってくれた、かちんかちんとテーブルの上で杯を合わせ、きゅーっとジュースを煽る。
「ぷはー!オレンジうめー!」
「ふふ」
「ふー」
「ええと、それじゃあ改めて自己紹介、とか……あ、えーっと、だいたい皆把握できていると思いますけど……」
荻須は咳払いをした。
「えー……一応、リーダー務めさせてもらってます「オギス」……です、あー……」
(本名って言うべき?)
「本名はえー……まんまです、荻須といいます……」
一瞬悩んだが、本名と変わらない自分はともかく他の人は顔を合わせてゲーム内の名前で呼ぶのもどうかと思ったので名乗る事にした。
「私は魔法担当させてもらってます、「ミステラ」の市野巴(いちのともえ)といいます」
ふわふわの髪を揺らして市野は頭を下げた。
「えー、踊り子の「ルビィ」です!京橋るい子(きょうばしるいこ)と言います!よかったらるーちゃんって呼んでやって下さい!」
小柄な少女、京橋はぺこぺこと頭を下げながら言う。
「聖騎士「アストレイ」の……あまり変わらないけど「ウォートニー・アリストレイ」です……」
金髪の少女は背筋を伸ばしまま言った。
「あー、今後共よろしくお願いしますー」
「お願いしますー」
「お願いしまーす」
「お願いします」
四人揃って頭を下げ合うというとても日本人らしいやり取りの後、荻須は鞄をごそごそ漁ると携帯ゲーム機を取り出した。
「持ってます?」
「あ、持ってますよー」
他の三人もそれぞれに、ゲーム機を取り出した。
「集まってまでやる事がいつもと一緒ってのもアレだけど……」
「チャットいらないから連携取りやすいですよ」
「キダム砂漠行きましょーよ」
「キグ神殿の方が……」







 ガチャッ
「……」
ドサッ
荻須は自宅のドアを開けると無言で鞄を投げ出し、ベッドに身を投げ出した。
「た……」
慣れ親しんだ自分の布団の感触に包まれて脱力する。
「楽しかった……」
いけないことを言うようにぼそっと呟く。
女性である事で最初はどうしようかと思ったが画面を挟んでプレイをすると自然にいつものノリになり、そうなると自然に緊張も解けた。
緊張が解けると徐々にいつも喋っているメンバーと目の前の女性が一致し始めた。
いつものゲーム内のやりとりをするうちに「ああ、やっぱりこの人あいつだ」と思えるシーンがあるのだ。
元々画面内のキャラとあまり剥離のない容姿をしていたのでスムーズだった、アストレイは流石に慣れるのに時間がかかったが……。
そうして時間いっぱいまでとても楽しく過ごしてしまったのだった。
女三人男一人という普通なら居心地の悪くなりそうな構成で……しかも全く女性慣れしていない自分がこんなに肩の力を抜いて楽しめるとは予想外だ。
「あー、ほんとに……みんなめちゃくちゃ可愛かったなあー!性格も良さそうだったなー!ごぉぉぉぉめっちゃ自然に女の子と喋っちゃったよ……!」
ぱち、と布団の中で携帯を開き、写真を表示する。
そこに写っているのは自分とあの三人、ファミレスで寄り合って撮った一枚だ。
すごい構図だ、自分を中心に添えて三人が周囲に纏わり付くように身を寄せてピースサインなんかしている。
中心の自分が全然イケメンじゃないのに周囲の女の子のレベルが高すぎるので何か雑誌裏の胡散臭い成功者みたいだ。
自分はこの三人と楽しく過ごしたのだ、夢のようだが確かな確証がここにある。
(こんな可愛い子たちと俺が一枚の写真に収まる日がくるとは……)
しばらくにやにやと眺めていたが、ふと表情が暗くなる。
(あんな可愛いかったら……彼氏とかいるのかな……いるんだろうな……あ、やばい、鬱になってきた)
冷静になると浮かれていた自分が悲しくなってきた。
(……深く考えるのはやめよう、楽しかったのは事実なんだ……あ、これ以降ぱったりオフ会の誘いが無くなったらショックかも、あの場ではちやほやしてくれたけど実際は……あー、やめやめ)
ごろん、と寝返りをうって顔をごしごしと擦る。
(また誘ってくれたらいいな……)







 月も出ない都会の夜の路地裏だった、表通りから離れたそこはひっそりと暗い。
その暗闇を妖しい紫色の光源が照らしている。
「fallen girl」
路地裏にぽつんとある建物の入口に掛かっているネオンはそう表示している。
その路地裏に足音が響き、複数の人影がネオンに歩み寄った。
「……」
「……」
「……」
市野、京橋、そしてアリストレイの三人だった。
荻須とのオフ会の後に解散したと見せかけて再びここに集合したらしい。三人共無言で顔を見合わせるとそのネオンの下の入口に入っていった。
入口に入ると急な勾配の階段が下に続いていた。
周囲の壁は煉瓦造りになっており、薄暗い階段を所々に設置されているライトがぼんやりと照らしている。
三人がその階段を降りていくと降りきった先には重厚な鉄の扉があり、傍らには一人の女が腕組みをして壁に寄りかかって立っていた。
ジーンズ姿のその女は背が高く、筋肉質に引き締まっていながら女性らしい肉付きも有した身体をしている。
ワイルドに伸ばされた髪の下からじろりと鋭い視線が降りてきた三人に向けられたが、先頭の市野を見た瞬間その女は表情を緩ませた。
「ミステラさん、お疲れ様です……今日はオフじゃ?」
「今日はプライベートなの、あと、ここではミステラではなくて市野、ね?」
「あー、すいません」
女性は笑って頭を掻いた。
「いいかしら?」
「もちろん、どうぞ」
女は扉を開いて三人を招き入れた。
扉の中に足を踏み入れると低音のアンビエント、焚かれた魔界産特有の香の匂い、暗めの照明に照らされた下半身が蛇の女性の石像が客を迎え入れる。
その向こうには複数配置された丸テーブル、更に奥の壁沿いにバーカウンター、中央にはちょっとした広さのステージもある。
ギリシャ風の柱や見た事のない文様が記された壁、どことなく神殿風の装飾が成されている。
一見して変わった装飾のナイトクラブのように見えるが最も普通と違うのはその客層だった。
トレイを持ってテーブル間を歩いて……いや、這いずっているウェイトレスは入口の像がそのまま動き出したかのような下半身が蛇の女性。
バーカウンターでグラスを磨いている女性には角が生えている。
よく見るとテーブルに座る客もどこかしら人間には有り得ない特徴を有している。
客層は大半が女性だった。時折見かける男性には大概その異形の女性がべったりとくっついている。
その誰しもが女性達の異形を怖がったり驚いたりしている様子はない。
「んー!」
と、京橋がぐぐっと伸びをする。
体の伸びに合わせるようにしてその頭の両側面から髪を押しのけて長さの違う角がぐぐぐっとせり出してきた。ついでに耳も尖った形状に変化する。
「ふはー伸び伸びするー……アリストレイちゃんはいいよねー……だん……だん……ぺーる?」
「ダン、ピール」
むすっとした顔でアリストレイが答える。その身体に変化は生じていないが空色だった瞳が真紅に変化している。
「変えるのそこだけでいいもんねー」
「これはこれで苦労あるの……」
「吸血衝動が大変らしいですね」
そう言う市野も尖った耳に先端がハート型の黒い尻尾、腰には漆黒の翼が生えている。
「今日も大変だったよ……特に、好きな人を目の前にしちゃったもんだから……」
三人がカウンターに座ると三人の前にカクテルグラスが置かれた。中には琥珀色の液体が注がれている。
「これは……」
「私からの奢りです」
グラスを持って市野がウインクする。
「いいんですか?」
「オーナーだもんねー、職権乱用し放題だね!」
「るーちゃんは有料」
「なぜだー!?」
「毎度私にたかりすぎです、ちょっとは反省しなさい」
「うぐぐ……」
二人のやり取りをみてバーテンのサキュバスも苦笑いしている。
市野がオーナーを務めるクラブ「fallen girl」は魔物とその伴侶専用のクラブだ。
実のところこういった魔物用のクラブは全国各地に点在していてその地域の魔物達の憩いの場となっている。
現代に生きる魔物達は基本的に人間に化けて過ごさなくてはいけない。
化ける事を得意とする魔物だが時には本来の姿に戻って文字通りの意味で羽を伸ばしたい時もある。
それに地域の他の魔物達と情報交換をしたり友達を作ったりと魔物同士の交流の場としても機能している。
「それでは、改めまして乾杯」
「乾杯」
「かんぱい!」
チン、とグラスが合わされて三人はグラスに口を付ける。
「……」
「……」
「……」
しばしの沈黙があった後、アリストレイが口を開いた。
「僕は譲れない」
「でしょうね、わかりますよ」
「だったらしょうがないかぁー……」
くしゃくしゃと髪を弄りながら京橋がため息をつく。







 二人がゲームを初めたのは本当に暇つぶしだった。
無論、魔物が作ったゲームである「ダークネスロード」はそれを利用して人間の伴侶を引っ掛ける事……謹んだ言い方をすると「婚活」によく使われるが、普通にゲームとしても人気があるのだ。
ところがそこで出会った一組の冒険者の片割れに二人は心奪われてしまった。
問題はその相棒が「魔物」であった事だ。
この「ダークネスロード」プレイヤーから魔力を検知すると「魔物用」が起動するように作られている。
難しい事は分からないがコンピュータープログラムに術式が組み込まれているらしい。
「魔物用」には通常と違う仕様が多々あるが、その中に他のプレイヤーが魔物であるかどうか、人間だった場合はその性別までも認識して表示されるようになっている。
二人が好きになった「オギス」の相方の「アストレイ」は男性キャラクターだったが、表示は「魔物」だった。
このゲーム内で人間男性と魔物が二人で旅をしている場合十中八九、いや、ほぼ100%二人はつがいであるか、もしくは魔物がその人間を狙っているケースだ。
そして「魔物」である自分達が積極的に接触しようとしてくる事で「アストレイ」にも意図は伝わる。
察知した「アストレイ」と二人はオギスに見えない「魔物専用チャット」で今日のオフ会後の三人での会合の段取りを整えたのだった。
「オギス」の知らない所ですでに三人のやり取りは始まっていたのである。






 
 「それじゃあ三人で……という事で、いいでしょうか?」
「致し方ない」
市野の言葉にアリストレイはちょっと渋い顔をしながら頷いた。
魔物が一度ターゲットを見定めたらならそれを譲歩する事はまず有り得ない。
被った場合は必然的に「共有」する事になる。
「やっぱりかぁ……それじゃあ……三人でリーダーを……三人で……んふふ」
京橋はもじ、と腰を動かすと幼い顔に淫らな笑みを浮かべた。
「ふふっ」
市野も尻尾を揺らすとその艶やかな唇をちろ、と舐めた。
「落ち着いて二人共、リーダーは勇敢だけどとても疑り深くて臆病」
対して冷静なアリストレイは二人を諭す。
「事を性急に運んでは駄目、じっくりと行こう」
真紅の目を閃かせながらアリストレイは言う、高校生程の年齢にしか見えないというのにそのグラスを持つ姿は異様に様になっている。
そしてそう言いながらもその目の奥には隠しきれない魔物の情欲が燃えているのが見えた。
「そうね……じっくりと……じっくりと堕としていきましょう、か」
市野は言う、堕落させる事に生き甲斐を感じるダークプリーストである彼女は心底嬉しそうだ。
「むう……早くリーダーとしたいよぅ……」
対してあまり思慮を回すのが得意でないホブゴブリンである京橋は今から家に押しかけて押し倒しに行こうとでも言わんばかりだ。
と、三人の前にもう一つのグラスが置かれた。
スカイブルーの液体に満ちたそのグラスにはカットした虜の身がトッピングされている。
少し驚いた顔をして市野がバーテンのサキュバスを見る。
「あら、今日の職権乱用は一杯だけですよ?」
「これは私からです、長く人の恋路の支援ばかりしてきたオーナーがようやく自分の幸せを見つけようとしているんですからね」
市野ははにかむとありがとう、と呟いてグラスを持った。
誰が言うでもなく三人はそれぞれにグラスを持ち、今一度杯を合わせた。
「あ、ちなみにるーさんは有料ですからね」
「なぜだぁー!?」
18/09/08 21:16更新 / 雑兵
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■作者メッセージ
改めてあけましておめでとうございます。
新年早々連載が終わらないうちに他の連載を始めるという……先が思いやられる。

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