連載小説
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魔界軍師アルプ・エバ
 それから数分間、二人はその体勢のまま動こうとしなかった。射精が終わり、膣内に溜まった精液がすっかり冷えきった後も、二人はただ互いの顔をじっと見つめたままだった。
 
「……」

 大好きな人と繋がっていられる。そのこと自体に、二人はこの上ない幸せを感じていた。何も悩まず、何も考えず、ただ愛する人のことだけを想っていられる。そのことを再認識し、エバと男は共に歓喜の海を漂っていた。
 力いっぱい泳ぐのではない。ただ手を繋ぎ、二人揃って水面を漂う。相手の体温を感じながら、無心で喜びに浸る。魔物にならなければ到底味わうことの出来ない、この上ない贅沢。
 堕ちて良かった。仲良く時間を浪費しながら、一対の雌雄は同じことを思った。
 
「ねえ」

 やがてエバが声をかける。すぐに男が反応し、どうしたんだと声を返す。
 
「そろそろ、あがろっか」

 そこには様々な意味が込められていた。エバはそれを説明しなかったし、男もそれを全て理解していた。
 だから男は何も言わず、ただ頷いた。そして無言で起き上がり、エバも同じタイミングで男の上から退いた。
 二人の結合が解かれる。すっかり萎れた肉棒が露わになり、エバの割れ目から冷めた白濁液がごぽりと零れ落ちる。
 
「可愛くなっちゃったね」

 それまでの怒張が嘘のように小さくなった男の分身を見て、エバが愉しげに声をかける。男はそれに頷き、間髪入れずにエバに語りかける。
 でも、またすぐエバが硬くしてくれるんだろ?
 
「もちろん」

 エバが即答する。彼女は浴室から出た後も「する」つもりだった。
 男は驚かなかった。彼も同じ魂胆だったからだ。
 こんなものでは全然足りない。それは二人の共通認識だった。
 
「次は君がリクエストしていいよ」

 その認識の下に立ち上がりながら、エバが男に言い放つ。同じように自分の足で立ちつつ、男がいいのかと驚いた声を上げる。
 立ち上がった男の手を取り、エバが頷く。
 
「さっきは僕の我が儘を聞いてもらったからね。次は君の番。なんでも注文していいからね」

 そしてそう言って、不敵に笑う。男を惑わせる小悪魔の笑み。
 案の定、男には効果抜群だった。心の底から愛している分、その誘惑効果は他の男性よりも強烈に作用した。
 早速男が動く。腰を落とし、小声でエバに耳打ちする。
 
「えっ?」

 それを聞いたエバが一瞬きょとんとする。そしてすぐ我に返り、しげしげと見上げながら男に尋ねる。
 
「本当にそれでいいの?」

 その問いに、男が首を縦に振る。エバは「ふうん」と唸り、ニヤニヤ笑いながら再度男に声をかけた。
 
「僕じゃないと満足出来ないんだ?」

 意地悪な質問だった。男は声を詰まらせ、それでもまた首肯するしかなかった。
 彼のリクエストは実際その通りの内容だったからだ。
 
 
 
 
 エバ本人としたい。
 それが男の注文だった。特定の衣装を着て演技をするエバではない、「いつものエバ」とセックスがしたい。男はそう彼女に言ったのだった。
 当初の目的から大きく逸脱したお願いだった。コンセプト無視にも程がある。しかしエバは渋ることなく、それを受け入れた。寧ろ男が「本来の自分」を求めてくれたことに感動し、心の中が喜びでいっぱいになったほどだった。
 
「そこまで期待されたら、僕も頑張らないとね! いつも以上に気持ちよくさせてあげる!」

 なのでエバは、いつも以上に気合の入った姿を見せた。閉め切られた浴室の中でエバの声が気持ちよく反響し、それが男の心を期待で膨らませた。
 その男の手を、唐突にエバが握る。
 
「それじゃ、早く出よう! 続きはベッドで!」

 そして元気よくエバが言う。男もそれに同意し、二人仲良く浴室を出る。
 数秒後、迷いのない足取りで二人がベッドインする。最初にエバが仰向けに寝転び、その上から男が覆い被さる。
 当然ながら、二人は全裸である。二つの裸体が一つに重なり、互いの吐息と体温が互いを暖め合う。
 
「君の体、いつ触ってもぽかぽかだね」

 いつものように裸で抱き合いながら、エバが嬉々とした声で告げる。男はそれに気を良くし、もっとあっためてあげると言ってエバの背中に両手を回す。
 
「じゃあ、僕も」

 会わせてエバも両手を動かす。二人同時に互いの背中を掻き抱き、二つの体をさらに密着させる。
 エバの乳房がふにゃりと潰れ、柔らかな感触を胸板越しに伝えていく。すっかり元気を取り戻した肉棒がエバの裸身をなぞり、彼女の心をゾクゾク震わせる。
 
「あんっ……もう、準備万端って感じかな」

 肉棒の感触に身震いしながら、エバが小声で話しかける。男もそれに同意し、そのままそっとエバの顔に自分の顔を近づける。
 男が何を求めているのか、エバはすぐに理解した。
 
「うん。いいよ」

 それだけ言って、エバが顔を動かす。閉じた唇をほんの僅かだけ前に突き出し、瑞々しく潤ったそれを男に差し出す。
 エバの動きを見た男が一瞬止まる。そしてエバが迎え入れる支度を済ませるのを見た後、動きを再開させる。自分も唇を前に出し、ゆっくり顔を近づける。
 
「ん……」
 
 二人の唇が重なる。
 先端が触れ合うだけのソフトな口づけ。
 今はそれで十分。
 
「……」
 
 二人が目を閉じ、口元に広がる柔らかい感触に意識を集中する。言葉はいらない。それ以外の愛撫もいらない。
 ただじっと、この至福の一時を堪能する。
 
「――んふふ」

 たっぷり十秒、互いの唇の感触を確かめ合った後、やがて二人が顔を離す。そしてどちらからともなく笑みを浮かべ、そのままエバが口を開く。
 
「いっぱい味わっちゃった」

 心の底から嬉しそうな声。男も自然と笑顔になる。
 エバが続けて言う。
 
「でも、もっと欲しいよね?」

 もちろん。男が即答する。
 良かった。同意を得られたエバが笑顔を見せる。
 そしてエバが口を開く。唾液に濡れた舌を突き出し、潤んだ瞳で「次」を催促する。
 
「はい」

 アルプが許可を出す。
 エバの誘惑に男が乗る。
 自身も口を開け、舌を出しながら再度顔を近づける。
 
「ん」

 影が重なる。
 唇が組み合わさり、二枚の舌が口の中で絡み合う。
 
「んっ、ちゅ、くちゅ、じゅるるっ……」

 閉じられた空間の中で、二匹の赤いナメクジが暴れまわる。互いの体に自身の唾液を擦りつけ、相手に飲ませようとのたうち回る。あぶれた涎が口の隙間から溢れ出し、それを拭うこともせずに二匹の獣がディープキスを続行する。
 
「ぴちゅっ、あむ、んく……じゅる、ちゅっ、じゅるるるっ……」

 舌先で歯茎を舐める。自ら進んで男の唾液を飲む。舌を唇で挟み、下品な音を立てて吸い上げる。
 真心こめて奉仕する。エバの頭の中は、目の前の男を喜ばせることでいっぱいになっていた。
 もっともっと気持ちよくなってほしい。魔界軍師の欲望は留まることを知らない。
 
「じゅっ、ずぞぞぉ……っ……ぷはっ」

 そして最後に思い切り男の舌を吸った後、ようやくエバが自分の舌を引っ込め唇の位置をずらす。男もそれに呼応して攻撃を止め、自分から顔を離していく。
 離れた互いの唇の間に、唾液の線が幾重も引かれる。やがてそれらが名残惜しげに千切れていき、二人の顔が完全に分かたれる。
 
「君のおくち、とっても美味しかった」

 たっぷりディープキスを味わった後、エバが満足したように感想を述べる。この時彼女の頬は真っ赤に染まり、額からは多量の汗が流れ落ちていた。
 それは男も同じだった。茹で蛸のように顔を赤くしながら、男がエバの感想を静かに聞き入れる。
 エバが再度声をかける。
 
「君はどう? 僕のキス、美味しかった?」

 最高だった。男が即答する。
 直後、エバが弾けた笑顔を浮かべて言う。
 
「良かった。気持ちよくしてあげられたんだね」

 悪魔の浮かべる、天使のような笑顔。それを見た男の心に、暗い火が灯る。
 それを証明するように、男の肉棒がびくりと跳ねる。赤く熟れた亀頭が腹を叩き、それを感じたエバが驚き声を上げる。
 
「あはっ、我慢できないんだ」

 男が頷く。
 エバが汗だくのまま微笑み、男の頬に手を添える。
 
「いいよ。僕の全部を使って、君を満足させてあげる」

 そして笑う。全てを許し受け入れる、慈母の如き優しげな微笑。
 男の欲望にエンジンがかかる。鼻息が荒くなり、眼光に力が増す。
 全て軍師の計算通り。
 
「僕を――汚してください」

 エバが男の理性にトドメを刺す。
 目論見通り、男の良心はこの瞬間息を引き取った。
 
 
 
 
 最初に男がねだったのは乳だった。エバは二つ返事でそれを受け入れ、早速二人は体勢を変えた。
 と言っても、エバは仰向けになったまま、男が彼女の胸元に腰を降ろしただけだったのだが。そこから男はすっかり堅くなった男根を前に突き出し、たわわに実った乳房の間に挿し込んだ。
 この際エバの胸を掴み、肉棒を挟んで支える部分は男が担当した。エバはただ胸を貸すだけだったが、男が満足してくれればそれで良かった。
 
「うわあ……目の前で見ると本当凶悪だね」

 そうして谷間を貫き、目の前に突き出された亀頭を見つめながら、エバが感慨深げに呟く。そして視線を上げて男の顔を見つめ、にこやかに微笑み声をかける。
 
「いいよ、動いても」

 そのつもりだ。男が力強く返し、腰を振り始める。ふくよかな双丘に挟まれた剛直が前後移動を開始し、そのスピードを一気に速めていく。
 あっという間に最高速に到達する。肉棒が乳肉を抉り、胸元がどんどん熱くなっていく。目の前で出たり引っ込んだりを繰り返す亀頭を見つめる内に、エバも自然と吐息を熱くしていく。
 
「ああ、動いてる。僕のおっぱい、玩具にされちゃってるっ」

 興奮と幸福に打ち震えながら、エバが声を漏らす。その間も激しいピストン運動は続き、柔らかな乳房に挟まれた肉棒が大きく前後動を繰り返す。
 やがて限界が来る。男が肩で息をしながら、もう出そうだとエバに告げる。
 直後、エバの顔が歓喜に染まる。
 
「いいよ出して! いっぱい出して! 僕の顔にいっぱいかけて!」

 辛抱たまらずエバが叫ぶ。男の腰振りがさらに激しさを増す。二つの果実を前後に揺らし、爆発寸前の肉棒を出し入れしていく。
 そしてその時が来る。男が吠え、乳房を側面から掴んで固定し、より深く肉棒を突き刺す。
 エバの文字通り目と鼻の先に亀頭が到達する。次の瞬間、鈴口から盛大に白濁液がぶちまけられる。
 
「きゃっ!」

 熱く粘ついた体液が、まず鼻を汚す。次に額を、その次に口を白く染めていく。
 頬。目。前髪。顔面の前部を、余すところなくコーティングする。そうして男の濃い匂いに包まれながら、エバは恍惚とした表情を見せた。
 
「ああ、いい……君に征服されるの、すき……」

 悦びに震え、蕩けた顔で呟く。開いた口の隙間から、白く臭い液が入り込む。
 躊躇うことなくそれを飲み込む。喉の奥に精液が張り付き、刺激の強い苦みと匂いを全身に走らせる。
 それがたまらなく心地良い。
 もっと欲しいと体が疼く。
 
「もっとちょうだい? 君のザーメン、もっと欲しいな……♪」

 ドロドロに汚れた顔で笑みを作り、エバが次を催促する。一度精を放って安堵した筈の肉棒が、その卑猥な姿を見て再び活力を増していく。
 
「どこを使ってもいいから……ねっ?」

 再びの催促。エバの心からのお願い。
 拒絶する道理は皆無だった。
 
 
 
 
 次に男が求めたのは腋だった。エバの腋に肉棒を挟んで、そこで扱いてほしかった。
 
「もちろんいいよ。やろやろ!」

 エバは諸手を挙げて賛成した。そして自分からそこに座り込み、おもむろに片腕を天井に向けて伸ばした。
 露わになったエバの腋は、既にしっとり濡れていた。目に見えて汗ばみ、熱を帯びて赤く染まり、十分すぎるほどに出来上がっていた。その完成ぶりは、提案した男が驚き生唾を飲み込むほどであった。
 
「これくらい当然だよ。君の望むことなら何でもする。それが僕の喜びだからね」

 驚く男に向かって、エバが自信たっぷりに言い放つ。そして遠慮することはないとも告げる。
 
「だからほら、いっぱい味わって? 君専用の腋まんこ、君のおちんちんでたっぷり堪能して?」

 濡れそぼった脇を見せつけながら、エバが誘惑する。それに抗う術など存在しない。
 男が膝立ちの姿勢になり、エバの背後に立つ。すっかり硬さを取り戻した肉の柱を前に突き出し、腋に押しつける。真っ赤な亀頭と熱々の腋がくっつき、そこから滑らせて皮と腋をくっつける。
 そこでエバが腕を降ろす。二の腕と腋で肉棒を挟み、ほんの少し力を込めて男の男根を圧迫する。
 直後、男が短く悲鳴を上げる。蒸れた腋の熱とぷにぷにした二の腕の柔らかさが、彼の精神を再び絶頂へと追いやっていった。
 
「駄目だよ。まだ動いてないんだから」

 そこにエバが釘を刺す。もっと自分を堪能してほしい。そんな想いから出た言葉であった。
 当然男もそれを察した。そして男は腰に力を込め、迂闊に射精しないよう注意を払いながら肉棒を前後させ始めた。
 
「うわ、すごい。本当に僕の腋でしごいてる」
 
 自分の眼前で、自分の腋が性処理に使われている。その光景を目の当たりにして、エバが目を輝かせて声を上げる。彼女は今のこの状況――王道とかけ離れた背徳的な状況を心から楽しんでいた。
 
「僕を使ってくれてる……僕で悦んでくれてる……嬉しいなあ……♪」
 
 腋を滑る肉棒の感触。そこから伝わってくる男の体温と男の興奮。それら全てがエバを昂らせていく。そしてもっと男を感じようと、自分から腋を締めてさらに男根を圧迫する。
 それに呼応して男が呻く。エバのサービスに心が震える。もっとエバを感じたいとペースを上げる。高速で動く肉棒と腋が擦れあい、火傷しそうな程に熱くなる。その熱がエバの脳を溶かし、彼女の股を期待と興奮でびしょ濡れにしていく。
 
「出る? もう出そう?」

 息が荒くなる。熱い吐息を漏らしながら、エバが男に問いかける。男も同じように息を吐きつつ、もう出そうだと正直に告げる。
 それを聞いたエバの心臓が飛び跳ねる。自然と舌を突き出し、潤んだ瞳で肩越しに見つめながら懇願する。
 
「出して、出してっ。僕の腋まんこ使って、いっぱい発射してっ……!」

 エバの催促。それがとどめになる。
 男が咆哮し、肉棒を深々と腋まんこに突き刺す。直後、剛直全体が大きく震え、亀頭の先から白い粘つきが盛大に発射される。
 
「ああ――」

 前方に向けて雄々しく迸る欲望の塊を見て、エバがうっとりした声をあげる。自分の体で射精してくれた。これが嬉しくなくてなんだというのだろう。
 白いマグマが止まったのは、それから数秒後のことだった。噴火を終え、すっかり大人しくなった――しかし萎んではいなかった――肉棒を、男がゆっくり引き抜いていく。それまで散々快感を味わったエバは、腋からおちんちんが抜かれることを残念に思い、しかしそれを表に出すことなく男に尋ねた。
 
「気持ちよかった?」

 気持ちよかった。男は即答した。男は続けて魂が抜けるような快感だったとも言った。
 
「えへへ、よかった」
 
 エバの顔が自然と笑顔になる。やって良かったと心から思う。
 その気持ちを持ったまま、エバが休む間もなく次を促す。
 
「ねえねえ、次は? 次はどこを使いたい?」

 しかし男にとって、それは苦ではなかった。むしろ望むところだった。
 彼ももっと、エバを味わい尽くしたいと思っていた。
 
 
 
 
 それから、エバの体を汚す作業が始まった。二人で協力して、エバの裸身を男の白濁で染め上げていった。
 
「じゃあまずは、ここで絞ってみようか」

 膝立ちのまま男に背を向けた態勢で悪戯っぽく言いながら、エバが尻尾を肉棒に巻き付ける。細く長い小悪魔の尻尾が剛直を縛り上げ、そこから尻尾を器用に動かして扱き上げる。
 汗と愛液で濡れそぼった尻尾が伸縮し、肉棒の表皮と擦れあう。ぐちゃぐちゃ音を立てて擦れる度に男の神経が敏感に反応し、肉棒を小刻みに揺らしていく。
 
「好きな時に出していいからね。僕の体にいっぱいかけてねっ」

 相手の限界を悟ったエバが声をかける。男も頷き、尻尾に扱かれる快感に身を任せ、遠慮なく精液を亀頭の方へ昇らせていく。
 そして暫く後、男が短く呻く。同時に鈴口から精液が放たれ、エバの背中をべとべとに汚す。
 
「あっ、熱ぅい♪」

 背中にかかる灼熱の感触を受け、エバが至福の声を上げる。新鮮な精液を載せたまま体を震わせ、快感を全身で噛み締める。
 同時に尻尾が肉棒を解放する。圧迫感から解き放たれた肉棒は、しかしまだ雄々しく天を向いて屹立していた。一回の射精では満足できなかった。
 
「やっぱり、これくらいじゃ満足できないよね」

 それはエバも把握済みだった。男の方へ向き直り、腰を降ろし、すぐに次の提案を出す。
 
「それじゃあ次は……ここ」

 口を開け、口の端に人差し指を引っかけ横に伸ばし、舌を前に出す。
 
「いれへ、いーよ」

 眉根を下げ、潤んだ瞳で見つめながら、思い切り下品な顔を作ってエバが声をかける。口内の赤く瑞々しい肉膜と、喉奥に続く暗闇がはっきりと見て取れる。
 嫁が自分から口を開けてきた。ここで躊躇うのは男ではない。
 男はすぐ行動に移った。エバの肩を掴み、力任せに口の中に男根を突っ込む。喉の奥と亀頭がぶつかり、それがスイッチとなってエバが指を離して口を窄める。
 中でエバが舌を動かす。自分から亀頭を舐め、鈴口を突っつき、太く熱い男根に巻き付ける。そしてその感触を味わった後、男が腰を振り始める。
 
「じゅるっ、ずるるっ! じゅぞぞっ! じゅうううっ!」

 わざと大きな音を立て、口を窄めたままエバが頭を動かす。離したばかりの手を男の太腿に添え、上目遣いで男を見つめながら口を窄め、ひょっとこ顔になってフェラチオを始める。
 品のない下劣な奉仕。美しさの欠片も無いエバの顔を見て、男の加虐心と射精欲求が否応なしに高まる。
 
「じゅるぅ、じゅっ――ふぐっ!?」

 ついに男が行動に出る。肩に置いていた手を離し、エバの側頭部を両手で挟むように鷲掴みにする。そのまま自分の腕を使って力任せに引っ張り、エバの口の奥へ無理矢理肉棒を突き立てる。
 亀頭と喉奥がぶつかる。それでタガが外れ、エバの口内で精液をぶちまける。
 
「ごっ、ごぼっ……ん、んぐ、ンッ……」
 
 白く苦い粘液が予告も無しに爆発する。エバは一瞬驚くが、すぐに気を持ち直し、放たれたそれを胃の中へ飲み込んでいく。彼の精をこぼすなんて絶対に出来ない。エバは嫌な顔一つせずに、放たれたそれを一滴残さず飲み干した。
 
「ごっ、ごく、ん……けほっ」

 すぐに口内が空になる。そうして全て飲み終えた後、エバがそれを証明するように再度口を大きく開ける。
 案の定、口から精液が零れ落ちることは無かった。そもそも残っていないからだ。それを見た男がゆっくりと肉棒を引き、魔物の口の中から取り出していく。
 やがて肉棒が取り外される。それでもエバは口を開けたままだった。歯列が見える程に口を開け、舌を出し、息を吐いて赤い喉を見せつける。
 
「あー……んふふ♪」

 こういうのが好きなんでしょう? こちらを見つめる興奮と幸せで潤んだ瞳が、言外にそう告げてくる。
 実際その通りだった。精を吐き出し、ひと段落ついたはずの肉棒が、その大口を開けるエバの姿を見ただけで再び硬さを取り戻していく。そして男は辛抱たまらず、エバの前に座り込んで彼女を抱き締めた。
 
「あっ」

 突然の抱擁にエバが固まる。声を殺し、じっと男を見つめる。
 その男が、自分の顔をエバに近づける。真剣な、それでいて熱く火照った表情で、エバをまっすぐ見据える。
 それだけで、エバは男が次に何を望んでいるのかを理解した。
 
「……はい」

 エバが目を閉じ、口も閉ざす。そこに男が顔を近づける。
 二つの影が重なり、互いの唇が重なる。
 再びのキス。唇同士を触れ合わせるだけのフレンチなキス。
 
「ん」

 唇から広がる男の感触と体温。それを全身で受け入れる。エバの心が喜びで満たされていく。
 エバの腹に肉棒が押し付けられる。そこから続けざまに白濁液が飛び出し、エバの腹と胸を塗り潰す。
 お構いなしにキスを続ける。二人揃って腕を相手の背中に回し、きゅっと抱擁を交わす。
 
「んふ……」

 そのままエバが後ろに倒れる。男が体を前に傾ける。二人の動きは全く同じタイミングで行われた。
 エバが下に、男が上の体勢になってベッドに転がる。男がエバに耳打ちする。
 ――挿れるよ。
 
「うん」

 エバが頷く。全てを受け入れる。静かに脚を開き、股間を露わにする。
 陰唇は既にびっしょりと濡れていた。男が体をずらし、肉棒の位置を調節する。
 亀頭が割れ目に触れる。そこから微かに電流が走り、二人を震わせる。
 
「きて」

 エバが短く言う。男が何も言わずに腰を前へ押す。
 硬い肉棒が膣内へ挿入される。びしょ濡れの肉を切り開き、ゆっくりと子宮へ向けて進んでいく。
 
「あっ、あは、ああっ……」

 その甘く痺れる感触を味わい、涙を流してエバが喘ぐ。そして亀頭の先が子宮口にぶつかったその瞬間、エバの体が大きく跳ねる。
 
「ああん!」

 目を瞑り、腰を浮かせて快感に悶える。その後すぐに浮いた部分をベッドに沈め、目を開けてか細い声で男に言い放つ。
 
「全部……入った……?」

 ああ。男が頷く。
 男の頬に手を添えながらエバが促す。
 
「じゃあ、動いて?」

 リクエスト通り、男が腰を振る。最初はゆっくり、膣全体を味わうように静かに動いていく。
 穏やかな快楽の波が二人を包む。男と女の小さな嬌声が重なり合い、部屋の中に響く。
 
「あッ、あッ、ふッ、ふうん……ッ」
 
 しかしすぐに足りなくなる。もっと快感に浸りたいと、二人の獣欲が顔を見せる。
 
「もっと速く、速くっ……!」

 エバが懇願する。男がそれに応え、ギアを上げる。
 ピストン運動が段々速くなる。腰に力を込め、一気に最高速度まで持って行く。パンパンパンパンと、肉の弾ける音が凄まじく小刻みなテンポで打ち鳴らされる。
 それが二人の心に火をつける。エバが男にしがみつくように抱きつき、男もまたエバの矮躯を抱き留める。二人の熱い息が混ざり合い、喘ぎ声も大きくなっていく。
 
「あッ! あッ! あぁッ! にゃぁン!」

 恥も外聞も投げ捨て、エバが叫ぶ。男も獣のように荒く息を吐き続け、唸りながら腰を振り続ける。
 二人仲良く理性を投げ捨てる。けだものになり、愛をぶつけ合う。
 
「出してッ、出してッ! だしてだしてだしてだしてえッ!」

 雌が吠える。雄が唸り声のトーンを二段階上げ、更に腰を強く打ちつける。肉棒で膣肉を抉り、二人の思考をさらに溶かす。
 やがて終わりが来る。男が腰を深々と打ちつけ、肉棒を突き刺し、膣の深奥で精液を撃ち出す。
 
「ひゅっ――」

 最初に来た衝撃を受け、エバが小さく息を吸う。
 
「――はあああああああああん♪」
 
 そして大量に流れ込む白濁の直撃を味わい、絶叫する。眉尻を下げ、涙を流し、悦びに顔を蕩かす。
 その雌の咆哮を聞きながら、男もまた精を吐き出していく。熱い塊を容赦なくぶちまけ、エバの肉体を白く汚し、自分色に染め上げる。
 
「好き、好き、好きっ! 好きぃぃッ!」

 胎内で暴れる精を受け、エバが再び吼える。愛する男を力いっぱい抱き締め、身も心も彼に捧げる。男はそれに答える代わりに、更に腰を押し付け、肉棒の先から再び熱を放つ。
 
「ま、また来るッ、またイクッ! イかせてっ――にゃああああん!」
 
 迸る純白のマグマ。悶え狂う女体。理性が吹き飛び、沼に沈む思考。
 
「出る! でるでる! 僕の中にあつあつせーし、いっぱいでちゃううううっ!」
 
 雌雄の絶頂は、その後しばらく続いた。




「はあ、はあ……はあ……」

 そうして散々に快楽を貪った後、二人は折り重なったまま事後の気怠さに身を任せていた。二人の結合は既に解かれ、男の分身は完全に萎れきっていた。
 そして二人とも、汗と愛液と精液で全身を濡らしていた。土砂降りの雨の中を走って帰って来たばかりのような、酷い有様であった。
 エバも男も、それを気にすることは無かった。相手の体液を汚いと思ったことは一度もない。むしろ愛した人の存在をより身近に感じることが出来て、幸福とすら感じていた。
 
「……ふふっ」

 そんな心地良い虚脱感に浸りながら、エバが笑みをこぼす。男がそれに気づき、彼女に視線を向ける。
 二人の視線が交錯する。直後、エバの方から顔を動かし、男の唇を奪う。
 
「ん……」

 さらにそこからエバが舌を伸ばし、男の唇をこじ開ける。唾液まみれの軟体生物が男の口内に侵入し、歯茎を舐め、相手の舌と絡ませる。
 
「んむ、くちゅ、じゅるっ……」

 負けじと男も舌を動かし、反撃する。二匹のナメクジが男の口の中で格闘し、身をくねらせて絡み合う。そうして二人は物静かなディープキスを続け、事後の余韻にどっぷり浸かる。
 
「ぷはっ」

 やがてエバの方から舌を引っ込める。ドッキングを解除し、唾液の線を引きながら顔を離す。まだまだ物欲しげな男の顔を見つめながら、エバが小さく笑って問いかける。
 
「気持ちよかった?」

 反射的に男が頷く。それを見たエバがくしゃりと笑い、男の胸元に顔を付ける。
 
「良かった」

 『自分』でも彼を気持ちよくさせることが出来た。エバはそれがわかって安堵した。男が自分に飽きるはずなんてないのに。それでもそう感じてくれるのが、たまらなく嬉しかった。
 男も同様に、そんないじらしいエバをどうしようもなく愛らしく感じた。ここまで自分のことを想ってくれるなんて。どこまでも一途な恋人の姿に、彼は感動すら覚えた。
 
「君の体、あったかいね」

 汗で濡れた胸板に頬をおしつけ、エバがしみじみ呟く。そのエバの後頭部に男が手を置き、アルプの頭を優しく撫でる。
 男の温もりに触れたエバが目を閉じ、男の体に自分の手を置く。心臓の鼓動を耳で感じ、堕ちた軍師が男に告げる。
 
「好きだよ」

 俺も好きだ。エバにしか聞こえないくらい小さな声で、男がそれに答える。エバは目を閉じたまま笑い、そして男の差し出す暖かさに身を委ねる。

「ふ、ふわああ……」

 その中で、二人の意識が急速に遠のいていく。存分に肉欲を満たした理性が、今度は二人に睡眠を促してくる。

「眠くなってきちゃった」

 俺も。

「寝ちゃう?」

 ――そうだな。

「それじゃあ……」

 二人はそれに抗わなかった。意識を手放し、抱き合ったまま眠りにつく。
 幸せな世界で惰眠を貪る。これ以上ないほどの喜び。
 人間だった頃には絶対に味わうことの出来ない至福。
 
「ん……すう……」
 
 むせ返るほど淫臭の立ち込める部屋の中で、男女の寝息だけが静かに響き渡る。
 そうして夢の世界にたゆたいながら、エバと男は思う存分幸せを噛み締めるのだった。
18/04/15 18:36更新 / 黒尻尾
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