読切小説
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泣きっ面に蜂
「女王様、今回のたねう……夫の候補者を捕獲してきました」

「今確実に種馬とか言おうとしてたよねっ!?」

「うるさいっ!女王様の御前であるぞ!?」

「ひぃっ!」
四肢を縄で縛られ、僕こと「先見 裕也(さきみ ゆうや)」は訳の分からない場所にぶら下げられていた。
まるでジパングという国がとてつもなく狭いのだとでも思わせたくなるような広大な広さを誇る、神殿の様な部屋が視界を埋め尽くす。
壁の至る所が白っぽい橙色の粘液で満たされていて、甘い香りが部屋の中に充満して中に居る者の脳を刺激する。
今現在、裕也は自身を捕えた女性(名前は知らない)に拘束され、棒の様な物にひっかけられて荷物のように吊るされていた。
それと言うのも、時間は数時間前に遡る。

――――――――――――――――――

「さて、今日は寺子屋を飛び出して、青空教室でも行うかっ!」

『はーーい♪』
いつもと同じように、年端も行かない子供達を引き連れて裕也は長屋から出てくる。
その後を追うように10人程度の子供たちが列を成して彼の行く道を付いてくる。

「せんせー、今日はどんな所であおぞらきょーしつするの〜?」

「そうだなぁ……裏山のでっかい樹の上なんかどうだ?」

「やった〜♪」
数人の女の子が、裕也を取り巻くように囲いながら質問を投げかけてくる。
彼がそれに答え指差す方向には、少し盛り上がった小さな丘の様な場所があり、その頂上には他の樹の倍はあろうかと言うような大きな樹が存在している。
ここの村人の全てがその存在を知っており、一種の神木の様な物として扱われている。
樹齢ははっきりとはしていないのだが、相当昔からあの場所に鎮座しているらしい。
故に神木と謳われている訳だが。

「ほんと皆好きだよなー、あの木」

「だってあの木、たまに色んなのが落ちてくるんだよ?」

「へー」
子供たちがその神木を好いている理由は、信仰心だけではない。
実はあの大樹、時折吹く強い風などで枝が強く揺れると、上の方から果物が降ってくるのだ。
降ってくるものは林檎であったり蜜柑であったり柿であったりと、何故か疎らであり、それも神木と謳われる要素の一つとされている。
因みに、裕也も知ってはいたのだが自分で手を伸ばしても何も振って来ない為、半信半疑の心持ちである。

「さって、着いたぞー」

「わーい♪」
あっという間に丘を登り切り、目的地へと到着した一行は、到着と同時に自由行動となった。
男の子はそこら中を走り回って鬼ごっこやかくれんぼに勤しみ、女の子は他の女の子と一緒に集まってままごとや言葉遊びに興じている。
しかし、良く見ると大樹の根本で一人だけ座り込んでいる女の子を見つけた。

「(あんな子、ウチに居たかな…)……どうしたー?遊ばないのかー?」

「……ッ…」
座り込んでいて良くは分からなかったが、まるで触角のような髪の毛がピクピクしている少女だった故に裕也はすぐにその子の特徴が覚えられた。
特に何かするでもなく、日陰でただ座り込んで俯く少女が気がかりになった裕也は、少女へ手を伸ばす。

「ほら、そんな所に居ないで一緒に遊ばないか?」

「……せん…せ…」
少女に声を掛けて、やっと裕也は少女が何をしていたのかに気が付いた。
泣いているのだ。
俯いたまま一向に動じず、地面にノの字を只管書いていた少女は、その頬を涙で濡らしていた。

「どうしたっ?!誰かに虐められたのかっ?!」

「ぇぅ……ちがっ…ひぐっ…」
慌てて少女の傍へ駆け寄る。
そこまで来てやっと分かった事がいくつかあった。
まず、彼女の傍まで来て、彼女の触角っぽい髪型だとおもっていたものは、本物の触角だと言う事が分かった。
髪の淡い栗色の髪と全く違う、ドス黒い色をしていたのだ、それは。
それともう一つ、少女には他の子供と違う点があった。
彼女の腰からは袋の様な物が膨らんで伸びていて、先には鋭い棘の様な物が獲物を狙うかのように光っている。
その袋は、黄色と黒の縞模様で出来ていて、まるで虫や植物が用いる「警戒色」のように思えた。
黄色や黒、それらの組み合わせは人間を含めた動物の本能に対して警戒心を持たせるとか何とか聞いた事があった裕也である。
しかし、それらの話を聞いたのですら何年前かも思い出せず、思い出す事すら出来なかった。

「き、君は一体…」

「姫様ぁ!」

「ぐふぅ?!」
少女の正体に疑問を持った裕也。
だがしかし、次の瞬間には身体の自由を奪われていた。

「リカ姫様っ!御無事でしたかっ?!」

「えぐっ……す…すず…」

「あががが…」
横っ腹に強烈な痛みを感じ、そのまま木の根もとに叩きつけられた裕也。
そんな彼など知らず、泣いていた少女の元へ一人の女性が飛んでくる。
そう、文字通り「飛んで」来たのだ。
背中に生えた薄い被膜の様な羽根を使い、まるでロケットのようにすっ飛んできた。
そして彼女は、少女を抱き抱えるとまるで赤ん坊をあやす様に背中をポンポンと叩いて泣きやませようとしていた。
見ている限り姉妹か親子のように思えるが、そんな思考を巡らせる間もなく裕也の意識は消え去った。

――――――――――――――――――

「と、まぁこんな過去がありましてですね…」

「女王様!このような輩の言う事を聞いてはなりませぬ!?こやつはリカ姫様を泣かせたどころか、連れ去ろうとした極悪人ですっ!」

「ちょっ!?そんな事してn…」

「黙れ外道ッ!」

「ひっ!」
裕也は、四肢を縛られた状態で必死に弁解を試みた。
今日一日の教師としての仕事ぶり、リカと呼ばれた少女が泣いていた事、隣の女性になにかしらの危害を加えられた事。
それら全てを話していたと言うのに、この女性はそれらを足蹴にして脅迫を以てして黙らせた挙句、喉元に鋭い槍を突き立てる始末。

「話は分かりました、スズ。貴方はもう下がりなさい」

「御意に………貴様、後で覚えていろ…」

「ひぃぃ…」
女王と呼ばれた女性は、裕也に対して敵対的な行動や言動を全く慎まないスズを、言葉で以て下がらせる。
それに従いこの場を後にするスズだったが、離れる直前に裕也の耳元へ最後に脅迫の言葉を残して去っていく。
この場に残されたのは、玉座に座する女王と、四肢を縛られ動く事すらままならない一人の人間のみとなった。

「さて、貴方……ええと…」

「あっ、先見 裕也と言います」
何かを言おうとしていた女王の言葉を察し、裕也は自分の名を彼女へ預ける。
そして、裕也の名を解した女王は先より言葉を続ける。

「ではユウヤ、一つ確認です。スズが言うように、我が娘のリカへ不埒を働きましたか?」

「神様仏様に誓って、そのような事はございません」
それは先程までに言った事にも含まれていた。
泣いていた彼女を見つけ、何事かと思い声を掛け、慰めようと救いの手を差し伸べた所へ彼女の横槍を受けて意識を失ったと言う事実を。

「ふむ……では、この件に関しましては不問と言う事と致します」

「ありがとうございます」
とりあえずの所の疑いは晴れたようだった。
しかし、まだ問題は残っている。
この場所へ運ばれた時に、スズはこうとも言っていた。
「夫の候補者を捕獲してきた」と。

「では続いての問題ですが……貴方は私の夫となることは出来ません」

「は、はぁ…」
元々なる気も無いし、なって下さいと言われても裕也が困る。

「そして何より、貴方には不能の烙印を押させて頂きます」

「ふ、不能っ!?」

不能:〜〜出来ない事の意。また、それらの事を行う能力が欠如している事。

そして、『性的機能が著しく欠如している人間』を表す隠語でもある。

「お、俺は不能なんかじゃ…」

「お待ちなさい。落ち着いて下さい」
急に自身を不能と言われ、顔を真っ赤にしながら裕也は反論に出ようとする。
しかし、女王は手を突き出して待ったを掛けた。

「このコロニーでは、女王に献上した男性が女王に見合わないと判断されると、捕獲した働き蜂へその所有権が移るのです」

「物扱いっ?!て言うかそのままだと…」

「ええ、十中八九、スズの手で拷問の限りを尽くされるでしょう」
女王へ献上する際でですらあれだけの攻撃性を裕也へ向けていたのだ。
主導権が彼女の手に渡ったとなれば、どんな事をされるか分かった物では無い。

「ただしこの決まりには穴があるのです。不能と女王に判断された男性は、働き蜂に所有権を移されず、このコロニーで従事して頂く事となるのです」

「ふぅむ……って、俺は元の場所へ帰りたい…」

「そんな事をすれば、スズが地獄の果てまで追ってきますよ?きっと」
その女王の言葉を聞いて、裕也は背筋が凍りつく感覚に捕らわれてしまう。
やっと家に帰れたとしても、寺子屋で子供たち相手に授業を行っている最中に武器を携えた暴漢に押し入られても困るというものだ。
そう考えると、女王の出した提案は筋が通っているし、救済策としても申し分ない。
和解が成った所で家へ返して貰うように頼みこもうと裕也は心の中で静かに決心した。

「さて、救済策は見つかりましたが、決まりですから働いて貰わなくてはなりません」

「ウチの家訓にも「働かざる者食うべからず」ってありましたし、全然構いませんよ」

「ふふっ、それは助かりますわ♪」
それから暫くの間、女王と裕也は話に華を咲かせていた。
仕事の話から始まり、いつの間にか裕也の日常生活へすり替わって、終いには女王の将来の夢まで話が昇華していた。

「あらあら、行けませんわ。ついつい話が盛り上がってしまって♪」

「いえいえ、俺の方こそすごく楽しい時間を過ごせましたよ♪」

「女王様、茶菓子をご用意致しましたが、いかがなさいます?」
黄色い話題に華を咲かせる両者だったが、暫くして一人の女性がカートらしき物を押して入ってくる。
なんとも豪勢な西洋細工を施した前掛けに、清潔感とお洒落が丁度良く合わさった西洋の衣服を身に纏った女性が、綺麗なお辞儀をして見せてくれた。
向こうではこう言う格好をした職の事を「メイド」と呼ぶらしいが、何分ジパングだとどうも「冥土」に聞こえてしまうのであまり広まってはいない。
かく言う裕也もメイドの存在は、所謂サブカルチャー的な物として知識に入れていた程度であり、本物を見るのは初めてだった。

「あら、キャロ。ありがとう、美味しく頂くわ♪」

「あ、どうも……一緒にどうです?」
見る物全てが、蜂蜜をふんだんに使った甘いお茶菓子で統一されていて、一種のブランド製の様な物すら感じられた。
茶請けとしては色合いが鮮やかで、どれもこれも西洋の物ばかりが並べられていて裕也の目にはそれらがとても物珍しく映る。
それらを食べる事に多少の遠慮が生まれた裕也は、キャロと呼ばれた女性に同席を促す。

「いえ、私達メイドが客人や主と共に食事を摂るなど…」

「キャロはメイドの鑑ですが、少々厳し過ぎる所もあります。ですから、自分で選ぶようにと…」

「人数は多い方が美味しいに決まってますって。お願いします。ね?」
裕也が手を合わせて頭を下げ、懇願するとキャロは少々俯いてから渋々と言った具合に顔を上げて。

「お客人のお願いとあれば……女王様、宜しいでしょうか」

「ええ、構いません。一緒にお茶を飲みましょう♪」
女王が許可を下し、隣の席にキャロを座らせた。
それから数時間はこの三人で茶菓子を食べながら、それぞれの話に華を咲かせていく。

―――――――――――――――――――

数時間もの間、話をして幾つも分かった事がある。
女王の名前が果てしなく長かった為、皆が名前をモジってクィール女王と呼んでいる事。
この蜂の巣のコロニーが、数百年続く由緒ある立派な一つの王国である事。
そして何より、コロニーの中に住んでいる全ての働き蜂達が、クィール女王の娘である事に裕也は一番驚いた。
しかもリカが女王蜂としての資格を持って生まれて来た特別な娘である事も教えてくれた。
ただ、リカの話をしている時のクィールの表情が若干曇っていた事を裕也は不思議に思っていたが。
何はともあれ、事が片付くまでの間裕也は、このコロニーで幼いホーネット達の教育係に任命されたのである。

「さって、ここか………さっすが蜂の巣…」
裕也がコロニー内を歩いていると、一軒の西洋風の頑丈な建物が見えた。
そこが学校だろうと確信して、ドアを開けようとノブに触れた時に不思議な違和感を覚えた。
まるで固まった卵細工にでも触れているかのような触り心地がしたのだ。
良く見ると、頑丈そうに見える壁も全て、蜂の巣と同じように蜜蝋で出来ていたのである。
グジュグジュと言う粘りのある水音こそ無い物の、これは蜜蝋であると裕也は確信を持てた。

「と、とにかく今日から学校だ。皆に挨拶しなきゃ…」

―――――――――

「えーと、今日からこの学校で教師をする事になった先見 裕也です。宜しくお願いします」

『よろしくおねがいしまーす』
どうやら子供たちの第一印象は好印象を与えてやれそうだと、裕也は心の中でホッとしていた。

「それじゃ、早速授業始めるぞー」

『はーい♪』
こうして、裕也先生によるタメになる授業が始まった。

――――――――――――――――――

「それじゃ、皆気を付けて帰るんだぞー?」

「はーい♪」

「せんせー、ばいばーい♪」

「またねー」
決められた時間を勉強に費やし、子供達をまた一歩、そしてもう一歩と言う具合に知識の奔流へ巻き込んでいく。
しかし、裕也にはまだ心残りがまだあるのだった。

「しっかし、リカ。学校に来て無いとは……風邪なのかな…?」
今日の届け物をしっかりと包みに入れて、裕也は学校を後にして女王の居る王宮へ向かった。
リカは次期女王なのだから、女王と共に住んでいる事は確実なのだろうと思ったからである。

――――――――――――――――――

「女王様ー、お届け物が…のわっ!?」

「チッ、今度は外さんっ!」
女王の間へ到着した裕也は、何やら書類に目を通していたクィールへ届け物の事を伝えようとする。
だが、それを拒むかのように一本の槍が裕也のすぐ目の前を横切って飛んで行く。
飛んできた方向を見ると、投げの構えのままのスズが殺気立った目で裕也を睨みつけてくるではないか。

「スズ!おやめなさいっ!」

「しかし女王様…ッ」

「先刻教えた通りです!彼、ユウヤに貴女の言う様な事実は認められませんでした。夫の件も、彼が不能と言う事で今は教師として従事して貰っているのです!」
先程まで書類に目を通していた時とは違い、怒りが表だって女王の口から洩れているとすら、裕也には感じられた。
それらのお叱りを受けたスズは、これまた煮え切らないとでも言いたそうな表情をしながらも、女王の前へ首を垂れる。

「すみません。またやってしまいましたね」

「いえ、実は学校に行く途中でも一度刺されましたので、もう慣れました」
裕也の言葉に、女王は一瞬だけ目を見開いて驚いたかと思うと、パチンと指を鳴らす。
すると、どこに居たのかあっという間に数人の女性が女王を囲むように姿を表して、スズを拘束して連れて行く。
スズもそれを覚悟していたかのように無抵抗になり、そのまま連行されどこかへと姿を消した。

「……さて、お届け物でしたね」

「………あ、は、はい!」

「実は、リカとは少々ケンカをしてしまっていまして、今の彼女は別の場所に住んでいるんです。こちらがその住所ですので、そちらへ向かって下さい」

「は、はい…」
女王から一枚の紙を貰い、そこに書かれている住所へ向けて、裕也は歩き始めた。
家族の事情に首を突っ込む気は無かったのだが、こんな簡単な事は容易に推理できた。
最初にリカと出会った時に、彼女が泣いていたのはきっとこれが原因なのだ。
何かしらの事情でクィールと口論してしまい、その結果として家を飛び出し、あの樹の下で泣いていた所を自分が見つけた。
そして、彼女のボディーガードを務めていたスズがそれを勘違いして裕也を攻撃してリカを守ろうとした。
まぁ、こんなものだろうか。

―――――――――

などと考えている内に、リカが住む一般の居住区に到着した。
作りはやはりどれも蜜蝋だったが、こちらはどこかジパング風味の漂う長屋に見えた。

「……ここか…」
あっという間に住所が見つかった辺り、裕也自身もこのコロニーに馴染んで来てしまったのだろうか。

「リカ〜……入るぞ〜…?」
扉を開け、中に入る。
中は意外とお洒落に飾られており、一面に色々なぬいぐるみが置かれていてなんともメルヘンチックだ。
その奥にもう一つ部屋があり、そこから人の気配がした。

「リカ〜…?」

「…せんせー……?」
戸を開けると、中ではリカがぬいぐるみを抱いたまま何やらモジモジとしていた。

「………んしょ…」

「り、リカッ?!」
ゆらゆらと裕也に近づいてきたリカは、ゆっくりと裕也に抱き付いてきた。
やんわりと包み込むような抱擁。
そして、抱きつかれて初めて気づいた事は、彼女の胸が年不相応に成長が著しい事であった。

「(いかんいかん何を考えてるんだ俺は。相手は子供だぞそれも女王の娘だし何より俺の生徒だし)……」

「せんせー…ずっと一緒に居て…?」

「それにまだ年端も行かない子だし……うぇえっ!?」
どうにも変な方向に事を考えてしまう裕也などお構いなしに、リカは裕也の頬にキスをした。
ブツブツと呟いていた裕也だったが、流石にそれには驚いて声に出てしまう。
声が裏返っていた事は、誰にも知られたくない秘密である。

「な、何だどうしたんだ一体…」

「だーからー……んむっ」
頭の中が混乱し、まるで現状の把握が出来ていない裕也。
そんな裕也の顔に手を添えて、自分と同じ位置まで持ってくる。
そうして、その唇を奪う。
しかし、ただ奪うだけでは無い。

「っ?!ゲホッ…ゴホッ……(何か飲まされたっ!?)」

「うふふ…」
咳込みながら、何をされたのかを把握した次の瞬間には、裕也はリカの笑い声と共に意識を徐々に手放す。

――――――――――――――

「うぅ……」

「あっ、せんせー目が覚めた?」
意識が戻ると、裕也はリカの部屋のベッドの上に寝かされていた。
リカの向けてくる笑顔にちょっとドキリとしてしまう自分の心を抑えつつ、周りの状況を確認することに努める。
まず分かった事は、自分が何故か上半身全裸だと言う事。
そして、両腕をベッドに縛り付けられている事だった。

「な、なんじゃこりゃーーーーーーーーっ!?」

「お母様の部屋にあった本に、「こうすれば男性はとても喜びます」って書いてあったの」

「おかあさまぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁっ!?!?」

―――――――――
「ヘクチッ」

「女王様、お風邪をひかれては事に…」

「大丈夫よ。それより急ぎましょう」

「御意に」
―――――――――

「んもぅ……うるっさい!」

「んむぅ!?」
不機嫌そうに眉を吊り上げたリカが、強引に裕也の唇を奪う。
だが、それだけでは収まらなかった。

「れぅ……んんぅ…」

「はぐぅ…‥じゅるる…」
まるで大人が深く愛し合う際にするような深いキス。
それを今、目の前の少女が自分に対して行っている。
そう考えるだけでも、裕也の脳は蕩けて消えてしまいそう。
だったのだが、次の瞬間には強烈な違和感が彼を襲う。

「っ?!プハッ!ハァ……ハァ……」

「あはっ♪大きくなっちゃったねー」
確かに、先程と同じように脳は蕩けそうな程の甘い陶酔に浸っている。
だがそれと同時に、自身の口の中を何かが流れ込んでいった感覚もあった。
何か、寒天のような柔らかい物が口の中をスーッと流れ、喉を楽々と通過して胃へ向かう。
異物が通って行った感覚の後には、異常なまでの身体の疼きや呼吸の乱れを覚えた。
身体の内側から火照ってきて、まるで興奮しているような。

「うぐっ……そ、そんな…やめろ…」

「えー?やめちゃっていいのー?」
リカの尻に当たっている、裕也のソレ。
しかしソレは、裕也が普段思っている自分のモノよりもずっと大きかった。
彼女のお尻に包まれて尚、その亀頭が飛び出してブルブルと震えている。
こんな物を彼女にぶち込もうものならリカは壊れてしまうだろう。
少女の膣をこんな丸太の様な逸物で突き穿つ。
そんな考えが、裕也の頭の中を占領して行く。

「か、考え直せって……こんなの入れたら…壊れる…ぞ…」

「あー♪やっぱりいれてほしいんだー♪」
良く見れば、彼女の表情も火照りを帯びていてとても淫らに思えた。
その表情を見ているだけで、裕也の方までそう言う事に対しての抵抗が無くなって行くのを感じる。

「ねー、さっきのおくすり、どんなのだとおもうー?」

「さっきの……今飲ませた薬か…?」

「あれねー、男の人にはびやく?って効能しか書いて無かったけど、女の人にはね、はいらんこーか?ってのがあるんだって〜♪」
その言葉に、裕也は言葉を失った。
排卵効果、つまりは危険日同然なのである、この幼い少女は。
そんな裕也の精神的な焦りなど無視してリカは、裕也の逸物を握る力を強めて自分の股の間へ持って行く。

「えへへ、子作りしようね♪せんせー♪」

「ま、待て待て!初めては痛いって聞くぞ!考え直せって!」
裕也も、予備知識として程度ならば知っていた。
女性には処女膜と言う物があり、それは初めて性交を行った際に裂けて消えるらしいが、その裂ける時の痛みが強い。
裕也は少なくとも、子供の頃に親からそう教えられていた。

「うぅー……」

「な?大人になってからの方が痛みだって無いだろうし…」

「我慢するもんっ!ぜーったい!!」
そう言って、リカはそのまま思いっきり腰を沈める。
ズチュッと音がして、それと同時に裕也のいきりたったモノがリカの膣に呑み込まれていく。
その膣内はとてもキツく、彼女の初々しさが伝わってくるようだ。

「んくぅぅぅぅ……いたいよぉ…」

「うぐぅ……だ、だから言ったのに…き、きつっ!?」
二人の繋がっている部分から微量の血を滴らせながら、リカは裕也にもたれかかる。
逸物は完全に膣内へ侵入しており、どれだけリカの膣内を抉るように突き進められたか分からない。
根元までソレを招き入れたリカの膣は、痛みと気持ち良さとが混じり合ってギチギチとモノを締め付ける。

「せんせーの……こどもほしぃよぉ……かぞくがぁ…ほしいよぉ〜」

「くぁっ!(こんな事、早く止めさせないと……っ!?腕が!)」
淫猥に腰を振り始めたリカ。
その下で、射精を我慢しながら頭を巡らせ考えていた裕也は、ふと腕の縛りが緩い事に気付く。
これなら、あともう少しで解けてしまいそうだ。

「いっ……ふぁあ!いっひゃうぅぅぅぅ♪」

「ぐぁ!?だ、だめだ…もぅ……で…(こんな幼い子を孕ませるのか、俺は……)うおぉぉぉぉ!」
思いっきり腰を打ち付け、リカが果てる。
その時の膣の締め付けについに裕也も耐えきれなくなり、精液が出たそうによじ昇って来た。
しかし、裕也の心の中で自制心が働き、それが力へと変わる。
思いっきり力を込め、腕の拘束を抜けたのだ。
そのまま裕也は、なおも腰を振っているリカを押し倒す。

「はぅ!せんせー……一人は……やだよぉ…一緒が…いいよぉ…」

「っ!?り、リカぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
押し倒し、彼女の拘束から完全に逃れた裕也。
リカは裕也に押し倒され、このまま嫌われてしまうのを恐れて泣きそうになる。
裕也に嫌われてしまう、それは即ち自分の愛する人に嫌われてしまうと言う事。
そうなって欲しくないリカは、もう泣く事しか出来ない。
が、そんなリカの表情を見て裕也は、心のどこかのタガが外れてしまう。
そのまま激しく腰を打ち付け、第二ラウンド開始となった。

「ひゃぅあ!せ、せんせー♪」

「好きだっ!リカ!お前が好きなんだぁ!」
いきなりの事に戸惑いながらも、裕也に好きだと何度も言われてリカの表情は歓喜の色に染まる。

「出すっ!いっぱい出すぞぉぉぉぉ!」

「うんっ!せんせーのっ…こだねいっぱいちょうらぁぁぁい♪」
一際強く腰を打ち付けて、リカの膣の中へ大量に二人の愛の証を流し込む。
それらはドクドクと流し込まれ、リカの中へ送り込まれていく。
リカは、愛する人に中だしして貰った嬉しさ、そして愛する人と一緒になれた喜びに涙が止まらなくなった。
女が喜ぶと嬉しい、とは良く言った物である。

「はぁ……はぁ…せんせ……だぁいすき…」

「あぁ、俺もだ!先生もリカの事大好きだぁ!」
体力の限界に達して、リカは裕也に抱き付きながら意識がボンヤリし始める。
それでも尚、裕也はリカの膣内へ精液をドクドクと流し込み続けるのだった。
しかし、二人の情事はいつまでも続きはしない。

「姫様、お迎えに…貴様ぁ!」

「リカ!リk…どむぐふ!?」
突然、リカの部屋の扉が開き、外からスズがなだれ込んでくる。
そうして、一瞬で槍を取り出して裕也を突き飛ばす。
当然、裕也はそのまま槍に刺され、壁まで飛ばされる。
二人の繋がりは、それによって断ち切られた。

「よりにもよって、就任当日に姫様を犯そうとは、いい御身分じゃないか!死ねぃ!」

「あががががががが」

「お待ちなさい!」
壁に突き飛ばされグッタリとしている裕也へ、スズは怒りを込めた槍を裕也へ向けて突き刺した。
と、思った矢先に一人の女性の声によりその腕を止めた。

「し、しかし女王様…」

「しかしもかかしもありません!裕也、大丈夫ですか?」

「あがががが」
怒りを剥きだしにしているスズを押し退け、裕也の安否を気遣うクィール。
しかし、裕也には返事する事すら出来なかった。
槍に塗られている麻痺毒の所為で、全く身体の自由が効かないのだ。
しかし。

「パクッ……んむっ…」

「あがががが…んんぅ…」

「じょ、女王様っ!?!?!」
何かを口に含み、クィールが裕也にキスをした。
そうして、自分の唾液を絡ませた物体を、裕也の口の中に直接流し込む。
舌を絡め取り引っ張り、無理矢理にその物体を喉へと送りこむ。
それは、思い通りすんなりと喉を通って行く。

「……んん……れる……んふぅ…」

「じょ、女王様なんて事をっ?!?!」
もうキスの必要もないだろうに、クィールは尚も裕也とのキスをやめようとはしなかった。
自らの舌を裕也の舌と絡めあわせ、自身の欲を満たして行く。

「んむっ……プハァ…すごいです…」

「女王様ぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「あふぅ……おかぁさまぁ…」
裕也とのキスをやっとこさ止めたクィールの表情は、すっかり火照ったように真っ赤になってトロンとしていた。
慌てふためくスズの隣で、リカが秘部から精液をドロドロと垂らしながら起き上る。

「ひ、姫様!大丈夫で…ひぎっ!」

「スズ……せんせー刺しちゃダメ…」
リカを心配したスズが、彼女を助けようと手を伸ばす。
しかし、リカは傍に転がっていた槍を取り、それをすぐさまスズの足へ突き刺した。
肉が抉れるような構造をしている訳ではないそれは、突き刺さった点から毒を体内へ送り込み、その効果は即効性である。
使い慣れた麻痺毒に身体を犯され、スズはその場に崩れ落ちる。

「裕也…大丈夫ですか?」

「えぇ……なんとか…」
クィールがなんとか意識を保ち、裕也を気遣う。
先程飲まされた物の効果もあってか、裕也の身体のしびれはあっという間に無くなった。
その代わりに残っているのは、我慢しきれない程に高まった性欲だけである。

「せんせー…スズのここに入れたげて♪」

「リカの望みとあれば…」

「ひぐ……や、やめろぉぉ…‥うあぁぁ」
リカが、身体の自由が効かないスズの足を広げさせ、裕也にモノをぶち込むよう命じる。
それに答える為に、裕也はスズを押し倒す。
そうしてそのまま彼女の膣へ自分の逸物を突き入れた。

「うあぁぁぁぁ!お、おっきすぎぃぃ…」

「あはっ♪スズ、かわいい〜♪」

「本当に♪」

「お、おふたかた…たすけ…あぅぅぅぅぅ♪」
裕也のモノを受け止めきれず、スズはあまりの気持ち良さに声を上げる。
その表情は卑猥そのもので、舌は出て涎は垂れ、目は上を向いてと、とにかくエロいの一言に尽きる。
そんな表情を見て、女王親子はその様子を見守っていた。

「でるっ!出すぞ…スズぅぅぅぅ!」

「お、お前がその名で…よぶ…なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
最後の一撃とばかりに大きく突き上げて、スズの膣内へ大量の精液を送り込む。
ドクドクと流れ出て行くそれらはスズの膣内を犯し、彼女を快楽の渦へ巻き込んでいく。
同時に達した二人は、そのまま暫くは快楽を享受する。

「では、次は私がっ!裕也!んっ♪」

「んむぅ……プハァ!クィール!!クィールッ!!」
スズの膣へ散々流し込んだ裕也へ、今度はクィールがキスをした。
そうしてスズから離れた裕也は、今度はクィールの膣を突きあげ始める。
今までに何十何百と子供を産み続けて来たとは思えない程締まりの強い膣に、裕也は全く余裕が持てなかった。

「気持ちいぃ!!すごく、きもちぃ!出るっ!出すぅぅぅぅ!」

「来て下さいっ♪裕也のっ!こだねせーえきぃ!たっくさぁぁぁぁん♪」
クィールの膣内へ、ドクドクと我慢できない程大量に精液を流し込んでいく。
それらは全て、クィールの膣のさらに奥へ吸収されて行き、子作りに役立てられる事だろう。
そうして、今度はまたリカが裕也と愛し合い、その次にスズが自ら裕也を求めてきたりと、4人でいつまでも愛し合い続けたのであった。

―――――――――――――――――――――――――――――――

「はぁ……はぁ……せんせー…」

「リカ……あいしてる……スズも、勿論クィールも…」

「はぁ…はぁ……な、なんという…むせきにんな…」

「うふふ、裕也はトンデモな旦那様になりそうですね…♪」
裕也に抱きついている3人全ての頭を、裕也は撫でてやった。
それぞれが嬉しそうな表情を返し、4人の深く長い愛の情事は終わりを告げた。

「せんせー……ずっと一緒にいようと思ったら、どうすればいいの…?」

「ずっと一緒に…?そんなの決まってる、結婚すればいいのさ」

「けっ!?」

「結婚っ!?」
裕也のその言葉に、3人の驚く声が重なって聞こえた。

「あぁ、皆でな。リカもだし、スズともクィールとも結婚する!」

「そ、そんなことが…」

「はい、許されます。女王様の一存によりますが」

「きゃ、キャロッ!?どうしてここにっ!?」
裕也がトンデモな発言をして、驚く全員の前へ一人のメイドが姿を現した。
それは、紛れも無くキャロその人だった。
その事に一番驚いていたのはクィールだったが。

「リカ姫様を探しにここへ。それで、重婚の件ですが、女王様がお決めになれば問題ありません」

「そ、そうなのですかっ!?」

「はい、確かにそうですね♪」

「みんなでけっこん〜♪」

―――――――――――――――――――――――――――

あれから、どれだけの月日が流れただろうか。
愛する人たちは日に日に成長していく。
かと思えば、いつまでもその美しさを絶やす事は無い。
またある時は以前のように立ち戻り、子供のように愛し合う事もあった。

「おとーさま、おかーさま♪いってきます♪」

『いってきまーす♪』

「あぁ、いってらっしゃい♪」
数人の子供達を見送り、裕也は手を振って見送ってやる。
子供たちは今から学校に行く。
それを見送る者は裕也以外にも居た。

「貴方、大好きです♪」

「リカ?どうしたんだ、いきなり」
裕也の隣に立っていた女性。
それは、女王として立派に成長した姿のリカだった。
裕也の腕に抱き付き、まるで誘っているかのようにその豊満な胸の間へ彼の腕を埋める。

「リカだけの旦那様じゃありませんよ、裕也?」

「分かってます、お母様♪」
リカに続いて、裕也を後ろから抱きしめる女性がいた。
初めて会った時からあまり姿も変わらずその美しさを保ち続けているのは、クィールだった。
リカに王位を譲ってからは、裕也達の住む家へ隠居している。

「お嬢様方は抜け駆けが大好きですね…んむっ…」

「んっ………プハ…キャロもだろ?」
玄関口の戸締りをしてきたキャロが、唐突に裕也の唇を奪う。
すぐに解放されたが、キャロの表情が赤く染まっているのを、他の皆は見逃さなかった。

「旦那様…お食事の用意が………そんな…」

「ほら、スズもおいで♪」

「は、はいっ♪」
最後に、家の中からエプロン姿で登場したのは、髪を括って可愛らしさが増したスズだった。
彼女が裕也を呼ぼうとした時に視界に入った物。
それは、数人の女性に抱きつかれ、殆んど身動きの取れなくなっている自分の旦那の姿であった。
が、裕也に呼ばれて顔を紅くしながらも、スズも裕也に抱き付くのであった。

こうして、4人に増えた愛する妻たちと共に、裕也は愛に溢れる生活を送るのでした。

〜fin〜
13/01/01 00:57更新 / 兎と兎

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