連載小説
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ワイン風呂
 
〜ワインに泥酔?貴方に泥酔?〜


今日は待ちに待ったお楽しみ変わり風呂の日。本当はどんな御風呂か知ってますけどね♪今日だけは御屋敷のバスルームはお休みしてね。

「それでは御父様お母様、行ってきますね」

「本当は心配で私達も行きたいのだが・・・」

「あらあら・・貴方ったら。本当に子煩悩ですわね♪」

もう、御父様ったらいつまでも私を子供扱いするんですから・・・。準備は万端です。それでは行って参ります。



「んふふふふ・・・♪嗚呼・・とうとうこの日がやってまいりましたわ♥」

幼い頃から夢見ていた憧れのワイン風呂。それも陶酔の果実から造られたワインでは無く、純粋な葡萄から造られたワインで満たされた御風呂・・・、想像するだけで素晴らしいです♪芳醇な魔界ワインも美味しいのですが・・・やはり私は本物を一度でいいので味わってみたいのです。熟成された葡萄達が織り成す魅惑のハーモニー。何度私の心を弄んだ事でしょうか。ですが、それも今日で御終いです。そう・・・・、何度も夢を膨らませてくれました、・・この、


「この金玉の湯が私の心を・・・全てを満たしてくれるのです!!」


「・・・・・・」

あ、あら?私としたことが・・興奮して我を見失っていましたわ。

「突然やってきて店先で踊られても困るんだけどねー」

「し・・失礼しました」

なんという事でしょう・・・、嬉しさの余り金玉の湯の前で踊っていただなんて恥ずかしいですわ。

「で、湯に浸かりに来たの?それとも踊りに来たのかしら?」

「うぅ・・・、そんなに意地悪しないでください。今とても恥ずかしいのですから・・」

「はいはい、わかってますって。はい、それじゃあ200円ね」

「・・・はい?」

「入浴料金よ?・・もしかして」

そ、そうでしたわ!えっと・・確かここに御父様が持たせてくれましたものが、・・ありましたわ!

「はい、どうぞ♪」

「うちはカード払いは受け付けてないのよね〜」

えっ・・・、ど、どうしましょう。ドレスのどこかにお金が無いでしょうか・・・。これでは無いです・・、これも違います。ええっと・・・これも違います・・・

-ドンッ-

「キャァッ!!」

い、いやですわ・・私、皆さんの邪魔になってましたわ・・。

「す、すいません!落とした物拾います!!」

「あ・・・」

私が店先で皆さんの邪魔をしてましたのに・・

「はい、これで全部です。本当に申し訳ありませんでした、それでは急いでますので」

「ありがとうございます」

なんて親切な方でしょうか。見ず知らずの私に・・・あら?これはもしかして・・。

「これで・・いいですか?」

「持ってるじゃないの。はい、御釣り300円ね」

どうして私の手の中に500円玉があったのかしら・・。・・・ッ!?もしかして先程落とした物を手渡された時に・・。


「・・・・ありがとう・・・・ございます」


「何か言った??」

「いえ、なんでもありません!!」

ありがとうございます、もし・・もう一度出逢える事がありましたら・・必ず一言お礼を。









「んふふふふふふ・・・・♪初めっから見えててわかってたわよ♪」






ふわぁぁ〜〜・・・、銭湯って凄いのですね〜。御屋敷のバスルームより大きいですわ。それに人が沢山居て賑やかですわね。先日、お母様が主催しましたダンスパーティと同じぐらいですわ〜♪これは・・・、ここでお召し物を脱ぐ、という事でしょうか?皆さんも脱いでますし・・合ってますよね?ええと・・タオルを体に巻くのでしょうか。皆さんも巻いてますし。



-カラララララララ・・・-


「素晴らしいですわ・・・、こんなに素晴らしいのでしたらもっと早くに来れば良かったです・・」

右を見ても左を見ても御風呂、御風呂、御風呂♪お屋敷では見られない御風呂ばかりです。見渡す限り、御風呂ばかりなんて幸せですわ♪ええと確か・・御湯に浸かる前に掛け湯をするのですね。髪をアップにしてタオルを頭に軽く撒き付けて・・・はぁ・・温かいです。


「・・・・ハッ!?和んでる場合ではありませんでした!私は御目当てのワイン風呂に浸かりに来たのです!」

そういえば・・ワイン風呂が見当たりませんね?これは一体どういう事なのでしょう?確かに今日の変わり風呂はワイン風呂のはずでした・・。

「・・・そうですわ、どなたか御存知の方に聞けばいいのです。どなたか・・・、あ・・ちょうどいいところに」

「・・・んぁ?なんだ?アタイの顔に何か付いてんのか?」

「いえ、そんなつもりでは。もうしわけありませんが、今日はワイン風呂の日ですよね?」

「あーー・・・それなら屋外に設置されてんだよ。いくらなんでも室内にアルコールの匂いぷんぷんさせるこたぁできねぇだろ?」

そういえばそうですわ。小さな御子様も居るのですから当然ですわね。

「お教えくださり、ありがとうございます」

「奥の扉から外に出れるぜ、んじゃなー」


この扉を開ければ・・・私の夢が叶うのですね。そ、それでは・・・


-カラララララララ・・・・-


え・・・・、これ・・・は。

「す、素晴らしいですわ・・大樽風呂だなんて素敵です♪まさしくワインのイメージにぴったりな御風呂です♥」

嗚呼、なんという事でしょうか。此の世にこれほどの天国があったでしょうか。で、では・・失礼して。

「ふぁぁぁ〜♪この蕩けるような・・肌に染み込むような感触。そしてこの香り・・・これはかなり良質な葡萄を使ってますわね。土壌が良いのかしら・・これほどのワインでしたらきっと御屋敷のワインセラーに寝かされているかもしれませんわ。帰ったら調べてみましょう・・・ぁ」

・・あら、御風呂の上に大きな瓶が浮いてますわ?中身は・・空ですわね?どういう事かしら?どうして空の瓶を空中に浮かせてるのでしょうか?

「あの瓶は何でしょう?・・・あら、瓶が震えて・・」


-ドポンッ!!・・・コポンコポン・・-


「キャッ!?中身が一瞬で満たされて・・はぁぁぁ〜・・・♪瓶から零れ落ちてくるワインが・・・太陽の光で透き通って綺麗♪」

なんて美しいのかしら・・・、流れ落ちるワインを眺めながらの御風呂なんて。このまま時が止まってくれればどれほど嬉しいか。









「今日は本当に素晴らしい日でしたわ♪御屋敷に戻ったら早速ワインセラーを調べないといけませんわね」

それと・・・次に来る時にはきっちりお金を持ってきましょう。あの親切な方が居たからこそ、今日という日を満喫出来たのですから。


-カララララ・・・・-

「ちわーっす!ワインの充填終わりましたよー」

「あら、ありがとう♪御代はいつものとこでいいかしら?」

「はい!毎度ありがとうございます!!」

・・・・えっ?あの方は私の手の中にこっそりとお金を持たせてくれた親切な方・・、どうして此処に。いえ、そうではありません。それより先にお礼を述べないと。

「あ、あの・・先程はありがとうございました。貴方のおかげで私は・・」

「ん?何の事?」

「とぼけないでください。あの時、貴方が拾って手渡してくれた時に・・」

「・・・・シーッ、静かに、な」

ぁ、・・やっぱりあの時に。ですが、それよりも気になります事が・・

「あの・・先程ワインの充填を、と仰られましたが・・もしかしてあのワインは・・」

「あぁ、あれはうちで造ったもんだよ。もしかして口に合わなかったか?」

口に合わないだなんて・・・そんな事、口が裂けても言えませんわ。

「香りも色艶も味も全て良かったですわ。どこのブランドでしょうか?」

「・・・・」

どうしたのでしょうか・・突然難しい顔をなされましたが・・。私、もしかして聞いてはいけない事を。

「あー・・いや、その〜・・、うちはブランド物とかじゃないんだ。うちの個人農園で造ってるだけなんで・・。その、なんというか親父の代から趣味でやってるようなもんでな」

個人農園でこれほどまでに素晴らしいワインを造り上げるなんて・・。それも御風呂に使えるほどの量を。なんという逸材なんでしょう。あっ、閃きましたわ!

「あの、つかぬ事をお聞きしたいのですが個人農園と仰られましたよね?」

「そうだけど?」

「それでは・・、どこかに委託というのは・・・」

「うちで一貫してやってるんでそれは無いです」

これは大きなチャンスですわ♪

「もし宜しければ・・・私と契約して頂けないでしょうか。お願いします!

「・・・ぁー・・ぅ〜ん・・、それは俺一人の一存では決められんしなぁ」

押しが弱かったのでしょうか・・、それなら奥の手です。

「お願いします・・、私には貴方の力が必要なのです」

手を握るふりをして・・ほんの少しだけ、ごめんなさいね。ちょっとだけ・・ちょっとだけ・・。ふぁぁ・・この人の精気・・・心が蕩けそうなほど美味ですわ。あのワインと同じぐらい・・いえ、ワイン以上の美味・・。

「ぁ、・・ぁぅ・・・、ぅぅ・・わ、わかった。親父と相談しておくよ・・」

「良い御返事を期待しますね♪ア ナ タ ♥」

「・・・・・・・・・・ファッ!?」

んふふふふ♪逃がしませんわ、私の未来の旦那様♥あの蕩けるようなワイン風呂に一緒に浸かりましょうね♥








『上質のワインと貴方に同時に酔いそうですわ♪』


15/05/10 23:19更新 / ぷいぷい
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■作者メッセージ
御久しぶりの銭湯です。今回のテーマ『ワイト』『ワイン風呂』『恋に?ワインに?泥酔』でした。

ワイトさんはワイン風呂が一番似合う!!異論は認める!

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