連載小説
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許さねぇ!!
「はぁ、はぁ、はぁ……」


参ったな……こんなにも苦戦するなんて久しぶりだな……。

「うふふ……良いわねぇ、その苦しそうな顔♪私ってサディストだから、男の子を攻めて苦しめるのが大好きなのよねぇ……暴力的に♪」

目の前で艶かしく指先を舐める女。その笑顔は背筋が凍るほどおぞましいものだった。

「とんだ悪趣味だね……下劣極まりない」
「なんとでも言いなさい。そもそも貴方こそ大丈夫なの?まだ私に一太刀も浴びさせてない上に、ボロボロにされる一方じゃない」
「まだ終わった訳じゃない……これから逆転してみせるのさ……」

とは言え……正直、追い詰められてるのは事実だ。僕の方は一方的にやられてばかりで、相手はまだ余裕の笑みを浮かべている。危機的状況に変わりなかった。


くそ……あの能力さえどうにかすれば……!



〜〜〜(数十分前)〜〜〜



それは……街から遠く離れている森の立ち木の葉に隠れながら、仲間たちに指示を出している最中での出来事だった。

「……今のところ順調かな」

僕は水晶玉を通して仲間たちの指揮を執り、順調に国民たちを魔物化させていった。
本来なら僕も現場で直接指示を出した方が手っ取り早いのだろうけど……発情しきった魔物娘に襲われるのは勘弁願いたい。
理由は勿論……離れ離れになってる恋人、ルミアスだ。彼女と再会して、再び結ばれる約束を交わしている身分として、他の魔物に襲われる訳にはいかない。それに、指揮者を務めている僕が姿を隠せば何かと都合が良い。敵が指揮者を仕留めようとしても、僕さえ見つからなければ問題ない。ほとぼりが収まるまでは、此処で待機しているつもりだった。

「あとは……残ってる兵士を誘導して……」

……その時だった。

「み〜つけた♪」
「!?」


ドンッ!


「うわぁっ!」

大きな木の枝から墜落しそうになったものの、なんとか受身を取って咄嗟に体勢を立て直した。

「見つかっちゃって残念だったわね」

そして僕を木から落とした張本人は、華麗に着地して体勢を立て直し、改めて僕と対峙した。

「困ったな……」
「うふふ……どんな男かと思ったら、結構可愛い坊やじゃないの♪」

僕は先程まで大木に隠れていたけど、彼女によって見つけられてしまった。
妖艶で、それでいて冷たい笑みを浮かべているレオタードスーツの女。何者かは知らないけど、敵である事は瞬時に察した。
どうしたものか……バレる展開は予測してたけど、こんなにも早く見つかるなんて思わなかった。

「……随分と手荒な挨拶だね。危うく怪我するところだったんだけど?」
「あら失礼。怪我じゃなくて致命傷を与えるつもりだったのよ」

サラッと身の毛がよだつ事を言う……なんとも怖い女だ。

「で、君は一体誰なんだい?」
「いいこと坊や、名前を聞くのなら自分から名乗るのが常識よ」
「……それは失礼。僕はヘルム。海賊さ」
「よくできました♪私はJC。お察しの通り、あなたの敵よ」

大人びた……と言うか偉そうな態度で名乗ったJC。やっぱりこの女、ベリアルの仲間のようだ。

「敵と言う事は……やっぱり僕を殺しに来たんだね」
「そりゃあね。私、こう見えて殺し屋だし、人を殺すのが仕事だもの」
「……殺し屋?」
「そう。私ね……ベリアルに雇われた殺し屋なのよ」

そう言いながら、挑発的な眼差しを向けながら艶かしく舌舐りしてきた。
待てよ……殺し屋?ベリアル側にそんな職業の人間が居たなんて……いや、あの男なら雇っても不思議じゃない。否……粗方、アイーダと同じように洗脳されているのだろう。

「ベリアルも全く侮れないね……あろう事か殺し屋まで洗脳するなんて」
「あら坊や、それは誤解よ」
「誤解?」
「確かにベリアルの部下の男が洗脳術を扱える事は知ってるわ。でも私は洗脳なんてされてない。自分の意思であの男に雇われたのよ」
「なんだって?」

つまり……洗脳の被害に遭ってないって事か。言われてみれば、確かにJCは洗脳されてる兵士と比べてよっぽど雰囲気が生き生きとしている。それに、洗脳された人間はベリアルに様を付けて呼ぶのに、この人はベリアルを呼び捨てで呼んでる。これらを考えると、どうやら嘘を言ってる訳じゃなさそうだ。
でも妙だな……操られてないのに何故ベリアルに従うんだ?

「じゃあ君、なんでベリアルのような男に従っているんだ?あいつがどれほど危険な奴か、分かってない訳でもないのに」
「別に、大した理由なんて無いわ。ギブアンドテイクの関係よ。奴からお金を貰う代わりに、私は与えられた任務をこなす。ただそれだけ」
「……正直言わせてもらうけど、君は雇い主の選択を誤ったんじゃないかな?」

個人的な意見を言うと、殺し屋なんて好きになれない。人の命を奪う事を仕事にするなんて理解に苦しむ。とは言え、人の生き方にまで文句を言う気は無いけど。
でも……正直、よりによってベリアルに雇われるのはどうかと思う。あいつの事だ……報酬も払わずにあっさりと裏切るようなパターンも考えられる。

「いいえ、私は間違った選択をしてないと思ってるわ。確かにベリアルは強くて危険よ。それでもメリットが大きいから雇われたの」
「どういう意味だ?」
「別に私はベリアルの野望になんか興味ないし、命の危険を晒してまで雇われる気も無いわ。与えられた任務相応の報酬さえ貰えれば、それでいいの」
「…………」
「ベリアルは強いし金回りも悪くない。侮れないのは確かだけど、任務をこなしたら高額の報酬を必ず払ってくれるわ。ある意味、綺麗事を並べる偽善者よりよっぽど信用出来る雇い主ね」

……そういうことか……。

「なるほど。つまり君は、金を貰うためだけに、ベリアルに雇われているという事か」
「まぁそうね。それがなに?」
「別に。君がそうしたいのなら、勝手にそうすればいいさ。でもね……」

僕は徐に剣と盾を抜き取り、剣の切っ先をJCに向けた。

「残念ながら、僕はご希望通りに殺されないよ。他の仲間にも手出しさせない。時間の無駄だから、早くこの国から出て行った方がいいよ」
「……生意気言っちゃって……可愛いだけじゃないのね。気に入ったわ」

JCは胸元から短い棒のようなものを取り出し、横一直線に軽く振った。その瞬間、棒の先端から長い紐状の魔力が飛び出てきた。
なるほど……魔力で出来た鞭か。珍しい武器を持ってるな。

「一瞬で止めを刺すのも勿体無いから……」

JCは、魔力の鞭を構えて……。

「時間をかけて、たっぷり甚振ってあげる!」

冷たい笑みを浮かべながら言い放った。

「お断りだ!」

僕は対抗するように、盾を構えながらJCへと駆け出した。
相手の得物が鞭だとすると、まず武器のリーチではこちらが負けている。しかし、手数は僕の方が有利だから、一方的に差がある訳ではない。
なんとか攻撃を盾で防ぎながら、少しずつ剣で……。


「私に攻撃するなんて……不可能よ」


距離が縮んできたところで、予想してなかった展開が起きた。なんと……!

「き、消えた!?」

さっきまで居たJCの姿が、突然ふっと消えてしまったのだ。反射的にその場で足を止めて周囲を見渡すも、JCの姿はどこにも見当たらない。
驚いたな……まさか、こんなトリッキーな技を使えるなんて。だが、どうしたものか。姿を消されたらどうにも……。

「どう?驚いた?」

そして、どこからか女の声が聞こえた。
これは……JCの声か。やっぱり何処かへ立ち去った訳じゃなさそうだ。でも、一体何処に隠れているんだ……?

「隠れてないで、出てきたらどうだい?」
「隠れる……まぁ、そうとも言えるわね。正確に言えば、透明になったのだけど」
「透明?」
「そう、私が着ているスーツは特殊でね、着ている人の姿を透明にする事が出来る優れものよ」

つまり……姿を消して見えなくしているという事か。
しかし、透明か……参ったな。よりによって、こんな厄介な相手と戦う羽目になるなんて……。

「余所見しちゃ駄目よ」
「!?」

JCの声が聞こえた時には……!


パシン!


「うわぁっ!?」


正面から鋭い打撃を受けてしまった……。



〜〜〜(現在)〜〜〜



「さぁ、どうする?このまま抵抗を続けるのは良い判断とは言えないけど」
「言ったでしょ……まだ終わってないって」


JCとの戦闘が始まってから数十分経つけど……劣勢を認めざるを得なかった。
JCの透明になるスーツ……あれの所為で未だに戦況を覆せないでいた。こちらが攻撃を試みても、すぐ透明になってかく乱される。そして隙を突いて魔力の鞭のキツい一撃。この繰り返しが絶えそうにもなかった。

「往生際が悪いのねぇ……諦めちゃった方が楽なのに」
「冗談じゃない。僕はここでくたばる訳にはいかないんだよ」

もっとキッドたちと冒険したいし、もっと読みたい本も残ってるし、何よりも……。


ルミアスに会わないで、勝手にくたばって堪るものか……!

「良いわねぇ♪強情なところもまた、ドS本能を擽るわ♪でもね……」

JCは鞭を張って、これまでよりも冷たい笑みを浮かべ……。


「……無様に粋がって萎えさせるなよ!とっとと跪いて泣き喚け!!」


ドスの効いた低い声で言った。
……本性が出たな。やっぱり怖い女だ。ルミアスとは大違い。


「まだ……僕は諦めないぞ!」


剣と盾を構えなおし、覚悟を決めてJCとの戦いを続けた……。



〜〜〜(サフィア視点)〜〜〜



キィン!バンバン!


「うぉらぁっ!」
「Wait!やめろよキャプテン!やめてくれ!」
「お前まで操られてどうするんだ!」
「くそっ!三人がかりで対抗してるのに、なんて強さだ!」


キッドが……愛する夫が敵に洗脳されてしまった……。


バンバン!ドカッ!カキン!


「キッド!やめて!お願いだから、目を覚まして!」
「うぁがぁぁぁ!」


……どうしたらいいの?
私はクリスタルに閉じ込められて動けないし……こんなに呼びかけても反応しないなんて……。

「ふはははは!こいつは良い!一人で三人の相手とやり合えるとは、使える戦力を手に入れたものだ!」
「くっ!……あなただけは……あなただけは許さない!キッドを元に戻しなさい!!」
「そう怖い顔するなよ。ほら、大好きな夫の応援でもしてやりな」

キッドとシルクさんたちとの戦いを楽しそうに傍観するベリアル。その姿に怒りを覚えた私は、自分でも驚くくらいの怒号をベリアルに浴びせた。しかし本人はさほど気にしてないようで、不気味な笑顔を向けるだけだった。

「……あ、そうだ!」

すると、キッドの相手をしていたオリヴィアさんが何かに気付いたような表情を浮かべた。

「そうだ……なんで気付かなかったんだ。わざわざキャプテンの相手をする必要なんて無い」

オリヴィアさんは、徐に視線をある人物へと向けた。

「洗脳の根源が絶たれれば、キャプテンも目を覚ますかもしれない。と言う事は……!」

そして、背中の翼を広げて……。


「お前を仕留めれば万事解決だ!」


洗脳した張本人、エオノスに向かって突進した!


「ひぇっ!?いやいやいやちょいちょいちょい!や、あわっ、来るなぁぁぁぁ!」


流石にドラゴンには敵わないと分かっているのか、激しく慌てるエオノス。
しかし……!


「……そうだ。もうお前には用は無い」
「え?」


ベリアルが何かを呟いた瞬間、私を閉じ込めていたクリスタルが消え去った。そして……!

「ほらよ……仲間のところへ帰りなぁ!」
「へ!?ちょ……きゃああああ!!」

フワッと浮いたかと思うと……突然、私の身体が飛ばされた!

「え!?サフィア!?ちょ、やば……うぉっと!」
「ひゃあ!」
「あ、あっぶなぁ……大丈夫か?」
「は、はい……ありがとうございます」

そして、ちょうどこちらに突撃して来たオリヴィアさんが私を受け止めてくれた。
助かった……と思ったのも束の間!


「串刺し雷刑(ジャベリンボルト)!」


ベリアルが、槍状の雷を私たちに向けて放った!

「うぉ!おわわ!」
「いや!か、雷怖いです!」

しかし、オリヴィアさんは私を抱えたままなんとか避けながら、翼を羽ばたかせて遺跡の隅の位置へ移動した。

「おいエオノス、お前が奴らに狙われるのは厄介だ。とっとと退出して、兵士共の指揮を執ってな」
「あいやっさ!」
「あ!……Shit!逃げられた!」

その隙にエオノスは黒い煙を湧き上がらせ、その場から姿を消して何処かへ逃げてしまった。

「逃がしたのは惜しかったが、サフィアが無事でよかった」
「ありがとうございます。でも、キッドが……」

オリヴィアさんに降ろしてもらい、ペコリと頭を下げながらお礼を言った。
結果的に私は解放されたけど……キッドはまだ……。

「うぉらぁぁぁ!」
「くっ!もう心を鬼にして倒すしかないのか!?」
「そうするにしても、こうも激しく対抗されては……!」

シルクさんとバルドさんを相手にしても、技のキレが衰える気配は無かった。
長剣を振り、ショットガンを撃ち、二人の動きを常に見切り、全く隙を与えていない。我が夫ながら、二人相手に見事な応戦とも言える。

「くっ……やっぱりキャプテンを相手にするしかないか!」

覚悟を決めた表情を浮かべながら、オリヴィアさんは背中の翼を広げて、突撃する姿勢に入った。

「Sorry、サフィア。これもキャプテンを元に戻す為だ。多少の怪我を負わせちまっても、勘弁してくれよ!」
「は、はい!」
「それじゃ……行ってくる!」

私にそう言い残し、力強く羽ばたいてキッドに向かって突進した。

「Come on!キャプテン、私が相手だぁ!」
「んっ!?」

シルクさんとバルドさんの相手をしていたキッドは、その赤い目でオリヴィアさんを睨みつけた。対するオリヴィアさんは拳を構えて……!

「Burning punch!」
「ぐっ!」

炎を纏った拳をキッドに叩きつけたが、キッドは長剣とショットガンを交差して拳を防いだ。

「まだまだぁ!」
「くっ!の……がぁ……!」

しかし、攻撃は終わらない。今度は翼を使って滑空したまま、怒涛の連続キック攻撃が炸裂した。キッドは成す術も無く、ひたすら攻撃を防ぎ続けるしかなかった……と思ったら!


ビュン!


「なっ!?」


なんと、右手の長剣を天に向かって投げ飛ばし……。


ガシッ!


「え!?」


空いた手でオリヴィアさんの左足を掴み……。


ドスン!


「Ouch!」


地面に向かって力強く叩きつけた!
なんて奇抜な戦法……まさか自分の武器を投げ捨てるなんて……!

「…………」
「え!?ちょ、キャプテン!それ、ダメェ!!」
「キッド!駄目よ!やめてぇ!」

ショットガンを眉間に向けられ慌てるオリヴィアさん。それを見てやめるように叫んだ瞬間……。

「余所見してるなよ!」
「…………!」

バルドさんがファルシオンを構えながらキッドに突撃してきた。しかし、キッドは動揺せずに向かってくるバルドさんを見据えて……。

パシッ!キィン!カンカン!

「ふっ!はぁっ!うわっ!」
「…………」

先ほど投げられた長剣が戻ってきたところを受け取り、その長剣でバルドさんの攻撃を受け流していった。その最中、キッドの注意がオリヴィアさんからバルドさんへと変えられる。

「くっ……危なかった!」

その隙にオリヴィアさんは立ち上がり、キッドとの距離を取った。そして大きく息を吸い込み……!

「ブォォォォォ!!」
「!?」

灼熱の炎を吐き出した。バルドさんとの剣戟で手一杯なキッドには避ける隙なんて……!

「……」
「なっ……危なかった……って、あちちちち!」
「え!?so、sorry!」
「あち!あちち!き、気をつけてくれ!」

いや、キッドは素早く左方向へ横転して炎を避けた。不運な事にバルドさんが代わりに受けそうになったが、なんとか避けきったようだ。とは言え、炎の熱さは十分に伝わってるようだが。
……キッドは回避したけど……喜んで良いのか悪いのか……。

「埒が明かないな……だが、動きを止めればこっちのものだ!」
「!?」


次に動いたのはシルクさん。魔術で複数の青白い手の分身を作り、キッドの両手両足を掴んだ。

「よし……どうだ!私の『死者の手』は!」
「ぐ、ぐぅ……」
「悪いが大人しくしてもらおうか!」

必死に逃れようとしても、シルクさんの手の分身は離そうともしない。
これでキッドは動けなくなった。それはいいけど……どうすれば……。

「うぅ……うぉぉぉぉぉ!」

突然、キッドが力強い唸り声をあげ……!


「うぁがぁぁぁぁぁぁ!!」
「なに!?」


なんと、力ずくで手の分身を振り払った。そして……!


「うぉぁぁぁああぁ!」


長剣を振り回し、手の分身を斬って消し去ってしまった。

「う、うわぁぁ!」

すると突然、シルクさんが苦悶の表情を浮かべ、自分の手を抑えながら跪いてしまった。
なんだか凄く痛そうだけど……何故あんな状態になったの?

「シ、シルク!?どうしたんだよ一体……!?」
「しまった!シルク様の手の分身の感触は、本人の手にも伝わるんだ!」

と言う事は、シルクさんの手には剣で斬られた痛みが……!


「うぉぁああぁぁあ!」


大きな隙を突くかのように、キッドが雄叫びを上げながらシルクさんに襲い掛かってきた。

「やばい!シルク様!」

バルドさんが慌てて止めようと駆け出すけど、あれでは……間に合わない……!

「やめろぉ!」
「ぬぅっ!」

オリヴィアさんがもの凄い速さで羽ばたきキッドに追い付いて、背後からキッドを羽交い絞めで抑え付けた。

「シルク様!大丈夫ですか!?」
「あ、ああ、なんとか……」
「ここに居ては危険です!一旦奴から離れましょう!」
「バルド……すまない……」

オリヴィアさんがキッドを抑えてる間に、バルドさんがシルクさんに肩を貸してキッドとの距離を取った。

「damm!キャプテン!しっかりしてくれよ!いい加減目を覚ましてくれ!」

動きを抑えられて尚、ジタバタと暴れるキッド。ドラゴンのオリヴィアさんでも、キッドを離さないよう必死に抵抗するので精一杯だった。

「あんたは陳腐な魔術に掛かるような男じゃないだろ!頼むから、元に戻ってくれよ!何時ものキャプテンは何処へ行ったんだよ!」
「うぁがぁ!うぐぉあぁ!!」
「正気に戻ったら離してやる!だから早く目を覚ませよぉ!私たち、仲間だろうが!!」
「な……仲間……!」
「……キッド?」

仲間……その言葉を聞いた瞬間、キッドの動きがピタリと止まった。それに心なしか、敵意の篭った目に迷いが生じているようにも見える。
これは……もしかして、洗脳が解けかけて……。

「そうだ!仲間だ!私たちは……」
「うぉぉぉぉ!」
「うぁっ!しまっ……あぁ!」

……甘かった。
オリヴィアさんが一瞬だけ油断した隙にキッドがオリヴィアさんの腹を蹴り飛ばし、オリヴィアさんを突き放した。

「くっ……まだまだぁ!」
「シルク様、私も参ります!」

キッドがオリヴィアさんを長剣で斬ろうとした瞬間、シルクさんとバルドさんがキッドに突撃した。

「早く戻って来い!馬鹿者がぁ!」
「うぉぉぉ!」
「……ちっ!」

シルクさんの光の剣と、バルドさんのファルシオン。それぞれの攻撃を長剣一本で同時に防いだキッド。その表情には、行動の邪魔をされた事による苛立ちが募ってきていた。

「此処まで来て何をやっているんだ!今までずっと大勢の者達を先導してきたお前があっさりと操られていたら、話にならないだろ!」
「そうだ!お前はベリアルの部下なんかじゃないだろ!気をしっかり持て!」
「…………」

武器と武器の押し合い状態のまま、シルクさんとバルドさんは懸命に呼びかけた。対するキッドは何も言わずに対抗するままだが、赤い目には戸惑いが……。

「忘れたとは言わせないぞ!私がバルドを救えなくて落ち込んだ時、お前は励ましてくれた!頭の中を操られても、人の心は絶対に操れない!そう言ったのはキッドじゃないか!」
「…………」
「だからしっかりしろ!お前は……お前は敵の捨て駒にされるような男じゃないだろ!」

シルクさんの呼びかけを聞いて、徐々に表情が歪んでいくキッド。
……今度こそ……!

「……う……うぁぁぁぁ!」
「うぁっ!」
「ぐぬぅっ!」


苦悶から怒りの顔に切り替わり、シルクさんとバルドさんを押し退けて、二人同時に体当たりで突き飛ばしてしまった。

……そんな……まだ駄目なの!?
あんなに沢山呼びかけているのに……どうして……どうして目を覚まさないの!?

「キッドォ!お願い!何時もの貴方に戻ってぇ!」
「…………」

居ても立ってもいられない。正気に戻って欲しい一心でキッドに呼びかけた。しかし、キッドは何も言わずに一瞥するだけで、一言も返答をくれなかった。
どうすればいいの……キッドは……目を覚まさないの?

「ふん!見苦しいぜ。こいつはもう俺の僕だ。何をやったって無駄なんだよ」
「Shut up!キャプテンは私たちの船長だ!お前の部下なんかじゃない!」
「過去の話だ。今日からキッドは変わったんだよ」

人を楽しませるショーでも眺めてるような笑顔を浮かべるベリアル。オリヴィアさんから怒りの篭った大声を浴びせられても余裕を見せている。
……その姿を見て、ベリアルに対する怒りと、何も出来ない悔しさが一気に込み上げてきた。
ベリアル……奴の所為でキッドがあんな目に遭わされた。しかし、私は目の前で操られているキッドを救えない。この複雑な想いが胸中で渦巻き、胸が張り裂けそうになる。


……誰か教えてください……私は……どうすればいいのですか……?


「もうそろそろ前座も終わりだ。さぁキッド、こいつら一人残らず潰しちまいな!!」
「うぉぉぉぉぉ!!」

ベリアルの命令に従うように、天に向かって雄叫びを上げたキッド。
今のキッドは……ベリアルの言いなり。その事実を突きつけられて、ますます胸が苦しくなった。


「……キッド……」


……本当に……キッドは助からないの?
キッドはこのまま、ずっとベリアルに従うの?
死ぬまでずっとこき使われるの?
私の事も……永遠に忘れたまま?


…………嫌!
そんなの嫌!絶対に嫌!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


この場を変えてくれるのなら……誰でも良い!
……どうか……お願い……!


誰か……キッドを助けて!!




ズドォォォォォォォォォォォォォォン!!




「!?」


……天に向かって祈りを捧げた瞬間、それに呼応するかのように轟音が響き渡った。
この場に居る誰もが轟音の方向へと振り向く。
そこには……入り口が砂煙を湧き上がらせている……そして……。


「だぁ!くそっ!うっかり転びそうになっちまった……ド畜生め!」


……そこには、見知らぬ男の人が立っていた。

「……で、此処は……一体なんだぁ?」

男の人の外見はと言うと……高身長にガタイの良い身体。黒みの掛かった黄金色の髪に無精ひげ。右目には一筋の傷。そしてなんと言っても、鋼鉄で出来た左腕。
金色の縁が掛かった黒いコートを羽織っている様は、まさに海賊の風格。なんだか、よく分からないけど強そうな人……それが第一印象だった。


……あら?気のせいかしら?
……この人……どこかで見たような……?


「き、貴様……ドレーク!!」
「ん?……ほう……懐かしいじゃねぇか、シ……ベリアル」
「……こいつは驚いた。とんだ珍客が訪ねてきたものだな」

すると、ベリアルがひどく驚いた声を上げた。仮面で顔半分が隠れているけど、口があんぐりと開けられている事から驚愕を隠せないでいるのが十分分かる。
この人、ドレークって名前らしいけど……一体何者?まさか……ベリアルの仲間!?

「テメェがまた良からぬ事を企んでると聞いて、すっ飛んできたんだよ」
「俺が何をしようと勝手だろうが」
「そうはいかねぇ!これ以上思い通りにさせるかってんだよ!」

……いや、そうでもないようだ。
この二人の会話からして、どうやら味方と言う訳でもなさそう。
でも、ベリアルの仲間じゃないとしたら、この人は何故此処に?

「……んん?」

ドレークは、とある人物を見て首を傾げた。
その人物とは……。

「……お前どうしちまったんだ?なんだ、その赤い目は?」
「…………」

そう……操られているキッドだった。あの赤く染まった目を見て、ドレークも不審に思ったのだろう。
……今の発言、まるでキッドを知ってるような口ぶりだけど……。
もしかしてこの人、キッドを知ってるの?

「あ、あの、キッドを知ってるのですか?」
「ん?」

思わず声をかけると、ドレークは私の方へと視線を移した。

「知ってはいるが……アンタ、誰だ?」
「えっと……キッドの妻です」
「!!」

返答を聞いた瞬間、ドレークはひどく驚いた表情を浮かべた……かと思いきや。

「……そうか……君か……」

すぐにやんわりと表情を緩め、温かい笑みを浮かべた。
驚いたと思ったら微笑ましくなって……なんでこんな反応なのだろうか。
それに、君かって……どういう意味?

「呑気にお喋りしてる暇は無いぞ」
「……あん?」

ベリアルに口を挿まれて、ドレークは睨みを効かせながらベリアルへと視線を移した。

「前座も終わりにしようと思ったが……気が変わった。折角のサプライズゲストが来たんだ。もう少しキッドに戦わせるとしよう」
「……なんだと?」
「…………」
「……おい、お前どうしたんだ?何があったんだよ?」

無表情のまま武器を構えてドレークに歩み寄るキッド。対するドレークは状況を把握していない所為か、少しだけ戸惑いを見せていた。
……この人には、現状を話すべきなのだろうか?まだ私たちの味方と決まった訳でもないけど……。
……いや、話すべきかもしれない。根拠は無いけど……この人が敵だとは思えない。

「そ、それが……キッドは敵の洗脳術に掛かってしまって、ベリアルの部下になってしまったのです!」
「……なんだと?」

事情を聞いた途端、ドレークの表情が怒りに満ち溢れた。ただ、その鋭い眼差しはキッドに向けられていない。睨みの矛先は……更にその奥にいるベリアルに向けられていた。

「ふん!そいつを洗脳するのは案外容易かったぜ!そこにいるシー・ビショップを人質にしたお陰で、あっさりと降伏したんでな!」
「…………」
「さぁ……今度は貴様が相手をしろ!行けぇ!!」

ベリアルからの命令が下った瞬間、キッドがドレークに向かって凄まじい勢いで突撃してきた。

「……このド阿呆がぁ!!」

対するドレークも、キッドに向かって駆け出した。

「メタルフォーム、ソード!」

その最中……なんと、ドレークの鋼鉄の左腕が、細長い剣に変身した。
あの左腕……剣に変われるんだ!


キィン!


キッドとドレークは、そのまま刃を押し付けあう状態となった。

「おい!テメェ何をみっともねぇ姿を晒してんだ!早く起きろってんだ、ド阿呆!!」
「…………」
「何時からお前はベリアルの奴隷になった!?あんな奴の言う事なんか聞くんじゃねぇよ!」

鍔迫り合いの状態から、今度は何度も刃をぶつけ合う剣戟状態に入った。金属同士がぶつかり合う乾いた音が響き渡る。

「思い出せ!お前は海賊だろうが!沢山の船員を引き連れて、数多の海を乗り越える船長だろうが!」
「…………」
「洗脳なんかで簡単に堕ちるほど、お前は弱い男なのかよ!?」
「…………」

……気のせいだろうか?ドレークの言葉を聞くたびに、キッドの動きが鈍くなってきているように見える。それに、表情もなんだか切なそうになってる。
……と言うより、あのドレークって人、何故あんなに必死なのだろうか?

「くっ!メタルフォーム、ハンド!」

一瞬の隙をしっかりと見ていたのか、ドレークは左手の剣を人間の手に戻した。

「目ぇ覚ませよ!お前はお前だ!」

そして素早くキッドの両腕を真正面から掴んで動きを封じた。しかし……。


ドカッ!

「……てめ、蹴りやがったな!」

足は自由に動かせる。キッドはそれをいいことに、腕を掴まれたままドレークの腹を蹴り上げた。

「ふん……何度やっても無駄だ!俺の身体は鋼鉄!物理攻撃なんか効かねぇよ!」
「…………」

ドカッ!

「って、ちょ、効かねぇって言ってるだろ!蹴るな!だから蹴るなって!おいこら!」

でも……見たところあまり痛がってない。確かにドレークには効いてないようだ。鋼鉄の身体が本当だとしたら、どれほど侮れない相手なのだろう。
ただ……それでもキッドは無言で何度も蹴り続けているけど。

ドカッ!ドカッ!ドカッ!

「ちっ!この大阿呆がぁ!何時まで寝てるつもりなんだ!いい加減起きろ!みんな待ってるんだぞ!」

ドカッ!ドカッ!ドカッ!

「目を覚ませって言ってんだよ!お前は、訳の分からない術に負ける男じゃないだろ!」

ドカッ!ドカッ!ドカッ!

「ってか何時まで蹴ってんだゴラァ!いい加減止めねぇと泣かすぞボケェ!」

バコンッ!

「……蹴りが駄目なら頭突きってか……効かねぇって言ってるだろうがアホんだら!いやそもそも起きろってんだよ!!」

操られてるキッドに何度も何度も蹴られている。それでもドレークの手が離す事はない。そして、何度も何度も、懸命に呼びかけている。
……分からない。貴方はどうして……そこまでするの?

「……頼むからよ……目ぇ覚ましてくれよ!」

突然、声の調子が変わった。怒りと喝の篭った威勢の良い声は、弱弱しく頼み込む声へと変貌した。
その目付きまでもが……とても辛そうに垂れ下がっている。

「戻ってくれよ!普通のキッドに戻れってんだよ!!」
「…………」

……今まで以上に大きな声だった。それを聞いた途端、抵抗を続けていたキッドの動きがピタリと止まった。

「…………」

更に力も抜けて、顔も項垂れ、殺意の赤目も切なさで満ち溢れている。
戦いたくない……口に出さなくても、身体で表現しているかのようだ。まるで、己の意思に抗おうとしているかのように。

「……もしかして……」

ドレークが此処に来る前にも、同じような反応が二度も起こった。
オリヴィアさんやシルクさんに何度も呼びかけられて、次第に戦意を失っていく。
一時的とは言え、確かに手応えはあった。みんなの声は届いていた。もう少しで目を覚ましそうだった。
本当に声が届いてないのなら、一瞬でも躊躇わない。本気で殺す気なら、本気で剣を振る。


もしも……完全に記憶も思考も支配されていないのだとしたら……まだ完全に洗脳されていないとしたら……。


私の声も……聞こえるのなら……!


「なにをぐずぐずしてる!とっとと殺せ!」
「……!」
「うぉっと!しまった!」

ベリアルの命令でハッと我に返ったキッドは、力いっぱいドレークを蹴り飛ばした。本来なら今更蹴りの一発くらいでビクともしないのだろうけど、キッドの動きが止まった所為で油断していたのか、手の力を抜いていたようであっさりと離してしまった。

「余計な躊躇いは不要だ!お前は俺の命令に従えばいいんだよ!」
「…………」
「クソッ!」

再び武器を構えなおし、ドレークと対峙するキッド。ドレークの方も仕方なくといった感じで両手の拳を構えた。
……どうしても戦わなければならないのだろうか?そうしないと、本当にキッドは目を覚まさないのだろうか?
……そんな事は無い。みんなの声は確かに届いていた。

もう、躊躇している場合じゃない!

「キッド……」

気付いていた時は、既に駆け出していた。
何時もの魚の足じゃない、人間の足で走っていた。

キッドに……愛する夫に向かって。

「キッドォ!!」
「!?」

そのままキッドに抱きついた。勢いのあまりにキッドが尻餅を付いてしまったが、それでもキッドを抱きしめる腕を離さなかった。
力ずくでも離れないように……例えその剣で斬られようとも、絶対に離れないように。

「お、おい君!危ねぇから離れてろって!今のそいつは……」
「お願いキッド!目を覚まして!何時ものキッドに戻って!!」
「…………」

後ろからドレークに離れるよう言われたけど、それでも離さなかった。そしてキッドの耳元で、目を覚ますように一生懸命呼びかけた。

「私の声が聞こえるのなら、しっかり聞いて!もう闇雲に戦うのはやめましょう!キッドだって、こんな事はやりたくないって思ってるでしょう!だからもうやめて!早く目を覚まして!」
「…………」
「貴方は弱くなんかない!すぐに目を覚ますと、私は信じてる!だからお願い!洗脳になんか負けないで!!」
「…………」

目を覚まして欲しい。その一心で何度も呼びかける。力でキッドに敵う道理なんて無い。引き剥がされるまでが勝負。
ただ、私を振り解こうと暴れるのかと思ったら、意外にも抵抗らしき抵抗はしてこなかった。それどころか、まるで私の言う事に耳を傾けているように思える。
やっぱり……ちゃんと届いているんだ……。

「ふんっ!馬鹿な女だな!そんな陳腐な真似で洗脳が解かれる訳ないだろ!」

ベリアルが嘲るように言ったけど……馬鹿でも陳腐でも構わない。
キッドが目を覚ますのなら、何度でも呼びかける。それが私に出来る事なら尚更だ。

「ちょうどいい。キッド、その女を剣で斬り捨てろ!」
「…………」

ベリアルの命令が下った。しかし……。

「…………」
「……何をしている?斬れって言ってるだろ!」
「…………」

キッドは命令に従おうとしなかった。何も言わず、返答もせず、私に抱きしめられたまま。
しかし……それも束の間。

「とっとと殺せ!」
「…………」

長剣を握っている右腕が、徐に振り上げられた。鋭い刃が遺跡を照らすランプの明かりを反射している。

「キャプテン、やめろ!それだけはやっちゃ駄目だ!」
「キッド!やめるんだ!」
「…………」

その光景を見たオリヴィアさんとシルクさんが焦るように金切り声を上げた。しかし、キッドの長剣は私に向けられたまま、標的を変えようともしない。
このまま振り下ろされれば、間違いなく私は背中を斬られる。今まで斬られた経験は無いけど……さぞかし痛いのだろう。
でも……それでも私は離れない。本音を言えば怖いけど……キッドを洗脳から解放されるのなら、刃の痛みも厭わない。

「キッド……貴方はベリアルの部下なんかじゃない!沢山の仲間を引き連れて、険しい海を何度も乗り越えてきた海賊でしょう!?キャプテン・キッドと呼ばれてる貴方の冒険は、こんな形で終わるの!?そんなの誰も望んでない!」
「…………」
「私、もっとキッドと一緒に居たい!これから何度も大変な目に遭おうとも、キッドが何度も戦いに出ようとも、それでもずっと傍にいたい!だからお願い!目を覚まして!」

……何故だろうか。目頭がどんどん熱くなってくる。目の奥から……とても熱い液体があふれ出て来る。
怒ってる訳でも、嬉しい訳でもない。キッドが永遠に戻ってこないと想像したら込み上げてきた……悲しみの涙だ。

「……ちっ!黙って聞いてりゃ、胸糞悪い女だな!だがもう遊びは終わりだ!キッド、止めを刺せ!」

ベリアルの号令と共に、キッドの長剣の反射光がより一層鋭さを増す。
……私は……ここで斬られるのだろうか。
操られてるとは言え、最愛の夫に傷付けられる。身体よりも、心の方に大きな傷を刻まれるだろう。

ただ……キッドが永遠に目を覚まさない方が……もう一緒に居られない方がよっぽど辛い。
もしも、キッドが元に戻ってくれるのなら、私はどうなっても構わない。
傷付けられるのも覚悟の上。後悔なんて絶対しない。キッドさえ助かれば、それでいい。


……だからお願い……貴方だけでも……!



「帰ってきてよ!私の愛する旦那様に戻ってよぉ!!これからも一緒に居させてよぉぉぉぉ!!!」



キッドの意識に呼びかけるように、お腹の底から精一杯大声を上げた。
私に出来る事は全部やり遂げた。悔いも残らない。
頬に涙が伝っていくのを感じつつも、これから襲い掛かるであろう刃に備え、瞼をギュッと閉じた。


「…………」


しかし……痛みを感じなかった。それどころか刃の感覚も無い。
誰かがキッドを止めたのだろうか。だとしたら、オリヴィアさん?それともシルクさん?もしかしてバルドさん……あるいはドレーク?
真相を確かめるため、恐る恐る瞼を開けて、顔を上げようとした……その時だった。


カラン!


石の床から響く金属の音。何かを低い位置から落としたような、そんな軽い音だった。
その音の方向へと視線を移す。


……これは……キッドの長剣。


「……でき……ねぇよ」
「!?」


懸命に振り絞るような声。それは、操られている時とは違って、弱弱しくて、しっかりと意思の篭った声。
私は、そんな声を発した人の顔を見上げた。



「……サフィアは……斬れねぇよ……」


……光の宿った、赤くない、意思のある目。
操られて赤くなった目ではなくなっていた。何時ものキッドの……私の大好きな人の目。
しかも今、私を名前で呼んでくれた。キッドが私を呼んでくれた。


洗脳が解かれた……キッドが目を覚ました!!


「サフィア……ごめん……な……」
「……え!?嘘……キッド?キッド!?」


喜んだのも束の間。なんとキッドの瞼が徐に閉じられ、そのまま仰向けに倒れこんでしまった。
そんな……やっと洗脳が解かれたのに、今度は何があったの!?

「心配するな。ちょいと反動が強かっただけだろうよ」

おどおどする私の背後から、ドレークが宥めるように話しかけてきた。

「洗脳術を強めに掛けられていたらしいからな、解かれた反動で気を失ってるんだ。まぁ、すぐに目を覚ますさ」
「本当ですか……?」
「ああ。それにしても……」

ドレークは、にこやかな笑みを浮かべなが何度も頷いた。

「よくやってくれた!アンタ、最高だぜ!」
「はぁ……どうも……」

……褒められたのはいいけど……なんでこの人が褒めるのだろうか。
いや、今更だけど……そもそもこの人は何者?

「そんな馬鹿な……何故だ……何故だ!?」

私が両目から流れてる涙を指で拭うと、今までずっと傍観していたベリアルが声を上げた。先ほどからの余裕など微塵も感じず、口元も声も驚愕を表している。

「何故洗脳が解かれた!?今まで以上に強くかけた筈だ!それなのに……ただ呼びかけただけで目を覚ましただと!?有り得ねぇ!」
「有り得なくないです。現にキッドは目を覚ましました。もう貴方の僕なんかじゃないです!」

ベリアルは、仮面の奥の瞳で私を睨みつけてきた。

「テメェ……一体何をした!?洗脳術が、あんな下らない真似で簡単に解かれる訳が無い!一体どんな魔術を使った!小細工もせずにそんな真似が……」
「嘗めんじゃねぇよ!!」

怒りと驚きを混ぜ合わせたベリアルの声を、ドレークの怒鳴り声が遮った。

「下らなくなんかねぇさ!小細工も使ってない!この子の強い愛情が、テメェらの洗脳術を遥かに上回った!この子の想いが深い意識に届き、自ら洗脳の呪縛を突き破った!たったそれだけだ!」
「ふざけるなぁ!それのどこに力がある!愛情なんてものが魔術に敵う訳が無い!」
「ふざけてんのはテメェの方だ!」

ドレークは、一歩前へと踏み出してベリアルの真正面から堂々と言い放った。

「人を想う愛ってのはなぁ!論理だけじゃ解明出来ない、無限の可能性を秘めてんだよ!!」
「っ……!」

……なんだろう……あのドレークって人、悪人だとは思えない。
それにあの姿……やっぱりどこかで見たような……。

「ええい!もうキッドなんてどうでもいい!そんな奴がいなくても、俺の目的は達成されるからな!」
「ド阿呆が。俺はそれを止める為にここまで来たんだ」
「止めようとしても、何もかも手遅れなんだよ!俺はやっと力を手に入れたんだ!」
「……そこにいる怪物の事か?」
「そうだ!このタイラントの細胞、これさえあれば再びタイラントを造れる!」

ベリアルは、背後にいるタイラントの遺体を指差しながら言った。

「……馬鹿言え。生き物を造るなんて簡単じゃねぇぞ」
「それが出来るんだよ……」

反論するドレークに対して、ベリアルは不気味な笑みを浮かべながら言った。

「今はまだ此処に来てないが……もうすぐ、俺と同盟を組んだ海賊がドクター・アルグノフを連れて来る。そいつこそ、世界でただ一人、タイラントを造れる人間だ」
「…………」
「必要なものを全て手に入れた時、俺は最強の力を手に入れる。その時は、貴様もあの世へ送ってやるさ」

……よく話が呑み込めないけど……要するに、ベリアルと手を組んだ海賊が、アルグノフって人を連れて来ると言うことか。
その人がタイラントと深い関わりを持ってるらしいけど……ん?
ちょっと待って……アルグノフって、シャローナのお祖父さん!?どうしてそんな人が……!?

「……なぁおい」

こちらが戸惑っていると、ドレークはやけに余裕染みた表情で口を開いた。


「その同盟を組んだ海賊ってのは……ジェノバ海賊団の事か?」
「!?」


海賊の名前を聞いた瞬間、ベリアルが言葉を詰まらせた。口元からして、激しく動揺しているのが窺える。

「そいつらよぉ……お前らに多額の報酬と引き換えに、ドクター・アルグノフを攫うよう頼まれたんだってなぁ?」
「……待てよおい……何故お前が知っている!?」
「な〜んか、一時期俺とお前が組んだなんて、根も葉もない噂が広まりかけたけどよ……結局お前と繋がってたのはジェノバ海賊団で……」
「答えろって言ってるんだ!なんでお前がアルグノフの件を知っている!?」

ベリアルの発言には明らかに動揺が込められていた。
この反応……ただ事じゃないのは確かだ。ドレークはまるでベリアルの計画がお見通しだったような口ぶりだけど……。

「だ、旦那!ベリアルの旦那!大変ですぜ!!」
「あん?なんだ、お前か」

すると、ベリアルの傍に黒い渦が現れて、その中から先ほどこの場から逃げたエオノスが出てきた。

「聞いてくだせぇ!大変な事に……って、ド、ドド、ドドドドドレーク!?」
「……なんだ、この騒がしいヒョロヒョロのガキは……」

さっきからエオノスの様子がおかしい。何やら慌てたり、ドレークを見るなり驚いたり……ある意味忙しない。今更何をしに此処へ来たのか……。

「おい、一人ではしゃいでないで用件を言え」
「へ、へい!実は……あっしら、騙されていたんです!」
「……は?」

興奮気味に語るエオノスに対して、ベリアルはただ首を傾げるだけだった。

「あっしら、てっきりジェノバ海賊団がドクター・アルグノフの拉致に成功したと思ってやしたが、それはとんでもない間違いだったんす!」
「どういう事だ?」
「さっき分かった事なんですが……!」

しかし、その反応も一変。




「ジェノバ海賊団は……一週間以上も前からドレーク海賊団によって壊滅されたいたんです!!」
「なんだと!?」



エオノスから聞かされた真実によって、ベリアルは驚愕の声を上げながらドレークへと視線を移した。
ドレーク海賊団……ドレークって、あの鋼鉄の人の名前だ。

「どういう事だ!?説明しろ!」
「ドレーク海賊団は、どういう訳かあっしらとジェノバ海賊団との同盟関係を知ったんです!そしてあっしらがアルグノフを狙ってると知ったドレーク海賊団は、ジェノバたちより先にアルグノフの身を確保したんです!その際に、ジェノバ海賊団を一人残らず海の藻屑にしたそうですぜ!」
「……テメェ……!」

ベリアルの呟きに怒りが込められているのが分かった。仮面で目元は隠されているけど、怒りの眼差しでドレークを睨んでいるのが十分分かる。
つまり……ベリアルと同盟を組んでいた海賊は、ドレークたちによって壊滅されていたと言う事か。

「ちょっと待て!それじゃあ、今までの報告はどういう事だ!?あの爺を攫ったってのは間違い無かったんだろう!?」
「そ、それが、ドレーク海賊団が裏でばれない様に細工して、あっしらを騙していたんです!てっきり計画は順調に進んでいたと思い込んでいやしたけど……最初からアルグノフはあっしらの下に来ないんです!あっしらの計画は、最初から潰されていたんですよ!!」

そして、ベリアルたちにばれないようにあれこれ裏細工をして、見事にベリアルたちを欺いたと……簡単に言えば、ドレークの方が一枚上手だったと言う事か。

「……なんだと……そんな……まさか……」

事実を突きつけられたベリアルは、呆然と立ち尽くしている。達成間近だと思われていた目的が、いとも容易く崩されたのだ。いくらベリアルでも冷静さを保てないのだろう。

「……ふん。策士、策に溺れるとはよく言ったものだ」

一方、ドレークは無表情にベリアルを見据えていた。
……それにしても、なんて侮れない人なのだろう。本当にこの人は何者なの?

「そ、それと!もう一つ大変な事が分かったんです!」

未だに興奮を抑えきれないエオノスが話し続けた。

「その……もう既に来ちゃってるんですが、ドレーク海賊団がこの国に攻め入ってきてるんです!」
「それがなんだってんだ!もうその船長が此処にいるだろうが!」

苛立ちを露にしたままベリアルがドレークを指差した。
確かに……今更驚くべき事だとは思えない。もうドレークも此処に来てるし……。


「その船長が問題なんです!今此処に来ちゃってやすけど、あいつが来るのは当然だったんですよ!」


興奮気味のままドレークを指差したエオノス。何をそんなに慌てているのだろうか……?

「分かっちまったんですよ!あの男の正体が!」
「正体?」

ドレークの正体?ますます意味が分からない。一体何を言って……。


「驚かないでくだせぇ!あいつは……あの男は……」
「?」

































「ドレークは……いや、ドレーク・リスカードは、キャプテンキッドの父親なんです!!!」






「…………え?」



……え?あの、え?
……親?父親?
ドレークが?キッドの?
え?え?ええ?


「ドレークは、あっしらの計画を止めると同時に、息子であるキッドを助ける為に此処へ来たのです!」


いやいやいや、それより父親って……。
ドレークが、キッドの父親?二人は親子?
話が唐突過ぎて言葉が出ない。でも、確かにリスカードってキッドの姓名だけど……。

いや、そんな筈無い。だって、キッドのご両親は既に亡くなって……。

「う……うぅん……」

呻き声が微かに響いた。
この声は……間違いない!

「キッド!よかったぁ……目を覚ましたのね!」
「うぅ……あ、サフィア……そうか……俺は……」

閉じられていた瞼が徐に開き、キッドが重い上半身を起こした。
よかった……気がついたみたい。見たところ洗脳も完全に解かれたようだし、本当によかった……。

「……ったく、心配掛けやがって……」
「ん?その声……」

大きな人影がゆっくりとキッドに近付いた。そして人影の声に気付いたキッドが、その方向へと見上げようとした瞬間……。


「こぉんの激アホ息子!!」


ドカァン!


「いってぇぇぇぇぇ!!」
「きゃあ!」


鋼鉄の拳がキッドの脳天に振り下ろされた。その途端にキッドは悲痛な叫びを上げながら転げ周り、その勢いで私はキッドの身体から滑り落ちてしまった。
……鉄の手で拳骨……痛そう……。


「この、いきなり何しやが……る……」
「……よう。助けに来てやったぜ」

頭を抑えながら立ち上がり、殴った張本人へと視線を向けた瞬間、キッドの表情が怒りから驚愕のものへと変貌した。
この反応……やっぱり知り合い……。


「……お……親父!?」
「なんだ、今頃気付いたんかよ」
「……え?お、親父?」


確かに今、ドレークの事を親父と呼んだ。
親父って……お父さんに向かって言う呼び名だ。と言う事は……まさか……。

「あ、あの、キッド、そちらの方は?」
「ああ、いきなりの紹介で悪いんだが……血の繋がった俺の父親だ」
「……え?ええ?」

キッドが言うのなら間違いない。
ドレークは……キッドの実の父親……。


「まぁそう言う事だ。俺はドレーク。ドレーク・リスカードだ。君とは初めて会うな、息子の嫁さん」


……え?えぇ?えええ!?



「えええぇぇぇええぇぇええぇえぇぇええぇ!!?」
「いや、今更驚くのかよ。意外と天然だな」


自分でも驚くくらいの叫び声を上げると同時に、思わずその場で飛び跳ねるように立ち上がってしまった。
本当にキッドのお父さんだと言う事は……私にとっては、お義父さん!?

「ほ、ほほ、本当に、キッドのお父さん!?」
「あはは……本当だって。今まで親父と会わせる機会なんて無かったけどな」

苦笑いを浮かべながらそう言ってるキッド。
そんな、まさか……こんな形でキッドのご家族とお会いするなんて……!

「あ、ああ、あの!どどどどうも初め、まして!パパ!じゃなくて、お、お義父さん!でもなくて、お義父様!わわ、私、サフィアと申し、ます!えと、ええと、キッド、いえ、キッドさんとは、とても仲良く、おおお、お付き合いさせてもらってまして、あの、その、ええとあの」
「そんなに緊張するなって。君は確か、サフィアちゃんだったな。うちの息子を支えてくれてるんだってな。本当にありがとう」
「い、いえいえいえいえ!そ、そんな!夫に尽くすのは、つつつ妻として、と、当然と言うかなんと言うか……」

あわわわわ……ど、どうしよう。呂律が回らない。今まで色々とあり過ぎて混乱しかけているのか、必要以上に緊張しちゃってる。それもお義父様の前だと思うと余計に……!

「おいおい、どうたんだよサフィア。そんなに緊張するなんて、らしくないぞ」
「い、いえ、そんな事は……」
「親父の前だからって、肩肘張るなよ。もっとリラックスしていいからな」
「おいこらキッド、テメェがそれを言うか?まぁ、実際その通りだけどな」
「あ、あはは……」

キッドがさりげないサポートをしてくれたお陰で少しは落ち着いたけど……やっぱりお義父様の前だと緊張しちゃう……。
……あぁ、そうか。何処かで見たような気がするのは、雰囲気や口調がキッドと似ているから自然とそう思ってしまっただけだったのか。キッドのお父さんだとすれば納得できる。

「あの〜、家族の取り込み中のところ申し訳ないのだが……」

と、恐る恐ると言った感じでシルクさんが話しかけてきた。

「ほら……もうそろそろ構ってやった方がいいぞ」
「は?構うって?」
「……あいつ」

シルクさんが指差した方向には……。


「……何時まで待たせるつもりだ!?あぁ!?」


……たいそうお怒り状態のベリアルが……って!


「やっべ!まだあいつ倒してなかった!サフィア、危ないから下がってろ!」
「は、はい!」
「待った」

キッドが地面に落ちている長剣を拾い、戦闘態勢に入ったところでお義父様が一声かけた。

「……ここは俺に任せな。キッドはサフィアちゃんが怪我しないように守ってろ」
「あ、親父!」

そして片手でキッドを制し、自ら前に出てベリアルと対峙した。

「さぁて……そろそろケリを付けたいと思ってたところだ。覚悟を決めてもらおうかね」

お義父様は手をポキポキと鳴らし、何時でも戦えるよう準備を始めた。

「ドレーク……やはり俺の計画において、一番の障害は貴様だったようだな!」

対するベリアルの声には明らかに怒りが孕んでいた。悔しそうに歯軋りをしているのが窺える。

「貴様はこれまでに、何度も俺の計画の邪魔をしてきた!今度こそ邪魔はさせないと思ったのも束の間、またしても妨害してくるとは……!」
「あの時言った筈だ。お前の野望は俺が何度でも食い止めてやるってな!」

バチバチと火花を散らすお義父様とベリアル。
これから始まる戦いは、想像以上に激しくなる……そう思えてならなかった。

「何度も何度も邪魔しやがって!貴様だけは……」
「許さない!とでも言うつもりか?」

ベリアルが言いかけた言葉をお義父様が遮った。

「それはなぁ……こっちの台詞だ」

静かに……それでいて重く響くように言ったお義父様の目は、しっかりとベリアルを捉えている。
鋭く刺さるような……怒りの目だ。

「この期に及んで覚えが無いとは言わせねぇぞ……お前は懺悔すべき罪を犯した。それも……三つもな!」
「あぁ?」

一歩一歩確実に、ゆっくりとベリアルへと歩み寄るお義父様。ベリアルは惚けた様子を見せたが……。

「一つ……俺の息子を操って、替えの効く駒として扱おうとした事」

一歩踏み込む度に力を入れて……。

「二つ……その為に息子の嫁を人質に取った事」

一字一句ハッキリと放ち……。

「そして三つ……操られたキッドに一生懸命呼びかけるサフィアちゃんを馬鹿にした事だ」

三つ目を言い終えたところで、お義父様はピタリと足を止めた。


「要するになぁ……」


そして……静かな声と……。


「俺が言いてぇのはなぁ……」


両手の拳が震えて……。



「よくも俺の家族に手を出しやがったな!!って事だぁ!!」



ズドォン!!



「!!!」
「ギャー!!旦那ぁ〜!!!」


……一瞬の出来事に、最初は理解出来なかったけど……少しの間が空いてようやく状況を呑み込めた。
光の如く素早くて強力なお義父様の怒りの鉄拳がベリアルに炸裂。殴り飛ばされたベリアルは、背中から遺跡の石柱に叩きつけられた。

「お前とは何だかんだ言って長い腐れ縁だ!百歩譲って今までの事を全て水に流したとしても、大切な家族に手を出されたら俺だって怒り心頭なんだよゴルァ!!」
「くっ……横暴な裁きの雷(ティラジャッジメント)!!」
「無駄だぁ!」

圧倒的な威圧感を剥き出しにしながら、凄まじい勢いでベリアルへと駆け出すお義父様。ベリアルは漆黒の雷をお義父様に向けて放ったが……あっけなく避けられてしまった。

「クソ食らえ!」

バゴォン!

「うぉっと……」
「そこかぁっ!」
「ぬぉわぁっ!」

雷を掻い潜り、ベリアルの顔面に拳を一発突き出したお義父様。しかし、頑強な一撃はベリアルではなく石柱に当たった。身を翻してかわされたと思いきや……すぐさま回し蹴りをベリアルの鎧に一発叩き込んで大きくぶっ飛ばした。

……あの肉体での戦い方……キッドに似ている。
やはり正真正銘の親子と言う事なのだろうか。

「ぐぁっく!……貴様ぁ……!」
「……たとえ息子の嫁でも……義理の関係でもなぁ、俺の娘である事に変わり無い!つまり、サフィアちゃんも俺の家族って事だ!」

なんとか受身を取り、フラフラと立ち上がりお義父様を睨みつけるベリアル。しかし、今のお義父様にとって敵の睨みなど微塵も効かないようだった。


「教えてやるぜ!子供を酷い目に遭わされて怒り狂った父親ってのはなぁ、地獄の閻魔大王よりもおっかねぇんだよ!!舌を抜き取るだけじゃ気が済まねぇほど厄介なもんだ!!」


それどころか、逆にベリアルを威圧するかのように睨みながら、あえてゆっくりと力強く進んでいる。


「俺の!」


そのお姿……。


「家族に!」


まさに、猛々しい黄金の獅子。


「手を出す奴は!」


そして……もう一言で表すならば……。



「許さねぇ!!」



誰よりも我が子を想う、勇ましき父の背中!!
14/01/02 21:45更新 / シャークドン
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■作者メッセージ
皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

と言う訳で……今回は序盤でヘルムが大ピンチ。
そしてドレークも参戦してようやくキッドの洗脳が解かれました。

作中だけでは分かり辛いかもしれないので一つ補足説明しますと、ベリアルと手を組んでいたのはドレークではなくて、ジェノバ海賊団だったと言うことです。尤も、そのジェノバは登場するのが一回限りのやられ役なのですがw

そして驚愕の新事実。なんと、ドレークはキッドの実の父親でした。
……え?後付設定?いえいえ、とんでもない。ずっと前からあった設定でしたよ本当に。
でも確かに私の処女作でキッド本人が『両親は死んだと聞かされた』なんて言ってましたからね。でも実は、その話には未だに明かされていない裏があったのです。ちょっとだけヒントを言いますと……実際に両親の死を『見た』のではなく、あくまで『聞かされた』訳でして。
まぁ、詳しい話は本編中に明かしたいと思います。

……え?じゃあ第一話からのルミアスたちとの件は一体なんだったのかって?
それは次回、しかも序盤で白状(?)します。 
と言う訳で次回は、ドレーク参戦によりますます大波乱……と言うより大集合!?そして……念願の再会!?

では、読んでくださってありがとうございました!

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