連載小説
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後編
―6―

「う、あ、ぁあー……」
「うふふ」
 あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。時計もない。外の様子すら見えないこの場所で時間という概念は希薄なものになっていた。
 お腹も空かないし、喉も乾かない。尿意も便意もなく眠くもならない。
 唯一残ったのは、いま与えられているものを貪りたいという欲求のみだった。
 俺はいま、紫百合に囚われている。
 彼女のムカデの身体にぐるぐる巻きにされ、甘い疼きを与える牙と歩肢が食い込み、身じろぎすら許されない。
 その状態で押し倒されている俺には、常に思考と身体の感覚を狂わせる猛毒が注入され、抵抗する意欲すら沸かない。いや、さっき言ったように、そうされることを俺は望んでいるのだ。
 毒で狂わされた結果そうなったのか。もし狂わされていなくともなっていたのか、いまの俺にはそれを思考する術すら残されていない。
「ぁ、しゆ、り……もっと」
「ふふ、いっぱい飲んでください。んあ……」
 紫百合の口からいっぱいの粘性のある毒液を垂らされる。俺は口を空けてそれを喉の奥へとそのまま流し込んでいく。
「お、おっぱいミルクもどうですか? ほら、びゅーびゅー、ふふ、顔が私のミルク塗れ、気持ちいいですよね?」
「気持ちいい……」
「これはどうですか?」
「っうあああっ!」
 太ももに甘い痺れが走る。ムカデの尾先にある大顎に噛まれ、毒液を注入されたのだ。注入された箇所はじんじんと甘い痺れが広がって、形容しがたい快楽に変貌する。毒汁を直接飲むのとはまた違った悦楽を味わえて、これも俺は楽しみにしていた。
「ふふ、これでもう全身噛み痕だらけになっちゃいましたね。私の噛み痕だらけ……ふふ、ふ、ふふふっ……」
 満たされている。紫百合にこうして毒を注がれると心が安らぐ。幸せとはきっとこのことを言うのだろう。紫百合とこうして肌を重ね合うと堪らなく心が満たされた。
「でもここは満足できてない、みたいですね」
「ぅぁ」
 まるで心を見透かしたように、紫百合は腰をぐっと俺の股間に押し付ける。ペニスが押しつぶされ俺は声にならない呻き声を漏らした。
「シテ、欲しいですか?」
「う……」
 シテ、欲しい。紫百合の全力で俺のソコを嫐って欲しい。唯一毒の触れていない、噛まれてもいないそこを淫毒で犯して欲しい。
 なのに口が動かない。喋れないわけじゃないのに、心も身体もそう望んでいるはずなのに何かが塞いでいる。一線を越えさせないようにしている。
 理性も本能もわかっている。もしペニスを毒で犯され、快楽の餌付けをされれば正真正銘俺は人ではなくなると。紫百合だけを望んで、紫百合がもたらす快楽と毒に依存し、貪るだけの存在になるということを。
 そうなった場合、俺の人としての人生は終わってしまうということを、知っている。
 だから言えない。おねだりができない。したいのに。いますぐにでも紫百合に徹底的な調教を施され、快楽と毒に尻尾を振る雄犬に成り下がりたいのに。
「はぁはぁ、しゆ、り……」
 おねだりを目で伝えるけど、紫百合は嗜虐的な笑みを浮かべるだけだ。決して俺のペニスに毒を注ごうとはしない。
「ふふ、ふ、三日。三日です」
 三日? 何が?
「ホワイトデーまであと三日、あるんです。それまでに答えを聞かせてくださいね。瑞樹くんの全てを捧げるおねだりを」
「はぁはぁ、はぁ紫百合、俺、俺……!」
「焦らなくていいですよ。瑞樹くんが素直になれるように、ふふ、ふふふっ、この三日間、たぁっぷり毒をその身体に染み込ませてあげますからね。身体の噛み痕もすぐに消えますよ。消したくないからその都度付けますけどね……ふふっ。だから、お、思う存分狂ってください。瑞樹くんのその情欲をたっぷり溜め込んでください。ほら思い出して、私に腰を押し付けられただけでイッちゃったときのこと」
「あ、あああ」
「すごく気持ちよかったですよね? あれが、あれよりも、ずっとずっと気持ちいいのが、これから先一生? いいえ、常に、未来永劫味わえるようになります」
「っ、ああっ!」
 欲しい。その快楽が欲しい! なのに口が動いてくれない!
「ふ、ふふっ。三日です。三日間、イケない身体にいっぱいいっぱい、本当ならイッちゃうくらいの毒を注いであげますから。苦しいかもしれないけれど、私も頑張ります。だって、私だって本当は我慢しているんですよ? オマンコが疼いて疼いて、瑞樹くんのオチンポ食べたくて仕方なくて飢えているんですから」
「はぁ……紫百合のオマンコ」
「でも我慢。堕ちましょう? 堕ちきってもう昇れなくなって、毒沼の底で永遠に愛し合いましょう? だから――」
 紫百合が毒を滴らせる牙を剥き出しにする。
「私に狂ってください、瑞樹くん。私だけのことを考えて」
 つぷっ、という音ともに俺の首元に紫百合の顔が埋まる。
 俺は紫百合の髪の香りをたっぷりと吸い込み、再び毒の微睡みに身を委ねた。

―7―

 それからは徹底的な調教だった。餌付け、などという言葉じゃあ生温い。もはや洗脳。脳を毒で洗う行為に俺は晒され続けた。
 甘美なひとときだった。
「ふふっ、目が蕩けてもう何も考えられないって表情です」
 毒を注入されるだけでは終わらない。俺の体内を巡る血液、いや俺の身体を構成する成分を、紫百合の毒とそっくり入れ替えるような強烈な毒攻め。
「かぷっ、んちゅちゅうう、っぱぁ、うふ、ふ、瑞樹くんの指おいし、んんっ、じゅぷじゅっぷ、ろぉれすかぁ? わらひの、おしゃぶり。こうひれ、んんっ、オチンポされたいれす、よね? んんっ、毒も注入して……ちゅう」
 紫百合の毒がもたらす快楽の陶酔に囚われた俺は、彼女の成すがままだ。
 指も一本一本、手だけでなく足の方まで、ねちっこく紫百合は舐めしゃぶってくる。マーキングされている。唾液と毒でぬるぬるになった指は、しかし不快感は一切なくてむしろ紫百合の毒塗れの口内から離れるとひどい寂寥感が襲い掛かってくる。
「あ、安心してください、何度でもしゃぶってあげますから」
 紫百合の口内。ピンク色と葡萄酒色の毒に塗れた肉壺を見せつけられ、期待感を膨らませた俺に彼女は応えてくれる。
 紫百合の俺に対する執着心が尋常でないように、俺も次第に紫百合に対して異常な執着を抱き始めていた。
 二日目のことだ。女が現れた。
 そいつは白い悪魔のような女だった。名前はよく覚えていないが、リリなんとかだったと思う。そいつに紫百合はいまの姿にしてもらったらしい。
 でもそんなことはどうだっていい。問題はそいつが現れたせいで、ほんの数分だったけど毒の注入が中断してしまったってことだ。厳密には尾先の大顎からは注いでもらっていたが。
 たった数分だ。でも、俺にとってその時間は永劫とも思えるくらい長かった。
 ここに来て、初めて喉の渇きというものを覚えたんだ。
 そうして俺は、毒の拘束がほんのわずかだけど緩んだのに気づいた。動ける。足も動く。つまり逃げられる。
 でも逃げない。逃げるわけがない。例えるなら俺は砂漠に落とされた人間。そんな奴が、たっぷりの水を蓄え雫を滴らせるたわわな果実を前に、どうして離れることができるのか。
 俺は話の最中というのにも構わずに、すぐさま紫百合のおっぱいにむしゃぶりついていた。毒のミルクを迸らせる紫百合の豊満なおっぱいにだ。
 甘い。直接飲むミルクはとても甘くて脳味噌を溶かしてくる。コリコリと勃起した乳首を甘噛みすればびゅーびゅーと毒ミルクがたっぷりと噴き出してくる。美味しい。
 話の腰を折ってしまった負い目なんてない。紫百合の毒が欲しかった、紫百合のおっぱいが欲しかった、紫百合が欲しかった。それを邪魔する奴はいらない。
 白い悪魔は消えた。
 確認したわけじゃないけれど、異分子の空気が消えたから多分そうだ。
 おっぱいへ吸い付いたまま紫百合へ視線を上げると、彼女は爛れ切った陶酔の笑みを浮かべていた。まるでいま俺が吸っている毒を極限にまで煮詰めて、むせかえるほどの甘い香りと淫靡な匂いを放つものへ昇華させたかのような。
 そして、いままでは見せて来なかった、別種の快感の色を見せた。
 歓喜と困惑が入り混じり、快楽を耐えるように紫百合が歯を食いしばる。
 俺を巻きつけるムカデの胴体の拘束が緩む。というより、紫百合自身の力が緩む。へたれる紫百合と一緒に俺は布団へと倒れ込んだ。
「み、瑞樹くんの唾と毒が混ざると私にとっても毒になるんです」
 紫百合曰く、普段は耐性のある毒だが、俺の唾が毒に混ざると紫百合の耐性が無効化されるらしい。
 紫百合はおっぱいからも毒のミルクを出す。それを俺が直接吸ったことで紫百合にも俺が味わっているかのような快楽が襲い掛かってしまったそうだ。
 つまり、いまの紫百合は俺と同じ。一緒だ。紫百合は俺と一緒。俺も紫百合と一緒。
 先ほどまで以上の充足感が身も心も満たした。
「俺も、紫百合を気持ちよくさせられるんだ、な」
「っ、そ、そうですよ……ふふふ、瑞樹くんも、私にシテくれるんですか?」
 答えは言葉ではなく、行動で示した。紫百合の身体をこれでもかと舐めしゃぶった。
 毒でいままで痺れていた身体は、紫百合に快感を与えるというときにだけ動くようになっていた。
「あひっ、そ、そこっ、あふっ、感じ、あぁんっ!」
 特に紫の模様が感じるらしい。実はこれはただの模様ではなく毒腺だそうだ。
「んっ、瑞樹くんの唾液を塗られるとひゃああんっ!」
 喘ぎ声に俺はますます昂って、もっと紫百合の乱れる姿が見たくて夢中にその肢体に、卑猥な毒腺に舌を這わせた。
 狂っている。紫百合も、俺も狂っている。普通じゃない。毒で俺の頭をおかしくしている相手にこんなにも執着して溺れるなんて。
 俺たちは互いを貪りあった。唾液と毒塗れになりながら。

「ふぅふぅ」
 さすがに息も荒くなった。夢中で舐め合い続けていたからお互い息も絶え絶えだ。あれからどれほどの時間が経ったかは把握できていない。でももうすぐ三日目になるかもしれない。
「はぁ、はぁ、ふ、ふふ、嬉しいです……こんなにも瑞樹くんに舐めてもらえるなんて。でも、変じゃないですか? 私の身体、半分ムカデで人間の身体もこんなに陰険な」
 そんな紫百合らしくない不安な言葉が一段落したときに紡がれる。
 俺のせいだろうか。一向に堕ちない最後の理性のせいで不安になってしまったのだろうか。
 俺は一緒に横になっている紫百合の髪を梳かして、その顔を露にする。以前までは確かに陰湿な雰囲気を醸していた。でもいまはどうだろう。
 憂いを帯びた紫紺の瞳も、病的な白い肌に浮かぶ紫色の毒腺も朱を帯びた唇も、どれもいやらしくて愛らしい。
 この妖しく光る瞳に射抜かれれば、もうそれだけで全身に毒を注入されたかのような快感さえ覚えてしまう。この唇から毒液が零れ落ちれば舌を伸ばして一滴たりとも零したくないとさえ思えてしまう。
 白い肌を侵している毒腺は卑猥に脈動しているようにも見え、指を這わすだけで感じた声を漏らす紫百合が愛おしい。
 美しい。昏い情念と情欲をたたえた笑みを、俺だけに向けてくれる紫百合の顔が好きだ。
「…………」
 声が出ない。言えない。まだ、言えない。まだ俺の中に堕ち切れない俺がいる。
 だから、求める。身体で伝える。
 紫百合の顔を愛撫して、頬の毒腺を舐めて、ペニスを紫百合のお腹に押し付けて、紫百合が欲しいことを全霊を以て伝える。
「あはっ、うふっ、ふひっ、ふふふっ、いいんだ、こんな私でいいんだ。瑞樹くんはこんな私にふふ、オチンポ勃起させて求めてくれるんだ」
 白目を剥きそうなほど悦んでいる紫百合の唇から垂れる毒の涎を舐めとる。もう我慢なんてできない。
 でも紫百合は俺の唇を人差し指で押さえた。
「はい、瑞樹くん、私頑張りますね?」
 紫百合は笑った。
 どうしようもなく狂った享楽と陶酔に塗れた笑みを俺に向けてくれた。
「ありがとうございます。ふ、ふふ、完全に堕としてみせますから、安心してください、ね?」
「紫百合……」
「もう、ここもこんなにパンパン、ですもんね。早く瑞樹くんだって出したいですよね? ドロドロに煮詰まったいやらしい白濁汁を、私にぶっかけて真っ白に染めたいですよね?」
 そうだ。早くイキたい。紫百合に出したい。毒のせいで吐き出すこともできず、しかし最大速度で生産され続ける精液を、膨らんだ玉袋の中身を全部紫百合に注ぎたい。
 あの快楽を味わわせて欲しい。
「ふ、ふふっ、全部わかります。瑞樹くんの、爛れた欲望が、私だけに向けられているのが」
 紫百合が俺の下半身にムカデの身体を巻きつけたまま、馬乗りになるように身体を起こす。
 そうして、紫百合は人差し指と中指を立て、その指で空を切り始めた。シュッシュッと素早く何度も、何かの文字を描くように空を切っていく。
「顕現せよ具現せよ猛毒の大百足」
 脳に直接響くような不思議な声。空を切っている指先に紫紺の光が宿り、虚空に蛇がうねったような文字が幾重にも折り重ねられて描かれていく。
「其処は壺の口、此処は壺の内、顕れたまえ顕れたまえ」
 紫百合が指で虚空を一閃する。紫紺の輝きを放つ文字が、その色をどす黒い紫へと変貌した。
「開宴せよ、蟲毒の宴」
「!」
 その文字が弾け飛んだ。まるで血、いや紫百合の毒のように座敷牢の壁や天井、さらには俺へと飛び散ったのだ。
 変化はすぐに現れた。天井や壁に飛び散った黒紫のシミ。それが突如蠢き始めたのだ。
 うぞうぞとそれはまるで百足のような形状となり、壁や天井を走ってシミを増やしていく。黒の絵の具がバケツの水を浸食するように。
「さぁ、瑞樹くん。“変わる”ときが来ました」
「か、変わる?」
「はい。瑞樹くんは染まるんです。私色に。ほら、もう染まっていますよ?」
 気づけば、俺の腹の辺りにも黒紫の百足が数匹滑っていた。まるで絵に泳ぐ魚のように何の抵抗もなく、俺の身体にシミを残していっている。
「っ、ああっ!」
 おぞましいという感覚を覚えたのはほんの一瞬だった。身体が紫百合の毒百足に侵食される感覚は筆舌にし難い快感が伴っていた。
 射精してしまったかのように思えたが暴発はしていない。出し切ったあとにさらにイッたかのような感覚が無尽蔵に迫ってくる。
「くぃっ!? ああぁあっあくぁっが、んぁ」
 耐えようと思っても耐えられない。覚えようとする恐怖すら塗りつぶされる快楽の狂宴。射精の感覚がないせいで満足することもなく際限なく高まっていく。もっとという気持ちが湯水のように湧き出てくる。
 びちゃびちゃという音が天井から降ってくる。染め上げ終えた毒の百足たちが俺へと降り注いできたのだ。それだけじゃない床からも俺の身体へと百足は這い登り、体内へと潜り込んでいく。快楽は一層深みを増した。
「はぁはぁ、うっ、あぁっ!」
「ふふ、ふ、ふふふっ、これは私の毒そのもの。でも毒そのものに意識のある特別な毒。ほぉら、泳いでますよ? 瑞樹くんの身体の奥の奥まで細胞の一つ一つ隅々にまで、染み込んで溶け込んで、同化するんです」
 注入されていた頃と比べ物にならないほど紫百合の毒を感じた。
 どくどくと脈動する毒の音。
 皮膚を同じ色に侵していく毒の感触。
 息を吸わずとも香る甘ったるい毒の匂い。
 感覚の一切が紫百合の毒を感じるためにあるかのようだ。
「わかりますか? 瑞樹くんの全身を流れる血が、私の毒に染まっていくのが。心臓が鼓動する度に、ふふっ、とてもとても素晴らしい快感が全身に染み渡っていきますよね?」
「すごいっ、こんなの、耐えられっ、っああ」
「大丈夫、気絶なんてしません。そのためにさっきまでじっくりと毒を注入して均していたんですから。もう瑞樹くんも私の毒を宿すことのできる身体になっているんです。あとは、今日一日ずっとこの術でひたすら瑞樹くんに毒を注ぎ続けるだけでいいんです。そうすればもう毒は消えなくなる。ずっと瑞樹くんの中を私の毒が泳ぎ続けるんです、ふっふふ!」
「これで俺は、堕ちれ、る」
「はい。もう悩むことも苦しむこともありません。ひたすらお互いを求めあうだけの私たちだけの狂愛の世界が出来上がるんです」
 紫百合は笑った。狂いそうになる俺に微笑ましげに笑いかけた。それは俺を誘う笑みだ。一緒に狂おうと、囁きかけるものだ。
 毒を喰らわば皿まで。そんな言葉を思い出す。
 なら皿とは? ここで言う皿とはきっと紫百合のことだ。
 手は動いた。わかった。俺の身体は、こと紫百合を求める場合でのみ俺の思い通りになる。
「え、瑞樹くんっ!?」
 驚いた紫百合の腕を引いて俺の身体へ倒れさせる。無防備に倒れ込んできた紫百合の唇をそのまま奪った。
「ちゅ、あむっ、らめ、いまされたら瑞樹くんの唾飲んじゃったら、あひぃっ!? 術の制御できなっ、くひぃいいいっ!!」
「んむっ、ちゅっ、紫百合、はむっちゅ、好きだ、制御なんて、んんっ、いらないからもっと一緒に。お前の全部俺に」
「はぁあああっ、ちゅっ、はいぃぃ、全部、んんんっ、ですね、ふひっ、ちゅっちゅじゅずずずずず、れろぉぉお、あむっごくごく」
 濃密なキス。舌を絡めて水音を弾けさせて、唾液の交換をする。
 甘い毒蜜の唾液を飲み下す度に射精以上の快感が襲い掛かってくるけれど、それで気を遣ることのない身体が俺にはもう備わっている。
 だから思う存分、紫百合のチョコよりも甘い舌に絡めて味わう。
 俺の唾液を飲んで身体を痙攣させながらも、紫百合はそれに応えてくれる。
「んちゅっ、んんっあっはっ、もう、らめっふふ」
 その声で異変に気付いた。生暖かい水が仰向けの俺の背を覆っていることに。
 毒が溜まっていた。溜まり始めていた。床一面、黒紫の毒液が波打ってその嵩を徐々に上げている。もう耳にまで届いていた。
 その毒液は意思を持っているのか。俺の耳の中へ嬉々として侵入してくる。紫百合の声が脳内に直接響く。
「ふ、ふふっ、私も瑞樹くんも狂う毒の浴槽です。一緒に、さぁ一緒に浸かりましょう?」
 頭まで。全身が紫百合の毒に浸る。彼女の意思が宿った毒に。
「安心してくださいね、息はできますから。視界もほら、お互いの姿がはっきり見えますよね?」
 毒の浴槽の中は暗くとも、不思議と紫百合の姿だけははっきりと見えた。その内、俺と紫百合以外の全てがなくなる。
 たゆたう感覚はまるで宇宙空間に二人だけ放り出されたような。しかし全然寂しくない。目の前に自分にとって必要な人がいるから。
「ああ、ふふ、瑞樹くんの身体が、私の色に」
 紫百合の意思が俺の身体の中に入ってくる。染み込んでくる。
 毒の中を泳いでいるのか、毒が俺の中を泳いでいるのか、もうそれすらわからないくらいほど境界が曖昧になる。
 紫百合に俺が融け込んでいくようだった。
 紫百合が俺に溶け込んでいくようだった。
 甘い微睡みと溶けるような快楽に意識が薄れゆく中、声を聞いた。
『一緒になってください。独りにしないでください。愛してください。愛されてください。私を、私だけを見つめてください。私も、あなただけを見つめていますから』
 それは俺に言っていた。
 だけどその想いは、俺に好意を抱くずっと以前より彼女がひたすら願っていた想いでもあった。
 俺だけが彼女の孤独を癒せるのだと知った。
 彼女の想いに応えたい。俺もそう想っていた。

―8―

「ん……」
「あ、目が覚めましたか?」
「紫百合?」
 あの座敷牢で俺は目が覚めた。毒の浴槽の痕は残っておらず、敷布団に俺と紫百合が裸で寝ていることだけ。紫百合は男心をくすぐる着物を着崩しているけど。
「ふふ、随分と可愛らしい寝顔でしたよ、瑞樹くん。惚れ直しちゃいました」
「は、恥ずかしいな……」
 身体は寝起きだったけれどすこぶる快調だ。
「つ、次は私の寝顔を見てくださいね? ……あ」
 紫百合のムカデの胴体を抱き枕のように足で抱く。ふにゃりと表情を崩す紫百合の表情がたまらなく可愛い。
 背中に手を回して抱き寄せると今度は緊張したように頬を赤らめた。
 その状態のまま俺たちはしばし無言で抱き合う。紫百合の柔らかな肌に手を滑らせて、肌を密着させて互いの熱を確かめ合う。
 紫百合の身体はとても熱かった。火傷しそうなくらい。いや溶けそうなくらい。俺を想ってくれる熱で蕩けている。
 情欲と愛欲に塗れて、俺だけのことを考えている。俺の身体の中の毒を通して、それが伝わってくる。
「はぁあぁぁぁあ……温かい、瑞樹くんの身体……ふ、ふふふ、み、瑞樹くん、今日はもうホワイトデーです」
 紫百合が俺を仰向けにする。なすがまま、彼女を受け入れた。
 紫百合は俺の股を広げ、その間に座る。彼女は艶やかな双丘の胸から指を、淫猥な毒腺に沿って愛らしいおへそへといやらしく這わせ、俺の視線を釘付けにした。
 そうして辿り着いたのが、札のある箇所。紫百合がこれまで決して見せなかった秘所だ。
 ぷっくらと膨らみ、一本の縦筋が入った札の端から薄紫の半透明の蜜が零れている。それを垂らしている穴がひくひくと蠢いているのがわかる。
 ごくりと俺の喉が鳴った。同時にペニスが跳ねて紫百合の秘所の札に触れようとした。唯一、何故か毒を直接打ち込まれていない俺のペニス。あの毒の浴槽でも避けられていた。
 全身が毒の快楽を味わっている中、ペニスは毒を求める疼きでいつもの倍くらい怒張している。
「素敵、瑞樹くんのオチンポ……ふふ、欲しいですよね? 私のここ」
 また生唾を飲み込む。欲しい。欲しいのに言葉が出ない。
「いいえ、出せますよ。ただ理解できていないだけなんです。欲しいと願うと本当に自分がどうなるのか」
「俺がどうなるか?」
「はい。でも私は欲しいです。瑞樹くんの全てが欲しい」
 紫百合は艶美に微笑むと、指先を札の隅に添えた。それを音もなくゆっくりとめくっていく。
「っ、甘い……」
 これまでの毒を遥かに上回る甘い蜜の香り。紫百合が指を下ろしていくごとに濃密なものになっていく。
「今日はホワイトデーです。ください、瑞樹くんの全てを。私の全てをあげますから」
 そうして全てをめくり終えた。
 毛の一本も生えていない、綺麗でぷっくらと隆起した丘に一本の筋が走りひくひくと震えている。紫百合はその筋に指を添え、広げた。
 ごぷっと、紫色の毒蜜が溢れて、その白い肌をいやらしい色に塗り上げる。丸見えになったピンク色のオマンコの穴から絶え間なくごぷごぷと毒蜜を垂らし、俺のペニスを求めて蠢いていた。
 俺のペニスも紫百合のオマンコを求めて跳ねた。だけど届かない。
「み、瑞樹くん。あなたのこれからの未来を私にください」
「未来?」
「はい。もしかしたらあなたは将来、とても良い大学へ進学し、良い会社に入社していたかもしれません。も、もしかしたらとてつもない偉業を残したかもしれません。私よりもき、気立ての良い女性と結ばれたかもしれません。幸せな家庭を築き、こ、子供も作って、もしかしたら孫にも囲まれて良き人生を歩んでいたかも、しれません」
 俺の可能性。今後あり得るかもしれなかった未来。それを紫百合は紡いでいく。この場にいるよりも明るい未来を俺に意識させる。
 俺の理性の唯一の防波堤となっていたそれを紫百合は見えるように起こしたのだ。
「その可能性を全部、私にください。瑞樹くんの明るい未来を全部私に捧げてください。私だけの唯一無二になってください。わ、私と交わり、精を注ぐことしかない、快楽だけの人生を歩んでください。私も、私の全部を瑞樹くんに捧げますから」
 俺自身でその防波堤を崩せるように。
「このオマンコで瑞樹くんのオチンポを食べてあげますから。この身体になってからずっと熟成させ続けてきたこの毒で、まだ穢れのない瑞樹くんのオチンポを犯して侵しぬいて、私色に染め上げて最高の快楽を味わわせてあげますから」
 狂愛の言葉と笑みに、俺はペニスへ血が溜まるのを感じた。
 そして、防波堤の崩し方がようやくわかった。理解さえすればこんなにも簡単に崩せたのだ。
「紫百合」
「はい」
「確かに良い大学にも会社にも、偉業だって残せないかもしれない」
「……」
 色々なことが頭をよぎる。学校のこと友達のこと親のこと。でもそれでも。
「でもこれだけは言えるよ。紫百合より気立てのいい女は絶対に現れないって」
 紫百合が目を見開いて、しかし口元を綻ばせた。
 紫百合のいない生活がもう俺には考えられない。
 いや、紫百合のこと以外何も考えたくない
「だから紫百合」
「はい、捧げます。私の、私だけの愛しい愛しい旦那様……もらってください、私の初めてを」
「うん。俺の人生、全部お前のモノにしてくれ。お前だけしかいない人生で、俺はいい」
 紫百合がゆっくりと腰を下ろしてくる。ペニスの根本を握って、照準を紫百合のオマンコへと向けてくる。
 ついに終わる。俺の人としての生が。
 そして始まる。神様、大百足の番いとしての生が。
 この閉塞された場所でお互いを啄み合うだけの人生が始まる。
「我慢せずに出してくださいね。きっと触れた瞬間イッてしまいますから」
 くちゅと水音が響いた瞬間、俺の脳は屈した。鈴口が浴びた快楽の毒は容易く玉袋の堰を崩し、溜まっていた白濁の波を呼び込んだのだ。
「あっ」
 どびゅっという音が聞こえたが、それだけで聴覚はシャットダウンした。
 全身が総毛だつような絶頂を何十と同時に味わったかのような快楽の奔流に俺は紫百合の歩肢を握って耐えるしかない。
 フラッシュする視界に、紫色のオマンコが瞬く間に白濁に染まっていくのが見える。そして快楽に浮かぶ腰のせいでペニスはさらにオマンコに吸い込まれていき、そのせいでまた筆舌にし難い絶頂が襲い掛かってくる。
 暴力的な快楽の奔流。毒浴びとは比べ物にならない。あまりの快楽に気絶することさえ許されなかった。
「あっが、ぐぁ、あああぁあああっ!!」
 ペニスの管を塊が通っていくのがわかる。常に吐き出している。白濁の塊が。そしてそれを吸い取るようにごくりごくりと俺のペニスを包む紫百合のオマンコが脈動している。
 無数の肉ヒダ。つぶつぶでぷりぷりとした、毒蜜塗れのヒダが一粒一粒、隙間なく俺のペニスに絡みついてくる。竿からカリ裏、そして精を吐き出す鈴口までまるで小さな牙のように食い込み吸い付いてペニスを奥へと誘ってくる。
 きゅうきゅうと締め付ける蜜壺は射精するのに合わせて脈動し、まるで素早く扱かれているかのような錯覚さえ覚える。ああ、ムカデだ。紫百合のムカデに巻き付けられ扱かれているような感覚なのだ。
「っ、はあぁ! 紫百合……! お、俺っ……!?」
 紫百合も様子がおかしかった。俺と同じように法悦に狂った笑みを浮かべて、蕩け落ちそうな頬を両手で支えていた。
「しぇい液……瑞樹くんのせいえき……しゅごいのぉ、あはっ、あふっくひいいいい!? ああっあはっ! 唾液混じりの、私の毒混じりの瑞樹くんの精液ぃ……ふひっ、あひっ!? しゅごいぃいいいいいいあああああああああああ!!」
 身悶えし正気を失う紫百合は、それでも俺のペニスを貪るようにオマンコを貪欲に蠢かしてくる。結合部から溢れ出る毒蜜。その滑りと膣の脈動に誘われ、鈴口がついに奥へと到着した。
 子宮口。紫百合の一番大切なところの入り口だ。
「あ、あ、紫百合ぃ……んんっ!」
「あひっ、こつん、こつんってぇええ! ちゅっちゅってぇ!」
 俺の意思に関係なく腰が動く。突き上げたペニスが子宮口に辺り、キスをした。吐き出し続ける精液がごくごくと彼女の口に呑まれていくのがわかる。もっと、もっと飲ませたい。
「し、ゆりっ!」
「みずき、くん!」
 紫百合と抱き合い、俺は下からいっぱいペニスを突き上げる。初めて浴びた毒に興奮しっぱなしで堰なんて完全に取っ払って精液垂れ流しの蛇口の壊れたペニスを、紫百合の下の口にたっぷりとごちそうする。
「みじゅきくん、うちゅっ、んんっちゅっちゅ、しゅきぃい、みじゅきくんのオチンポしゅきぃいい!!」
 ずんずんと突きあげる度に紫百合のオマンコがキュンキュンとなるのがわかった。
 そして紫百合の動きにも変化があった。
「ごめんなしゃいぃぃ、もっとぉゆっくりとするつもりだったのにぃ無理ぃぃぃ!! 腰動いちゃ、あくひぃっ!? オチンポ食べたいってぇオマンコ言うこと聞かないんでしゅぅぅ!!」
「くあっ! しゆり、激しいっ、くぅぅ! 吸い取られ」
 俺と上半身抱き合ったまま、紫百合が腰を激しくグラインドし始めたのだ。
 ペニスの鈴口までオマンコの膣穴とギリギリキスしているような状態、そこから一気に根本までジュプンッと振り下ろす。
 肉と肉が絡まって弾ける水音と腰がぶつかり合う激しい音が響く。俺のペニスは紫百合のオマンコに先っぽから根本までしゃぶりつくされていた。
「紫百合のオマンコ、キツキツで、締め付け激し」
「ごめんなしゃいぃああああっ! あひっ! オチンポの精液欲しぃからってぇ絡みついて離さなくてぇ、あはぁっ! 瑞樹くんのオチンポの形わかりますよぉ、カリの裏までっ!」
 紫百合の毒汁塗れのオマンコ肉で激しく扱かれ、俺はもう腰砕けになっていた。
 俺の制御から離れて腰を振っていた身体も、紫百合のオマンコに屈してただ快楽を享受するようになった。紫百合がもたらす快楽に雄汁を放って媚びを売る身体に堕ちてしまった。
「あああっ、紫百合もっと! もっとしてっ」
 俺の媚びを受け取るようにオマンコの肉ヒダが吸い付き、腰のグラインドとともにペニスの全部を扱いてくる。毒蜜をたっぷりとペニスに塗り込んでくる。
 精液も垂れ流しだ。三日溜めた精液をどぷどぷと壊れた蛇口のように紫百合のオマンコに垂れ流していく。
 射精の快感とオマンコに包まれる快楽。内外から味わう恍惚の絶頂に、それをもたらしてくれる紫百合のオマンコに俺の人としての理性は完全に壊された。
 紫百合のオマンコと毒、彼女の肢体、俺への狂愛の沼に完全に沈み堕ちた。
 俺は紫百合に無様に抱き付いて、懇願するように涙を流して快楽を求める。もっともっととむせび泣いて、無尽の快楽が欲しいがために屈服の証である雄汁を垂れ流していく。
「しゆりぃ……俺の身体を巻きつけて」
「はぁい、ふふっ、あははっ……!」
 ぐるぐると紫百合のムカデの下半身が、俺を紫百合の上半身ごと巻きつけてくる。尾先の大顎がたっぷりの毒を雨のように俺たちに撒き散らし始めた。毒でにゅるにゅるになった身体は肌での交わりをより気持ちよくさせる。
 そうして俺たちは互いの身体の境界がなくなりそうなほどに密着して、しかし腰だけはぶつけ合えるようにゆとりが持たせられていた。
 巻きつけている間も止まらず紫百合のオマンコが俺のペニスをぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて貪っていたのだ。
「んちゅっ、ちゅっちゅぅううっぷはっ、れろ、れろっんんうひぃ!! ああぁ」
 紫百合のキスの雨。毒蜜がたっぷり絡まった舌で口内を犯されるのがたまらない。
 上も下も紫百合の成すがまま。凶暴な大百足の本性を現した紫百合に、俺は全身の力を抜いていた。紫百合が俺を食べやすいように。紫百合にもっと食べてもらえるように。
「ふひっ、はいぃ、食べますよぉ瑞樹くんの全部……だってぇ、瑞樹くんはもう私のモノなんですからぁ」
 ぐりぐりっと紫百合が腰を強く押し付けてくる。それはいままでなかった動き。まるでペニスをオマンコに埋め込むような動き。
 実際変化があった。
「っっぁ!?」
 声が上擦る。亀頭に浴びせられたぷりっぷりとした肉に精液の塊がどぴゅと出てしまった。
「吸い付いて」
「あはぁ、あぁいいですよぉ〜瑞樹くんのオチンポぉ……食べちゃいます。ぜぇんぶ」
 亀頭に触れていたぷりぷりとした肉が口を開いた。文字通りそのままの意味で。
 そしてまるで蛇が獲物を丸呑みするように、じわりじわりとゆっくり亀頭を呑み込み始めたのだ。
「うあっ、ああっ! な、なにこれ、知らない、俺こんなの知らなっ!!」
「あはああああっ、はああああはっあははっ! しゅごいぃっ! びちゃびちゃって瑞樹くんの精液が飛び散って私の子宮の壁に飛び散ってましゅううっ!! あっ!」
 子宮!? 俺のペニスは子宮に呑まれたのか?
「うあぁっ、熱いっ! ドロドロで」
「うふふ、あんっ! じゅ、熟成させた特別な毒の蜜でいっぱいですよねぇ? ほらぁ、もう亀頭全部呑んじゃいましたでもまだまだぁ全部、ぜぇんぶです」
「あ、がっ、あああっ、どうなってぇ……どんどん食べられてぇ、すごいぃ! こんなの耐えられないぃ! うあぁドロドロが動いて、中に……!」
「あはっ、オチンポビクンビクンって跳ねてるすごい……ちなみにぃこの毒はぁ私の意思で動かせるんですよぉ……だから精液と入れ替わりでぇ、瑞樹くんのオチンポをたっぷり毒漬けにしてあげますからねぇ。ほらぁわかりますかぁ? 瑞樹くんのオチンポの中にどんどん毒が入っていっているんですよぉ? ジュルジュルって蠢いているでしょう? うふふ、気持ちいいですよねぇ? 毒の蜜にシコシコって中から扱いてあげますからぁ、あぁんっ! いっぱい出してくださ、いいいぃっ! オチンポ膨らんで子宮擦ってくりゅうう!! 精液もいっぱいどぴゅどぴゅってぇ!」
 ペニスの外側を子宮の肉で覆い包んでいき、尿道の中を毒が擦って犯してくる。
 子宮の肉は柔らかく、ねっとりと絡みついて俺のペニスの形になっているかのよう。子宮の天井に俺の亀頭が到達してもぐにゅりと伸びて隙間なく密着してくる。
「んひぃぃっ!! しゅごいぃ、みじゅきくんのオチンポでぇ、私の子宮満たされてりゅう、あへぇぇえ……しぇいえきもぉどぷどぷってぇ溜まってぇ、んひっ!! じゅっとこのままぁ」
 紫百合の子宮が完全に俺のペニスを根本まですっぽりと覆ってしまった。まるで俺のペニスが子宮の服を着たかのよう。これに包まれていると言いようのない安堵感が俺の心を満たしていく。
 全部任せていい。全てを放り投げていい。溜め込んでいるものを垂れ流していい。
 紫百合と未来永劫このままでいい。
「あっ、あ、あ、ああ、いい、いいよぉ。紫百合、これぇ、いい……」
 玉袋まで到達した毒が、俺のペニスを作り替えていくのがわかる。
 精液を常に生産できるように。何をしなくとも垂れ流せるように。吐き出すときの快楽を気をやってしまうほど強くなるように。
 そして一度にたくさん射精できるように尿道を大きくされた。
 ペニスが紫百合の望む姿への改造が完了したのと同時、紫百合が笑う。
「うふ、うふふ、うふふふふ! わ、わらひの瑞樹くん、私色に染まった瑞樹くん、私だけのモノになった瑞樹くん!! こ、この顔も、目も、鼻も、口も、耳も、舌も、首も喉も肩も腕も胸もお腹もお尻も腰も脚も髪の毛一本内臓も、流れる血の一滴、零れる一粒の涙、そしてオチンポも精液も全部ぜぇんぶ! 私のモノ! 私だけが触れて、私だけがれろぉっ、舐められて。こうして肌を重ねられて、オ、オチンポをんんっ、オマンコに埋めて子宮で包んで、ふふとっても美味しい精液をごくごくって飲めるのは私だけ!! あはっあはははははははっ!! 嬉しい! 最高に幸せ! 私は神様、だから不滅。み、瑞樹くんがいる限り不滅。だからもうずっとこれから先、私たちは分かたれることはなくて、ずっとずぅぅぅっと、身体を貪りあえるんです! んんっあはっ! オチンポびくってなったぁ! 嬉しいんですね瑞樹くんも! はいわかってますよ全部わかります瑞樹くんのことなら何もかもわかるんですだって私ですもの! み、瑞樹くん唯一の雌ですものっ! オチンポうふっ、どぴゅどぴゅって精液で私の子宮満たしてます。孕ませたいんですか? 孕ませたいんですよね? 孕みたいです! でもまだまだずっと先です! だって瑞樹くんの雌は私だけなんですから!! 私の雄は瑞樹くんだけなんですから!」
 紫百合の激しい情愛と対照的に子宮は優しく、甘く蕩かすように俺のペニスを包んでいる。それこそ貞淑に尽くすような献身的な奉仕にさえ思えてしまう。
 飴と鞭、というよりは薬と毒? 優しさと激しさで俺の思考をドロドロに溶かしつく。彼女のギャップ感に完全に依存してしまっている。
 献身的な紫百合も、俺に激しく独占欲を抱く紫百合も、どっちも素敵だった。
 媚薬であり、そして媚毒でもある紫百合の両面性に俺は甘く蕩かされていたのだ。
 バレンタインデーのあの日、チョコを食べたその瞬間から。
「紫百合、絶対離さないでくれ……俺を紫百合の媚毒で甘く蕩かし続けてくれ」
 蕩けていたい。甘いこの快楽の毒沼に一生、生まれ変わることなく永劫に浸かっていたい。
 紫百合と一緒に居続けたい。
 どうしようもなく狂った俺の求愛に、彼女の狂気の笑みは変わらず。
 しかし俺のことしか見えていない紫紺の瞳の、俺を引きずり込む仄暗い輝きが増す。
「誓います。私、紫百合は未来永劫瑞樹くんを私の媚毒で蕩かせ続けることを」
 唇を重ねる。彼女の媚毒が俺を満たす。満たし続ける。
「ん……愛してます、瑞樹くん」
「うん……俺も……愛しているよ、紫百合」
 紫百合という媚毒の沼に浸かり続ける俺の人生に、終わりが来ることはない。
 決して。

[了]
18/03/14 22:21更新 / ヤンデレラ
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■作者メッセージ
この後、二人は常にペニスをオマンコに挿入れたまま永劫の時を過ごすのでした。
めでたしめでたし。

前中後編お付き合いいただきありがとうございました。
エロシーンが短かったかもしれないですが、お楽しみいただけたのなら幸いです。
(どうしても紫百合のあの性格から一度咥え込んだペニスを離すという状況が思いつかなかったのです)

それではまた。

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