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前編

俺の名前はヴェルカ。
武器は己の拳と蹴で戦う冒険者。
魔力を媒体とした身体能力強化が得意。
事の始まりはギルドの掲示板に張り出されていた依頼書だった。

依頼主:匿名
依頼内容:吸血鬼討伐
依頼説明:村はずれの古い洋館から毎夜の如く吸血鬼が現れる
     今は村人に影響は及ばないが恐ろしいから退治してください
報酬:討伐者にとって最も価値あるもの

「討伐者にとって最も価値あるもの…ね」

俺の言葉に一人の男性が口を開く。

「一生遊んで暮らせるほどの金額が貰えるのか?」
「それはないでしょう…小さな村ですよ?」

彼は大剣使いのゼルガ。
俺より年上で貫禄がある。
この辺りでも名の知れた冒険者である。
彼から繰り出される豪剣は巨石を真っ二つにする。

「なら付加魔法のかかった特殊な剣が貰えるのでしょうか?」
「この村では付加魔法を扱う技術はないからな」

次に口を開いたのは魔法剣士のルノマ。
彼は剣術と魔術を駆使して戦う中距離型の剣士である。
得意属性は火、俺より年下だ。

「では村の未婚の娘を嫁にできるとか?」
「それが一番妥当と言えば妥当ですが…」
「討伐者にとって最も価値あるもの、とは言えないですね」

二人とは以前の依頼で臨時にパーティーを組んだ。
内容は商人を大国から小国へ送る護衛である。
その道中、盗賊団が蔓延っていた為、護衛の依頼を受けた。
その時に知り合った二人がゼルガとルノマである。

「どうする?ヴェルカ」
「受けますか?」

その時の護衛で二人と意気投合した。
今でも依頼を共に受ける事がある。

「受けましょう、報酬は気になりますが困っている人は見過ごせません」
「ヴェルカならそういうと思ったぞ」
「では早速、承諾のサインを貰いましょう」

とルノマが掲示板に手をかけようとしたその時だった。

「どけ!!」

小柄なルノマは突如、割り込んできた強面の冒険者に突き飛ばされた。

「大丈夫か?」

すぐにゼルガが駆け寄り、手を貸す。

「はい、大丈夫です…ありがとうございます」
「ちょっと、あんたら」

俺はルノマを突き飛ばした冒険者たちに声をかける。

「あ?」
「何か言う事はないのか?」

冒険者の一人、リーダー格の男が俺とルノマを交互に見る。

「は!突っ立っているのが悪いだろう?」
「お前…」

俺は拳を握り締め、殴りかかろうとした。
だがそれをゼルガが寸前で止める。

「止めろ」
「ゼルガ!」
「仲間を傷つけられて怒るのは分かる」
「なら!」
「けど、ここで騒ぎを起こしたら、それこそ大変な事になるぞ」
「けどな!」
「抑えろ…先に手を出した方が負けだ」

その言葉で俺は拳を収めた。

―「先に手を出したら負け」―

親父がよく言っていた。
どんな理不尽なことがあろうとも先に手を出すな。

「ヴェルカ、お前が仲間思いなのはわかるがここは押さえろ」
「そうですよ、僕もほら掠り傷程度です」
「わかったよ」

俺はそのままギルドを出た。
その後ろをルノマが続く。

「すまなかったな」
「分かればいいんだよ、おれ達が受けるぜ?」
「ああ」

そのままゼルガもギルドをあとにした。

三日後。
再び掲示板を確認すると同じ内容の依頼が張り出されていた。
依頼主は勿論。

「匿名…」
「三日前と同じですね」
「どういうことだ?」

俺、ルノマ、ゼルガの三人は顔を見合わせた。
今回は三日前の事を踏まえて先にサインを貰った。
もともと受ける依頼の内容だったから迷う必要はない。

「あの時の冒険者たちは失敗したのか?」
「それはない…社会的常識がないとはいえ、あれでも冒険者だ」
「なら一体…」

俺達は馬車の荷台で話し合っていた。
この馬車は村から直接、送られて来たものだ。
あの時の冒険者たちも、この馬車に乗って向かったのだろう。
依頼先の村は三日ほどで到着すると馬車の乗り手が言っていた。

「だが仮に、あの冒険者たちが失敗したということは」
「僕たちが成功すれば報酬が手に入る…という事ですね」
「そうだな…」

俺は荷台の窓から外の景色を見る。
どこまでも続く森や林、川のせせらぎ。
その道を静かに進む馬車。
まるで正体不明な何かに導かれているような感覚を覚える。

「どうした?ヴェルカ」
「何か気になる事でも?」
「あの時の冒険者が誰一人、帰ってこない事に違和感がね…」
「それは先程も話してた通り、失敗したのでは?」
「普通に考えればそうだが…なら、どうしてギルドに報告が上がらない?」
「それは…」
「もし失敗すれば何かしら報告が上がるはずだが、それが一切ない」

それが違和感の正体なのか。
それとも何か別の…。

「大切な何かを見落としている…そんな気がする」
「ふむ、だがそれも村に到着すれば自ずとわかる事だろう?」
「そうですよ、村の方に聞けば何かわかりますよ」
「けどな…」
「ヴェルカ…お前はパーティーを率いるリーダーだ」
「そうだけど本来なら…」
「胸を張れ!不安がるな!常に前を向いて歩け!以上だ」

これ以上の答弁は受け付けない。
そんな意思の表れだ。

「分かりましたよ、ゼルガさん」
「よし」

だが、その違和感は見事に的中してしまうことになる。

三日後の朝。
依頼先の村へ到着した。

「ようこそ、おいで下さいました…村長のピルダンでございます」

俺達が村へ入ると村長が出迎えてくれた。

「この依頼についてだが」
「はい」
「どうして匿名なんだ?」
「それは…」

その後、村長の家に招かれた俺達は話を聞いた。
聞けば村はずれの古い洋館に吸血鬼が住んでおり夜になると村に現れる。
その事に不安を覚えた村長は若い男衆と立ち寄っていた腕利きの冒険者に調査を求めた。
しかし、誰一人として帰ってこなかった。

「匿名にすれば興味を示す」
「確かにその通りですね」
「一番、目を引くな」

俺達は今、村長が提供してくれた宿屋にいる。
村長から古い洋館は夜にしか入れないと言われた。
朝や昼間は強力な結界に護られており、館に入る事が出来ない。
それ故、俺達は装備品を整えた後、夜に備えて眠りについた。

夜。
俺達は村長の家に向かった。

「それでは村長、行ってきます」
「朗報をお待ちください」
「必ずや吉報をお届けします」
「宜しくお願い致します」

深々と頭を下げる村長に手を振り、俺たちは古い洋館へ向かった。

暫くして村長と思われる人物の姿が徐々に変わる。
上半身は黒いビスチェ姿、その上から丈の短いマントを着衣し、下半身はホットパンツとブーツ姿である。また両腕は肘まで覆ったグローブ、両脚は膝まで覆うソックスを身に着けている。

「行きましたか?」
「はい」

その姿は人ではない別の姿だった。
その後、村中から男女の営みと嬌声が響いた。






森を抜け、丘を越えると目的地に到着した。

「準備はいいか?」
「ああ」
「はい」

大きな扉を開くと目的の人物が出迎えた。

「ようこそ、夜天の館へ…わたしはレティア、この館の主」

腰まで伸ばした銀髪、瞳はワインレッドのように赤い。
容姿は美しく、背丈は俺と同じくらいだが少し低い。
だが最も目を見張ったのは衣服の上からでもわかるくらい大きな胸。

「わたしの胸に興味があるのかしら?」

見ればゼルガは少し視線を外し、ルノマはうつむいてる。
気付けば俺だけが彼女の胸を凝視していた。

「失礼、ヴァンパイアのご婦人…あまりにも立派なもので」
「ふふっ、ありがとう…けど、そちらのお二方は興味がないのかしら?」
「照れているのですよ」

彼女の左右に控えているのは二人の女性。
だが二人とも人の身ではない別の姿をしている。

一人はカースドソード。
魔剣に魅入られて魔物化した元人間の女性だ。
一人はドラゴンゾンビ。
地上の王者と謳われたドラゴンの屍に魔物の魔力が宿り、生前の後悔や未練と結びつく事でアンデッドとして蘇った。

「俺達が、ここへ来た理由は分かるよな?」
「勿論、わたしを討伐する為でしょう?」
「ああ…貴女を討ち、村人たちに報告させてもらう」
「そう、簡単に行くかしら?」
「なに?」

次の瞬間、レティアの左右に控えていた二人が動き出す。
ドラゴンゾンビはゼルガ、カースドソードはルノマに迫る。

「ルノマ!ゼルガさん!」
「こちらは大丈夫です」
「お前は自分の相手に集中しろ!」

あっという間に二人と分断された。
だが俺は狼狽えたりしない。
ルノマもゼルガも腕が立つ。
故に俺はヴァンパイアのレティアに集中した。





カースドソードに分断されたルノマ。

「(あの剣に触れると危険だ)」

カースドソードは斬った相手の“肉体”ではなく“魔力”に傷を負わせる。
その為、命が奪われることはないけど確実に不利となる。
僕は距離を取り、中距離から初級魔術を放つ。

「うふふふふっ」
「(え…うそ!?)」

けどカースドソードは、それを躱さずに斬りつけながら迫ってくる。

「足りない…斬り足りないわぁ、あははははっ」

高笑いを上げながら一歩、また一歩と歩を進めてくる。

「(仕方ないか…)」

僕は腰から剣を抜くと刃に詠唱を唱えた。

「集いし燈火よ、我が剣に宿りて、敵を討て」

すると刃が赤色に煌めく。

「魔法剣『クリムゾンブレイド』」

僕が構えると同時にカースドソードが踏み込んできた。





ドラゴンゾンビに分断されたゼルガ。

「ぐっ」

大剣を盾にして大きく吹き飛ばされた。

「がはっ」

そのまま廊下を突き破り、館の壁に激突した。

「さ、さすが最高位のドラゴン…死しても尚、その実力は健在か…」

オレはゆっくりと身体を起こす。

「(動きは単調だが一撃はやはり重いな)」
「今度こそ…幸せになりたい…」

ドラゴンゾンビの言葉から生前の後悔と未練が浮き彫りになった。

「何故、わたしは…人間の男性を見下していたのだろう…どうして交わることなく…一生を終えてしまったのだろう…チャンスは沢山あったはずなのに…」

オレは、その言葉を静かに聞いていた。

「ああ…そっか…生前がダメなら…今がある…そうだ…もう生前の呪縛に捕らわれる必要はない…誇りは必要ない…迷う事なんてない…」

ドラゴンゾンビの瞳がオレの瞳をとらえる。
その瞳からは完全に理性が剥がれ落ちていた。





ヴァンパイアのレティアさんと俺は対峙している。

「さて…わたしたちもやろうか?」
「いいだろう」

俺は構えた。

「お主…武器を携えてないようだが、もしや暗器術か?」
「俺は武器を使わない」

そう言って上着の内側や両袖をまくってを見せた。

「この通り、武器は携帯していない」
「それは誘いか?」
「違う」
「どうだろうな?人間は簡単に嘘をつく愚かな生き物だ…まぁ、仮に武器を隠し持っていたとして不死であるわたしに普通の武器は効かぬ」
「好きに解釈してもらっても構わない」
「(嘘をつく大抵の人間は決して目を合わせようとはしない、だがこの男…)」

俺はレティアさんの瞳を見つめ続けた。

「では素手で、このわたしと戦うという事か?」
「ああ、俺の武器は鍛練した拳と蹴り、魔力を媒体とした身体能力強化だ」
「面白い奴よの…わたしも武器など野蛮なものは好まない、この手で相手を仕留めるのが至上の喜び」

その時、ふと気づいた。
レティアさんの口調が先程より変わっている。

「なぁ」
「なんだ?」
「口調…おかしくないか?」
「客をもてなすのに変えてただけだ…わたしは本来こういう口調だ」

レティアさんが漆黒のガウンを脱ぐとスレンダーな体躯が露わになる。
上半身はフロント部分を紐で交差させたようなトップス。下半身はホットパンツを穿き、ガーターベルトを身に着け、ヒールサンダルを履いている。
くびれた腰回り、引き締まったお尻に加え、人外特有の異常な美しさと艶やかさを併せ持っており、俺は一瞬にして心を奪われた。

「(ガウンの下から覗いていたけど結構…)」

俺の心を見透かしたようにレティアさんは口を開いた。

「自分で言うのもあれだが、わたしは着やせするタイプでな…男のお主から見てわたしはどんな感じだ?」
「抜群のスタイルだな」
「ふふっ…見る目があるな、そしてこの肉体を目当てにやってきた下賤な輩も居たがことごとく退けてきた…三日前に来た、奴もそうだ」

三日前というと、あのガラの悪い冒険者たちか。

「だが奴には別の娘を用意した…すると、あっという間に手篭にされ、この館を去った…今は毒気も抜かれ、何処かの村で暮らしているだろう」

なるほど…ギルドに報告が上がらないのは、そういった理由か。
それに俺の記憶が正しければ三人いたはず…けど今の会話から察するに残りの二人は道中にでも襲われて、そのままお持ち帰りされたという事か。
つまり文字通り“抹消された”ということか。

「(魔物とは言え、女性に手を上げるのは、いささか不本意ではあるが…)」

俺は臨戦態勢のレティアさんを見る。
一瞬の油断も隙も無い完璧な構えだ。

「(この真剣勝負…全力で当たらなければ逆に彼女のプライドを傷つける事になる、俺の戦い方がどこまで通じるか分からないが…)」

だがレティアさんと拳を交えることに不思議と高揚感に似た感覚がある。
これは恐らく、俺の中に流れる血が関係しているのかもしれない。
俺の一族は吸血鬼を狩る事を生業としたヴァンパイアハンターだからだ。
故に俺の身体にはヴァンパイアハンターの血が脈々と受け継がれている。

「ゆくぞ」
「来い!」

いうや否やレティアさんは一足飛びで踏み込み、一瞬で肉薄すると強靭な足腰から蹴り技を繰り出した。

「っ!?」

俺はその一撃を間髪の所で躱す。
すると風圧で壁が一瞬にして粉々になった。

「なっ!?」
「ほう…わたしの初撃を躱すか」
「(伝承の通りだな…)」

ヴァンパイアは桁外れの魔力と極めて高い身体能力と治癒力を持つ不死者。
それ故、まともに戦って倒せる者など指折りしか存在しない。
そして、その戦闘力の高さから一撃一撃が重く、速く、必殺技に相当する。
“戦闘力だけ”で言うなら魔王をも凌駕すると言われている。
だが現在の魔王は穏健派である為、潜在能力は未知数だ。

「わたしの初撃を躱すとはな」

見れば一瞬にしてレティアさんは先程の位置に戻っていた。

「まだ名前を聞いてなかったな、お主…名を何という?」
「ヴェルカ…ヴェルカ・クルスニク」
「ではヴェルカ、続きをやろうではないか」
「その前に話がしたい」
「命乞いなら聞かぬぞ?この館に来た時点でお主は狩られる側だ」
「違う」
「ではどのような要件だ?」

俺はゆっくりと起き上がり、レティアさんを見る。

「“吸血鬼”という事はレティアさんは本当に血を吸うのか?」
「誤解があるようだが今の“ヴァンパイア”は昔と違い、己が唯一認めた相手の血しか吸わない…しかし、わたしの目に適う者は誰一人として存在しない」
「そうか」
「もうよいか?」
「ああ、今はいい」

レティアさんは再び構え、今度はこちらから仕掛けた。
俺は蹴り技を主体とした戦闘スタイルが得意だ。
リーチも長いし、威力も拳より高い。

「っ!?」

だがレティアさんは俺のハイキックを片手で受け止めた。

「ぬるい!」
「がはっ」

レティアさんは空いた片手に魔力を込めて俺を吹き飛ばした。
大きく吹き飛ばされた俺は壁に激突する。

「ぐっ…」

体勢を立て直そうとしたが既にレティアさんが至近距離にいた。

「その程度か!」
「(マズイ…っ!?)」

レティアさんは既に拳を突き出していた。
俺はそれを間髪の所で躱す。
顔があった、その場所はレティアさんの拳で砕かれる。
そのままバックステップをしながら距離を取った。
一瞬の隙もない攻防に俺は冷や汗を覚える。

「(目はいい方だがレティアさんは、それを確実に上回っている…)」
「回避しているだけでは、わたしは倒せぬぞ?」
「(それはそうなのだが…)」

俺は戦闘の合間だというのにレティアさんの膨らんだ胸を見てしまう。
あれだけ大きく揺れているのに、それを感じさせないフットワーク。
そして、そこから繰り出されるスピードとパワー。

「(正直言って全然、戦闘に集中できない)」
「お主、先ほどから、わたしの胸ばかり凝視しているな」
「(これが現魔王サキュバスの影響…なのか?)」
「まぁ、お主の年齢から言えば分らぬことでもないが」
「(ダメだ、ダメだ!集中しろ…心頭滅却すれば火もまた涼し!)」
「そんな事では、わたしを手に入れることなどできぬぞ?」

そこで俺は妙な単語に引っかかった。

「手に入れる?」
「そうだ、この身体が目当てで来たのだろう?」

どこでそうなった?
胸ばかりを凝視していたから認識されたのか?
確かにレティアさんは立派なものを持っている。
けど別にそれが欲しくて来たわけでは…。
いや正直に白状すれば彼女の豊満な胸やお尻など堪能したい…けど。

「違う」
「では何故、ここへ来た?」
「村の人が困っていたから依頼を受けた、それだけだ」

レティアさんは驚いたような表情をした。
そうだ…俺は何を迷っていたのだろう。
大局を見誤るな…本当の目的を思い出せ。

「俺は貴女を倒したいわけじゃない…ましてや身体目当てでもないし、屈服させたいわけでもない…」

俺は拳を握り、真っすぐレティアさんを見つめる。

「俺の目的はただ一つ…」

ワインレッドの瞳の奥、そこに紫水晶と銀のオッドアイが映りこむ。

「貴女と拳を交え、もう二度と村に降りないよう説得するだけだ!」

足裏に魔力を込め、一気に踏み込んだ。

「わたしを“倒す”ではなく“説得”するか…面白い!!」

そこでレティアさんは初めて顔を綻ばした。
その微笑みに一瞬、心が奪われた。

「どちらにせよ…わたしを説得したければ、その力を解放しろ…お主に流れる“ヴァンパイアハンター”の血を覚醒させろ、さすればヴェルカ…わたしは君に従おう」

だが俺の渾身の一撃をレティアさんは片手で受け止める。

「昔、あるヴァンパイアハンターの夫婦に言われたな」

―「私たちの力では貴女を説得することは叶わない…けど、いつか私たちの意志を受け継いだ“ヴァンパイアハンター”が、この地へ再びやってくる」―

「それが君なのか?ヴェルカ・クルスニク」
「っ!?」

瞬間、レティアさんは片手だけで引っ張る。
そのままキスができるほど至近距離に引き寄せられた。

「それとも…」

次に痛みを背中に受けた。
それは一瞬の出来事だった。

「ぐっ」

あっという間に俺はレティアさんに組み敷かれていた。
張りとボリューム感あふれる大きな胸が視界に入る。

「違うのか?」

その顔は、どこか寂しさに満ちあふれていた。

「領主様!大変でございます!!」
「騒々しい、何事だ?」

不意に女性の切羽詰まった声が聞こえた。
レティアさんは俺を組み敷いたままの状態で問いかける。

「教団が…滅魔師《エクソシスト》が現れました」

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17/01/08 13:35 蒼穹の翼

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