連載小説
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2.身体を洗おう★
一面の野花と、青々しい草芽。蝶々がひらひら舞い飛んで。
その間を縫うように、さらさらと綺麗な小川が流れゆく…。

どこか幻想的な景色を前に、しばし見惚れてしまう僕。
まるでここは、御伽話で聞いた妖精の国みたいだ。
嫌になるほど自然豊かな場所だとは知っていたけれど、
まさか、こんな風景があるなんて思ってもみなかった。
ちょっと田舎を馬鹿にしていたかもしれない。素直に反省。

「わぁっ。素敵な場所です〜」

口振りからして、彼女もここに来るのは初めての様子。

お婆ちゃん作の地図によると、小川はここの他にも、
もうひとつ、南の方に流れていて、それらが下流で合流するらしい。
普段、牛たちを連れていっているのは、そちらの小川なのだろう。
考えてみれば、確かにここは景色が綺麗で良いところだけれど、
牛たちを連れてきてしまっては、地面がめちゃめちゃになってしまう。
それを知っていて、お婆ちゃんはこちらに来るのを避けていたのだろう。

「ご主人様〜。蝶々ですよ、蝶々〜♪」

とはいえ、今いる牛はもも一匹。
その心配をする必要はない。大人しいし。

さて、いつまでも景色に見とれていちゃいけない。
ここへ来た目的は、汚れた彼女を洗いに来たんだ。
どう洗えばいいからは分からないけれど、そんな時こそ、
お婆ちゃん直筆、牛の育て方マニュアルの出番というもの。

ページをめくり、牛の身体の洗い方を探す。
何も道具を持ってこなかったけれど、きっとブラシとかが必要だろうなぁ…
なんて思っていたら、やっぱりそうだった。マニュアルには、こう書かれていた。


◆◇◆◆◇◆牛の身体の洗い方◆◇◆◆◇◆

・用意するもの
バケツ、ブラシ、タオル

・洗い方
1.バケツいっぱいに水を汲む。
2.お尻から頭に向けて、水をかけていく。
 (ゆっくりかけてあげないと驚くので注意)
3.背骨をてっぺんに、上から下へとブラシで磨く。
 (磨く時も、お尻側から磨いていくこと)
4.最後に、全身をタオルで念入りに拭く。
 (拭く時も、やはりお尻側から拭くこと)

※たまに背中のマッサージもするべし。
 そうすることで、おいしいミルクが出る。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

バケツ、ブラシ、タオル…。
とりあえず、この3つを用意しないと話にならない。
一度家に戻って、これらの道具を探してこよう。

確認を終え、帳面を閉じ、振り返る。
そこには、人差し指を伸ばしながら、蝶々を誘うももの姿。
子供っぽいなと思いつつ、僕は彼女に、ここで待っているように告げた。

「わかりました〜。ここにいます〜」

そう言って、ちょこんとその場に座るもも。
助かる。普通の牛なら、こうはいかないだろう。
言葉が通じるっていうのは、とてもありがたいことだと思う。

そんな当たり前のことを考えながら。
彼女の笑顔と、バイバイする手に見送られつつ、
僕は駆け足でお婆ちゃんの家まで戻っていった。

……………

………



すごく今更なのだけれど。
僕はついさっきまで、重大なことを忘れていた。
気付いたのが、ブラシを見つけた瞬間。

彼女は今、牛じゃあない。

本当に、何を今更…と言われれば、その通りではあるけれど。
ブラシを手に取って、これでどこを磨くんだろう…なんて、
他人事みたいな考えと共に思い出した。なんて能天気。
さっきまで余裕そうに、仲良くおしゃべりなんてしていたのは、
今の状況がどれだけ大変なことか理解していなかったからだろう。
なんだかんだで、やっぱり混乱していたんだと思う…。

いや、反省は後でするとして、これからどうするかだ。
当然ながら、マニュアル通りにやるワケにはいかない。
そんなことをしたら、僕も恥ずかしいし、ももだって嫌がるだろう。

そう思って、僕は彼女に、水浴びのやり方を覚えてもらおうとした。
言葉は通じるのだから、教えるのはそう難しくないと考えたから。

が、物事はうまく運ばないもの。
彼女はなんと、僕に洗ってほしいと言うのだ。嫌がるどころか。
お婆ちゃんの洗い方がよっぽどお気に入りだったようで、
僕にも同じように、マニュアル通りの洗い方をしてほしい、と。

当然、僕は必死になって断った。
お婆ちゃんみたいに上手くできる自信がないし、何より恥ずかしい。
今のももの身体を洗うというのは、つまり、女性の身体を洗うのと同じだ。
どうして僕が、そんなことができるだろう。無理中の無理。不可能だ。

けれど…そう答えると、彼女はひどくしょんぼりとしてしまった。
耳と尻尾をペッタリ垂らして、あからさまに俯きな表情になって…。
まるで、楽しみにしていたオヤツが無くなった子供みたいに。
地面に座り込んで、のの字まで書き始める始末。

…そんなこんなで…。

「それじゃあ〜、ご主人様、お願いします〜♪」

結果、僕の方が折れた。

だって、だってしょうがないじゃあないか。
ずっとニコニコしている彼女の、あんな表情を見せられたら、
なんだかとても悪いことをしている気分になってしまうのだから。
それを無視できるほど、僕は忍耐強くない。心が弱い。
結局、僕が恥ずかしい思いを我慢して、彼女を洗うしかないのだ。

「んっしょ…」

そんな僕の気も知らず、洗ってもらう準備を始める彼女。
野花のベッドの上に、うつ伏せで寝転がって、準備完了。
楽なものである。彼女は横になっているだけでいいのだから。

気を落としつつも、僕は水の入ったバケツを手に取った。
言ってしまったものは、もうしょうがない。彼女だって喜んでくれている。
それでいいじゃないか。僕は精一杯、ももの身体を洗ってあげよう、うん。

「〜♪」

さて、マニュアル通りならば、まずお尻から順々に、頭まで水をかける。
お婆ちゃんのアドバイスによると、ザバーッとかけてはいけない。
身体に近付けて、流すようにしながら、身体を濡らしてあげる必要がある。

…お尻から…とあるけれど。
今の彼女の身体を考えると、つま先から流すべきだろうか。
牛にとっての後ろから前へというのは、人間に直すと、下から上へ…だと思うし。

とりあえず、やってみよう。
駄目そうなら、水浴びのやり方で洗えばいい。

「…きゃっ♪」

いざ、つま先に水をかけると、嬉しそうな声を上げる彼女。
その声に驚いて、僕は一度手を戻したものの…様子を見て、
大丈夫なのだろうと判断し、彼女の足全体を流していく…。

「ん〜っ…♪ 冷たくて、キモチイイです〜♪」

御機嫌な声。はためく尻尾。
どうやら、合っているみたいだ。

胸を撫で下ろし、僕は、改めて彼女の脚に目をやる。
黒いまだら模様が付いた白地の毛。水に濡れ、ペッタリと肌に張り付いて。
そこだけ見れば、普通の牛となんら変わりない。違うのは太さくらい。

やっぱり、彼女は牛なんだなぁ…と、しみじみ思ってしまう。
早く元の姿に戻してあげたいけれど…どうすればいいだろう…。

「…あっ、ご主人様、ごめんなさい〜」

不意に、2杯目の水をかけようとしたところで、彼女が立ち上がった。
ごめんなさい…と謝られたけれど、別に何かされた覚えはない。
彼女はいったい、何に対して謝っているのだろうか。

「脱がないと〜、濡れちゃいますよね〜」

あっけらかんに、そう言うと。
彼女は、おもむろにズボンを脱ぎ始めた。

突然のことに、一瞬固まる僕。
チャックを下げ、サスペンダーを取り外し、ズボンを下ろして…。
彼女の見えてはイケナイ場所が、チラリと見え始めたところで、
やっと理性が戻ってきた僕は、慌てふためいて彼女を止めた。

「…? どうしたんですか〜?」

どうしたって、むしろこっちが訊きたい。
いや、訊かなくても分かるけれど。僕だって水浴びの時は脱ぐけれど。
そのことに、今の今まで気付かなかった僕にも責任はあるけれど。

でも、それだけは。それだけはどうかやめてほしい。
とても僕が、恥ずかしさに耐えられない。同じ空間に居られない。
ももはもしかすると、僕の前で裸になっても平気なのかもしれない。
それほど僕を信頼してくれているのか。家族と見てくれているのか。
あるいは、牛だから、人前で裸でも平気なのか。分からないけれど。

もも、お願い。
僕の前で脱ごうとしないで…。

「でも〜…脱がないと、濡れちゃいますよ〜?」

そうだけれど。そうなのだけれど。
あぁ、もう、言葉は通じるのに。普通の牛より楽なはずなのに。
理由を言えないのがもどかしい。伝わらないのがもどかしい。
いったい何がどう間違って、こんな展開になっちゃったんだ。

「??? えっと〜…、ご主人様の前で脱いじゃ、ダメなんですか〜?」

そう。そうだよ、もも。そういうことなんだ。
よかった、やっと通じてくれた。これで一安心…。

「じゃあ〜、後ろを向いて脱ぎますね〜♪」

……………。

背を向け、鼻歌交じりに脱ぎ始める彼女に、僕はもう…掛ける言葉が見つからなかった。
ただ、目を逸らして、その光景を見ないようにするのが精一杯で…。

「〜♪」

とさ…と、草のクッションに何かが落ちる音。
視界の端に、彼女のズボンらしきものが映っている。
これでもう、ももの下半身を見るワケにはいかなくなった。
どうにかして、見ないようにしながら洗うしかない。
かといって、あんまりベタベタ触っていい場所じゃないし…。

…うん? 触る…? えっ、あっ!?

そ、そうだ! 触らなきゃいけないんじゃないか!
彼女の裸を見ないように、ってことばっかりを考えていたけれど、
洗うってことは、その…デリケートな部分にも触れるってことで…。

あぁ…。女性の肌に触れるってことは分かっていたけれど。
そこまで考えがいってなかった…。まただ。また、当然のことを忘れて…。

「ご主人様〜。脱ぎ終わりました〜っ」

どんどん落ち込んでいく僕の耳に、彼女の明るい声が届く。

…もう。もう、いい。開き直ろう。
僕だって、男なんだ。いつか女の人の裸を見る時が来る。
触ったり…エッチなことをして、子供を作る時が来るんだ。
遅かれ早かれ、恥ずかしい想いはしなきゃいけないんだ。

なら、今見ちゃおう。見て、散々恥ずかしい想いをしよう。
そうすれば、ちょっとは慣れるかもしれない。耐性が付いて。
幸い、相手はもも…僕の牛。言わば、僕の家族なんだ。
そう考えれば、恥ずかしさもちょっとは薄れる…気がする。

よし…、よしっ、頑張れ、僕。

いざっ!

「えへへ…♥ ちょっと恥ずかしいです〜♥」

……………ぅ、ゎ……。

僕の視界に飛び込んできたのは…ものすごく大きなオッパイだった。
プルンッと揺れる、弾けんばかりのお乳。それがふたつも。
もう、胸元の模様が毛じゃなかったことに対する驚きなんて、
たぷたぷ揺れるダブルの衝撃に、軽くすっ飛んでしまった。
まさか、胸まで人間と同じものだったなんて…。

僕の予想は、やっぱり甘かった。
予想外の彼女の姿に、顔がかぁっと熱くなって…。

「んしょっ…。ご主人様〜」

そんな僕を気にも留めず。
ごろんと横になり、催促する彼女。

「冷たいお水、いっぱいかけてください〜♪」

…いや。いや。いや!

ハッキリ言って、のんびり水なんてかけていられる状況じゃない。
だって、彼女の胸が、お尻が、丸見えになっているこの状況で。
地面に押し潰して、ムギュッとなった胸を。プリンッと弧を描くお尻を。
どうして見ずにいられるだろう。無理だ。僕にはとても無理だ。
水を汲むために、一瞬目を逸らす時間さえ惜しい。目が離せない。
彼女は牛なのに。人間じゃない。僕の飼っている、牛なのに…。

「〜♪」

楽しげに鼻歌を奏でる彼女。

その姿を前に……僕は、自分の気持ちを抑えきれず……。

「…きゃんっ!?」

欲望に押されるまま、彼女のお尻を鷲掴みした。

「ご…、ご主人様〜っ…?」

驚き、振り返ろうとするもも。
僕は咄嗟に、震える声で叫ぶ。

マッサージするね…と。

「ふぇっ? ま、マッサージ…ですか〜?」

そう、マッサージ。これはマッサージ。
自分に言い聞かせるように…僕はもう一度彼女に、
今していることは、ただのマッサージであることを伝える。

もちろん、ウソだ。彼女のお尻を触りたいがために、飛び出たウソ。
マニュアルに載っていた件を引っ張ってきて、都合良く使っているだけだ。

「………」

罪悪感で胸がいっぱいだけれど。
それすら抑え込んでしまうほど、顕わになる欲。

そんな僕が、今、卑しくも思うことは。
どうか彼女が、僕の嘘に騙されてほしいということだけ。
そうなることで、もっと彼女のお尻を触ることができるから。
マッサージという大義名分を振りかざし、好きなだけ…。

「…ご主人様〜」

お願い、もも…。後でいっぱい、謝るから。
下心があったこと、ちゃんと謝るから…。

だから、今だけはっ…!

「…急に触られると、びっくりしちゃうので〜…」

「今度は…優しく触ってくださいね〜♪」

…まるで、聖母のように。

彼女は、苦し紛れのウソに、何の疑いも抱かず。
僕の言葉を信じて…再びリラックスした体勢をとった。

「…♥」

………ワザと、なのだろうか…。
信じてくれた彼女を疑うのは、最低だとは分かっていても。
あの無茶な言い訳を、手放しに信じてくれたとは思えない。

でも、どちらにせよ。
僕が彼女の良心に、つけこんでいることに変わりはない。
それは人として、やっちゃいけないことだ。悪人のすること。
神様が、空の上から、ちゃあんと僕のことを見ているんだ。
僕はいつか、このことに対して罰を受ける日が来るだろう。

…それでも。それでも僕は、この気持ちを抑えられない。
彼女のいやらしい身体。背徳が心を蝕み、惹き込まれて…。

「…ひゃっ…♥」

ムニッ…と、僕の手の中で、お肉が歪む。

彼女の、毛に覆われた大きなお尻。
張りがあって、柔らかくも弾力がある。霜降り肉みたいだ。
僕のお尻とは全然違う。大きさも、形も、触った感触も。
なんて言うか…もものお尻は、安定感…いや、安心感…?
とにかく、揉んでいると、どこかほんわかとした気持ちになれる。

「んっ…♥ ぁ……♥ ゃっ…♥」

揉む度に、細かな毛が手を撫でてきて、ちょっぴりくすぐったい。
さらさらとした、触り心地の好い毛並み。シルクみたいに。
前にお婆ちゃんが、元気な牛は毛並みで分かるって言っていたけれど、
この肌触りこそ、健康の証なんだろう。優しくて、温かくて…おひさまみたいな。

「はっ……♥ ん…♥ んぅ…っ♥」

鳥の囀りよりも静かに、エッチな声を漏らすもも。
感じている…のかもしれない。お尻を揉む悪戯な手に。

それは、僕も同じ。
とっくに大きく膨れ上がったオチンチン。痛いほど大きく。
下着の中で、ここから出せと言わんばかりに、存在を主張している。

「やっ…ぁ…♥ ご主人様っ…♥ キモチイイ…ですぅ…♥」

ふと、ももが僕に告げる。気持ちいいと。
その言葉は、何を意味するのだろう。

…気付けば、彼女の股の間。
むっちりとした太腿に挟まれた部分の毛が、何故だろう、
他の部分と比べて、絡まり合ってカピカピになっている。
僕がかけた水が原因…というワケではなさそうだ。
よく見れば、糸を引いていて…何か粘ついたものが…。

「ふぁっ…♥」

喘ぎ声と共に、体勢を崩し、僅かに足を開く彼女。

僕は…それによって、気付いてしまった。
何故、彼女の股の毛だけが汚れているのかを。

「ぁ…♥」

女性の秘部。そこから流れる…愛液。
それによって、アソコの毛だけが汚れていたのだ。

少し考えれば分かる、当然なこと。
でも、下半身は毛で覆われているだけと思っていた僕は、
そんなことにすら驚いて、目を丸くしてしまった。

繰り返す、自らの勝手な思い込み。
その度に、恥ずかしい思いをして。心を大きく乱して。

それが招く結果は…そう、先の通り…。

「ひゃんっ!?」

再び、僕は後先考えない行動に出た。
今にもはち切れそうなオチンチンを、下着の中から解放し、
あろうことか…彼女の湿った股の間に、無理矢理挿入したのだ。

蒸れた恥部と、肉厚な太腿に挟まれて。
僕は、呻く声も飲み込めないほどの快感を得た。
気を抜けば、今に射精してしまう気持ちよさ。しかし、代償は安くない。
こちらへ振り返るももに対し…、僕は言い訳を返す必要があった。

「っ…ご、ご主人様ぁ〜…♥」

さすがに、これは…。
どうあっても、言い逃れできそうにない。

いっそ、開き直ろうかとも考えた。
彼女だって、満更じゃあなさそうだし…もし反抗してきたら、
主人としての権力を振りかざして、無理矢理してしまおう、と。
だって、彼女は今、僕のものなんだ。僕が自由にしていいはずだから。

…でも、それを実行できる勇気が、僕にはなかった。
もし、そんなことをして、彼女があの寂しそうな顔を浮かべたら…。

つまり僕は、現状と、自分の心を誤魔化していたかった。
今自分がしていることは、悪いことじゃあない。
彼女も、僕にされていることを、嫌だと思っていない。
その嘘の空間を、ずっと保っていたかった。彼女を騙すことで。

「あの…♥ おマタに、何か〜…♥」

………僕は、混乱する頭で悩んだ挙句。

ブラシで洗っている、と答えた。

「えっ…?」

……………。

「ぶ、ブラシって〜…」

……………。

「…ぁ……」

……………。

「………」

……………。

「……ふふっ♥ わかりました〜♥」

っ…!?

「ブラシでいっぱい…ゴシゴシしてくださいね〜♥」

……信じて、くれた。
信じてくれた。あんな苦しい言い訳を。
まさか、もも、本当に? 本当に、気付いていないんじゃ…。

「ご主人様〜、早くぅ〜…♥」

………いや。

違う。ももはもう…気付いている。
気付いていて、わざと知らんぷりをしているんだ。
いくら彼女がおっとりしているからって、気付かないワケがない。
お尻ばっかり揉まれて。股の間に、オチンチンを入れられて…。

きっと、僕が主人だから。
主人である僕との関係を、気まずいものにしたくないから。
だから追及してこない。そうすれば、僕達の関係は元のまま。
数分前の、出会った時の関係から、変わらないでいられる。
彼女も誤魔化そうとしているんだ。現状と、自分の心を。

「…? ご主人様〜…?」

なんて…。なんて情けない主人だろう。
性欲の捌け口に、彼女を使うなんて。嘘を吐いてまで。
あまつさえ、その相手から気を遣われている始末。

…泣いていた。僕は、いつの間にか…ボロボロと涙を流していた。
本当に情けない。こんな格好で。主人としても、男としても、人としても。

そんな惨めな姿のまま、僕は彼女に……謝った。
嘘を吐いていたこと。エッチな気持ちがあったこと。
嗚咽し、汚い欲望を、全て吐き出した。包み隠さずに。

「………」

彼女は、振り返り、じっと僕を見ながら…黙っていた。

怒っているのかもしれない。怒って、当然だと思う。
僕はそれほどひどいことを、彼女にしていたのだから。
強姦魔と変わりない。騙して、エッチなことをするなんて。

あるいは、困っているのかもしれない。
二人の関係を崩さぬようにと、自分を誤魔化して耐えてきたのに、
僕の方から折れたことで、その意味が無くなってしまった。
結局は、気まずい間柄になってしまう。今がまさに、それだ。
彼女にとって、一番望ましくない展開になっていると思う。

全ては僕のせいだ。
僕が、ももに疚しい気持ちを抱いたから。
気持ちを抑えられず、エッチなことをしてしまったから。

「………」

謝った。何度も、何度も、何度も…。
言い訳のひとつもできず、ごめんなさい…と繰り返した。
一言毎に、甦ってくる良心。合わせて、鮮明になる悪罪。
謝罪を重ねる度に、咎が深く僕の胸に刺さりゆく。

「…ご主人様〜」

…どれほど同じ言葉を連ねただろう。
いくつもの謝罪を言い終えた後に、彼女は…。

「大丈夫ですよ〜っ♪」

ももは…にっこりと微笑んだ。

「ご主人様とは〜、今日お会いしたばかりですけれど〜…」

「もものお願い、ご主人様は聞いてくれました〜」

「だから〜、私、ご主人様のことが大好きです〜♪」

お願い…。身体を洗ってあげる件だろうか。

でも、僕はそれで、ももに酷いことを……。

「身体…洗ってくれるんですよね〜?」

えっ…。

「えへへ…♥ ご主人様〜、綺麗に洗ってください〜♥」

少し恥ずかしそうに、頬を染めながら。
彼女は前に向き直って、僕へと、その身体を預けた。

ドキッ、と高鳴る胸。
つまり…ももは、僕を許してくれるだけではなく。
それどころか、自分の身体を自由にしていいと……。

………ももっ!

「きゃあっ♥」

迸る感情。恋慕、欲情、熱愛、甘求、貪淫。
溢れ出て、止まらない。彼女への想いが止まらない。

「ひゃっ…ぁっ♥ いきなり〜…♥」

嬉しかった。救われた気持ち。
彼女の優しい言葉が、僕を包み込んで、癒してくれた。

僕のエッチな想いまで、まるごと受け止めてくれたもも。
それはもう、僕にとって、愛の告白となんら変わらない。
彼女を騙してまで欲望を満たそうとした僕を、好きと言ってくれた。

そんな言葉を掛けられて、平気でいられるワケがない。
彼女を恋する想いが、僕の全てを一気に塗り替えていく。
もっと彼女とおしゃべりしたい。彼女の笑顔を見ていたい。
キスをしたい。愛を囁き合って。そして、エッチなことも…。

止め処なく溢れる、ももへの想い。したいこと。
それは僕の身体を突き動かす。欲望に押されゆく。

繰り返し…。でも、さっきまでとは、少しだけ違う。
今の僕には、何の誤魔化しもない。嘘も無い。
正直な想い。余すところなく、彼女に伝えようと…。

「んんっ…♥」

彼女の広い背に覆い被さり、両手で胸を揉みしだく。

手からこぼれ落ちそうなほどの、彼女のオッパイ。
指が埋まって、とても支えることのできない柔らかさ。
それでも、モチモチとした肌がぴったりと手に吸い付いてきて。

僕は息を荒げながら、ももの胸の優しい感触を味わう。

「やぁんっ♥ 手つきがいやらしいです〜…♥ ひゃうっ♥」

先刻と比べて、あからさまになる喘ぎ声。
ますます昂る、エッチな気持ち。僕も、彼女も。

タプタプと元気良く跳ねる、大きなお乳を揉みながら、
僕は指先を滑らせて、ツンと尖る、彼女の乳首を弄んだ。
指先で撫でたり、引っ掻いたり…。その感触を、確認するように。

「きゃうっ♥ やっ…♥ さ、さきっぽは〜…ぁっ♥」

より一層高い声を上げ、身体をくねらせるもも。
もしかしたら、乳首が弱いのかもしれない。追撃する僕。
人差し指と親指で摘まんで、ゴシゴシと擦り上げる。

「ひぁぁっ♥ それっ……だめ…ぇ…っ♥」

もちろん、乳首を責める間も、胸を揉む手は止めない。
余った指で、丁寧にいやらしく揉みしだき、彼女の興奮を誘う。

…少しずつ熱くなってくる、彼女の身体。火照り、染まる肌。
珠のような汗が、悩ましげなラインに沿い、つぅ…と流れ落ちていく。
鼻に届く彼女の匂いは、むせ返るほどに甘い香り。ミルクの匂い。

「やぁっ…♥ ご主人様っ♥ ご主人様ぁ〜…っ♥」

可愛い。乱れる彼女が、どうしようもなく可愛い。
もっと乱れさせたい。僕の手で。彼女を、もっとエッチな姿に…。

「ぁ…♥」

腰を引き…濡れた秘部に、硬いペニスを擦り付ける。
ぞわぞわと背筋を駆ける、刺激の波。例えようのない快楽。
自分だけでは味わえない気持ちよさを、彼女と交わることで得る。

改めて、ふたり、身体を交えている事実が、実感として湧いてくる。

「んっ…♥ ご主人様のが…♥」

深く、長い呼吸を吐きながら…眩むような悦楽を越えて…。
先端が、太腿の間から顔を出そうとしたことろで、腰を前に出す。
ニチャッ…という音と共に、再び襲い来る、甘い痺れ。
彼女の恥丘と太腿に、互いの愛液を絡めるように。
腰を引いて、出して…という前後運動を、ひたすら繰り返す。

「ご主人様〜♥ もものおマタ…キモチイイですか〜?♥」

彼女の問いに、必死に頷き応える。
膨れ上がったオチンチンは、今にも破裂してしまいそう。
ヒクヒクと蠢いて、おもらしみたいに愛液を垂れ流している。

その一因として、彼女の脚の動き。
彼女は、閉じた脚をもぞもぞと動かしながら、
オチンチンを左右から擦り潰してくるのだ。
むっちりとした太腿の感触はもちろん、細かな毛が、
くすぐるようにして亀頭や雁首を撫でるものだから…。

「えへへ…♥ オチンチンが生えたみたいです…♥」

不意に、彼女はそう呟いて。
太腿から僅かに飛び出た先端に、そっと指先を添えてきた。

瞬間、何かが、引き返せないラインを越えて。

「あっ♥ 今…プクーッて、おっきく…♥」

無邪気な彼女を前に…動きを止め、硬直する僕。

…出る、と直感した。射精してしまう、と。
これ以上触れなくとも、出てしまうところまで精液が上ってきている。
あとは時間の問題。遅かれ、早かれ。もう射精を止めることはできない。

「…出そう、なんですか〜?♥」

問い掛けに…僕は、答えられなかった。
恥ずかしさと、まだ終わってほしくないという気持ちから。

もっと彼女を感じていたい。
もう終わってしまうなんて、嫌だ。まだ、したい。
ずっと…ずっと彼女と、エッチなことをしていたい。

「ふふっ…♥ …ごしごし、ごしごし〜♥」

そんな僕の気持ちも知らず、更なる刺激を与えてくるもも。
太腿の擦り合わせに加え、先端を指で摘まんで、擦り潰してくる。
それは、僕が彼女の乳首を弄った時のように。ゴシゴシと…。

「ご主人様〜♥ い〜っぱい、ピュッピュしてくださいね〜♥」

誘惑する言葉。逆らえない。どんどん精液が上ってくる。
苦しく呼吸を吐いて、頭に浮かぶ名前を、何度も呼ぶ。

もも…。ももっ…。

「はい、ご主人様〜♥」

悪戯な指先は止まらない。
くちくちと水音を立て、野花へ粘液を撒き散らす。
裏筋や雁首まで撫でて。その瞬間が訪れるまで、ずっと。

優しく、そして、愛おしく。
まるで彼女の心を表しているかのよう。

「…あっ♥」

その蜜時も、永遠ではなく。
訪れる、終わりの導。

吐き出される直前、僕は、ぎゅうっと彼女を抱き締めた。
この想いが伝わるように。彼女の存在を感じるように。

………もも……っ!

「ご主人さ……きゃっ!?♥♥♥ あ……♥ わぁっ…♥」

………………。

…弾け…彼女の手のひらを打つ、精子の塊。
とても受け切れず、ボタボタと地面に垂れ落ちていく。
自分でも信じられない量が流れてゆく、尿道の中。
それに合わせて、長く響く絶頂。いつまでも、いつまでも…。

「ご主人様のミルク…♥ ドロドロしていて、いっぱいです〜…♥」

足を開き…受け止めていた手で、オチンチンを摘む彼女。
先端の向きを、空いた手に合わせて、皮ごとクニクニと擦る。
促しに応え、吐き出される精液。それを受け止める、小さな手皿。
たちまち器はいっぱいになり、彼女はその手を自分の鼻先に近付けた。

「…クン、クン…♥ …あはっ♥ ご主人様のニオイ〜…♥」

そして、彼女は。

「…んっ♥ ごくっ…♥ ぢゅるっ、ごくん…♥ ちゅぅっ…♥」

飲んだ。何の躊躇もなく、僕の精液を。
ゴクゴクと咽を鳴らして…口の端から、少しこぼしながら。

僕は、そんな彼女を、ぼぅっ…と眺め。
まだ残る射精の余韻に、身も、心も、預けきっていた…。

「ちゅるっ……こくん…♥ はぁ〜…っ♥」

もも……。

「ご主人様〜…♥」

お互いの、蕩けた瞳を見つめ合って。

僕らは…初めて、唇を重ねた。

……………

………



「ご主人様〜っ、ありがとうございました〜♪」

ピッカピカの身体で、ペコリとお辞儀する彼女。

あの後、僕は彼女の身体をこれでもかと洗った。
洗う前は、それこそ野良みたいな汚れ方だったけれど、
今ではもう、どこに出しても恥ずかしくない、身の綺麗さ。
肌はツヤツヤ、蹄はキラキラ、毛は尻尾の先までサラッサラ。
まるでどこかのお嬢様みたいだ。洗った甲斐があるというもの。

「ご主人様の洗い方、とっても気持ちよかったです〜♪」

それはもう、彼女の様子を逐一窺いながら洗っていたのだから。
お婆ちゃんと比べて、気持ちよくなかった〜なんて言われないために。

それに…彼女にはやっぱり、綺麗でいてほしいから。
だからこそ、洗う手にも力が入った。念入りに、念入りにと。
角も、耳も、蹄も、尻尾も。ひとつひとつ、丹精込めて。

それが僕なりの、彼女への愛し方。

「えへへ…♪」

笑顔を浮かべながら、傍らに立つもも。

そして、そっと…僕の頭を撫でる。

「ご主人様〜♥」

…なんだか、子供扱いされている気がしないでもない。
確かに、僕の方が背は低いし、年下に見えるとはいえ。

でも、まぁ、我慢しよう。お礼のつもりかもしれないし。
少し恥ずかしいけれど、彼女に悪いことをしちゃったから、これくらいは。

「…あ、帰るんですか〜?」

僕は、頭を撫でる彼女の手を取り、家に向かって歩き出した。
並んで、一緒に歩き始める彼女。ここに来る時と同じ様に。

「〜♪」

でも、違う。来る時とは、少しだけ違う。
僕達の距離が近くなっている。身体の、じゃあなくて。

それは僕にとって、恥ずかしい傷跡でもあるけれど。
失くしたくない、彼女とのひとつめの思い出でもある。

「あっ。ご主人様〜、鳥ですよ〜」

彼女の指さす先。
青く澄み渡る大空を、二羽の鳥が飛んでいる。
くるくると円を描きながら。互いの様子を確かめ合うように。

…あんな風になれたらいいな…と、僕は胸の中で呟いた。

「つがいでしょうか〜?」

うん。きっと、つがいだ。そうならいいな。

「仲良しですね〜♪」

本当に。

本当に…。
12/07/08 01:48更新 / コジコジ
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33