連載小説
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昔話
クロードもかつては普通の人間であった。しかし、今では感情が皆無と言って良い程に心が無くなってしまった。
例えるならば、イグニスが十人集まって最大の魔力で炎を出したとしても、決して溶けることのない巨大な万年氷のようである。
何故ここまで感情が無いのか、何故顔を隠しているのか、何故今の様になってしまったのか?
それを知るためには、クロードの生い立ちから知らなければならない。












クロードの母は兄と姉、そして弟や妹達を産んだ上流貴族出身の女性達の一人ではなく、アラスト帝国の片田舎にある街の田舎貴族の女性であった。何故田舎の貴族が当時の国王、ゼダン・ヴァン・アラストに嫁ぐことが出来たのか?

魔王が世代交代してから魔物娘が出現したとき、真っ先に親魔物派に切り替えたのがアラスト帝国であった。理由としては、「今まで魔物は話の通じない獣であったが、これからは全ての魔物が知能を着けてしまいならば、今の内に味方になっておいた方が良いのではないか」と言う事と、「今までは教団の言いなりだったが、今魔物に味方しておけば何時かは親魔物派の中でも高い地位につけないか」と言う、何とも勝手な理由であった。

そんな訳でアラスト帝国は親魔物派になったが、成ったら成ったでそのままであった。何故なら、ゼダンが王に即位してない頃から王族や貴族は豊かな暮らしを、逆に国民は貧しくて不憫な生活を強いられていて国としての機能が働いていないのである。なので、魔物娘が国内に来ても大した歓迎もせず、法律の改正や居住区の設立など一切しなかった。

そんな中、とある田舎に住んでいた貴族の娘、クロードの母シャーリーが王の側室になることになっていた。何故なら、シャーリーの両親が「娘を側室にさせれば、自分達も裕福な暮らしができる」と言う事であった。当の本人は、それが愛のない結婚であったので余り乗り気では無かった。

かくしてシャーリーは、国王の側室になったがシャーリー自身は余り良い暮らしは出来なかった。国王とは顔を伽の時以外は全く会わせず、正妻からは虐めを受けて、住んでいる部屋も貴族には似合わない城の離れにいたからである。そんな訳でシャーリーは日に日に体調を崩していき、遂には寝たきりになってしまった。そして、待望の子供を身籠って出産したときなど、余りの疲労に数日間寝込んでしまった。その後産まれた子供はクロードとシャーリー自ら名付けて、そのまま衰弱死してしまった。

そして、クロードは乳母に育てられる事となり、唯一母が残してくれた『クロード』と言う自分の名前を大切にしながら、スクスクと成長していった。
11/11/08 07:49更新 / イノウエ食堂
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■作者メッセージ
遅くなってどうもすいませんでしたm(__)m
大学が忙しくなってしまいまして(言い訳)。過去話は後々語っていくつもりです。何かありましたら感想までお願いします。

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