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第一章 閑話 ドラゴンティース族

 ドラゴンティース族は古くから竜の背を始めとする山岳地帯に住まうアマゾネスに分類される魔物だ。

 本来森林地帯に棲むはずのアマゾネスが、何故高原地帯に住んでいるのか、何故ワイバーンと共に生活を共にしているのか、等その出自には謎が多く、一説によれば先魔王期にドラゴンやリザードマン、サラマンダー等の血脈から分化したものがアマゾネスとなったなどと言うトンデモ論めいた説まで存在する。

 しかし、こう言った荒唐無稽な説は実際に彼女等と接した者からすれば笑えない話である。本当に竜の血を受けたとも言えかねない、ワイバーンを御する技術(妙な事にワイバーンは彼女等に酷くなつく傾向がある)、同種と比べても高いタフネス(単に山岳地帯の影響であるとも)、ティース・コールと呼ばれるワイバーンに向けた超高音域の声(あるいは口笛)など、独自の性質を強く持っている。

 その他にも伴侶をワイバーンと共有する、伴侶との交合を見せ付ける事が少ない、夫婦などを見つけても魔物化させずに近隣の国家に送り届ける、など、一般的に知られている多く

のアマゾネスとその性質を異にするため、アマゾネスではないのでは、とするものも居るが、狩猟生活、強い女性上位社会等の根本的な性質がアマゾネスと変わらないため、アマゾネス亜種、と言う形で仮に結論付けられている(平たく言えばスライムとレッドスライムの様なものである。この二つを指して全く別な種族であると言う者はいないであろう)。

 さて、塞国やその他近隣各国との関わりだが、基本的にはた迷惑な蛮族、と認識されており、平時から城塞自体を不定期に襲撃する他、夏になると繁殖の季節、としてボーイハントにやって来る。この時に大抵は2、3人程気に入ったものが割と合意の上で連れ去られていく姿が見受けられており、龍の背を始めとする山脈国家の、ある種の風物詩となっている。

 しかし、時にはワイバーンと共に、珍獣の毛皮の取引をしに商隊の前や、市場に姿を見せる等、はた迷惑な蛮族、では済まされない程度には共存が出来ている……らしい。商隊を襲わないのは何でも、『荷物は欲しいけど来ないと困るから』だそうである。

 狩猟では彼女等はワイバーンの背に乗る、かぎ爪に引っ掛けられるなどして非常に素早く狩場まで移動し、獲物を見つければその必殺必中の弓矢で致命傷を与えた後、ワイバーンから飛び降り、剣にて止めを刺す。また、ワイバーンと人騎一体となった急降下攻撃を仕掛け、バランスを奪ったところで、素早くその身柄を拘束するような、ダイナミックな“狩り”も見られる。アマゾネスとして特異な生態を持っているからこそ見られる、独自の狩猟スタイルである。

 その為、アマゾネスに良く見られる狩場の回復の為の移住が見られない。と言うのも、彼女等を異質足らしめている。

 最近リザードマンの群れがあるドラゴンティース族と合流したが、竜の面影を持つ彼女等を、非常に歓迎している模様。一方で、塞国の認識から話が食い違う様であるが。

 なお、彼女等を遠征軍に組み込むことは難しいと予想される。塞国と十分友好的な関係が築けている為、我々に加勢する理由が薄いからである。もし仮に協力する事があれば、それは恐らく塞国が教団の手に落ちた時であろうことを追記しておく。

――手記『塞国遠征記』より、ドラゴンティース族の記述。

15/10/09 21:16更新 / Ta2
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■作者メッセージ
 ドラゴンティース族のそれなりに細かい生態。
 劇中ではアマゾネスなのか? と言う様なことを書いてますが、彼女等はれっきとしたアマゾネスです。地方が違うために文化がいつものアマゾネスと違うだけです。

 第二章は、塞国を取り巻く勢力の話となる予定です。

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