読切小説
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ある少女の初恋
 いつものように、若い男が河原にやってくる。
 いつものように、応急処置の道具を小さな木桶に入れて。
 いつものように、その足音を聞きつけたサハギンの少女は水面から半分だけ顔を出した。
 いつものように、男は真夏でもマフラーを外さないまま木桶に水を汲む。
 いつものように、河原に戻る男の後をサハギンの少女がついていく。
 いつものように、木桶の前に座った男が懐剣を取り出す。
 いつものように、サハギンの少女は応急処置の道具を構えた。
 いつものように、男は木桶にかざした手を懐剣で切り裂く。
 いつものように、サハギンの少女はそれを見守る。
 いつものように、男は木桶の水が赤く染まっていくのを茫と眺める。
 いつものように、サハギンの少女が傷口を洗い、薬草を当て、清潔な布を巻いていく。
 いつものように、男は手を差し出したまま木桶から視線を外さない。
 いつものように、応急処置を終えたサハギンの少女も木桶を見つめる。
 いつものように、そのまま何時間も静かな時間が流れる。
 いつものように、やがて男は立ち上がり河原に水を捨てる。
 いつものように、それを合図にサハギンの少女も立ち上がる。
 いつものように、それぞれがそれぞれの住処に帰っていった。

 この奇妙な交流が、もう何か月続いただろう。男が姿を消した後、水面の下でサハギンの少女は考える。
 最初に会ったのは確か秋も深まったころだった。人の気配の長らくなかったこの川で見つけた初めての人間。
 襲いかかろうと機を窺うサハギンの少女にもまるで気付いた風もなく、男は今日のように手を懐剣で切り裂いた。自分で手に布を巻いた。
 驚いて思わず水面から顔を出したその水音にも、男はちらと視線を飛ばしたのみで赤く染まっていく水を眺め続けた。
 しばらくはそのまま、男のしていることを眺めるだけの日々が続いた。

 転機が訪れたのはいつのことだっただろう。
 男が巻こうとした布が風にさらわれた。水面に落ちる前に、サハギンの少女がそれを掴んだ。
 無言で差し出された布を受け取って、男は傷口に巻いた。
 2人の視線が初めて交わった瞬間だった。
 いつしか、傷口の手当てがサハギンの少女の役目になって、男は1人では使えない薬草を持ってくるようになった。
 サハギンの少女は男の名前を知らない。男がどうして自分の血を水に混ぜて、そして捨てているのか知らない。
 男の声を聞いたことさえ一度もない。
 ただ自分が必要とされていることが嬉しくて、いつしかサハギンの少女は男が来るのを心待ちにするようになった。
 奇妙な交流は続く。

 サハギンの少女の、初恋だった。

 いつものように、河原の石を踏む足音が響く。
 いつものように、サハギンの少女は水面から顔を出した。
 いつものように、男は汲んだ水に血を垂らす。
 いつものように、サハギンの少女は傷口を洗……わなかった。
 傷口を洗う水の代わりに、傷口を這う柔らかくもぬめった舌の感触。
 清澄な水音ではなく、ぴちゃぴちゃと粘着質な水音が響いた。
 サハギンの少女が、傷口を洗う代わりに己の舌で男の手を清めている。
 いつもの無表情な白く整った顔立ちにほんの少しだけ朱を加え、その左手を押し戴くようにして、一心不乱に舐め清める。突然の行動に、男も木桶から視線を外して少女の行為を見つめていた。
 血が止まり、いつものように薬草を傷口に当てて布を巻く。男もようやく視線を木桶に戻した。
 しばし、無言の時が流れる。
 やがて男は立ち上がり、河原に水を捨てる。踵を返そうとする男の服の裾を、サハギンの少女の小さな手が引きとめた。
 振り返る視線は茫として、水桶に注ぐ時のそれと変わらない。
 その視線を感じながらサハギンの少女は河原の奥、柔らかい草の生えたところに男を導く。
 サハギンの少女は小さい。立ったままの成人男性を押し倒すには力が足りない。陸の上では尚更だ。それでも彼女は、男にそこに寝てもらおうと力を込めた。言葉にできない恋心を、男女の交わりで表そうとして。
 男も彼女の意図に気付いたようだった。肩に手を添え、サハギンの少女の身体を引き離した。
 乱暴でもなく、優しく静かな、しかしそれは明確な拒絶。
 力が抜け、俯いて黙り込むサハギンの少女の頭を二、三度撫でて男はそのまま帰っていった。
 俯いたまま、日が落ちてもサハギンの少女はその場を動かなかった。

 それからしばらく、これまで通りの日々が続いた。男は木桶の水を自分の血で赤く染め、サハギンの少女はそれを見守る。
 サハギンの少女は押し倒そうとすることはなかったが、傷口を川の水で洗うことはもうしなかった。男も自分の傷口にサハギンの少女の舌が這うことを止めることをしなかった。
 それはもう、傷口の手当てではなくサハギンの少女の男への奉仕、求愛に等しい。
 男が帰ったあと。傷口を舐め清めるたびに感じる男の血の味を思い出しながら、サハギンの少女は何度も何度も自慰に耽った。
 この指が男の指だったら、自分を犯してくれたなら、キスをして、自分を愛撫してくれたならどんなにいいか、それだけを想ってサハギンの少女は何度も何度も絶頂した。
 秘め事が終わり、川のせせらぎが火照った身体を冷やしていくのを心地よく感じながらサハギンの少女は考える。
 あの人間はワタシのことをどう思っているんだろう。

 男はまた河原にやってきた。サハギンの少女も顔を出した。
 男は木桶に水を汲み、その前に座る。懐剣を取り出す暇を与えず、サハギンの少女は問答無用で男を押し倒した。座ったままでは、男は不意打ちに抗えなかった。
 男の服に水が染み込み、男の顔に水滴が滴る。顔や髪から滴った水と、サハギンの少女の瞳からこぼれた涙。
「……ねえ。」
 静かな河原に声が響く。男が初めて耳にしたサハギンの少女の声。鈴を転がしたような高く澄んだ声。男だけに向けられた、想いを込めた声。
「……ワタシのこと、きらい?」
 息がかかるような距離まで顔を近づけ、サハギンの少女は問う。男は微かに眉を下げ、わずかに首を振る。サハギンの少女が初めて目にした表情の変化だった。
「……ワタシは、アナタのこと、好き。」
 男は何も言わない。ただ、困ったような顔をするだけ。口元はマフラーに覆われて見えない。
「……アナタのこと、好き。だから、繋がり、たい。」
 サハギンの少女は、普段言葉を発することはしない。今まで人間に出会ったこともなかったし、他に言葉を使う相手がいなかったから。
「……知りたい。アナタが、ワタシのこと、どう思ってるのか。」
 だから、その言葉はひどく不器用で、そして正直だった。
 それでも男は答えない。
「……なんとか、言ってよ。……ワタシばっかり、……辛い。」
 言われて男は、何か罵られたかのように表情を歪めた。自分の首に手をかけた。自分の口元と首を隠すマフラーを掴み、取り払う。
 そこにあったものに、サハギンの少女は思わず愕然と身を浮かせた。
 そこにあったのは。

 喉に縦横に走り、その周囲が赤黒く盛り上がった、無残な傷跡だった。

「……喋れ、ない、の?」
 サハギンの少女は震える声で問う。男は静かに頷いた。
「……ごめん、なさい。」
 男は今度は静かに首を振った。力の抜けたサハギンの少女の体ごと身を起こし、細長い石を手に取る。
 その石を使って男は地面に字を書くことでサハギンの少女に語りかけた。それは、おおよそこのような男の身上であった。

 自分は、魔術師である。ギルドに所属し、精霊に頼らず水を操る研究を重ねていた。
 研究は何度も壁にぶつかりながら着実に前進していき、ついに詠唱とともにこの木桶程度の水を自在に操り、霧や氷を操るまでに至った。それは一定の評価を得、ギルド内での地位は上がっていった。
 ある夜、強盗に命を狙われた。何も取らずに数人がかりで自分を押さえつけ、ただ喉を何度も切り裂いただけで去って行ったのであれは強盗ではないのかもしれない。
 一命は取り留めたが、自分からは声が失われた。同時に、水を操るための詠唱も失われた。
 そのため自分は失墜した。呪文詠唱のできない魔術師など、誰よりも地位の低い出来損ないでしかない。
 ここで水に血を混ぜていたのは、詠唱の代わりに魔力の媒介となりうる血を混ぜることで代わりにならないかと何度も実験しているからだが、いまだにそれは実を結ばない。
 貴女が自分を好いてくれるのは嬉しいが、自分はそのように底辺に落ちた身であるので、貴女を幸せにすることは多分無理だ。
 せっかく貴女は可愛いのだから、もっと自分を幸せにしてくれる男を探したほうがいい。

 書いては消され、また書かれる文字の群れ。書き終えた男は土で汚れた石を放った。立ち上がり、帰ろうとするのをサハギンの少女は許さなかった。体を支えていた腕を払い、また男を地面に押し倒す。
「……ばかに、しないで。」
 先ほどとは違う、やや怒気のこもった声。今度は男が反応する間もなく、唇を重ねた。
「んぅ、ふっ……ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅむ……ぇる、くちゅ、ぢゅる、ちゅぱ、ぁ……っ!」
 長く唇を重ね、啄ばむように何度も重ね、そして舌を男の口に滑り込ませた。奥のほうで固まっていた舌をつつくと、男も怖々と舌を動かし、サハギンの少女のそれに重ねた。
 もとよりサハギンの少女は口があまり回るほうではない。だから、自分の気持ちを唇を重ねることで表した。

 馬鹿にしないで。何がワタシの幸せかなんて、アナタが勝手に決めないで。アナタの地位なんて関係ない、ワタシはアナタが好きなんだ。生まれて初めてワタシと触れ合ってくれた、生まれて初めてワタシを必要としてくれたアナタ。アナタのそばにいられれば、アナタと繋がることができれば、ワタシはそれで幸せなんだ。アナタと一緒でなければ、ワタシは幸せになれないんだ……!!

 長い長い口づけの後、やっと二人は唇を離した。すっかりサハギンの少女は紅潮して、普段なら冷たい印象を与えかねない表情は蕩けきってしまって、男を釘付けにした。
 互いの荒い息遣いを聞きながらサハギンの少女は男の身体を下る。男のズボンが前を膨らませているのを見て、サハギンの少女は目を輝かせた。
 ワタシのキスで大きくしてくれてる。可愛いと言ってくれたのは嘘じゃなかった、気持ち良くなってくれるんだ。
 やや湿った服は肌に貼りついて脱がせづらかったが、サハギンの少女は本能の命ずるままに男のズボンの前をくつろげた。
 バネのように飛び出した男根がサハギンの少女の顔を打つ。その雄の香りにサハギンの少女はくらくらするのが止められない。理性が剥がれ落ちていくのがわかるようだ。しかし不快な気分ではなかった。このまま男を愛して、繋がって、結ばれてしまいたい。男の精を受け止めたい。サハギンの少女の頭にはもうそれだけしかなかった。
「……今度はこっち、良くしてあげる。……動かないで。」
 何故だろう。こうして男の男根を前にしていると、言葉も感情も止まらない。
 きっとこれは愛の力というやつだ。気持ち良くなってほしい、この人の精がほしいと本気で思えばサハギンの少女だってこんな風になれる。
 大きく口を開けて、粘膜を見せつける。今からここでアナタを気持ちよくしてあげると無言のうちに語りかける。
「ん、ふぅ……ぁあっ、む、ぅ…♥」
 咥え込む。口いっぱいに広がる男の……オスの匂い。頭の中が痺れていく。啜り上げると身体に火がついたように熱くなった。
「くぷ…ぢゅぅっ! ぇる、ちゅむっ、ん…あむっ。んふ…ちゅぱ、ぢゅるるるる……ね、ひもひいい?」
 上目遣いに男の顔を見つめる。男が今までに見たことのない、赤くなった顔を見せていた。そのことが無性に嬉しくて、夢中になって男根を喉の奥まで受け入れる。先端から滲む先走りに気づけば、鈴口に口をつけてストローのように吸い上げた。

 その刺激が引き金になったのだろう。男根が大きく脈打ったと思うと、先走りに苦いものが混じりだす。
 射精してくれるんだ。そう思ったらもう止まらない。先ほどとは反対に今度は喉の奥まで受け入れ、吸い上げる。喉の奥を突く亀頭の圧迫感も、押さえるように頭に置かれた手の感触も、そしてひときわ大きな脈動と一緒にぶちまけられた白濁液が喉を打つ感触も、男が気持ちよくなってくれたからだと思うとすべてが愛しくてたまらない。
「ん、ぐ…っ、こく、んっ、く、ごくっ、ん……んくっ、ぁ…♥」
 喉を鳴らして白濁液を飲み込む。大好きな男が自分の愛撫で放ってくれたものをこぼすなど、もったいなくてできるはずがない。尿道に残った分まで啜り上げ、ようやく唇を離した。
 力の抜けた男の身体にしなだれかかる。サハギンの少女もうまく身体に力が入らないのに、秘所は火がついたように熱い。甘えるように男の胸に頬を擦りつけた。それはまるで動物が自分の所有を示すためのマーキング。この愛しい男はほかの誰にも渡さない。一番大事なところにも、自分の印をつけるんだ。
「入れるよ…?」
 男に跨り、もう滴るくらいに濡れそぼった秘所を広げて入り口と亀頭を触れ合わせる。
 そこから見せ付けるように挿入しようとして……挿入、できない。
 男がその腰を掴んで、その挿入を押し留めているからだ。
「どう、して……?」
 それだけしか言葉にならなかった。こんなにも男のことを想っているのに、男も気持ちよくなってくれたのに、どうして結ばれることができないんだろう。
 やはり男は自分のことを見てくれないのではないか。身体は気持ちよくなってくれても、心は別の誰かに向いているのではないか。これは自分の勝手な片思いなのではないか。思考が巡り、サハギンの少女の瞳からまた大粒の涙が溢れる。
 それを、男は唇を寄せて舐め取った。思わず男を見つめるサハギンの少女を、男の腕が抱き締める。今度は男のほうから唇が重なった。
 ああ、さっきまで男の精液で満たされていたのに。まだ口の中は精液の味や匂いが残っているのに。男はそんなこともお構いなしにサハギンの少女の粘膜を味わっている。
 それだけでサハギンの少女は幸せになれる。男が自分から求めてくれることが、自分の勝手な片思いではなかったことが分かったから。その幸福感が悲しみを覆い隠し、サハギンの少女が軽い絶頂さえ迎えたところでようやく唇が離れた。
 男の指が踊る。
 サハギンの少女の起伏のほとんどない身体に文字を描くことで、男が語りかけてくる。絶頂で敏感になったサハギンの少女の身体は、その内容を正確に脳裏に伝えた。

 ありがとう、だいすき。

 もう、それだけでまた絶頂してしまいそうになる。思わずもう一度男を抱きしめてしまう。胸板に頬をこすりつけているうち、脱ぎ捨てた男の上着の上に寝かされた。川の流れに角を削られた小石は小さく丸く、厚手の布一枚を隔てればそれはもう天然のベッドに等しい。

 サハギンの少女の秘裂に男根が当てられる。今度は男の意志で。
「来て……?」
 2人の視線が絡み合えば、自然と言葉が出てくる。男がうなずいて腰を進め、男根がサハギンの少女のナカを押し広げてくる。
 はじめてを失うかすかな痛みと、それを押し流す圧倒的な快感、喜び、充実感。
 自分はこのために、この男に愛されるために生まれてきたのだと、そんな確信と一緒にまた絶頂を迎え、びくんびくんと激しく手足が痙攣した。
 気づけば、男の手がサハギンの少女の頭をそっと撫ぜていた。心配そうな眼差し。

 動きが止まって、ダメだ、この人は優しい。でも、もっと。やっと一つになれた、嬉しい。もっとしたい。気持ちいい。もっと動いて。気持ちよくなりたい、もっと、もっと、もっと……!!

 サハギンの少女の思考がぐちゅぐちゅに混ざり合う。混ざり合った末に一つになって浮かんできたのは、もっとしたいという動物的な欲求。手を伸ばして男に抱きついた。
 もっとくっつきたいし、もっと男に温めてほしい。もっと深くまでこの男の男根を受け入れたいのだ。
「大丈夫、痛く、ない、よ……♥ だから、もっとして……? もっと、動いてぇ……ずこずこって、ちょうだい……♥」

 男からもぎゅっと抱きしめられると、少しだけ汗ばんだ男の匂いで脳が浸される。男が腰を引いて、また押し込んで、男根に押し出されるように声が出てしまう。
 声が漏れれば漏れるほど男の動きが激しくなることに気づいて、サハギンの少女は声を我慢するのをやめた。
「ひぁぅ…っ! いい、よぉ……きもひ、いい、よぉ…ワタシ、の、ここっ、ぐちゅ、っぐちゅ、でぇ…♥ すごい、の、ぁ…っ! だから、ぁ…もっとっ! もっと、ぐちゅぐちゅ、し、てぇ…? これ、好きっ…! アナタも、これも、好きっだからぁ…っ! ぜんぶ、ぜんぶ大好き、だからっ…もっと、して、おね、っがいぃ……!」
 サハギンの少女を抱きすくめる腕。男の息が荒い。サハギンの少女の秘裂は白濁した愛液で言葉どおりにぐちゅぐちゅになってしまっている。男根にかき混ぜられて粘着質な水音が響く。男の動きが激しすぎて腰同士がぶつかる音もそれに混じる。
 五感がすべて男に支配されて、サハギンの少女は今までで一番幸せな絶頂に押し上げられようとしていた。
「ふぁぁんっ♥ らめ、っ、もうらめっ、イっちゃう、きもちイイっ、よすぎて、イくのっ♥ ねっ、見てっ♥ ワタシっ、イくとこぉ…! ワタ、シのっ、恥ずか、ぁぁっしいところぉ……っ♥ ワタシ、もぉ、アナタの、モノっ、だからぁ…! 全部、全部見て、見てぇぇっ♥」
 紺色の鱗に覆われた手足を男に絡みつかせ、万が一にも男根が抜けないように密着する。絶頂でサハギンの少女の膣壁が搾るように男根を締め付け……それで限界を超えて、男もサハギンの少女の中に白濁液を吐き出した。
「あ、は、ぁ……あぁぁぁ……♥ 熱いの、中に、たくさん……嬉しい、よぉ……♥」
 夢見心地で余韻に浸る。それでもなお自分に抱きついて離れないサハギンの少女に負担をかけないように、男は上下逆転して仰向けに転がった。

 力が抜けて自分の上で荒い呼吸を繰り返すサハギンの少女の背中を、軽くぽんぽんと叩いてやる男。その一定のリズムを心地よく感じながら、少女は背伸びして男の喉に残る傷跡に口付けた。
 男の身体がぴくりと反応する。抱きついた全身でそれを感じたサハギンの少女は微かに笑みをこぼした。
「……弱いんだ」
 視線をそらす男、それが図星の反応であることに気づいたサハギンの少女。まだ繋がったまま萎えない男根の感触をうっとりと感じながら、男に覆いかぶさった。
「……まだ、精液……足りないの。もっと、出して……ね?」



 孤独な男に家族ができた。
 孤独な少女の恋が実った。

 「初恋は実らない」なんて世間では言うけれど、そんなことはない。

 運命の出会いに、初恋かそうではないかなんて関係ないのだから。
12/02/22 00:51更新 / 霧谷 来蓮

■作者メッセージ
 大変ご無沙汰をいたしております。霧谷来蓮です。
 レポートとか履歴書とか、色々書かないといけないものはあるはずなのにどうして私はサハギンの話を書いてるんでしょう。

 はっ、これがいわゆる逃避エネルギー!?

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