連載小説
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11日目(中)
「…行った、よな」

扉が閉まって、足音が離れていく音を聞いてから一息つく。

「あ〜も〜…調子でないなぁ」

伏せたまま足をパタパタさせる。
昨日の夜、会うのを考えたときは少し胸が締め付けられるような感じになる程度(程度と言っていいのかはともかくとして)だったのだが。

「会った瞬間、心の底から嬉しいって思っちまうんだもんなぁ…」

しかも、少し構って貰えないだけでそれが一気に悲しみに変わっていくという有様だ。
割と本気で涙目になったのは恥ずかしいのでケントには言えない。

「兎かっての…」

不貞腐れて枕に顔を埋める。
と、今度は枕に染みついたケントの匂いに体が反応し始める。

「っ…」

先程まで平気だったが、意識し始めた瞬間体が熱くなってくる。
枕に顔を強く押し付け呼吸をしてみる。

「すー…はー…」

匂いを吸い込むたび、じわじわと頭が痺れ始めてくる。
が、すぐに物足りなくなり、もっとケントを感じるにはどうすればいいのかぼんやりと考える。

「…」

自分がどこに寝転がっているかを思い出し、ごくりと生唾を飲み込む。
少しだけ体を起こして、体の下にある布団を捲り、中に体を滑り込ませて頭まで被る。
普段からケントが使っているという事はつまり、間接的にではあるが抱きしめられているのとほぼ同義という訳で…

「やっべ、これ、やべぇって…」

布団とベッドに挟まれ、酸欠状態と濃密な匂いが相まってさらに思考能力を奪っていく。
ふと、先程までケントが自分を見ていた事を思い出す。
女は男に見られているのはすぐ分かるというが、まさにその通りだった。
本人は気づいていないのだろう。
こちらに向ける目線は全て胸やら腰やらに注がれその目の奥に潜む獣欲は、目の前の雌を乱雑に嬲ろうとする類の物である事に…

「っ、ぁ…♡」

気が付けば、衣服の中に手を突っ込み胸を弄っていた。
男の時とは比べ物にならない程の快感が走る。
あまり大きくない未発達の乳房をやや乱暴に揉みしだく。
そのまま、ぷっくりと自己主張を始めた乳輪を指の腹でなぞり、指先で乳首を弾く。

「ひっ…♡ぅぁ…♡」

びりびりと電流が走り、その度に腰が跳ねる。
親友のベッドで自慰をしているという背徳感、見つかったらどうなるかというスリルが相まって、さらに昂っていく。
片手でショートパンツをずりおろし、下着の上から膣口を擦ると、ぐちゃぐちゃと卑猥な音が響く。
空いたもう片方の手は、乳首を摘み上げこね回し、脳に快楽を叩き込む。

「あっ♡イっ…く♡」

限界まで絶頂が近づいて来たのを感じ、スパートをかける。
乳首を捻り上げ、クリトリスと膣口を掌で磨り潰すように擦る。

「ぁっ、っ〜♡」

一瞬パチンと視界が弾けて、声にならない悲鳴と共に愛液を吹きだす。
ドロドロとした余韻が体を蝕み、ビクビクと肢体が痙攣する。
ゆっくりと波が引いていき、ようやく自分がやらかした事に気づく。
と、いきなり布団が捲られ、状況を理解する前に声をかけられる。

「…お前、何してんだ?」

冷たい声にびくつきながら、恐る恐る親友の顔を見上げる。

「ぇ、ぁ…」

「何をしていたのか聞いてるんだが?」

どうにか声を絞り出そうとすると、さらに冷たい声で遮られる。

「ち、違うんだ、これは…」

ぎしり、とケントがベッドの上に乗り、上に被さってくる。
片腕を掴まれベッドに押し付けられ、押し倒されたような形になる。

「え…?」

「なぁ、ハル。俺は何度聞き直せばいいんだ?」

頬に手を添えられ、ゆっくりと撫でられる。
それだけで心拍数が上がり、また体が熱を帯びてくる。
そのまま手が動いていき、唇をなぞる。

「ぁ…んっ…」

「何してた?」

見下されるだけで呼吸が乱れ、どうにか声を絞り出す。

「っ…ぉ…な…ぃ」

「何?」

嗜虐的な笑みを浮かべ、さらに強く腕を抑えて愉しそうに見下ろしてくる。

「お…」

「お?」

顔から火が噴き出そうなほど恥ずかしいのを我慢して、やけになって叫ぶ。

「オナニーしてたんだよっ!悪いかっ…」

目を瞑り叫んだ瞬間、口の中に指が突っ込まれる。

「んぐっ!?」

「元は男の癖に、親友のベッドでオナニーか。そんな奴にはお仕置きがいると思わないか?」

「ん、むぅ…ぐ…」

人差し指と中指が押し込まれ、舌の上を無遠慮に荒らしていく。
押し返そうと舌で抵抗すると、それを避けてさらに奥に滑り込ませ、ぐちゃぐちゃと掻きまわされる。
しばらくされている内に、また思考に靄がかかってくる。
口内を蹂躙されるがままに、指の動きに合わせて指をしゃぶる。

「反省したか?」

ねちゃりと音を響かせながら、涎塗れの指を引き抜かれる。
涎が糸を引き、ゆっくりと下に落ちていく。
目の前に差し出された指は、自分の涎でてらてらと濡れている。

「ぁ…」

思わず舌を伸ばすと、届くギリギリの所で離され、逆に舌を掴まれる。

「おいおい、本気で発情してんのか?」

「はっ、ぁ…」

舌を無理矢理出され、犬の様に息を荒げた状態をまじまじと見られる。

「見、ん…ふぁっ…♡」

「そんな蕩けた表情で言われてもな…っと。おぉ、軽いな」

腕を回されぐいと持ち上げられ、膝の上に抱き抱えられる。
尻に押し付けられた逸物の大きさと硬さに体がぞくりと震える。

「なん、だかんだ…ヤる気満々じゃねーか…♡」

「馬鹿言え。お前の方がヤりたくてしょうがないんだろ?まだ何もしてないのに蕩けきった顔しやがって」

腰を強く抱き寄せられ、耳元で囁かれると、それだけでドロドロと愛液が湧き出てきてしまう。


「魔物の…体質の所為だっ、つの…」

「なるほど。ってことは…」

「ふひゃんっ!?」

ふぅ…と耳に息を吹きかけられ、体が跳ねる。

「お前は俺のだって事がちゃんと分かってる訳だ」

「っ、はっ…ち、違っ…ひっ!?」

「違わねーだろ?」

服の中に手を突っ込まれ、腹部をゆっくりさすられる。
指が這い、その場所を手のひらがやんわりとなぞっていく。
ただそれだけで子宮が震える感覚が押し寄せてくる。

「な?俺は殆ど何もしていない」

「ひっ、ぁっ…っ、はっ、く…」

声が出せず、短く息を吐く事しか出来ずにいると、首筋に硬い物が押し付けられる。
と、それの正体を理解する前に、さらに強く抱きしめられると共に、鈍い痛みが首を襲ってくる。
噛まれている。
それも甘噛みだとかそんな生易しいものではなく、噛み千切らんばかりの力で。

「ぁ、痛っ、い…って…!」

魔物になってから肉体面でかなり強化されているとはいえ、男の力で思い切りやられればかなり痛い。
抵抗しようにも、腕と体を完全に抑えられているためどうしようもない。

「ふぅ…こんなもんか」

「っの、サディストめ…」

ようやく口が離れたと思うと、首に血が集まってじわじわと熱くなってくる。
あれだけ強くやられては、しばらく痕が消えないだろう。

「じゃ、まぁ。勉強の続きするか」

「は?」

急に腕を解かれ、解放される。
焦らしプレイ所の話じゃない。

「いや、結構満足したし。勉強もきちんとしないとな」

「そういう問題じゃ…」

「じゃあ何だ」

「だから、その…さぁ…?」

「ふむ…」

わざとらしく首を傾げ、しばらく考えこむ。

「そうだな。じゃぁ、きちんと勉強してたらご褒美をやるよ」

「ご褒美って…具体的には」

「さぁな。まぁ…」

つぅと首筋の痕をなぞられ、ぴくりと体が震える。

「後のお楽しみって奴だ」

ぽんと頭を撫でられ、もうそれ以上する気はないのか離れていく。
…選択肢は他にないのだろう。
『ご褒美』という響きに負け、結局頷いて勉強を始めるしかなかった。
13/11/28 00:38更新 / ポレポレ
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