読切小説
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愛のかたち/迸る愛
「ちゃんと我慢できますか?」



男、間京 守嗣(まきょう もりつぐ)は問いかける。



「何を言っておる!これでも年上なのだ!」



それに対し女、カムヤカは返答する。
守嗣の身長は180近い。カムヤカが155であるためかなりの差がある。
しかし年齢にすればカムヤカが二つほど上であった。


「カムさんの種族は食欲ならぬ、性欲旺盛なんですから。今ですら帽子の色が若干、赤みがかってますよ。」



「大丈夫である!夫のくせに嫁のことが信用できぬというのか?」



カムヤカはプンすかという擬情語が当てはまるように軽く地団駄を踏む。



「いえ、そういうわけではありませんが・・・どんな生物も本能には勝てないこともまた確かですよ。それを心配しているのです。」



何の話かと言えば、守嗣が明日泊りの出張に行くのだ。
1日、レッドキャップであるカムヤカが我慢出きるのか。

それすなわち、夫との性交を断たれることが大丈夫であるかということだ。



「わ、私はピンクが好きなのだ。だから帽子もピンクにしたいだけなのだ…」 



被っている赤みがかった帽子を押さえ、俯きがちに答えるカムヤカ。 



レッドキャップという種族は簡単に言えば欲求不満が帽子に現れる 、帽子が赤くなっていく種族だ。

それは不満が溜まれば溜まるほどその赤は深く、濃いものとなっていく。



一方、通常のレッドキャップとは違いカムヤカは染まるスピードが極端に早い。これは有名な性欲科であるアラクネの女医に診てもらったため確定しており、スピードは通常の数倍だそうだ。このことについてカムヤカは理由を知らない。



「今晩はやるとしても、明日は誰も襲わずに我慢するんですよ?」



「守嗣以外とはヤらんわ!でも…うぅ」



我慢できるか不安なのであろう。

いつもの自信はない。


守嗣も責めているわけではなく心配しているため不憫でならない。
信用はしているがこの法治のもとでは加害者が女性でも強姦罪は成立してまう。



小さな体ではあるがレッドキャップは武器である大きな包丁を持ち出すと手が付けられない。

それは肉体的な殺傷能力があるものではないが、相手の魔力に傷をつけ行動を制限するものである。そんなことになっては一番傷つくのはカムヤカ自身だ。


それだけは避けたいと守嗣は心の中で強く思う。



「僕ができることは、今日のうちに目一杯愛してあげ ることですかね」



「う、うむ。頼むぞ、旦那様。ん〜」



甘えてくるように抱き着いてくるカムヤカ。



一日ですから頑張ってください、という気持ちをこめて守嗣は小さな体を強く抱きしめるのであった。



〈翌日〉


「では、行ってきますよ。明日朝一で帰りますので。」


「…」


無言のカムヤカを一瞥して守嗣が家を出た。 
昨晩は立て続けに三発の精液を貰い帽子は白に戻った。
が、それは今日を無事に過ごせる保証にはならない。


バタンとドアが閉まり、静まり返る。


「だ、大丈夫である。私は守嗣を愛している。家事を…家事をしなければ」



運悪く今日は土曜日。平日ならば仕事をしていれば一日なんてあっという間に終わる。
それが叶わない以上、家事で紛らわすことにしたのだ。

大丈夫、集中していれば一日なんてすぐだ、そう自分に言い聞かせ洗濯に取りかかるため脱衣所に向かうるカムヤカ。しかし・・・



「こ、これは!」



早速関門にぶつかった。洗濯籠の中にあるもの。


「の、残り香が…」


守嗣の服である。


カムヤカは小さな顔にシャツを近づけクンクンと鼻を鳴らし嗅ぐ。普段体臭などは特別無いが、やはり独特の使用済みの香りが服に染み着いていた。



「ダ、ダメだ!こんな事をしていてはこの先持たないのだ!洗濯はあとにして掃除をするのだ」



シャツを洗濯籠に投げ入 れる。脱衣所から出てすぐにリビングへと向かった。



パッと見は何か精神に働きかけてくるモノはなく、掃除機をかけ始めた。


手元で操る機械の大きな音が気持ちを紛らわしてくれるようであった。
棚に近づいた時フッと写真が目に入ってきた。




自分が写っている結婚式のツーショット写真。

純白のドレス。

純白の“帽子”。



私いつからこんなに歯止めが聞かなくなってしまったのか。 
守嗣と出会うまではこんなことはなかったのだが。

カムヤカの目にみるみる涙が溜まっていく。



「守嗣にも迷惑かけているし、私は何をやっているのだ・・・」


守嗣以外に気が向くことはない。それはカムヤカの中でも決まり切っていることである。


だが、それで守嗣に迷惑がかかるのならあるいは浮気に走るべきか。



『ヴーヴーヴー』


「はっ!?あたしは何を馬鹿なことを考えているのだ!」



携帯のメール音が許されない妄想を掻き消す。


メールは守嗣からだ。
『無事、電車に乗れました。大丈夫そうですか?』


「夫は私のことを考えてくれているのに…」


『大丈夫じゃない。もう迷惑をかけている。私はどうすれば良い(;_:)?』



返信はすぐに帰ってくる。


『迷惑なんてことないです 。本当に気にしないでください。確認したのですが明日の朝10時には帰れると思います。』



「10時・・・今11時か」

『分かった。待っているからな。すぐに帰ってきてくれ(T_T)。』


携帯を閉じ、家事は自分の気を紛らわすことは出来ないと結論を出した。

約24時間、それさえ耐えれば大丈夫。自己暗示をするように繰り返し、ひと眠りしようと寝室に入るカムヤカであった。



〈翌日朝10時〉


「ただいま帰りました」



何事もなく出張を終え帰宅した守嗣。
いつもなら小さな愛しい人が迎えてくれるはずだったが、玄関はしんと静まり帰っている。


昨日の夜に何度も電話をかけたが呼び出しのコールだけで終わり非常に不安ではあった。



「でも何かあったと決まったわけではないし、大事になっているなら連絡がくるはずだ」


リビングへ入ると掃除機が出ている以外昨日と変わった様子はない。


「カムさーん、どこで…」


ザクッ。
守嗣の耳にはそう聞こえた。
振り返ると、既にカムヤカが大きな包丁を振りおろしていた。

バタッとその場で倒れそうになる守嗣。意識が朦朧としている。
しかしカムヤカがそれを支える。
そして少し引きずりながらソファーへ近づき、上に守嗣を寝かせた。


「もう、我慢できないのだ。」



発言先はワンピースを脱ぎ始める。
守嗣の体は動かない。


「すまない守嗣。私はダメな妻なのだ。1日、どうにか我慢した。それでも、もうダメだ。すぐに慰めないと。」



半べそをかきながら守嗣のズボンのファスナーを下ろす。
そして下着を脱がすこともせず、その隙間から肉棒を取り出す。

守嗣は意識がやっとはっきりとしてきた。
そこには己が妻の泣き顔と性行為をしようとする現場。


別にヤることは守嗣も嫌ではないし、結婚以来欠かさずに営みは行ってきた。
それでも守嗣にも引っかかるところがが一つだけある。


「カムさんはダメなんかじゃありません」


「えっ?」


守嗣の肉棒を弄んでいた手を止め、カムヤカが声の方を向く。


「こ、こんなに迷惑をかけているのだぞ?ダメダメだ…」



帽子を押さえ俯く。
その色は深紅。
切れていて、普段少しつり上がってる目も今は下がっていて、実に悲しげである。


「私も普通なら良かったのだ。なぜ私だけこんなにも我慢が効かないのだ」


声は震えている。
責めなくて良い自分を責め、迷惑なんて感じてない守嗣に謝り続ける。 
それでも本能には勝てず、また自分を責める。


「また後で話そう…、いくらでも怒られるから今は私の好きにさせてくれ…」


守嗣は怒っていた。
この状況に対してではない。
出張を命じた会社でもない。
勿論、カムヤカでも。


「本当に、僕はバカな男です。」



自分に対して怒っていた。
見れば分かる、自分を責め一晩中泣いていた目だ。
電話も気づかないほどに。



「カムさん。これはお医者様の独自の見解あるためで本人には話すなと言われたことですが言います。」



病院でカムヤカが席を外したその一瞬、アラクネの医者が言ったこと。



「カムさん以外の他のレッドキャップにも症例がいくつかあったようです。医学的には解明されていませんが、お医者様は『単に人を愛しすぎた結果』という判断をされていました」


気持ちが目に見えて現れる、それがレッドキャップの帽子である。
普通はその人をどれだけ愛しているかなど、数値では測れないし目にも見えない。


「レッドキャップは人をどれだけ愛しているか、が目に見えて分かる種族であり、カムさんは普通よりも少しだけ過剰だっただけのこと。つまり、その人、僕を愛する気持ちが強かった。」


カムヤカは黙って聞いている。
しかし先ほどまでの焦りは感じられない。


「愚かな僕を許して下さい。こうして、今一番それを感じられてる。僕、愛されてます。そして、そんなカムさん…いや、カムヤカを僕は愛してるから」

体は動かない。
ヒーローならヒロインが泣いている時はどんな無理をしても助けるのが王道だろう。

が、しかし守嗣はただの人間であり、魔力には逆らえない。
そんな守嗣には苦笑するしかなかった。
ポロポロと涙を流しながらカムヤカはそんな守嗣に抱きつく。


「抱き締められなくてすみません。」


「黙って私に抱かれてればいいのだ。丸一日愛する妻を泣かせた罰だ。」


なんとなく言ったのだろうが心にくる。
もうこんなことは二度としないと守嗣は心に決めるのだった。


    

     


「さーてと、覚悟はいいか?」


少しの間、文字通り肌の重ねていたが、起き上がったカムヤカの目には欲望の炎が燃えていた。


精神的な満足は得られても肉体は飢えている様だ。


「い、良いよな?守嗣のここも元気だし」


そういって既にカチカチの肉棒を自らの膣にあてがう。


「勿論ですが、僕はまだ動けませんよ」


苦笑し、指を少し動かして見せる。
しかしそれを聞いたカムヤカはニヤリと笑う。


「本来そのための武器とその効果だからな」


バチュ。
カムヤカの中は既にトロトロで蜜が溢れていた。
水音を立て肉棒が滑り込む。


「んぁぁ、気持ちいい〜。ピッタリ来るのだ。やっぱりこれしかない。私にはこれしかないのだ。んくぅ」


激しく腰を動かし始める。
とても中に成人男性のモノが入るような体型ではないように見えるが、完全に守嗣のモノを咥えている。


「キ、キツいですね。初夜を思い出します。」


バチュバチュグチュグチャ。
そんな淫猥な音を立て夫の上で上下運動続ける妻。


「はぁはぁ、気持ちいいか?言ってくれないと不安になるだろう…」


「も、勿論です。もう僕はこの締まり以外では考えられません」


守嗣の苦悶にも感じられる表情を見て満足げなカムヤカ。
わざわざ自分を必要とする良い回しをしてくれる夫を愛しく感じる。


「で、でも。くっ…はぁ、もう射精そうです。」


「ほ、欲しい。中に。一日お預けを食らった私の中に…守嗣のを全部だしてくれ、ひやぁ」


肉棒がちょうどGスポットに当たり変な声を上げてしまう。
そんなカムヤカを愛しく思い、もう我慢を止める守嗣。


「全部、一滴残らず出しますよ。カムさん、いえカムヤカの中に。僕の愛です。受け取って下さい。」


カムヤカが腰を勢いよくおろした瞬間に我慢を解き射精する。


「〜〜〜〜〜〜っ、はぁはぁ…」


カムヤカは言葉にならない言葉で呻き、体を震わせる。
ドクドクと流れ込む精液をすべて受け止め、疲労から守嗣に向かって倒れ込む。
守嗣はそれをやっと動くようになってきた両腕で受け入れる。


「ま、まだ抜かないでくれ。もう少しこの温もりを感じていたいのだ。」


それだけ聞くと守嗣は自分のモノを抜かずに、黙ってカムヤカを抱き締め、カムヤカもまた抱き締め返すのであった。





〈数日後〉

出張分の有給を使い、温泉宿にやってきた二人。


「結婚式ではドレスを来たが私は胸がないから和服の方が似合うのだ。」


今日は貸切の露天風呂を借りている。
そこに向かう廊下で嬉しそうに和服姿を見せるカムヤカ。


「カムさんが着るなら何でも関係ないですよ。」


確かに和服は似合いますけど。
そう加える守嗣。

「そ、そうか?えへへ、なら今度は服を買いに行こう!」


「勿論です。」


たわいもない会話。
けれども、そこにはまた一つ夫婦として仲が深まっているのが感じられた。


「でもオシャレな服屋に行くと私よりも可愛い子がいて、守嗣が取られるのでは!?」


カムヤカはあわわという擬情語があう形で焦る。


「まだそんなことを言っているのですか?そんな人には今日の夜にお仕置きですよ?」


少し嗜虐的な笑みを浮かべ守嗣は言う。


「うぅ…恥ずかしいが楽しみだ。それなら今晩もよろしくな、旦那様。えい!」


そういって抱きつくカムヤカの帽子はほんのり赤みがかっていた。


18/05/17 10:56更新 / J DER

■作者メッセージ
久々の投稿です。
この様に投稿にいたるまでのものが書けず、またつまらない現実が忙しいのでなかなか楽しい妄想が捗りません。
それでも、続けていてまた投稿する事が出来ました。
これも、前までの作品を評価してくれる方々がいたおかげです。
宜しければ、以前の物もお読み頂ければ幸いです。

では最後に皆様の余暇のお供になれることを願いましてー。

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