連載小説
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荒ぶる宇宙恐竜 皇帝の黒鎧
 ゼットンの故郷、エンペラ村。その日、いつもと同じ貧しいながらものどかな一日を送るはずだったこの村は、突如百人近い魔物娘の軍勢の襲撃を受け、あっさり陥落した。
 その顛末はどのようなものかというと、村人達は突然の襲撃に驚いてまともな抵抗をする間も無く、魔物娘側は怪我人すら出ないほどであった。

「手こずってるらしいな…」

 村が制圧されると共に、村の未婚の男達は襲撃に加わった魔物娘達に順次押し倒されていった。そして犯されている最中に皆骨抜きにされてしまい、彼女等とその場で夫婦となってしまったのである。
 余った女達もサキュバスやワーウルフなどに襲われ、次々に魔物娘へと変わっていき、貧しく寂れた村はらしからぬ快楽の坩堝となった。
 そして一晩中交わったところで乱痴気騒ぎもお開きとなり、各々は村を離れて妻の棲家、もしくは新天地へと向かって旅立って行った。
 こうして貧しい村は無人となり、後に残るのはボロ屋と、村からさらに先、丘の頂上付近にある腐りかけた社であった。

「御主人様、探索チームから何か連絡来ましたかニャー?」
「ああ、先程モバイルクリスタルに連絡が入った。入り口同様、中にも強固な防御結界が張ってある扉がいくつもあって作業が難航しているらしい。
 物理攻撃が通じねえから、さすがのミレーユも手が出ないと言ってた」
「ま、のんびり待ちましょうニャ。そろそろ昼ご飯のお時間ですし、今出前を頼みますニャ」

 ゼットンは魔物娘の襲撃が終わって村が無人となると、魔物娘達を引き連れて乗り込んだ。彼が行動を起こしたのは、『社の中にはダンジョンの入口があり、その最奥には隠された財宝がある』という情報を得たのだ。
 そして魔術担当として妖狐の麗羅(レイラ)、サキュバスのエリカ、力仕事担当としてオーガのミレーユ、デュラハンのヘンリエッテを探索隊として集めたのだが、彼女等は皆彼とつるんでいた魔物娘達であった。
 理由はこちらの指示で動かしやすく、且つ純粋な厚意で引き受けてくれているため、人件費がかからないという利点があるためだ。
 もっとも、後で愛情たっぷりの御礼をしなければならないため、彼女等は全くの無償で引き受けているというわけでもない。

「あ〜もしもし、ピザの出前をお願いしますニャー。
 ああ、はい虜の果実ジュース(XL)が10本、ホルスタウロスバニラミルクシェーキ(XL)が10本、デラックスシーフードピザ(XL)が5枚、魔界キノコ盛り合わせピザ(XL)のアンデッドハイイロナゲキタケ抜きが5枚、超厚切り魔界豚ベーコンと特濃ホルスタウロスチーズピザ(XL)が5枚、パーティバスケットを15人前お願いしますニャー。
 あ、後名前忘れたけど、ピザは全部耳にソーセージとチーズを突っ込んだヤツにしてニャ!」
「リリーよ、ちと頼み過ぎじゃねーのか?」
「ご心配なく、デザートは頼んでいニャいですニャ。
 それに今探索隊にいる連中は食べ盛りの連中ばかりですから、後で多めに食事を用意しておかニャいとギャーギャー騒ぐに決まってますニャ」

 ゼットンは家のメイド、サキュバスのエリカとワーキャットのリリーを伴ってきていた。
 エリカは魔術要員として探索隊に同行させているのでこの場にいないため、今ここにいるのは彼とリリーの二人だけである。
 本来ここに連れてくるのはエリカだけで、リリーは含まれていなかった。だが、エリカだけが連れて行かれるという事にリリーが嫉妬して騒ぎ立てたため、ゼットンは仕方なしに連れてきていたのだった。
 ここに来ているのはクレアには秘密にしていたため、下手に騒がれて嗅ぎつけられるよりは良かろうという判断によるものだが、リリーはやかましい性格のため、報告を待つ間退屈しないという利点はある。

「本来女どもに任せて自分は上で待ってるっつーのは恥なんだけど、連中に足手まとい呼ばわりされて置いていかれてるから、尚更恥の上塗りだわ」
「それは仕方ありませんニャ。魔物娘としては、夫を危険な目にあわせたくニャいのは当然ですニャー。
 ま、妻がいっぱいいるのは本来魔物娘としてはあまり有り難くニャい話ですけどニャ」

 クレアの家に七年間同居しているが、未だにゼットンとクレアは結婚していない。“ディーヴァ”であるクレアと比較してゼットンは弱すぎるため、彼女の両親に結婚を認めて貰えないからだ。
 もちろん正式な婚姻関係など無くとも彼女の夫であるという認識は成り立つが、どちらかと言えば同棲中の彼氏彼女という状況だろうか。
 だが、今連れてきている女達にもかつて誘惑され、まんざらでもない態度を見せた結果、相手達にも自身の夫と認識されてしまう。そのせいで事態はややこしくなった。
 ただしクレアの感情はともかく浮気相手同士の関係は良好のようで、その証拠に探索隊は彼の浮気相手のみで構成されているが、現在まで任務に支障をきたしてはいない。

「クレアは最初の女だから別れたくないな。それに金持ちだし」
「奥様が聞いたら号泣しニャがら御主人様を叩きのめすでしょうニャ」
「あいつ本気で俺殴るんだもんな…」

 露骨に嫌そうな顔をするゼットン青年。彼が恐れる通り、クレアの腕っ節の強さは有名である。
 遅めの成長期で大男になっても、クレアには敵わないのは相変わらずだった。

「これ以上他の女に遺伝子をばら撒くのは止めた方がよろしいと思いますニャ」
「まーね」

 極貧から一転、美少女と唸るほどの金を得た。そして魔物娘の肉体は、一度知ってしまうとさらに味わいたくなって歯止めが効かない。
 このように目の前の美少女だけに飽き足らず、ゼットンはその欲望の赴くままに人ならざる美女達を食いまくった。

「まぁ、別れる気はねーよ。俺はあいつを愛してるしな」
「その割には随分扱いがひどいと思いますニャ」
「アンタは弱いって言いまくるんだもんよ。そりゃ、ひがんで扱い雑になりますわ」

 ゼットンは昔から見れば相当強くなったが、クレアの足下にも及ばない。そこらの盗賊などならば束になっても敵わないが、人を遥かに上回る魔物娘相手には分が悪い。
 ましてや、それらの頂点に立つ個体であるディーヴァから見れば、ますますその差は大きかった。
 かつてのクレアは夫が『自分より強いこと』を望んでいたが、最近はそんなことも言わなくなってしまった。
 理由は単純明快で、夫が強くなろうともその差が埋まりきらぬほど自分が強すぎたからである。結局のところ、ゼットンが強くなったとは言っても所詮は常人の範疇であり、勇者や武術の達人に善戦出来れば良い方といったところか。
 かなり小柄でありながら怪力で知られるオーガと互角に殴りあい、爪はダイヤモンドと同じ硬さで、飛行速度は最高でマッハ1.5。
 そんな者を相手にこの七年間数えきれぬほど組手を行なったが、当然ゼットンは一度も勝てなかった。そして、妻に勝てぬ事をゼットンは恥としており、一度でいいからどうにかクレアに勝ちたいと思っていたが叶う気配は無い。
 そしてルールは向こうが素手のみなのに対し、こちらは武器を始めあらゆる手段を取ることを許されているというものであったので、ゼットン青年は順調に恥を上塗りしていたのだった。

「俺はアイツを愛してるけど、闘う度に赤子をあしらうみたいな気持ちでやられてるらしくて物凄い屈辱に感じてたんだよね。だから、どうにか見返してやりたいと思ってたところなんだよ。
 そんなところへ、『ダクプラの丘にあるダンジョンの最奥には、持ち主に世界を支配出来るほどの力を与えるというアイテムが眠っている』、という情報を古本屋で立ち読みしてた古文書で見つけたから、このしみったれた我が故郷に戻ってきたんだろーが」

 この村の名は、その隠された財宝に由来するという。きっかけはともかく、自分の故郷にそのような物が隠されているのを知ったゼットンは何か運命のようなものを感じ、惹かれたのだった。

「まぁ、何が封印されているのかは知らんがね」
「多分伝説の剣とか鎧だと思いますニャ。封印されている物なんて大抵そういう物ですニャ」
「何が封印されてるにせよ、有効活用させて頂こう。とりあえずクレアに『参った』って言わせたいからさ。さて、そろそろ定時連絡が来る頃かな?」

 ゼットンがそう言いかけたところで、モバイルクリスタルに光が灯った。

『あーもしもし、こちら麗羅。目当ての財宝らしき物を発見。回収し次第、地上に戻るわ』

 連絡が入ると即座にゼットンはモバイルクリスタルに跳びつき、右耳に当てた。声の主は探索隊魔術担当の妖狐の麗羅である。

「おう、見つけたか! ブツは何だった?」
『フフッ、地上へ運んでからのお・た・の・し・み♪』
「え〜?」
『凄いのが手に入ったわ。苦労した甲斐があったってものよ』
「マジかよ!? そりゃ楽しみだ!」
『んじゃ、バイバ〜イ』

 麗羅の別れの挨拶と共に、モバイルクリスタルから光が消えた。

「御主人様、おめでとうございますニャ」
「麗羅の言う通りの代物なら、連敗記録をストップ出来るぜ!」

 ゼットン青年は期待を胸に秘めながら、探索隊の帰還を待ったのだった。










「おぉ皆の衆、目当てのブツは回収出来たか!」

 麗羅から連絡が入ってから二時間ほど経ったところで、探索隊の面々は社から出てきた。
 内部は何百年も人が入らなかったようで相当汚れていたらしく、四人は皆ホコリまみれであったが、行きがけの駄賃として高価な副葬品を大量に持ち出してきたようで、四人は薄汚れていながらもきらびやかな装飾品をいくつも身に着けていた。

「目当てのブツ以外にもこれほどの物があったとはな。
 一応あの文献以外にも下調べしたとはいえ、情報の出処的に正直不安があったんだが、これを見れば俄然信憑性を帯びてきたなぁ」
「アタシ等も正直ほとんど眉唾物の話だと思ってたんだけど、こんなモン見つけちゃあ噂は本当だっていう確信を持てそうだよ」

 ミレーユの首には黄金のネックレスがかけられており、さらに両手首にも非常に高価そうな白銀のブレスレットが嵌められていた。
 そしてそれを見ろとばかりに、ゼットンの頭を持って自分の豊満な胸に押し付けたのだった。

「うぇっ! ゲホッゲホッ!」

 このような真似をされれば普段ならそのまま性交に及ぶであろうが、ゼットンはこの時ミレーユに付着していたホコリを吸い込んでしまい、むせてしまったのでそれどころではなかった。

「おぇっ…と、ともかく持ち帰った物は駄賃代わりだ。自由に持って帰ってかまわない」
「なら、私はこれを頂こう」
「ん?」

 そう呟いてヘンリエッテがゼットンの前の地面に突き刺したのは、2mほどの柄の両端に50cmほどの穂先が付いた槍状の武器だった。
 柄も刃も全て表面をドス黒く仕上げられており、見た目は剛毅さと共に禍々しさも感じさせる。このような物を持ち帰りたがるのは、確かに戦士の種族であるデュラハンらしい。

「別にかまわんが、使いこなせそうか?」
「問題無い。デュラハンは細腕だが、こう見えて人間より腕力は上なのだぞ?」

 しかし、いくらヘンリエッテが優秀な戦士といっても、このような武器を扱えるかどうか、ゼットンは懐疑的であった。
 柄まで全てが総金属製なので相当重い代物であるのは間違い無く、その上に長さは3m近いので乱戦となった場合でも使い辛そうである。

「ダメよぉ〜、ヘンリエッテちゃん。それは取ってきたブツの付属品でしょ〜?」
「む…ダメか?」

 せっかく気に入っていたのに麗羅がそれを止めるので、ヘンリエッテは残念そうな顔をする。

「そう言えば、ゼットンには目当てのブツは見せてなかったわね。今の槍とブツはセットだと思うのよ」
「セット?」
「ま、見せた方が分かりやすいわよね」

 ミレーユは社から出てくる際に大きな荷物を肩に担いでいたが、それはバラけないように丈夫な麻布で何重にも巻かれていたため、正体は分からなかった。
 そして、重いので地面に降ろして放置していたそれに麗羅は近づくと丁寧に布を取り去った。

「良い鎧でしょう? ちょっと不気味なデザインだけどね」
「おぉ!」

 目当ての品を見て狂喜するゼットン。布の中から現れたのは、槍と同様に表面を余す所無くドス黒く染め上げられた鎧だった。

「何コレ!? なんか超強そうな力がありそう!!!!」
 
 形式はフルプレートアーマーで、見た目は脛当てと籠手に三本ずつ、肘と膝にはそれらよりさらに大きな鋲が取り付けられている。
 そして、肩から大きく迫り出した装甲には大きな楕円形で輪状の鋭いパーツが二つずつ取り付けられており、胸部と腹部にはそれぞれ胸筋と腹筋を模した加工がなされ、それに加えて精緻な装飾も施されている。
 不気味ながらも凝った造りであり、高価な代物だというのが分かる。

「でも、俺に使いこなせるかな…?」

 だが、強大な力を秘めた代物を見続ける内に次第に気圧されてしまったらしく、今更ながら青年の心中に疑念が沸く。
 誇張だろうが『世界を支配出来る』と文献には書いてあったのだから、別に勇者でもなんでもないゼットン青年には過ぎた物である可能性があり、使いこなせるかは分からない。

「まぁ、そう思うわよね。それは調べてみてから考えればいいわ」

 ゼットンは訝しむが、そこへモバイルクリスタルに再び輝きが灯ったのが目に入った。

「多分ピザ屋だな。エリカ、出てくれ」
「はい、御主人様――――もしもし。え、場所が分からない? ダクプラの丘にあるエンペラ村の先にある丘ですよ? え、何か目印は無いかって?」

 ゼットンの予想通り、相手は先程リリーがピザの出前を頼んだ業者らしい。
 どうやら配達担当のハーピーがこの場所を知らないという連絡らしく、エリカが説明してやるものの、まだ辿り着けない様子である。

「でも、これは“本物”だというのは間違いないわ。今からそれを見せてあげなさい、ヘンリエッテ」
「承知した」
「ああ、はい。今、目印になるものを見せますので」

 麗羅の指示を受けたヘンリエッテが黒槍の穂先を天に向けると、穂先へ真紅と黒、紫が混ざったような色の禍々しいエネルギーが収束。やがて天に向かって勢い良く放たれたのだった。

「!?」

 ゼットンが驚くのも束の間、槍から発射された破壊光線は甲高い音を鳴らしながら遥か空の彼方まで到達、雲を薙ぎ払い、そのまま霧散したのだった。

「……!?」

 ゼットンは目の前で起きた事象への理解が追いつかず、目を見開くばかりだった。

「これでピザ屋も迷わないでしょ」
「然り」
「アッハッハ、こんなの見せられちゃ迷いたくても迷えないねぇ!」
「はい、今の光の柱です。ピザを早くお願いします」

 ヘンリエッテは得意気な顔で水車の如く槍を振り回すと、再びゼットンの前に突き刺した。

「あっ」

 しかし、その振動で彼女はうっかり頭を落としてしまい、さらに丘の斜面をそのまま転がり落ちていったため、胴体が必死でそれを追いかけていった。

「大丈夫か?」
「ああ…」

 十分ほどして、疲れた顔でヘンリエッテが戻ってきた。だが、端正な顔はホコリに加えて泥汚れでさらに汚くなり、本人もそれを自覚しているのか、非常に惨めそうである。
 そして、気を遣ったエリカに無言でタオルを渡され、顔を拭いたのだが、その時に微かだがゼットンは彼女が嗚咽を漏らしているのに気づいたのだった。

「と、とにかく解っただろう? 魔法を大して使えぬ私でさえ、ただこの槍を持っただけでああいう事が出来る。
 そしてあの鎧は槍と同じ、いやそれ以上の力を秘めている。これがどういう事か解るな?」
「おう!」

 事を理解したゼットンは興奮と歓喜で打ち震えていた。そしてそれを見たリリー、エリカ、ミレーユ、麗羅、若干泣いていたヘンリエッテも皆安堵した表情となったのだった。

「ようやくゼットンもクレアに勝てるのか。無駄に長かったねぇ」
「反則技とはいえ、勝てるだけマシですニャ」
「ま、実力じゃないけど、反則でも勝てるだけマシよね」
「ディーヴァ相手だ。反則を使っても仕方あるまい」
「ピザが来ました。まずは食事してからにしましょう」
「…お前等きつくね?」

 女達から辛辣な言葉を浴びせられたゼットンはどこか納得のいかない様子だったが、面倒臭くなったので、それ以上考えないようにした。それよりも腹が減っているため、ゼットンの考えはそちらに傾き始めたのだった。
17/09/23 17:29更新 / フルメタル・ミサイル
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■作者メッセージ
備考:鎧と槍

 別名『エンペラの黒鎧』、『暗黒凶鎧装』。五百年前、そして魔王代替わりの五十年ほど前にこの地上の七割を統べたという史上最大最強の国があり、その国の初代皇帝が愛用していたという鎧と槍。
 皇帝は不世出の天才と言われるほどの魔法戦士であり、この長年愛用した鎧と槍にも皇帝と同質の力が宿るようになったという。材質はどちらも高強度チタン・ミスリル合金製、表面には極めて強力な魔法反射加工が施されている。
 装着者の身体能力を含めた戦闘技能を限界まで引き出し、装着者の基本属性に闇属性が加わる効果を持つ。また鎧自体が強大な闇の魔力を備えているため、そのバックアップにより本人の魔力が貧弱であろうと実力を超えた大技を連発する事が出来るが、当然使いすぎれば大きな代償を払う事になる。

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