読切小説
[TOP]
一角娘の一日
 早く来過ぎた?いえ、そんなことはないのです!これは・・・そう!カレカノの間で行われる「待った?」「ううん、今来たとこ」を実践するためなのです!
 他にも今日は二人で恥ずかしがりながら手を繋いでみたり、ラブロマンスな劇を見ながら殿方に寄り添ってみたり、レストランでお口についたソースを舌で舐めとったりするのです!
「・・・フィ・・、ィア・・・」
 そしてゆくゆくは・・・・・・キャー!

「フィアちゃーん?」
「ひゃあああ!」

 いきなり話し掛けられておもいっきり後ずさってしまいました。
 声の主は青髪が特徴的な爽やかな笑顔の男性。私の愛しの殿方。

「ディレルさまぁ。脅かさないでください〜」
「いやあ、脅かすつもりはなかったんだけどね」

 うう、つかみ失敗しちゃったのです・・・。妄想なんかに耽ってるんじゃなかったです。

「えと、じゃ、行きましょう。劇場のチケットとってあるんですよ!」

 この日、最高のデートを演出するため、色々とシミュレートしてきたので後々の予定もバッチリなのです!今日の私はアヌビスさんも真っ青なのです!

「ふふ、準備がいいんだね」

 お褒めの言葉あざーすなのです!ああ、この言葉と笑顔だけでもすっごく癒されるです・・・。そしてそれがいずれ私だけのモノに・・・。

「どうしたの?行くんじゃないの?」

 ハッ!また、妄想モードに入ってました!なんで私は妄想が爆発してしまうのでしょう。ゴーストさんじゃあるまいし。

「ご、ごめんなさい!じゃ、じゃあ早く行きましょう!ね!」

 リカバリー成功でしょうか。ディレル様は笑顔がデフォルトなので、感情の起伏が掴みづらいのです。
 心なしか苦笑いをになってるような気がするのは気のせいでしょうか・・・。





STEP1 手を繋いでみる

 タ、タイミングが分からないです・・・。あう、私のプランでは殿方が恐る恐る手を伸ばしてきたところをそっと掴みとって、ニコッと笑顔を向けることになっているのに!
 恥ずかしがる素振りがないのは何故ですかー!両手ズボンのポケットに入れっぱなのは何故ですかー!
 私のプランが崩れてしまうのです。こうなれば私から手を伸ばして・・・・・・無理です!恥ずかしいのです!顔真っ赤になっちゃうです!

「ん?手繋ぎたいの?じゃ、繋ごっか」

 そのような言葉のあと、私の手に触れる温もりと柔らかさ。
 ほ、惚れてしまうじゃないですかー!いや、もう惚れているんですが!
 なに躊躇いもせずに積極的に繋ぎにきてるんですかー!まだ心の準備は0%ですよー!

「あ、ごめん。嫌だったかな」

 もう少しムードってものを・・・、あれ?
 とか思っていたら、私の手は再び空気にさらされていたのです。ディレル様はというとなんか「手汗かいちゃうしねぇ」とか言っているのです。
 余計な気を利かせないでくださいよぉ〜。でも、ここでがっつくのは、乙女としてはしたないのです。ものすごっっっく残念ですけどねっ!!

STEP1 達成率50%?





STEP2 横から寄り添ってみる

「あの人達、幸せそうですね・・・」
「そうだね。好きあった者同士だからかな」
「ディレル様は、私のこと好きですか?」
「当たり前でしょ。そうじゃなかったらこんなことしないよ」
「ディレル様・・・」ぽてっ
「フィア・・・」



 よし!イメトレバッチリなのです!さあバッチコイです!

「チケットを拝見しまーす」
「はい!二人分!」
「はい確認・・・ん?」

 あれ?なんか係員の人の様子がおかしいのです。私の持って来たチケットを凝縮して指でその表面をなぞっているのです。すごく嫌な予感が・・・

「申し訳ありませんけど、このチケット使えませんね」
「ええ!なんでですか!」

 使えない!?どうゆうことなんですか!裏通りであったダンディなおじ様からレアモノだけど特別だって、売って貰ったのに!

「最近多いんですよ。偽装チケットを売る集団がいるらしくて。ここにうちの劇団の花のシンボルマークありますよね?本当は花びら6枚なんですけど、これは5枚しかないんですよ」

 奪うようにして係員の人からチケットを返してもらい、チケットのシンボルマークをよく見てみました。確かに花びらが5枚しかないのです。
 ということは・・・

「あの・・・じゃあ・・・」
「すいませんね、こっちも商売なもので。お引き取り願います」

 うわあああん。イメトレしてたのにー。前々から楽しみにしてたのにー。私のプランがもろ崩れなのです・・・。
 顔には出さないようにしていたつもりだったのですが、気持ちが沈んでいたのを察してくれたのでしょうか。ディレル様が心配そうな顔をしてこちらを覗き込んでいました。

「だ、大丈夫?」
「はい・・・。たまには、こんなこともありますよね・・・」

 うう・・・。私はなんでここぞというときにダメダメなんでしょう・・・。

「うん、じゃあ何処かに美味しい物でも食べに行こう。僕が奢るからさ」

 ディレル様のお気遣いが嬉しすぎるです。いつもなら悪いと言って断るのですが、この時は気持ちがすっかり沈んでいたもので、気がつけばお言葉に甘えていたのでした・・・。

STEP2 大失態により達成率0%





「劇場、残念だったね」
「うー、ごめんなさいです」

 ディレル様は気にしてないよと言ってくれました。まあ、むしろ期待してたのは私の方なんですけど。

「ディレル様、ああいうのは取り締まってくださらないんですか?」

 ディレル様はこの辺り一帯の平和を守る戦士団に所属しているのです。それならば街の治安の取り締まりもするはずです。

「う〜ん。やらないことはないだろうけど、優先順位は低いかもしれないな」
「あう、私のお財布の平和は守られなかったです・・・」

 高かったのに・・・。この日のために数日質素な暮らしをしたのに・・・。
 なんか思い出したら苛々してきたです・・・。

「ほら、そんな不機嫌な顔しないで。せっかくの美人が、台なしになっちゃうよ?」

 あ、甘い・・・甘すぎるです・・・。今食べてるデザートのチョコパフェよりも甘いです。

「そ、そんな、胡麻擂りしたってなにも出ないですよ・・・」
「僕はそうだと思ったことしか口に出さないよ?」

 なんですかこの乙女キラーな台詞の数々は?+爽やかな笑顔で威力3倍(フィア調べ)ですよ。これで落ちない女性がいたら会ってみたいですよ。

「な・・・、なんか恥ずかしいです・・・」
「ふふ、やっぱりフィアは可愛いね」

 今私はタコのように赤くなっていることでしょう。私、ディレル様に何回陥落したのでしょうか・・・。





「もうすっかり暗くなっちゃったね」
「そうですねぇ」

 私達は今、通りを二人並んで歩いています。暗くなったことで周辺の店は明かりを点けはじめ、美しいイルミネーションを演出しているのです。
 そういえば今は何処に向かっているのでしょう?

「ふう、着いたね」

 あれれ?なんか凄く見覚えがあるマンションですよ?っていうか私の家なんですが・・・。

「じゃ、またね。お休み取れたら、また遊びに行こうね」
「え・・・、は、はい」

 しこーてーし。
 おおお落ち着くのです。こういうときはそう、素数を数えるのです!

 1、2、3、5、7、11、13・・・・・・

「ってちがーうっ!」

 大声上げてからやっと我に還るのでした。あう、近所の人達ごめんなさいです・・・。

「何もやれてないじゃないですか!」

 色々計画を練ってたのに!結局グダグダのままデート終わっちゃったのです!そして、やろうと思ってたこと途中からやってすらいないじゃないですか!
 あーん!私の馬鹿ぁ!
10/02/22 14:06更新 / Joker!

■作者メッセージ
 ユニコーンがただの妄想っ娘になってしまったのは私の責任だ。

だ が 私 は 誤 ら な い

 誰かが私なんかよりよっぽど上手く可愛くユニコーンを書いてくれると信じているからだ。










 マジでごめんなさい調子乗りました。全て俺の文章力のなさが原因の見苦しさです。
 精進します。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33