ゴブリン達に出会って… BACK NEXT

第六話




「ハヤテ・サーティス・キリュウにユーレンス・アンバーシュタッドだな、今回はどんな目的で来た?」

「ただの観光ですよ。」

「そうか、ようこそ王都『テオ・デンタール』へ、くれぐれも騒ぎを起こさないようにな。」

ハヤテとユーレンスは通行状を見せながら巨大な門をくぐった。

二人は今、王都である城下町に来ている。

流石に王都にもなると建物は一級品で都市全体が輝いているようにも見えた。

物量もそこらへんの商業都市とは比べ物にならないほど多く、露店も多かったが、しっかりした店を持っている方が多かった。

「流石王都、広いなぁ…。」

「私はあんまり好きじゃないな…。」

「…そうだよね…まぁとりあえず宿探そう。」

「うん!」










「…高すぎるよ…。」

「うへ〜…流石王都ね…。」

二人はなるべく安い宿を探して都市の中を歩き回っていた。

というのも、ここの宿は極端に設備が整っていて高いか、極端に安くてボロいかの二つしかなく、所謂庶民の値段というのがなかった。

前の町とは比較的に近かったため、昼くらいには着けたことが幸いして、早く宿を探すことができたものの、この分では下手をしたら隙間風が入り込み、カサカサ蠢く黒い虫が徘徊するような宿に泊まらねばならなかった。

二人が彷徨って城まで続く大通りに出ると、どうも穏やかそうにない馬車がゆっくりと走っていた。

それは大部分が木でできていたが、棘の生えた金属で枠が作られ、窓のようなところにも鉄格子が挟まっていた。

「…奴隷…か?」

だが、ハヤテはそれよりもギリ…と歯を噛み締め、今にも飛び出しそうになっているユーレンスを抑えるのに必死だった。

「落ち着け!どうしたんだ!?」

声を極力小さくしてハヤテが言った。

「…あの中から魔力が漂ってきている…多分あれは魔物の護送馬車。」

「あれ?旅人さん知らないんすか?」

二人が小声で話していると横から人のよさそうな青年が声をかけた。

「今のは魔物をここから離れた遠くの拘置所に連れてくための馬車で、まぁ見せしめに近い形でああやって運んでいくんすよ。」

「…そうか…。」

ハヤテもユーレンスのように歯軋りした。

田舎に住んでいた頃はもとより、出稼ぎにきてからもここまでひどいことを見たことがないのだ。

それだけこの辺りが異常なのか、ただ単に彼が知らなかっただけなのかは分からないが、ハヤテはこの国を変えなければと思った。

そんなことを思っていると、青年が二人にしか聞こえないように耳打ちした。

「…少し話しませんか?」

「?」

「こっちっす。」

青年は二人を連れ、人垣を掻き分けて森へ向かった。










「ここっす。」

青年が案内したのは王都の中でも誰も近寄っていない鬱葱と茂った森だった。

近くの立て看板には『キケン!立ち入り禁止!』と赤い字で注意書きがされてあった。

「…。」

「別にふざけてるわけじゃないっすよ?ただその…あんたらみたいな旅人だからこそ案内できるっていうか…」

ユーレンスが軽蔑したように青年を見たが、彼は慣れているのか笑いながら話を続けた。

「まぁ詳しい話は中で。」

青年はそういうと歩き出し、呆然としていた二人はあわてて追いかけた。

三人が道を進むと小さな家が見え、青年が二人を中に入れた。

中は綺麗に掃除がされており、二階まであった。

「中々いいところですね…」

「ほんと…こんな森に住んでいるのなら汚いところなんじゃないかと心配したわ」

「いやぁ、いつも困ってる旅人さんを泊まらせるために綺麗にはしてるんすよ」

二人が荷物を置き、椅子に座ると、青年は二人に話し始めた。

「えっと、先に言っときますが、都内の宿屋には泊まれないと思いますよ」

「何故?」

そもそも値段が高すぎて泊まる気はなかったことは言わなかったが、ハヤテが聞き返した。

「あそこは大概魔物に対しての防御魔法が大量にあって、エントランスの中までは行けても客室に入ったら最後、防御魔法が発動して監獄に早変わりするっていう代物っす。」

ハヤテとユーレンスは内心、無理して泊まらなくてよかったと安堵していた。

だが、ハヤテは青年の言動に違和感を覚えた。

「なんでそんなことを話すんだ?まるで僕か彼女が魔物とでも言いたいような…」

そう、この青年は前提として魔物がいることを条件にしているのだ。

つまり、ユーレンスが魔物であることに気付いている節があるのだ。

すると青年は懐かしむように空を仰ぐと話し始めた。

「ここ2、3ヶ月前ですかね、『狐憑き』っていう魔物と一緒に生活していたことがあったんすよ、そいつ一番最初雨の降る夜に家の前で倒れていて仕方なく家に入れて、回復するまで家に住まわせておくことにしたんす。最初は綺麗な女だなぁ位の印象だったんすが、一緒に生活していくうちに交わる機会がありましてそれでヤっちゃったんすよ、そしたらボゥっと炎みたいな尻尾と耳が見えたもんでああ、こりゃ魔物だわと思ったんすよ。」

「…その彼女はどうしたの?」

ユーレンスが青年の話を遮って尋ねた。

種族は違えど同じ魔物として気になったのだろう。

「うまく国の外に逃がしました…いくらかのお金を渡して。多分うまくやってると思います。」

「…そう…。」

何処か複雑そうな面持ちでユーレンスは呟いた。

「あ、そうだ。お二人にお願いしたいことがあるんすけど…」

そういうなり青年は居間にあった机の引き出しから一通の手紙を取り出した。

「これを渡して欲しいんす。」

「…さっき言ってた狐憑きに?」

一瞬ハヤテは考え、青年に尋ねた。

「そうっす、俺は多分ここから出れないんで。もし会えたら渡して欲しいっす。」

「別にかまわないが…俺はその人の容姿を知らないぞ?」

「えっと金髪に黒いバンダナを巻いて、右頬に×印の深い傷がありました。あ、あと多分彼女はここから一番近い魔界にいると思います。」

「…魔界か…。」

「魔界ね…ってそうじゃなくて、会えるかどうか分からないのよ?」

「賭けっすよ、会えれば万々歳、会えなくても俺はわかりませんから」

その言葉を聞くと、二人とも是が非でも届けようと思った。

「…わかった。必ず届けるよ」

「よろしくお願いします。」

「ところでなんで早く出た方がいいの?」

ずっと気になっていたのだろう、ユーレンスが身を乗り出して聞いた。

「えっとですね、確か明日だったはずなんすけど…捕まった魔物達を見せしめに公開レイプされるんす。」

「…え?」

ユーレンスが言葉に詰まった。

ハヤテのほうも眉間にしわを寄せ怒気を孕んだ顔をしている。

「それを見せたくないから早く出た方がいいって言ったんす。」

「なるほど…」

理解はしたが、納得していないようでハヤテは俯いたまま手を握り締めていた。

「それだけひどいんすよ…特にここは。」

「…なんでなんだろうな…。」

ため息をつきながらハヤテは呟いた。

「皆知らない…もしくは知っていて見ないフリをしているか…」

苦虫を噛み潰したような表情をしたハヤテにユーレンスは心配するように見つめた。

その視線に気付いたハヤテはいつもの顔に戻ると彼女の頭をなでた。

その様子をまじまじと見ていた青年はこう切り出した。

「…そろそろ寝ますか?」

「…お借りします。」

「どうぞどうぞお好きなように、二階に客室ってプレートがかかってると思うんで、そこ使ってください。」

そういわれた後、ハヤテとユーレンスは客室へいった。

翌日、青年に感謝してそそくさと、逃げるように王都の門を潜り抜けた。

「次はどこに行くの?」

「次は…」

二人が話しながら森の横を通ると、突然暗がりから弾丸のようにハヤテにぶつかる者がいた。

ハヤテにぶつかり、そのまま馬乗りになってハヤテの胸倉を掴んだのは濃い茶色の髪の毛を短くボーイッシュに切って、黒い双角を持つゴブリンだった。

「オラー人間!なんか出せ!」

「何かってなんだよ!?」

「何かは何かだ!何でもいいから出せ!」

ハヤテは振りほどこうともがいたが、魔物の力にかなうはずもなくがっちりと抑えられてしまっていた。

「ちょっと!ハヤテ!?」

驚いたユーレンスだったがすぐに状況を把握するとゴブリンを引き剥がした。

「まったくもう…君は一体なんなんだ?」

「アタシ?アタシは…」

「あ、いたいた。もう、急に走り出すから何かとおm…げげっ!人間!?」

「…男の人と…ダンピール?」

「あれ〜?付いて来てなかったの?」

茂みの中から別のゴブリンが二人出てきた。

片方は肩ほどまであるセミロングで、もう一人は腰まで伸ばすに任せていた。

会話の内容からするに最初のゴブリンが後の二人から離れてハヤテに突撃していった様だった。

「君達は…ゴブリン…でいいのかな?」

ハヤテが聞くと、最初のゴブリンが答えた。

「そうだよ。アタシ、サヤ!」

「ヲオサです」

「…ヤイティ…」

「サヤにヲオサにヤイティだね…俺はハヤテ、よろしくね。それからサヤは強盗紛いのことを今後しないこと」

「は〜い」

子供を叱るようにしてハヤテはサヤに言った。

その後ろでユーレンスは腕を組んだまま頬を膨らませ怒っていた。

なんで親しげに話してるのよ?とその瞳はハヤテに訴えていたが彼は気付くそぶりすら見せなかった。

「そろそろいかない?」

業を煮やしたユーレンスがハヤテに言った。

「でも彼女達をこのまま放っては置けないよ」

だが、ハヤテはこの三人を連れて行くつもりのようだった。

「むぅ…(ハヤテとイチャイチャできなくなるのに…)」

ユーレンスは考えをめぐらせたが、結局はハヤテの提案に従う事にした。

「はぁ…連れて行くのはいいけど、ちゃんと面倒見なさいよ?」

「この子達もそこまでバカじゃないさ。三人は俺達についてくるかい?」

「いいんですか?」

「アタシは行く!」

「…いく…」

「じゃあ決まりだ、よろしくね」

「「「は〜い」」」

こうして新しい仲間が加わった。






===================================


《感想返信コーナー兼国周辺の解説》

どうも皆さんお久しぶりです

なかなかリアルが忙しくてこの前の読みきりを書くのにも大分時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。

今回はこの場で感想を返させていただきます


>{ネームレス}さん 13/05/23 03:00


ありがとうございます、この時はまだ色々と分からなかった時なのでご迷惑をおかけしました

また、ハーレムです、そうなっちゃったんです、できちゃってんですwww





>{(○▽○)〜〜アポ}さん 13/05/23 07:01




ありがとうございます、どの魔物娘達を出すかは秘密ですが、バラエティ豊かになるよう頑張ります


>名無しさん 13/06/12 20:29

ありがとうございます、しりとりは予想外の発想でした。

流石に無理ですwww

次は名前を書いていただけるとありがたいです






その他感想を書いてくださった方々ありがとうございます。

感想がたまったらこのような形で返信させていただきます




:解説



ハヤテ達のいる国は『ラグネント』という国で、一続きの山脈の谷の間にできた国である。

大まかな場所は現代のフランス辺りである。

形としてはひょうたんに似て、くびれのところがちょうど谷になっており、周りを特殊な防壁で張り巡らせ、国一個が一つの要塞と化している。

この防壁は魔物達の死人情報を誤認させる効果があり、しかも高く、並みの魔物では中に入ろうとも思わない。

だが、この誤認効果自体が強大な魔力を保有している魔物には効果がない。

そのほかにも魔力を壁の表面で拡散させ魔法攻撃が効かない。

ゆえに周辺の魔物達は一切近づこうとも、ましてや戦争を仕掛けようともしない。

『ラグネント』では十年ほど前に国王が病死し、まだ幼いレルフッド・ミーテン・ラグムス皇太子が国王であるが、実質その大臣であるアヴェルカン・シュットが国を運営しており、その頃から魔物に対する取締りが強化された。

だが、国のトップはやる気でも実行する末端がいい加減なため正規の取締ではなかなか成果を挙げられていない。

そのため「暗部」ともいうべき組織が存在し、実質上彼等が魔物を捕らえたり、その関係者を抹殺したりしている。





では次にその周囲をのことをお伝えしよう。

まずこの国自体が北よりにあり、西に向かって歩いて三日ほどのところに海がある。

山脈を挟んで北東には草原が広がっており、南東には砂漠が広がって、そこに明緑魔界国家『エルバルト』がある。

『エルバルト』はファラオが治める国家で、ここには火山があり、そこから取れる硫黄や明緑魔界で取れる様々な果物を輸出している。



大体こんな感じです。

次回は今まで出てきた町とその解説ですかね…

13/10/05 00:17 up
どうもです。

ゴブリン達の名前はちょっとしたなぞなぞです。元になった四文字熟語(二文字熟語二つ?)を当ててみてください。ヒントは「ずらし」です

まだ物語の序盤ですが、頑張っていきたいと思います!

どうか応援よろしくお願いします。
kieto
BACK NEXT