連載小説
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第二章:二人暮らしが始まる!
 両親が居なくなったとしても、学校は普段通りに行われる。けれど、両親を見送ったその日は流石に一切授業に集中することが出来なかった。
 これから先の不安というものももちろんあったが、しかしそれ以上に差し迫った問題として、今日の夕飯をどうしたらいいのかという問題があった。
 自慢ではないが、僕は料理など調理実習くらいでしかやったことがない。いきなり料理をしろと言われても、どうしていいのか分からないのだ。
 一人ならばコンビニ弁当で済ませてもいいのだが、留学に来ているエンナにそんなものを食べさせるのも申し訳ない。
「……今晩は、チャーハンか焼きそばでも作るかなぁ」
「え? 何の話?」
 独り言が、隣の犬飼にまで聞こえてしまっていた。
 怪訝な顔をされる前に、僕は慌てて取り繕う。
「いや、エンナにこっちの世界の代表的な中華料理を教えてほしいって言われてさ」
「焼きそばは中華じゃないと思うけど。あと、チャーハンも代表的とは言えないんじゃないかな」
「そうだね。もうちょっと調べてみるよ」
「それはともかく、もうすぐ当てられそうだよ。ここ、見ておいた方がいいよ」
 犬飼の言った通り、僕はそのあとすぐに指名された。当てられた場所も犬飼の予想通りだった。
 僕は犬飼に礼を言いながら、今晩は焼きそばにしようと心に決めた。


 焼きそば自体は肉と野菜を炒めておいて、麺を入れて粉末ソースと混ぜ合わせればそれで完成だ。
 けれど夕食が一品だけというのも少し寂しい。せめてサラダと汁物を加えよう。とメニューを増やしてゆくと、夕食の用意も結構大変だった。
「お風呂沸いたから、先もらっちゃうね」
「あぁ、わかった」
 僕は野菜を切ったり鍋の火加減を見ながら、風呂場に向かうエンナに生返事を返す。
 正直、料理にいっぱいいっぱいで他の事を気にしている余裕が無かった。
 そしてしばらくの格闘の末、何とか二人分の夕食は完成した。
「ふぅ……」
 台所の椅子に座ってぼーっと放心していると、浴室の扉が開く音が聞こえた。
 エンナも風呂から上がって、夕食にちょうどいいだろう。
 パタパタとスリッパで歩く音がして、風呂場からエンナが出てきた。僕は何の気なしにその姿を見て、掛けようとしていた言葉を思わず飲み込んだ。
 エンナはバスタオルしかその身に纏っていなかった。そのバスタオルも所々はだけて、胸元や太ももなどがこぼれ落ちそうになっていた。
 眩しいくらいに白い肌が目に焼き付く。柔らかそうなおっぱいが。肉付きのいい太ももが、嫌でも視界に入ってくる。そして一度視界に入ると、どうしても目を離せなくなってしまう。
「えん、な? その、格好は?」
「え、えへへ。着替え持って入るの忘れちゃって」
 エンナは顔を真っ赤にしてはにかむ。そして僕に背を向けて、慌てたように自室へと戻って行った。
 形のいいお尻が揺れて、思わず追いかけたくなってしまった。
 立ち上がりかけている自分に気が付き、僕は頭を振った。追いかけてどうするつもりなのだ、僕は。
 頭を冷やすべく、コップに水を汲んで一気に飲み干した。
「……けど」
 あの時のエンナの顔。恥ずかしがっていたというよりは、なんだか……。
「マサルー。着替えたから、ご飯にしよう!」
「あ、ああ。すぐ準備する」
 あの時のエンナの顔、まさに企みが成功したかのようないやらしい物に見えた気がしたのだが、……きっと考え過ぎだろう。
 僕はそう結論づけると、コップを片付けて料理を運ぶ準備に戻った。


 僕の作った料理は、正直言ってあまり美味しいと呼べるものでは無かったと思う。焼きそばの味付けは少し濃すぎたし、野菜も炒める時間が少なかったのか、ちょっと芯が残っているようだった。
 汁物は逆に味が薄すぎたし、サラダの盛り付けも切った野菜を並べただけのような粗末なものだった。
 それでも、エンナは笑顔で美味しいと言ってくれた。
 お世辞なんていいよと言ったけれど、エンナは僕が作ったものが不味いわけがないなどと、なんだかこっちが恥ずかしくなってしまうようなことを言ってくれた。
 宿題を広げた勉強机の前で、僕はぼぅっとエンナの事を考える。
 エンナは可愛い。テレビのアイドルやモデルとはまた違った魅力がある。彼女の魅力は、綺麗な外国人に感じるものに近い。通りを歩いているときに極たまに見かける、すごい美人の外国人。顔つきは日本人離れしているのだけど、思わず振り返ってしまう魅力的な顔立ちの女性。そんな感じだ。
 肉体的な発育も、クラスの女子達とは比べ物にならないくらいにスタイル抜群だ。洋服や下着で誤魔化しているわけではないという事は、さっきの事故でも確認済みだ。
 けど、エンナが可愛いのは外見ばかりではない。素直に僕の事を受け入れてくれるし、褒めてくれる。あんな女の子、初めてだ。
 いや、昔から犬飼も僕の話を親身に聞いてくれていたっけ。
 困っているときは僕にも相談してくれるし、僕が困っているときには助けてくれる。まぁ、犬飼が助けているのは僕だけではないけれど。
 ……僕とエンナが付き合ったとしたら、犬飼は何て言うだろう。いや、別に僕と犬飼はただの昔馴染みというだけで、そういう関係ではないのだけれど。
「マサル!」
 扉のノックの音が響いて、扉越しにエンナの声が飛び込んできた。
「いいよ、入って。どうしたの?」
 エンナは眉を八の字にして、教科書とノートを抱えて立っていた。なるほど、宿題が分からないんだろう。
「分からないところがあるの。……教えて?」
 上目使いでせがまれると、嫌とは言えなかった。
「僕もこれからやるところだから、一緒にやろうか」
「うん!」
 エンナは椅子を引っ張ってきて、僕の隣に腰かけた。
 エンナの匂いが、ふわりと広がる。シャンプーの匂いに交じって、それとは違う異国の、異世界の香りがした。
「ここが分からないの」
 柔らかい体を押し付けて質問してくる。その姿は無邪気な子供そのものだった。
 心臓が高鳴るのを自覚する。下半身もムズムズしてくる。けど、こんなエンナに劣情を抱くのはなんだか間違っている気がして、僕は努めて冷静に振舞った。
「こ、ここはそんなに難しい問題じゃないよね。前にも同じような問題解いていなかった?」
「うーん。ここの言葉の意味が分からなくって」
「あぁなるほど。これの意味はね……」
 問題集から顔を上げると、目の前にエンナの顔があった。
 鼻と鼻がくっつくくらいの至近距離。エンナはじっと僕の答えを待っていた。
 しっとりした唇。キスしたら、気持ちいいのかな……。けれど、僕は彼女を見続けている事にすら耐えられず、すぐに視線を問題集へと戻してしまった。
「逢瀬、というのは、男女が隠れて二人きりで会うことで、だからここの男の気持ちとしては……」
「ふぅん。そういう意味だったんだねぇ」
 エンナは楽しそうに、嬉しそうに尻尾を揺らして、僕の腰へと巻き付けてきた。
 気分がいいのか、ほっぺたも上気させて、上機嫌そうに笑っている。けど何だろう。その視線が、いつも以上に僕に絡みついてきている気がした。
「ねぇ、じゃあこっちは?」
 次の質問が来て、僕は再び問題集へと立ち戻る。その時の小さな違和感の正体は、結局宿題が終わってもよくわからなかった。


 宿題の後、僕は一人で風呂に入った。
 頭に思い浮かぶのはエンナの事ばかりだった。エンナの声、エンナの匂い、エンナの笑顔、エンナの……裸。
 釣鐘型の大きなおっぱい。むっちりとした白い太もも、そしてそこそこ大きいのに垂れることなくキュッとしたおしり。
 一人になって何の遠慮もいらなくなったことで、下半身のそれが痛いくらいに勃起してしまっていた。
 エンナの事が頭から離れなかった。自分でもこの気持ちをどうしていいかわからないまま、僕は自分の一物を握りしめた。
 ずっと我慢していた。でももうそれも限界だった。こうでもしなければ、頭がおかしくなってしまいそうだった。
 シャワーを流しながら、一物を扱き始める。
 たぶんばれないとは思うけれど、音で気づかれるのも嫌だった。
 刺激すればするほど、エンナへの気持ちが強くなっていくようだった。勝手に彼女のあられもない姿を妄想して、自分でもみっともないと思いつつ、けれど自分を止められなかった。
 やがて腰が震えて、先っちょから白濁液が発射された。
 気持ちはよかった。気分も少しは収まった。けれど行為の後はやっぱり虚しくなるのが自慰行為だった。
 僕は念入りに精液を洗い流してから、体を洗って風呂場から出た。


 翌朝、僕はエンナと顔を合わせるのが少し気まずかった。同居している、こんな純粋な子を「おかず」にしてしまったのだ。やっぱり罪悪感はあった。
 そんなことを知らないエンナは、いつも通りに変わらぬ笑顔だった。
 僕も努めていつも通りに振舞った。多分、いつも通りに出来ていたと思う。
 僕達二人は普通に朝食をとって、学校へと向かった。


 その日、エンナは授業が終わるなりすぐに教室から出て行ってしまった。なぜだろうかと不思議だったが、考えてみれば今日は彼女が夕食の当番なのだった。恐らく帰りに材料を買って帰るために、早めに学校を出たのだろう。
 いつも一緒に帰っているというわけでは無かったけれど、一人で帰るのも久しぶりな気がした。少し寂しさもあったものの、自宅で料理を作りながらエンナが待っていてくれると思うと、なんだか胸が弾んだ。
 寄り道をする気にもなれず、僕はまっすぐに家に帰ってしまった。
「ただいま」
 と声をかけるが、返事は帰ってこなかった。声どころか、物音さえも聞こえてこない。
 台所の方を覗いてみるが、そこにも誰も居ない。
 もしかしてエンナより先に帰ってきてしまったのだろうか。確かに何を作るか考えながら買い物をしていれば時間もかかるだろうが。
 着替えて、先に宿題でも済ませておくか。
 そう思って自室に向かおうとすると、微かに、何か物音が聞こえた。
 床がきしむような音と、衣擦れのような音。
 誰かが居る? まさか、泥棒?
 僕は息をひそめて音のする方へと近づいてゆく。音は、僕の部屋の方からしていた。
 自室に近づくにつれ、音は確かになっていった。部屋の前の廊下には、エンナのカバンと、彼女の制服が脱ぎ散らかされたように放られていた。
 何だ。何なんだこれは。
 心臓が冷たい手で掴まれたように縮み上がる。
 部屋にいるのは、エンナなのか? 一人で? それとも、誰かと? どうして制服がこんなに散らかっている?
 まさか誰かに力づくで連れ込まれて……。いやいや、エンナに限ってそんな事は無いはずだ。別に仲のいい男子も居ないようだったし、見ず知らずの男が無理やり連れ込もうとしても、魔物娘の膂力はそんなにやわじゃない。
 とにかく、部屋の中に入ろう。そうすれば原因もわかるはずだ。
 僕は自分の部屋のドアノブをつかむ。心臓がバクバク言って破裂しそうだった。自分の部屋に入るのにこんなに緊張したことは初めてだ。
「あぁ、ダメ。ダメェ……。そんなところ、あぁっ」
 艶っぽいエンナの声が聞こえる。気のせいか、くちゅくちゅという水音も聞こえている気がする。
 僕は静かにドアノブを回して、部屋の中を覗き込む。
 その光景を見た瞬間、僕は頭の中が真っ白になった。どうしていいか分からず、声を出すべきか迷い、結局掠れた声も出なかった。
 エンナは、僕のベッドの上に座っていた。膝を立て、足を広げたあられもない格好で。
 僕のトランクスを顔に押し当てて、顔を真っ赤に上気させて深呼吸しながら、自分の股間をなで回し続けていた。
「あぁ、マサルぅ。もっと、もっと激しくしてぇ」
 股間をまさぐっている指の動きが早くなってゆく。くちゅくちゅという音が大きくなってゆく。
「マサル。マサルぅ」
 そして彼女は激しく痙攣すると、くたりと脱力した。
 ……エンナが、オナニーしていた? 僕、で?
「そこにいるんでしょう。マサル」
 ぎくりと背筋が寒くなる。視線だけでエンナの方を見ると、彼女はしっかりと僕の方を見ていた。
 僕は震えながら部屋に入り、彼女に向かって頭を下げる。
「ごめん。覗く気は無かったんだ。その、ただ自分の部屋に入ろうとして」
「どうして謝るの? むしろ謝らなきゃいけないのは私の方だよね?」
 エンナは立ち上がると、ベッドから降りて近づいてくる。
 たわわな胸も、柔らかな茂みも一切隠さずに僕に近づくと、愛液でぬれた指で僕の頬に触れた。
 甘酸っぱい雌の匂いがした。なぜだか、たまらない。たまらない気持になる。
「ごめんねマサル。マサルの部屋に勝手に入って、マサルの匂いのしみついたベッドに身体を擦りつけたり、マサルのパンツにこびりついていたカウパーの匂いを嗅ぎながら、オナニーして一人で気持ち良くなって、ごめんね」
 エンナは、真っ赤な顔で唇を歪める。照れているのとは違う、色気づいた女が媚びるような、僕の反応を面白がっているような、そんな笑みだった。
「何で、そんなこと」
「したかったから。マサルだって、昨日お風呂場で抜いてたでしょ」
 ばれていた。僕は息が止まりそうになる。
「気づかないと思った? 私達はサキュバスの魔王様に連なる魔物娘なんだよ? 精液の匂いが分からないわけないじゃない。
 ねぇ、誰で抜いたの? 私? それとも犬飼ちゃん? まぁどっちでもいっか。でもさぁ、マサルも水臭いよ。言ってくれれば私が相手してあげたのに。一人でするより、ずっと気持ち良くさせてあげたのになぁ」
「ど、どうしたんだよエンナ。何で急にこんな」
 エンナはにたりと笑い、僕の肩を指先で撫でる。
「だって私は、とってもエッチで淫乱な、魔物娘なんだよ。気持ち良くなろうとするのは、当然でしょ?」
「当然って。だってこれまでは、全然そんな風には……。猫かぶってたのか。嘘ついていたのかよ」
 エンナは笑みを止めない。困ったように口元を歪ませながら、腰をくねらせる。
「私は猿だよ。猫なんて被らないよ。別に嘘ついてたわけじゃないし、わざと大人しくしていたわけじゃない。いつも自分の気持ちのまま行動していただけだよ。この世界の色んな事を勉強したい、マサルとも普通に仲良くなりたいって、思ったままにしてただけ」
「でも、こんな事しなかったじゃないか」
「まだそういう気分じゃなかったの。でも、さっき匂いに釣られて洗い物籠の中身を嗅いだら、もう駄目だった。お風呂場の匂いも凄かったし。あんな匂い嗅いだら発情しちゃうよ」
「そんな。ちゃんと洗い流して」
「洗い流したくらいじゃ、魔物娘の鼻はごまかせないんだよぉ。ねぇ、もういいよねマサル。そろそろ、私としよう?」
「な、何を」
「セックスに決まってるじゃん」
 尻尾が僕の腰に絡みつく。とっさに引きはがそうとしたが、細い割にその力は強く、僕の力ではどうすることも出来なかった。
 それどころか、バランスを崩されてベッドに仰向けに転がされてしまった。
 立ち上がろうとする間も無くすぐさまエンナが覆いかぶさってくる。両腕を押さえつけられ、動くことも出来なくなる。
「エンナ。やめろ、やめてくれ」
「どうして? だってマサルのここ、セックスしたいセックスしたいって言ってるじゃん」
 エンナは僕の両腕をまとめて、尻尾で縛り上げてしまう。
 そして自由になった両手で僕のベルトを外し、下着ごと一気にズボンを引き摺り下ろす。
 猛りに猛った僕の一物が、天井に向かって跳ね上がった。
 自分でもどうにもできなかった。だってこんなに可愛い女の子が、自分の名前を切なく呼びながら自慰にふけっている姿なんて見たら、興奮せずにはいられないじゃないか。
 エンナはうっとりとした表情で溜息を吐いた。
「嘘ついてるのはマサルだよね。セックスしたくなかったら、勃起なんてしないもんね。誰かとしたいけど出来ないからオナニーするんだもんね。いいよ、全部私にぶちまけて。マサルの性欲、私が全部受け止めてあげるから」
 エンナはズボンだけに飽き足らず、僕のシャツを脱がして、胸元を舐めてきた。
 初めての女の子の舌の感触は思っていた以上に柔らかくて、湿っていて、気持ち良くてどうしようもなかった。
「だ、駄目だよエンナ。こういう事はこんな簡単にしちゃ駄目だ。もっとちゃんと相手を選ばないと」
 エンナは急に表情を消した。そしてちょっと不機嫌そうな顔で、僕の胸をぴしゃりとたたく。
「誰にでもこんな事するって思ってるの?」
「そうじゃないけど。僕は、たまたまホームステイ先で一緒だったけど、僕以外にだって魅力的な男の人はいっぱい居るだろうし」
「何それ。私がろくに考えもせずに、マサルの事選んだって言うの?」
 エンナは再び、僕の胸をたたく。
「私これでもちゃんと選んだんだよ。最初教室に入ったときはむせ返るほどの雄の匂いにどうにかなりそうだったし、誰も彼もみんな発情したような匂いさせてて正直誰にしようか迷っちゃったくらいだったけど、けどその中でもマサルの匂いが一番気に入ったから、だからこんな風になっちゃったんだよ?」
 エンナはむっとしたまま、僕の胸をたたき続ける。
「マサルは優しくて勉強もよく教えてくれるし。助けてくれるし。だからこんなに好きになったのに……。それともマサルは、私が他の男に犯されればいいっていうの?」
 エンナが、他の男に?
「私、男が出来たら絶対部屋に連れ込むよ。自惚れじゃないけど、私達が誘えば大概の男は落とせるだろうし、落ちなくてもこうやって無理矢理連れてくることは出来るし。魔物娘が男を連れ込んだら何をするのかくらい、想像できるよね?
 マサルはそれでいいんだね? どこの誰とも知らない男に、私のおっぱい揉まれて、おまんこ触られて、おちんぽでひぃひぃ言わされて、それでいいんだね」
 想像しただけで寒気がした。こんなに綺麗な体を誰かに汚されるなんて、毎日見てきた可愛い子を、見知らぬ男に好き勝手にされるなんて。
「そんなの嫌だよね? 私も嫌。マサルが望むならどんなプレイだってするけど、寝取られとか相手を交換し合ってとか、そういうのだけは死んでも嫌。だって私の身体と心は、もうマサルだけのものだもん」
 エンナは僕の耳元に口を寄せて、囁く。
「ねぇ、欲しいよマサル。マサルのおちんぽほしい。もう我慢出来ないよ」
 その声は、震えていた。恐怖や不安ではない。あまりに興奮しすぎて、身体が震えているのだ。
「これ以上駄目だって言われたら、私頭がおかしくなって街中でマサルの名前絶叫しながらオナニーしちゃいそうだよぉ」
「エンナ」
「オナホ扱いだっていいの。とにかくマサルとしたいの。ほかの女の子、犬飼ちゃんの事考えながら抱いてくれたって構わないから、ねぇマサル」
「なんで、そんなに」
「だってマサルの事が大好きなんだもん。マサルの気持ちは私にはどうにも出来ないけど、でも私はマサルに触りたくてしょうがないんだもん。マサルと裸で抱き合って、交尾したいんだもん。
 ……それともマサルは、私みたいな女とはしたくない?」
 エンナはその茶色い瞳に、僕だけを映しながら不安そうに問いかける。
 こんなに興奮して、無理やり押し倒しておきながらも、それでも最後の一線だけは同意を得てからにしたいんだ。
 獣人系の魔物娘は盛りが付くと途端に狂暴になるという話も聞いたことがある。有無を言わさず目の前の雄に襲い掛かり、自分の気が済むまで犯し続けるのだと。
 それを考えれば、こうやって僕の気持ちを待ってくれているのも、カク猿という種族の中でもエンナだからこそなのかもしれない。
 僕は何も言わず、ただ小さく頷いた。
 エンナは今にも泣きだしそうなくらいの、救われた表情になる。そしてその顔が近づいてきて、とうとう唇同士が触れ合った。
 背中をさざ波のように官能が走り抜けてゆく。
 けれど、初めての口づけはそんな程度では収まらなかった。
 触れ合ったそれはすぐに重なり合い、押し付け合い、唇同士をついばみ合った。軽く触れ合っただけでも気持ち良かったのに、いきなり敏感な部分をめちゃくちゃにされて、僕は気持ちよさで頭が染め上げられてしまう。
「んちゅ。好きな人とのキス、やっぱり気持ちいい」
 エンナは僕の両腕の拘束を解いて、僕の両手を自分の両乳房へと導いた。
「ねぇ、おっぱい触って?」
 信じられないほど柔らかい感触が両手を包み込む。その先端にあるコリコリした感触も、気が変になりそうなほどに興奮した。
「気持ちいい? ふふ、自分でも形綺麗かなって、自慢なんだよ? ……このおっぱいがこれから先、マサルだけのものなんだよ? 好きにしていいんだよ?」
 その言葉に甘えるように、僕は彼女の胸を欲望のままに揉みしだいた。エンナのおっぱいは指の動きに合わせて艶めかしく形を変える。
 夢みたいな光景だった。アダルトビデオとかでは見た事があったけれど、どんな女優より綺麗なおっぱいを、自分のこの手で弄んでいると思うと、それだけでもう恍惚としてしまう。
 エンナは眉を寄せながら小さく声を上げたが、嫌がったりしなかった。
「ねぇ。私ももう我慢出来ないから、入れちゃうね」
 エンナは腰を上げて、僕の男根の上に位置を合わせる。
 指で触られただけで、もういってしまいそうだった。経験したことが無いくらいに硬く勃ち上がっていて、自分でも感覚が分からないくらいだった。いつ破裂してもおかしくなかった。
 愛液で濡れた柔らかな肉の花びらに触れて、反射的にびくりとそれが跳ねる。
 エンナは暴れようとするそれを柔らかく握りしめて、自分の入口へと押し当てた。
「い、いくよ」
 エンナは少しずつ腰を下ろしてゆく。
 ずぶずぶと自分のものが彼女の中に飲み込まれてゆくのが見える。亀頭が、温かく濡れた粘膜に包み込まれる。その感触が少しずつ竿の部分にも広がってゆく。
 エンナは頬を染めて、両目を閉じて感触を味わっているようだった。ペニスが沈み込んでゆけばゆくほどその頬の赤味はさらに強まり、眉も寄せられてゆく。けれどその表情は苦痛とは正反対の、喜びの表情だった。
 自分と一つになって肌を染め、歓喜に震える少女の姿を目の当たりにして、僕は自分でも抑えられない衝動に押し流された。
 視界が狭まり、体がかぁっと一気に熱くなって、破裂した。
「あ、えっ。や、んんっ」
 気が付いたときにはもう出てしまっていた。入れただけだったのに、まだろくに動いてもいなかったのに、射精してしまった。
 エンナも少し驚いていたようだった。
 そのあと体をくねらせて、何かを堪えるような表情をしていた。呼吸も早くなって、少し汗もかいているみたいだった。……でも、射精されただけで絶頂を迎えるわけがない。経験がなくたって、それくらい僕にだって分かる。きっと、早くいってしまった僕に気を使って、演技をしてくれたのだ。
 射精は思ったよりも長く続いた。そのたびに腰が攣りそうになるほどの快楽が駆け抜けていったけれど、その半面で僕は泣きたい気持ちだった。オナニーした時でさえこんな切ない気持ちになったことは無かった。
 やがて放精が収まると、エンナも落ち着きを取り戻したようだった。
 にっこり笑って僕を覗き込んできたけれど、僕は彼女の顔をまともに見られなかった。
「気持ち良かったよ。いっぱい出たね、マサル」
「ごめんエンナ。僕……」
「どうして謝るの?」
 エンナは不思議そうな顔で僕を見る。馬鹿にされているようで、なんだか逆に少し腹が立ってしまう。
「だって、まだエンナに何もしてあげられてないのに、入れただけですぐに射精しちゃって……。情けないよ。こんなに早かったら、エンナだって幻滅だろ?」
「どうして私が幻滅するの? だってマサルは、私の身体が気持ち良かったから射精したんでしょ? それだけでも私はとっても嬉しいよ」
 エンナは結合部からこぼれ始めた精液を拭い取りながら、照れたように笑う。
「それに、いっちゃったのは私も一緒だしね。魔物娘のあそこは人間のと違って、精液の味や匂いを感じる事も出来るの。マサルの精液は匂いも味もすごく濃くて、こってりしてまろやかで、ねばねばこびりついてきて、思っていた以上に美味しい精液だった。射精されただけでいっちゃったくらいだもん。
 私達、きっと相性がいいんだと思うよ」
「気を使わなくていいよ」
 エンナはちょっと怒った顔で、僕の手を取り自分の肌へと触れさせた。
「嘘じゃない。演技じゃ、こんなに汗なんてかけないよ。……もっと私を信じてよ」
 確かに、肌を染めたり汗をかいたりと言うのは、演技で出来る事でもないかもしれない。
 それに、そもそも肌を重ね合った相手にこんな態度を取ることも無いだろう。僕はただ、自分の不甲斐なさの八つ当たりをしているだけだ。
「……ごめんエンナ。僕、自分がショックで」
「気にしなくていいよ。……って言っても、男の人は気にするのかな。
 でもさマサル、私は男の人のプライドとかそこまでよく分からないけど、こんなに早く、いっぱい精液出たってことは、マサルもそれだけ気持ち良かったんでしょ。気持ち良ければ、それでいいじゃん。
 それに早かったってことは、それだけいっぱいエッチ出来るってことじゃない。ふふ、今日一晩で何回出来るかなぁ」
「……え」
 エンナは楽しそうに笑うが、僕は困惑を隠せなかった。彼女はそんな僕に口づけして、妖艶に笑った。
「まさかこれ一回で終わるなんて思ってないよね」
「でも、男ってのは一回するとしばらくは」
「大丈夫。元気になるおまじないしてあげる」
 エンナは再び口づけしてくる。今度は舌を絡める深い口づけだった。ねっとり絡み合った舌を伝って、とろりとした甘い唾液が注ぎ込まれてくる。
 僕は反射的に喉を鳴らしてそれを嚥下する。
 身体がかぁっと体が熱くなってくる。身体の中に入ったエンナの体液が、燃え上がったかのようだ。
「発情した魔物娘の、ありったけの魔力を込めた特濃の唾液だよ。これで今日一晩くらいだったら、疲れ知らずでやり続けられる。……ううん、ちょっと違うかな」
 エンナは悪戯っぽく笑って、僕の胸の上にしなだれかかってくる。
「これで今日一晩中私の中に射精し続けないと頭がおかしくなっちゃうくらい、興奮しちゃうよ。発情した猿みたいに、ね」
 体の芯から隅々にまで、熱が行き渡ってゆく。それでもさらに熱は高まり続ける。行き場を失った熱は、下半身に集まって膨張し始める。身体に留めきれない熱を排出しようと、うずうずし始める。
 エンナが愛しい。欲しい。自分のものにしたくてたまらない。
 僕はつながったままの腰を突き上げながら、彼女の身体を抱きしめた。
 色っぽい悲鳴が、妙に心地よかった。もっと聞きたかった。エンナを鳴かせたかった。喘ぎ声をずっと聞いていたかった。この雌を孕ませたくてたまらなかった。
 そして僕は、一匹の獣に堕ちた。


 エンナを抱きしめたまま、横にぐるりと回って、今度は僕が上になる。キスをしながら、エンナの背中をまさぐる。
 すべすべの肌は少し汗ばんで、指に吸い付いてくるようだった。
 そのまま細いウエストへ、腰へと撫で下ろしてゆき、もっちりとしたお尻をつかむ。
 乳房に負けないくらいに柔らかな感触をこねくり回しながら、僕は繋がったままの状態でさらに自分自身をエンナの中へと押し入れる。
「んーっ んーっ!」
 唇をふさがれたままのエンナがくぐもった嬌声を上げる。
 彼女の手が、僕の背をわしづかむ。爪を立てる。少し痛い。けれどそれすらも気持ちいい。
 腰を引くと、エンナは切なそうな声を上げた。淫らな秘肉も、嫌がるように強く絡みついてくる。
 せがまれるまま腰を突けば、エンナは蕩けた表情で鳴いた。肉壺も喜ぶように収縮して、たっぷりと蜜を分泌し始めた。
 残った精液と溢れる愛液で、もうつながってる部分はぐちゅぐちゅのねちょねちょだった。腰を動かすたびに音が卑猥に響いて、他の何も考えられなくなってゆく。
 獣毛に覆われた腕が僕にしがみつき、脚が僕の腰をがっちりとホールドする。彼女の尻尾が、二人をまとめて繋ぎ止める。
「んっ。出して、出して、なかにいっぱい出してぇ」
 エンナの瞳は、もう獣欲で濁り切っていた。今までの可愛らしいエンナはもうどこにもいない。ただひたすら交尾を、いや、精液を求め続ける魔物娘が居るだけだった。
 その瞳に獣になった僕だけを映して自らも腰を振る、一匹の雌猿が居るだけだった。
 ……僕の女だ。他の誰にも渡さない。エンナを孕ませるのは、僕だ。
「あああっ。出るっ」
 腰の奥で、たぎった熱が弾ける。尿道を押し広げて、塊のような精液が吐き出されてゆく。
 僕は精一杯、腰をエンナの奥へと押し付ける。エンナのお尻を思い切り掴んで、腰と腰とをぶつけ合う。
 脈動のたび電流のような感覚が腰から膝へ、背中へ、全身へと広がり、がくがくと腰が震えるのを止められない。それでも僕は幾度も腰をエンナへと押し付けた。
 エンナは口を大きく開けて、空気を求めて喘ぐように息を荒げる。胸も大きく前後していて、僕に押し当てられたおっぱいもそのたび強く押し付けられる。
 息も苦しくなるくらいに刺激が強かったのだろう。けれどもその瞳は昏い歓喜の色で染まっていた。
 射精している間も、エンナの中の蠕動は止まらなかった。よりたくさんの子種をせがむように、射精している中でも裏筋や亀頭を撫で、締め付けてきた。
 そして射精が終わってもなお、あさましくも尿道に残った残りかすさえも欲しがるように、強く強く扱くように締め上げてきた。
 これだけ出したら、もう空っぽになるはずだった。
 何度も連続でオナニー出来ないように、セックスだって休憩しなければ出来ない。そのはずだ。
 なのに僕は、まだ全然満足できていなかった。
 オナニーしたくなった時の、あの感覚に似ていた。今日は二度でも三度でも射精できそうだと感じるように、性欲が抑えられなかった。
「ぁ、やだ。抜いちゃやだ」
 駄々をこねるエンナを無視して、僕はペニスを引き抜く。
 ごぽりと音を立てて、栓が抜かれたエンナの雌穴から白濁が漏れ出す。
 エンナは慌てたように穴に指を入れて蓋をした。そしてそれだけでなく、くちゅくちゅと中をかき回し始めた。
「あはっ。マサルのせーえきで、わたしのなかこんなにドロドロになっちゃった」
 無邪気に遊ぶ子供のような言葉と声だったが、その仕草は娼婦もかくやというほど猥褻で、その顔に浮かべているのも獣欲の覚めきらない好色な笑みだった。
 孕ませたい。この女に、僕の子を孕ませたくてたまらない!
「マサルがしてくれないなら。一人でしようかなぁ……。冷蔵庫に、確かバナナもあったし。本当はマサルの肉バナナとバナナミルクがいいけど」
「誰がもうやめるって言ったんだよ」
 エンナは、笑みを深める。待ってましたとばかりに八重歯を見せて笑う。
「まだしたいんだ。マサル。二回も射精しといて」
「そんなの関係ない。今度は立って後ろからしたい」
 エンナの声も、僕の声も震えていた。
「ほら、立って、こっちにお尻を向けろ」
 強く命令したつもりだったが、エンナのにやにやは収まらなかった。しかし反抗するつもりは無いらしく、エンナは素直に僕に背を向けた。
「あはっ。い、いきすぎて、ひざがくがくしちゃってる。立てるかなぁ」
 立ち上がろうとするエンナの足が、生まれたての小鹿みたいに震えていた。今にも倒れてしまいそうだった。
 僕は彼女を支えるべく立ち上がろうとしたが、僕の膝もまたエンナと同じように笑ってしまってどうしようもなかった。
 夢中になって性交に興じていたけれど、経験した事のないほどの快楽を繰り返したことで、体にもそれ相応の反応が出てしまっているみたいだ。
「えへへ、私達、一緒だね。気持ち良すぎて、変になっちゃってる」
 それでもエンナは壁に手をついて、僕に向かって紅潮したお尻を向けてくれた。
 僕も、こんなことで中断するのは嫌だった。
 震える足でエンナの後ろに回り込み、お尻の割れ目に、自分の反り返ったままのそれを前後させる。
 すでに二人分の体液でべとべとのそれは、何もしなくても割れ目の間をなめらかに滑った。
「じ、じらさないでよぉ。それとも、お尻でしたいのぉ?」
「そういうのもあるんだな。いつかはしてみたい。けど、今はこっち、だっ」
 エンナの入口に狙いを定め、今度は一気に奥まで突き上げる。
 エンナの背が弓なりに反って、その体がびくびくと痙攣した。脚が震えて、白い太ももに透明な粘液が滴った。
 僕は覆いかぶさるように、肌を重ねる。
 片方の手を壁に突いているエンナの手に重ねて、もう片方の手で豊満な乳房をまさぐる。
 指が食い込むくらいに強く握ってみては、乳しぼりするかのように扱いてやる。それからちょっと大きめの乳首を摘み上げる。エンナは可愛い声で喘いだ。
 腰を動かすのも忘れない。粘つく水音をかき鳴らしながら、ひたすら自分自身をエンナの一番奥に擦りつけ、そしてえぐる。
「ダメ……立ってらんない」
 崩れ落ちそうになる女の腰を支える。エンナも尻尾で僕の身体にしがみついてきたけれど、膝はもう完全に砕けていて、僕の力では支えることは出来なかった。
 仕方ないので、四つん這いの彼女を後ろから抱きしめながらすることにした。
 体位による興奮度は少し減ったものの、これはこれで両手で乳房の感触を楽しめて気持ち良かった。
「まさ、る。おっぱい、好きだね」
「おしりも、好きだよ。エンナはどこも綺麗だね」
 僕はエンナの襟足に顔を埋め、深呼吸しながらつぶやく。
「それにいい匂いだ。エンナの汗のにおい。甘酸っぱくて癖になる」
 触れ合っている肌が少し熱くなった気がした。乳首も、更に硬く勃ち上がる。触っているおっぱい越しの鼓動も、少し大きくなっただろうか。
「マサルって、思ってたよりずっと、情熱的でエッチだったんだね」
「エンナだって人の事言えないだろ。それとも、スケベな僕は嫌い?」
「ううん。むしろ今のマサルの方がすきぃ」
 エンナの方からもお尻を押し付けてくる。むっちりした弾力が、腰にぶつかって形を変える。
 僕はエンナの耳を甘噛みし、耳の穴に舌を這わせる。
 膣が収縮し始める。エンナも、もうすぐ限界だ。
「ねぇ、キス、キスしたいよぉ」
 せがまれるまま、僕は振り向いたエンナの顔に唇を押し付ける。
 舌を絡める。エンナの唾液は、とても甘い。
 意識が遠くなる。快感だけが強くなってゆく。
 全身の毛穴にぞくっとした感触が広がって、ペニスが痛いくらいに硬く大きく勃起しているのに、蕩けて弾けるような感覚にとらわれる。
 そして僕は、三度決壊した。
 白い濁流が体の芯から溢れ出して、エンナの子宮を埋め尽くすべく男根の先端から迸り続ける。
 僕達の声は、もう獣同然だった。
 恍惚の声を上げながら、僕達は獣欲の渦へと身を任せた。
15/09/01 00:01更新 / 玉虫色
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■作者メッセージ
そんな感じの二章でございました。

あとがき的な事を書きますと、実はこのお話、PCが変わってすぐの色々な物を発散するように書いた一面もありまして……。
いやまぁ、いつも通りと言えばいつも通りなのですが。
使うワープロソフトが変わったりキーボードの感覚が変わると書いているときの感覚も違ってくるなぁと思ったりもしました。

今後は、多分だらだらとエロい話が続くかと思います。そんな話ですが、続きも読んでいただけると嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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