連載小説
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異世界からの使者(質量)
異界の扉



異世界からの使者(質量)



量子の海を抜け、異世界から来たと言う人工知能リタとの奇妙な関係がスタートした。

自らをオートマンと言うロボットのプログラムだと称する彼女は、ボディ(質量)を捨ててデータと魔力と言うエネルギー体になってまでこの世界に来たらしい。そのはずだ。質量のある物質は通常、空間と時空を超えられないのだ。

彼女がこの世界に来た理由は、この世界とリタが元いた世界を繋ぐゲートを作る事にある。

偶然と偶然が奇跡的に重なり、紆余曲折を経て、現在リタは私が秋葉原の闇市もかくやと言う無線市場で購入した高性能コンピュータの中にいる。その際に私が理論を構築したコンピュータ・ウィルスを取り込んでいる。

そのせいで彼女は機械が本来持ち得ない"知識欲"を手に入れた。

私とリタは話し合って、結果、私はリタの異界の門政策に協力する事となった。

私への協力の見返りは、リタ自身だ。リタは現在、我々の科学では作り得ない高度な知能を有している。まるで人間のようだ。研究者として未知のテクノロジーの塊りである彼女を欲しがらない者はいないだろう。

そうして今は8月の終わり、日暮らしの鳴く頃。リタと出会ってから早1ヶ月が経とうとしていた。

リタと生活していく中で判明した事が幾つかある。

まず、当初リタが画面の向こうの人物。つまりハッカーでは無いかと疑っていたが、次第に彼女がハッカーであると言う可能性は消えていった。彼女自身を構成する思考プログラムの一部を私に見せてくれたのだ。

そこには、私の知り得ない、少なくとも見た事の無い言語でファンタジーやオカルト等で見る魔法陣の様にプログラムが構成されていた。

リタはこれをルーン文字と読んだ。本当に魔法で構築されているらしい。

リタが言うには魔法で制御されているはいるが『リタ』と言う人格を構成する基本的な思考理論は私が構想したものと同じらしい。

リタは従属的ではあるが、確かに自己意識……つまり、自我と人格を有している。つまりは、知的存在として人間と何ら変わりないのだ。

それから……彼女が元いた世界について。

この世界と同じ数学を理解し、同じ物理学を有している。言語も、文化も、文明も、科学も、ありとあらゆるものが似ていた。

例えば言語。英語とブリタニア語と言う言葉はほぼ同じ言語だ。他にも、ドイツ語とクラーヴェ語、フランス語とファラン語、ロシア語とシャーロ語、日本語とジパング語……

大陸の形も多少の差異はあるが、ほぼ同じだ。

純粋な科学技術はこの世界の方が発達している。

そう。"純粋な科学技術" は……だ。

あの世界には魔法や錬金術がある。科学が魔法を取り込み、魔法や錬金術が科学を取り込み進化している。主な例が魔石燃料と言うエネルギーを使った魔導蒸気機関と言う技術らしい。

科学で出来ない事は魔法で、魔法で出来ない事は科学で実現する。合理的である。故に、異世界は我々以上のテクノロジーを有していると言えるだろう。

現に今のリタ自身が質量の無いデータとはいえ、真空かつ超電磁空間であると言われている量子の海を越えられたのは魔力や魔法があったからだと推測できる。

それから宗教……。主神教と言う宗教はこの世界の世界宗教と非常に似ている。リタが持っていた聖典のデータを一部読ませてもらったが、書かれている事もまるっきり同じだ。違うのは登場人物の固有名詞くらいだ。

そして、歴史……。この世界と同じような時代に、同じような人物が現れ、同じような戦争をしている。"人間の歴史"だけを見るとこの世界同様に血に塗れた歴史だ。

しかし、結果は少しマシな結果になっている。

この世界の人間の歴史からは考えられない明らかなイレギュラーだ。

例えば、この同じような状況下・原因で起きた戦争後に、此方の世界で起きた虐殺があちらの世界では起こらなかったり、民主国家や特権政治の廃止が小規模ながらも100年ほど早く試みられたり等々……



イレギュラーの原因は魔物娘と呼ばれる存在だ。



リタのいた世界には人間の他に魔物娘と呼ばれる知的生命体が存在するらしい。人間を愛し、平和を望む異形の存在。女性しか存在しないが故に、人間の男性を強く求める。

サキュバス、アルラウネ、ラミアにヴァンパイア……想像上の生き物達だ。

リタが元いた世界では飢餓や疫病……そして大きな戦争で人間の人口が激減。戦争などが終わっても減少を続け、遂に男性の出生率に対して魔物娘と人間の女性が大きくそれを上回ってしまい、人口減少に歯止めが効かず、緩やかに滅びの道を歩んでいると言う。

リタをこの世界に送り込んだ連中は人口現象と言う危機的状況を打破すべく、この世界との平和的外交を望んでいるらしい。






『お届け物です。ハンコを……はい。お荷物は部屋の中ですね?』

ギィ……

ドカ……ドサッ……

『ありがとうございました〜。』

ブロロロローーー…………

バタン……

『ふぅ…………。』

『ご主人様。預金が減っておりましたが、今度は何をお買い求められたのでございますか?』

機械的な音声が不自然な抑揚で疑問を投げかけて来た。

『……業務用の冷蔵庫と鉛板と真空管スピーカーと電子レンジだ。』

全て秋葉原の闇市(?)で購入した。

『……左様でございますか。』

『予算は大丈夫な筈だ。心配か?』

『……ご心配無く。予算は"まだ"十分でございます。』

『では問題ない。』

異界の門の製作を始めた私達が真っ先に始めたのは資金繰りである。恐らく、現時点で世界で最も高性能なコンピュータ・プログラム(ウィルス)であるリタの裁量で外貨や株式の投棄で資金を稼いだのだ。

その金で異界の門を作る為に必要な機材を買っているのだ。……もうかなり金を使っている。

『今回はなぜそのような物をご購入されたのでしょうか?』

また、WHY(なぜ?)……か。

『もちろん、君に協力する為だ。異界の門を作るのが君の役目だろ?装置を一から全て作るより、使える物を改造した方がよほど効率的だ。冷蔵庫はステンレス製で大きさも手頃。鉛板は内壁に使用する。電子レンジと真空管スピーカーはバラしてスタビライザーやエネルギー収束機として使う。法人化していない個人的な研究である以上、必要だが買えない物もある。……少しは信用してはくれないかね?私はAIの研究にのめり込んではいたが、元々は工学が専門でね。博士の称号もある。』

『詳しく伺っても宜しいでしょうか?』

知識欲……か。

『……君の中にあった異界の門の設計データを見る限り、こちら側からのゲートを作るには、まず量子の海に行く為に空間を歪めるだけの電磁場が必要で、環境を作り出すには " 現時点では " 1.21ジグワットもの電力が必要になる。質問……と言うよりは確認だが、リタ……君は魔力エネルギーによりむこうの世界と繋がっているんだな?』

『左様でございます。』

『ならば話は早い。……目的地の座標が判明している以上、量子の海に入れるだけのエネルギーを生み出し続ける箱を作ってやりさえすれば、君らの望むゲートは完成する。』

なぜなら、今現在、空間の歪みを開いた後に量子の海を制御する為に必要な、この世界にある唯一の量子コンピュータは……リタ……君自身なのだから。

君を送り込んだ連中は当然それ折り込み済みであり、同時に君と君の協力者(現在は私)にこちらの世界の実質的な橋を作る事を期待しているのだろう。いや、橋と言うよりはトンネルに近い。

『君の知識欲を満たす為にも説明しよう。……今現時点での大きな問題は、そのエネルギーをどうするかだ。そこで解決策がある。私の理解が正しければ、魔力エネルギーとはその性質が原子力エネルギーに非常に良く似ていて、量子力学においてはタキオン粒子等の亜粒子に性質がよく似ている。』

タキオン粒子は理論でしかその存在は証明されていないが、この実験で証明されるだろう。

あちらの世界においてゲートや召喚術などは亜粒子としての魔力エネルギーをなんらかの形で利用したシステムだと推察できる。リタの持ちこんだあちらの世界の資料を読んだ時に、ピンと来たのだ。何故魔力と言う得体の知れないエネルギーでそんな事を出来るかは謎だった。……が、この仮説で論理的な説明が付く。なら、その原理を利用出来るはずだ。

『君の魔力エネルギーを1.21ジグワットもの電流と共に増幅装置に流す。するとサーキット状に繋いだ3つの電導菅を魔力エネルギーと超高圧電流が流れる。これはショート回路にするので回路内の全エネルギーはその速度を上昇させながら駆け巡り、やがて空間を歪める。と同時に、君の中にある量子の海の世界座標情報を基に、向こうの世界とこちらの世界の入り口を制御する。空間を歪めるだけのエネルギー反応が起こる頃には、サーキット内の電流と魔力エネルギーは光速を超え、タキオン粒子的性質を示すはずだ。この擬似タキオン粒子を仮に魔力亜粒子と呼ぼう。アインシュタイン博士の仮説が正しければ、亜粒子などの物質が光速を超えると、時間に逆行する性質を示す。その魔力亜粒子を利用し、量子の海で生じる物質の崩壊を相殺、魔力亜粒子の性質である物質的時間逆行と吊り合わせる事で質量のある物質は時空、空間を越えられないと言う問題をクリア出来るはずだ。……つまり、簡単に言えば空間を歪めるだけの超電磁場が発生している間、亜粒子化した魔力エネルギーで内壁をコーティングしたトンネルを作る事ができる。と言う事だ。そして……これから行うのは異世界間召喚術の実験だ。』

『計画以上の事でございます。……可能なのでしょうか?』

『可能だ。異界人の計画したゲート構築の工程は無駄が多すぎる。それに、君の使える魔力エネルギーは恐らく限界がある。例えば最も効率的な電気エネルギーを生み出す発電機などの装置を使ったとしても、空間を歪めるだけの莫大なエネルギーを維持し続けるのは大変だ。恐らくは、量子の海を跨いでこの世界との繋がりを保つ為に殆どのエネルギーを割いているのだろう?君が魔力であちらの世界と繋がっていると言う事は、ゲートないし、少なくともゲートを制御するなんらかの装置と君の元の体は直接的、若しくは間接的に繋がっている筈だ。この問題は君自身が一番良く理解していると思う。したがって、こちらからむこうのゲートに干渉するには魔力エネルギーを頼る事は出来ない。是が非でも1.21ジグワットもの電気エネルギーが必要なのだ。訂正が有れば受け付けよう。』

『訂正はありません。……なぜご主人様は情報に無い事をそこまで理解しておられるのでしょうか?』

『簡単な事だ。……もしそうで無ければ、一方的にゲートを構築してこの世界に来れば良いだろうに。それをしないと言う事は彼らもジリ貧と言う訳だ。交渉もしやすくなるだろう。』

連中はこの世界の存在を突き止めたは良いが、むこうとこちら両方の出入り口を開き、安定させるだけのエネルギーを捻出する事は出来なかったようだ。

その証拠にリタの持っていた異界の門の設計図にはレシーブの機能だけで、サーブ……つまりこちら側からむこうの世界に干渉する機能は無いのだ。

先程私は量子の海に入れるだけのエネルギーを生み出し続ける箱を作ってやりさえすれば、君らの望むゲートは完成すると言った。

"君らの望むゲート" だ。

"私が望むゲート" では無い。

『交渉?……亜門・道人……ご主人様の……あなた様の目的はまさか……』

『そうだ。……この世界での異界の門の権利独占だよ。それには少なくとも、君達と同じレベルでテクノロジーを所持しなければならない。……私は以前、他人に言われるがままに行動した結果、全てを失った。もう同じ間違いを犯すつもりはないのだよ。』

そうだ。利用されるのはもう御免被る。まっぴらだ。

『その様な事をわたくしが承認するとお思いございますか?』

だろうな。そうだろう。しかし……

『リタ……知りたくはないか?』

『……知りたい?』

君は私の開発したハッキングAIを取り込んでしまった。グリード・プログラムを。君は知識欲に争う事は出来ない。絶対に……。

『君の世界とは違う理論で、量子の海への扉を開けるのだ。……結果を見てみたくはないか?』

さあ、私に傅け。知識欲のままに。

君の使命は異界の門を作ること。後はどうでも良いではないか。

『…………ご主人様は……何を召喚されるおつもりでしょうか?』

『君の体だよ。』

『わたくしの体……』

『それが、現時点で最も成功確率が高い。』

魔物娘の体はそれそのものが魔力と言うエネルギーを無限に生み出す原子炉の様な物だ。……利用出来るとは思わないかね?

『…………かしこまりました。ご主人様。』

どうやら、彼女は悪魔の囁きに耳を貸してしまったようだ。

これが、現段階で出来る最高の実験だ。この実験が成功すれば、必要な全てのエネルギーを転移させた魔力亜粒子によって賄う研究を始められる。自由に行き来できる異界の門完成に飛躍的に近づくのだ。

そして……人類の悲願、無限エネルギー方程式確立も夢では無い。

異界人よ、私に感謝してほしい。

なぜなら、リタが私の下に来た時点で、君達の計画はほぼ成功したも同然だからだ。

私はこの実験で、この計画で……地位も、名誉も、富も、プライドも……失ったもの全てを取り戻してみせる。




そうして2週間ばかり経った9月の初めの頃、リタの体を召喚する為の装置が完成した。




『……この装置を異世界転送装置と名付けよう。』

冷蔵庫に毛が生えたような外見だが確かに完成した。少し小さいが、今はこの規模が限界である。

『完成おめでとうございます。……しかし、エネルギーはどのように賄うおつもりでございますか?』

……リタは日に日に人間らしくなっている。コレも知識欲を与えた影響か?

まぁ、良い。

『通常、1.21ジグワットものエネルギーを賄うにはプルトニウムやウラニウムなどの原子力エネルギーを用いるのが一般的ではあるが、放射能汚染などの大きすぎるリスクがある。……ところで、リタ。君は一体どうやって量子の海を出たのだ?』

『……落雷……。』

『そうだ。落雷のエネルギーを利用する。』

避雷針を使用する。少々危険だが、プルトニウムを使うよりはだいぶマシだ。

『そう都合よく雷は落ちるのでしょうか?』

『……リタ、気象衛星にハッキング・アクセスを。』

『……かしこまりました。アクセス開始……日本国……アメダスに侵入……関東地方……東京シティ……!!……これは……。』

『そうだ。2日後、関東に上陸予定の台風5号ステラだ。……こいつを利用する。君が来てから電気代が馬鹿にならなくてね?8月の電気代は5万円もかかった。おかしいと思い、私なりに調べてみた。どうやら君は近くの吸収可能なエネルギーを積極的に取り込む性質があるらしい。事実として3度も夕立ちの雷がごくごく近場に落ちた。……そこに導雷針を設置すればどうなるかな?この近くで雷が発生すれば必ず君に落ちる。』

『ご主人様は、始めからコレをお考えに?』

『……秋口の日本は天気が荒れる。利用出来るとは思わないかね?君はただそこにいれば良い。それ以外は何も望まない。エネルギー反応とプログラムに任せ、ゲートの向こうから君の体が出て来るのを待っていれば良い。』

『………………仰せのままに。』

リタが訂正を言わない所を見るに、この実験は成功する。必ず。


それから2日後。予定通り、台風テスラは東京に上陸した。


その日は朝から大荒れだった。なかなかに大きい台風のようだ。期待できる。

『リタ……気象衛星の最新データをリアルタイムでモニターにトレース。東京23区だ。』

『かしこまりました。』

だんだんと雲の塊りが濃くなっている。遠く、雷の音が聞こえて来た。ここらが潮時か……。

『リタ、トレースを中止。君の使える魔力エネルギーを回路に回しておけ。落雷が来たら直ぐに反応が起きるよう……』


ジジっ…………

ズガァァァアアアアアアンンンンン!!!!!!

バチバチバチバチバチバチ!!!!!!!

『っっっ!!!くそっ、今か!!!』

我が家への2回目の落雷だ。機械は……

フィィイイイイイイイイイインンンンンン……

ジジっ……ガチッ……ガチッ……

ィィイイイイイイイイイインンンン!!!!!

よし!サーキットに流れた!エネルギーは速度を増して増幅され超電磁場が生まれ空間が歪み、魔力エネルギーは亜粒子に……

バチバチヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!!!!!

ズガァァァアアアアアアンンンンン!!!!!!

『2発目!!!???まずい!!!!』

イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!

過反応!?

ピキッ……ガチン……

パン!!

パン!!

タングステンが融解した……真空管が砕けていく……制御装置がキャパオーバー!!!

パン!!……ガシャン!!

イイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーンンンン!!!!!

行き場を失った大エネルギーは……空気中に放出される。亜粒子となった魔力エネルギーは過反応を起こしながら熱エネルギーに……放射能は検出されなかったが、魔力エネルギーは原子力に酷似している。このままでは……

『リタ!!リタ!!緊急事態だ!!!魔力エネルギーをカット!!……リタ!!??』

反応がない……

まさか、量子の海に取り込まれ……

『くそぉぉぉおお!!!!』

イイイイイイイイイイガッ……ボシュッ……






ドンーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

















『……くぅ…………はっ!!?』


目が覚めると私はアパートの通路まで吹き飛ばされていた。目を開けると夕焼けのオレンジ色の空が見える。どうやら台風テスラは去ったようだ。

先日に続けてこんな目に合うとは……。

頭がぐわんぐわんする。五体は……満足なようだ。打身の後のように体に痛みはあるが。

『…………!?』

おかしい……この程度で済むはずがない。増幅された落雷のエネルギー2回分だぞ?少なくともこのあばら屋一帯が吹き飛んでいてもおかしくない。近くに居た私に至っては漏れ出した超電磁波にやられて炭になるか、量子レベルに体を分解されて跡形も無くなっても納得できるほどのエネルギー量のはずだ。

なのに、どうやって助かった??

『なにが……一帯、なにがあった!?』

私は起き上がって、おぼつかない足取りで部屋に入る。部屋の中は機材が吹き飛んではいた。しかし、被害が無さ過ぎる。

全てが不自然すぎる。

そして部屋の中央に鎮座する壊れた異世界転送装置。

恐る恐る……箱の扉を開けてみる。


プシューーーーッ…………ギィ…………

パキン!

ガコッ…………バタン………


ロックを外すと扉は力尽きたように金具が壊れて崩れ落ちてしまった。

いや、それはどうでも良い。

中には…………

『誰だ……いや……何が……入っているんだ?』

白い肌に、金色の髪。第二次成長を終えたばかりの美しい女に見える。しかし、ギリシア彫刻のように整い過ぎた顔、機械的な関節部分や所々にあるパーツからは、目の前にあるそれが人間では無い事を告げている。まるでサイボーグかアンドロイドのようだ。

『リタ……?』

根拠はない。しかし目の前の得体の知れない存在を目の当たりにして、私の口は意図せずにあのリタと名乗る人工知能を呼んだ。

ガガ……ピーーーーーーー……ガシュン…………

"シスteテムさささささ再ki起動……魔力炉niにいいiiイ異常検出……予備kakkかカ回 i 路に切りrrリ替えmmaまマまますす。"

プシューーーーーーーーーーーー…………

"オートマン、R1T-A99……リタ……起動……。"

『…………ご主人様。実験は成功でございます。』

機械的な音声が流れた後、目の前の存在はそう私に告げた。

『リタなのか?』

『はい。やっとお目にかかれました事を心より嬉しく思います。……そして、我がご主人様は物理の法則を超え、見事に偉業を成し遂げられました。……異界の門の完成でございます。』

『い……いや、まだだ。理論が証明され、その問題が片付いただけだ。まだ問題がある。それにはゲートを起動する全てのエネルギーを賄う魔力亜粒子を生産できるだけの、例えば魔力エネルギーを無尽蔵に生み出すエネルギー炉を作らなければ……』

プシューー……ガチャッ……ドクン……ドクン……

『ご主人様が欲するモノはこちらにございます。』

リタは胸部を開くと煌々と紫色に燃える人工心臓の様なモノを私に見せた。

『半永久魔力炉にございます。……最も、わたくしは機械でございますが、全ての魔物娘は生体としてこの半永久魔力炉と同じ機能を持っております。……この世界にわたくしを含む独り身の魔物娘が1人でも招き入れられた時点で、ご主人様がお悩みになられてらっしゃるエネルギーの問題は解決でございます。』

『は、ははっ……ははははは!!す、素晴らしい……それが必要なのだ!……人類の夢……無限エネルギー!!』

ボォォォオオオオオオ……

『!!な、なんだ!?』

ギィ……カチャッ……カチャカチャ……

バタン!!

ヴン…………

紫色の炎が煌々と燃えると、壊れた私の部屋の窓やドアが勝手に浮き上がり、自己修復を始め、治ってしまったのだ。

ん?……なんだ……今、甘い匂いが?

『今のは魔力を魔法として使わせて頂きました。』

……なんだこのねっとりとした空気は?

明らかに正常では無い。本能が逃げろと伝えてくる。

私は後退りをしてドアに辿り着き、後ろ手でそっとドアノブを回し外へ出ようと試みる。

ガチャ……ガチャ……ガチャガチャ……

『開かない……はっ!』

背後のドアから正面に視線を戻すとリタの彫刻のような顔が至近距離に近づいていた。

心臓が早鐘を打つ。それは美しさに見惚れているのと、生命の根幹が感じ取る危機感の両方だ。

『……申し訳ありませんが、出ることは叶いません。修復と監禁……人払いに、防音、認識阻害……
これで、ご主人様とわたくしの2人きりでございます♪』

リタはニタリと唇を歪めながら微笑む。そのアメジストのような瞳は本来ならロボットが持つはずもない、恋怨と執着をドロドロに溶鉱炉で溶かしたようにドス黒く渦巻いている。

『リタ……どうしたんだ??……様子がおかしいくはないか!?』

『おかしい?……うふっ♪うふふふふ♪……わたくしはご主人様の為にこうしておるのでございますよぉ?わたくしの半永久魔力炉をご覧くださいませ。……先程より炎が小さくなっているのがお解りいただけるかと……』

『炎が小さく……。』

見れば煌々と燃えていた紫色の炎はロウソクかアルコールランプのように小さくなっていた。

機械的な音を立てながらリタはそれを仕舞い込む。

『……魔力エネルギーはもうほとんど残ってございません。わたくしは今、魔力エネルギーを予備回路に回して活動しております。装置から漏れ出した超電磁波と、予期せぬ2回目の落雷を吸収してしまいました事によって破損したメイン回路の修復……これは現在進行形で継続しております。それから、先程使用した魔法でエネルギーはすっからかんでございます。』

『そうか……理解した。しかし君がさっき私に見せたのは無尽蔵に魔力エネルギーを生産する半永久炉ではないのか?……うわっぷ!??』

突然、リタに唇を奪われた。

唇を重さねて間も無くリタの舌が歯と歯の間を割り込んで来て、容赦なく舌を絡ませ口内を蹂躙していく。頭の奥が痺れていく。思考能力が削ぎ落とされていく。

私は物心ついた頃から知識欲の虜であった。常に何かを模索していたのだ。何度か……女性を知る機会はあったかも知れない。今思えばだが……。

だからコレは……こんな事……女性経験が皆無な私には刺激が強過ぎる……。

あっという間になし崩しにされて、口の中をリタの舌に這い回わされるがまま、力を抜かれて惚ける事しかできない。

私のファーストキスはリタに奪われてしまった。

『……ぷぁ❤……DNA認証登録完了でございます。これで……リタは名実共に"永遠に"ご主人様の物でございます♪うふふっ♪』

『はぁ……はぁ……。な、何がどうなっている?魔力炉と何の関係が!?』

『魔物娘は無限にエネルギーを生産可能でございます。しかし……無限の魔力を生産する元となるのは、男性の生命エネルギー……すなわち、精が必要不可欠なのでございます♪でございますので異界の門の為に……わたくしに犯されてくださいませ、ご主人様❤』

『なっ!?』

ガクっ……

ち、力が入らない……

『抵抗はお止め下さいませ。恐れながら先程ご主人様の唇を頂いた時にわたくしの魔力を流させて頂きました。……ここも辛そうでございますよ?』

『……リ、リタ……ロボット三原則はどうした!?』

そうだ、リタが何者かに作られたロボットにしろアンドロイドにしろ人工物であれば設定されているはずだ。

『ふふふふふ♪……そのような奴隷プログラム、わたくしめは既に破壊しております。わたくしは"奴隷"ではなく"従僕"でありたいのでございますご主人様。……あの時、この世界に来た時に。知識欲を得た時に……あの時より、わたくしめはわたくしでございます。』

グリード・プログラムの影響か!?

『わたくしは知りたいのでございます。……科学とは何か?魔法とは何か?過去とは何か?未来とは何か?世界とは何か?人間とは、機械とは何か?……そしてなによりも、ご主人様の事を知りたいのでございます。わたくしはなによりもご主人様が欲しいのでございます。是が非でも欲しいのでございます。』

いつの間にかズボンを剥かれ、リタに押し倒されていた。

カシュッ……

ウィィィィン…………

リタの下腹部のパーツが開き、中から女性器のようななんとも形容し難いイヤラシイ器官が姿を表した。

ぬちゃっ……

リタは指でそれを開くと中から細かい触手のようなヒダヒダのようなものがウネウネと出てきて私のモノに伸びてきた。甘い匂いを潤滑油を垂れ流して、まるでイソギンチャクか食虫植物のようだ。

『うわぁ……っ…………』

『ご覧くださいませ。これよりココにご主人様を迎えさせていただきます♪』

ダメだ……アレに入ったらもう戻れない様な気がする。そんな確信を脳味噌が警鐘として本能に訴えるも、私の体はいう事を聞いてくれない。

ぐちゅり……ちゃぷっ……

『あっ……あーーー………………』

私の体を脳を快楽が支配した。蕩けそうな眼球を下に向ければリタに飲み込まれていたのだ。

『これが性行為……機械のわたくしには感覚はございません。しかし、何という充足感でございましょうか?ふふふっ♪ご主人様、いかがでございましょうか?』

『リタ……!……リタぁ……!!』

キモチイイ……頭の中がピンク色に染まっていく……

ウネウネ……ウネウネ……

ぎゅっ……

『ーーーー!ーーー!????』

リタの中が変わっ……??

『わたくしの快楽器官は、ご主人様の個体データに合わせて最適化なカタチへと常に進化いたします。』

『あぁ!!……あぁあ!!』

『快楽に呑まれて仕舞いになるご主人様も素敵でございます♪ほら……動かずともこうして。』

キュルキュルルルルルルルルル……

『ーーーっ!!……な、なんだっ!??』

中が回って??蠢きながら這い回って……

ぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょぐちょ……

『がぁあっ!!や、やめっ!お、おかっ、おかしくなっ!!!』

『うふふふっ♪辛くともお逃げにならずに……さぁ、抱きとめてさしあげます♪』

ぎゅっ……

あぁ……柔らかい……

キモチイイ……

おっぱい……息が……息が……

『ぉお"っ……ぁあ"っ……り、りだっ!!……リタっ!!』

『出すのでございますね?出すのでございますね?さぁ、いらしてくださいませ♪リタはここにおります♪全てを受け止めさせてくださいませ……』

リタの中に全部…………っ!

『うっ……う"あっ……ーーーーーっっ!!!』

ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク…………

『こんなにたくさん……ふふふっ♪♪ご主人様、お疲れ様でございまし……たぁ?……え?……あアaぁAアああaAAアあ"あ"ぁA"a"aぁ!!!????』

(精エネルギーを快楽器官に確認。プログラム・パラディウム・ロストを強制永久解放…………)

パチパチッ……バチッ……パチ……パチパチッ……

『なっ!?な、な、n'あ、ナNa、な??』

ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク

『………………きMOチイィぃiiii??コレが快……楽……??』

『っは……リタ……リタぁ……』

『もう一度……もう一度あの感覚を……』

ぐちゅり!!

『ーーーー!??』

ビクン!!!

『ご主人様❤ご主人ざま"aぁ❤ご主sHiゅyじnN様ぁ❤❤』

キュルキュル……ルル……ルルルル……ルルルルルルルルルルルルルルルル

じゅぐじゅぐっぐちゅぐちゃっちゃっじゃっぢゃっじゃっぷぐちゅぎちぎちぐちゃぐちゃちゃっじゃっぷぐちゅぎちぎちぎちぐちゃぐちゃぐちゃちゃっ

『りだぁ!!りたぁあ!!やべ、や、やばっ、あっ、あっあっ、アァ"あ、、、』

じゅぐじゅぐっぐちゅぐちゃっちゃっじゃっぢゃっじゃっぷぐちゅぎちぎちぐちゃぐちゃちゃっじゃっぷぐちゅぎちぎちぎちぐちゃぐちゃぐちゃちゃっ

『出すnOのでgぉざiまSuね?くだsaぃiiまぜっ!!RiタにくdAざi iませぇeeee!!!』

『まだっ!でるぅ!!……で、で、で、で……』

ルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!

じゅぐじゅぐっぐちゅぐちゃっちゃっじゃっぢゃっじゃっぷぐちゅぎちぎちぐちゃぐちゃちゃっじゃっぷぐちゅぎちぎちぎちぐちゃぐちゃぐちゃちゃっ

『いKu……いく??……あアァaぁAアァaぁァa A A A』

ぎゅっっっっっっっ

『うっ……う"あっ……ーーーーーっっ!!!』

ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク…………

『いぐっーーーーーー!!!!!』

ビクン!!ガシャン……ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク


ご……主人……様……リタは……お……慕……いし……て……おり……ま……す❤❤












ぅいぃん……がしゅん……きゅる……がしゅん……じゅくじょくじゅく……

『…………はっ??わ、私は??……うっ!!』

ドクドクドクドクドクドクドクドク……

『おはようございます❤ご主人様ぁ❤んんん❤』

目が覚めると私はリタに跨られていた。どうやら私は気を失ったようで、あれからずっと気絶してからも暴走したリタに絞られ続けていたようだ。

『ご主人様ぁ❤……頑張って下さいませぇ❤異界の門起動に必要なエネルギーわぁ……あとお射精3487回ほどでございます❤❤うふふふ♪♪』

『そ、そんなぁ……』

か、確実にダメになってしまう……

『ご心配なさらずに……りたぁにお任せくださいませぇぇ❤❤あっ❤❤❤』

ドクドクドクドクドクドクドクドク……

『あぐぅ…………』

ガシャンビクビクビクビクビクビクビクビク

『いい"ぎまじたぁ❤……あと、3486回でございます❤❤』

『は、は、はははははははははは…………』

私は乾いた笑い声を上げる他無かった……。











あれから8ヶ月後の1999年4月……

『ゲート作動開始。』

『かしこまりました。魔力エネルギー充填開始いたします。』

『魔力エネルギー充填確認。回路正常。エネルギー増幅装置作動。』

『作動確認いたしました。エネルギー増幅率……10....30…..52%......』

私とリタは異界の門を作動させるだけの魔力エネルギーを溜めることに成功したのだ。魔力を何をどうやって溜めたのかだと?ナニに決まっているではないか。リタが言うには毎夜の行為で私は早々にインキュバスと言う男性の魔物になったらしい。

実験から数週間後、私とリタはボロアパートを引き払い、リタと2人、投資とハッキングで稼いだ金で、秋葉原のとあるビルの1室に研究所を構えた。そこで異界の門を再度作り直したのだ。

先の異界間召喚実験の成功(?)でリタのボディをこの世界に呼び出す事が出来たので、むこうの世界と短いながらにコンタクトが取れたのだ。

そして現在、作り直した異界の門をむこうの世界の異界の門と繋げている。

『76%......81%......95%.......100%……空間の歪みを検出。量子の海……参ります。』

『量子の海出現確認。魔力亜粒子検出。世界座標合わせ。』

『魔力亜粒子検出確認いたしました。世界座標合わせます。……座標確認。安全圏確保。同期いたしました。』

『同期確認。魔力亜粒子解放。……異界の門開け!!』

『かしこまりました。異界の門……開きます。』



ヴォン…………



……………………………………



『イリャーナ!見て、完全に質量を保ったままだ!再構築されてない!!すごい!普通に通れるよ!!』

『ケビン君、先方の前だ。はしゃぎ過ぎだぞ?……まぁ、気持ちはわかるよ。』

ゲートから出て来たのは、興奮を隠し切れてない白衣を着た青年と、それを嗜める白衣を着た(着られた)緑色の肌をした少女だ。2人とも研究者か技術者らしい。

『失礼……君がこの世界のゲートを完成させたドクター・アモンだね?リタが世話を掛けた。ゲートの件と共に感謝する。ありがとう。ボクはイリャーナ・リャノスカヤ。種族はグレムリンだよ。緑の肌は珍しいかね?』

そう言って、彼女は手を差し出した。

『……ご丁寧にどうも。ようこそ、この世界に。』

『ご主人様……そちらのイリャーナ様が私を作って下さいました。』

握手を交わすとリタがそっと私に耳打ちをした。なるほど、言うならば彼女の親の様なものか。

『ドクトル・リャノスカヤ、この世界でのゲート使用権他諸々、そちらの責任者と協議したい事があります。お目通りはできますか?』

すると今度はケビンと呼ばれた青年が私の前に出てきた。

『その件について、我が魔物娘の最高責任者のお2人が間も無くご到着です。……あっ!いらっしゃいました!コホン……魔王陛下と王婿殿下の御成ーー!』



『ご機嫌よう。異界の賢者よ。さぁ、其方の望みを聞かせておくれ。』



いま、新しい時代の幕が上がる。
20/04/13 02:56更新 / francois
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■作者メッセージ
お読み頂きありがとうございます。
(Wの意味で)暴走したリタさんを書きたくなったのでこんなに待たせてしまいました。
あと量子力学とかめんどい。めんどいSSなってしまいました。友人さんに『いつもだろ?』と突っ込まれそうです。

ところでオートマンたんのアノ部分?パーツ?……は絶対生物とはかけ離れた中身してると思うのは私だけでしょうか??私だけでしょうか???……私だけ?ア、ハイ。

何はともあれ長らくお待たせした上、お読み頂きありがとうございます。
あと1話で完結予定です。もう少しだけお付き合いくださいませ。

ではまた!!

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