連載小説
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試しプレイ/日常
「泰華ぁ」
「なんです?」
ソファーで後ろから包み込むように抱かれている男は妻の顔を見上げる。
「ちょっと語尾に、『にゃ』てつけてくれ」
「…」
はい?
「いやさ、シチュエーションというかプレイのテストだ」
「テストレベルで男のプライドをそう簡単には崩せません!」
通常から逸脱、つまり男女逆転しているだろう。
「良いじゃないか。あたし達はあたし達だ」
「そう言うことではなくてですね」
「はい、泰華続けよな」
“茜華さん、ギュッとしてほしいにゃ”
「嫌です」
「はい、どうぞ!」
「嫌ですよ!」
「泰華ぁ」
“お ね が い”
甘く誘惑するような。
「……………せ、茜華さん、ギュッとしてほしいにゃ」
「あっ、これダメな奴だ」
「何ですかそれー!」
プンプンと怒る泰華に訂正を入れる。
「違う、あたしがダメになる奴だ。これ、確実にイっちまう」
「ど、どういう意味か聞かないでおきます…」
「それが良いな」
一拍。
今度は泰華だ。
「茜華さん、クーデレして下さい!」
「な、何だいきなり」
「いきなりじゃないです!色々なプレイの練習ですよ!」
先程は自分がしたから、などはお構い無し。とにかく欲に忠実だった。
「クーデレって…」
「茜華さんのクーデレ絶対カッコ可愛いです!」
「そ、そうか?」
うーんとな…
妙に冷静で低めの声。
「泰華さ…今のままで良いよ。私、小さくて可愛くて、今の泰華が好き。それじゃ、ダメかな?」
小首を傾げる。
「茜華さぁぁん!!」
「泰華!ストップ!」
言葉にできない興奮、感動を動きで昇華しようとしたが止められた。
あくまでも遊び程度にしておきたい。
少しおもしろくなってきたからだ。
「じゃ、泰華今度チャラく行ってみ」
「ちゃ、チャラくですか?」
「ナンパみたいなノリでさ」
ちょっと困っているが少し楽しい。
本音だ。
「えーと……うわっ、君、可愛いね!どこからきたの?」
「ど、どこから…」
いきなりの感覚にどもってしまう。
「それよりさ。名前教えてよ。知りたいな君みたいな可愛い子の名前」
「せ、茜華です」
なぜ敬語。
「茜華ちゃんかぁ、見た目にぴったりの良い名前だね!…えっと…えっと……おっぱい何カップなの?」
「は?」
「大きいなぁと思ってさ!」
「Hカップですけど…」
魔物娘では死ぬほど大きいほどでないかもしれないが、健康美の化身であるヘルハウンドには充分すぎる果実。
「良い胸してるねぇ。じゃ、ホテル行こっか!」
「はっ?」
「えっ?行かないの?」
「あっ…いや」
ここでギブアップ。
…泰華が。
「これ以上無理です!」
「いや、泰華二言目がおっぱいの話だと女は着いてこないと思うぞ」
「良いんですよ!茜華さんがいますからナンパなんて一生しません!」
「…まぁ、そうか」
「じゃ、じゃ、茜華さん!」
「なんだ?」
「僕!ギャルっぽくして欲しいです!」
「えっ?泰華そう言うの好きなのか?」
「あっ!いや!その…」
茜華に引かれるのを必至だがこれはもう言うしかなかった。
「茜華さんにならち、痴女系ギャル合うかなと元から思っていたんですよ」
「そ、そうか」
そんな風に思われていたのかと感じるが引くことはない。
「じゃあ、いくぞ?」
「お願いします!」
「…アハッ、君小さくて可愛いねぇ♪」
「そ、そんなこと…」
「今ひま?今日あたしとどっか行こうよ」
「ど、どこですか?」
「……ゲーセン?」
なぜ疑問系なのか。
「ギブで」
「難しかったですか?」
「ギャルとか…んなもんになれないな」
「茜華さん大人ですからね」
「まるで年寄りみたいな言い方じゃないか」
「そんなこと無いですよ?」
「そーかぁ?でもそんな事言うならは泰華は子供やってみ」
「い、嫌です」
普段からなるべく年齢相応に見られたい男。
「これはプレイだから良いじゃないか」
「ですけど…」
「泰華…早く♪」
迫力が。
もう自分のワガママを通す気満々だ。
すっーと息を吸って。
「ヤダヤダ!僕、子供じゃないもん!!」
「そうか〜?」
「せん…茜華お姉ちゃんと二つしか違わないもん!」
「あれ?まだ中学生じゃなかったか?」
「うぅ…もう2×歳だよ!」
「今度戸籍標本とって見るか?」
「…茜華さん、いじわる止めてください」
「ククッ、すまんすまん」
「気にしてるんですから…」
「ん〜、こんなに可愛い夫はやっぱり弄らないと勿体ないよなぁ」
ギュッとする。
「茜華さん…告白してください!」
「はっ?」
「うぅ〜」
軽く睨むような目。自分にもリターンがあって良いじゃないか!って。そういうこと。
「告白ってもどーしろって言うんだ?」
「茜華さんの気持ちをそのままですよ!僕は怒ってるんです!」
腕を組みフンとそっぽを向いているがどう見ても子供。
「ククッ…」
ナデナデ
いつもの、告白など本当に何回したやりとりだろうか。
「泰華」
「…フン!」
「ククッ…本当にこいつは」
ギュッ
「泰華さ、泰華の新しい部分いっぱい見れたな。あたし今一番幸せだ」
「…」
「あたしが知らなくてほかの奴が知ってる泰華の顔があるなんて絶対許さないからな」
「そんなの…無いですよ」
「ううん、それだけじゃない。泰華に関することはあたしが全部一番じゃなゃダメなんだよ」
「一番ですか?」
もう機嫌の悪さなどどこかに消えて普通に話している。
「別にな、飲み会とかのノリで語尾にワンとかにゃーとかつけさせられても良いんだ。一々気にしてたら面倒な女になりかねないしな」
「…?」
「とにかく、あたしに一番に見せて欲しいんだ。出来れば…その…あたし以外には見せて欲しくないけどさ」
抱きしめる力が若干強くなる。
「だから、いろんなことを試すから意地悪になっちゃう時もある。けどさ、それは泰華が大好きでどうにも押さえられないあたしの我が儘なんだ」
許してくれるか?
「…僕も茜華さん大好きです」
正直ちょっと意地悪されると…ドキドキしちゃいます。
でもそれっておかしくないですか?
「そんなこと無いさ。大好きなら何をされても結局嬉しくなっちゃうもんじゃないか?」
「僕、変じゃないですか?」
「泰華が変ならあたしも変さ。というか、可笑しくてもあたしだけは泰華と一緒だから」
別に気にするなって。

結局、そう結局のところこうなってしまうのだ。泰華は茜華から離れられない。
茜華は泰華から離れられない。
お互いに深いところで愛し合っているから。

「て、ことでさ。泰華」
「?」 
「語尾にワンってつけて話してみようか」
黒い笑いを浮かべたヘルハウンド。
「あと、赤ちゃん言葉とキザなセリフと半袖短パンでタブルピースと上裸で××と全裸で○○と△△△で□□□□とピーとピーをピーして…」
「嫌ですよぉ!」
「泰華!」
チュッ
「んっ…やです…」
チュッ
「んぁ、僕は…」
チュッチュッチュッ
「や、やりますぅ…」
「そうこなくっちゃ♪」

二人の様々な声は朝まで途切れることがなかったのだった。




18/07/08 21:08更新 / J DER
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■作者メッセージ
なんだこれ
僕でもそう思うので皆さんがどんな感想を持とうが仕方のないことです
でも良いのです

この二人はそのために作った設定ですから
いつの間にか8000の閲覧を越えていて死ぬほど嬉しい反面、貧弱な投稿頻度を深く反省するばかりです
すみません…

それでは。

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