僕は謝る。
「……………」
　返事はない。
　ドアの向こうにはベルがいるはずだ。
　だから僕は、きちんと謝る。
　ベルの部屋のドアの前で、その方向を向きつつ土下座して謝る。
「……………」
　返事はない。
　もう何時間も土下座しっぱなしだし、何百回も謝罪の言葉を心を込めて発した。身体も喉も限界だ。
「……………」
　返事はない。
　謝る。
「……………」
　返事はない。
　謝った。
「……………」
　返事はない。
　ひたすら謝る。
　返事は───
　ガチャリ
　ドアが開いた。
　ベルが来たか、と思い、喜んで顔を上げた瞬間──

　僕は部屋に引きずり込まれる。

　彼女が引っ張ったのではない。魔法。
　魔法の力は僕を鷲掴みにし、部屋の中に連れ込んだ。
　その魔法の力はそのまま僕を椅子に叩きつけ、これまた魔法の力で縛り付ける。
　じたばた暴れても無駄だった。手も足も出ない完全なる拘束である。
「…………あんたがいくら謝っても許す気はないわ」
　目の前にはベル。目が据わっている、やはり謝罪の意は伝わっていなかったようだ。
「わかる？奴隷に歯向かわれたマスターの気持ちが。きっとあなたにはわからないでしょうね……この家畜が！」
　ずいっ、と足をあげ、僕の股間を踏み潰す。
　下腹部に貫くような痛みが走る。胃の中のものが口から吹き出しそうなほどの嘔吐感も遅れてやってきた。
　苦痛にゆがむ僕の顔を見て、彼女は笑う。
　怒りながら笑うという高等テクニックである。　
「でも、あなたみたいな逸材を手離すのは惜しいわ───チャンスをあげる」
　それは。
　光栄な話だ。
「これからあたしを満足させなさい。ただし、それまで弱音を吐いたり、気絶したり、射精を止めたりしちゃだめよ」
　……………OK。かなり難しい気もするが。
　だが、文句を言うわけにはいかない。僕の立場はあくまで『許しを請う奴隷』なのだ。
「じゃあ………スタート」
　早速、ベルは僕のズボンのジッパーを上げ、慣れた手つきでペニスを取り出す。
「いつ嗅いでもいい匂いねぇ……ｽﾝｽﾝ♥」
　つんつんと鼻でペニスをつつく。
　今回はいつものように、すぐに手や口でしごくわけでもないようだ。
　どうやら簡単に許してはもらえないようだ。
「ん……………っ♥ほらぁ♥出してみなさいよ♥」
　試されている、僕は試されているのだ。
　ここでどれだけ彼女のために射精できるか……どれだけ忠実な精液サーバーでいられるのかを。
　最悪の場合、彼女が手を下さずとも僕は射精しなければならないのだろう。それが。
　それが、僕が彼女に許してもらい、彼女の奴隷で有り続けるための条件。
「〜♪」
　時々息を吹きかけ、時々ペニスへ頬ずりをする。ただそれだけ。射精にはたどり着けない。
　彼女の頬が、小さくぷにりと柔らかいほっぺたが、僕の先走りでねとねとになり、てかてかと光っている。
　そのてかてかに光る頬をこすりつけ、押しつけてくる。
　ぷにぷに、ぐにぐに。
「ほっぺ犯してるみたいで興奮するの？本当に救えない変態よね………♥」
　事実、その通りである。
　彼女が頬に亀頭をこすりつけ、顔を先走りで汚していく姿に。
　僕は心臓を高鳴らせている。
「ふふ、あたしみたいなロリっ娘のぷにぷにほっぺた気持ちいいでちゅかー♥？」
　手のひらと頬のペニスサンド。ベルはそのサンドを上下に動かす。
　いつも彼女の口や手ばかりでしごかれてきたが、この組み合わせはなかなかのものだ。
　片方はゴツゴツザラザラ、もう片方はふわふわぷにぷに。そんな二種類の感触でペニスが包まれる。
　僕は。

　ブピュルルルル！

　あっという間に果ててしまった。
　射精の間、彼女は自分の頬だけではなく、顔中にペニスを強く押し当てる。おかげで顔中精液で真っ白だった。
「くっさぁぁぁい♥ザーメンゼリー顔中についちゃってる……♥ちょっと味見」
　指で糸を引く精液をひとつまみ、口に含む。
「くちゅ………くちゃ、んむ、ごくんっ♥じゃあ、この調子でお腹いっぱいになるまで出してちょうだい♥」


「ちゅるるるる、じゅぞぞぞ」
　舌で亀頭を包み込んでしごかれる。彼女のねっとりと暖かい唾液が絡みつき、水音が絶え間なく響く。
　ドプッ
「ぅっっ♥♥」
　また彼女の口内にたっぷりと精液を吐き出す。
「ごきゅっ♥ぉくっ♥………ぷはぁ……まだ三時間も経ってないのに……二十一回も出すなんて……さすがあたしの選んだ精液サーバー♥」
　顔をどろどろに汚しながら満足そうに笑うベル。その光景は背徳的で淫猥なことこの上ない。
　余裕があったら見てるだけでも射精してしまいそうだ。
「じゃあ、次………ちゅるる、じゅぶ」
　間をおかず、彼女はまたフェラチオを始める。
「ちゅる、ぷちゅ、ぶちゅ、ちゅ」
　今度は頬の内側でこすられる。
　粘液が亀頭を執拗に磨き上げ、カリの部分にこつこつと軽く歯が当たる。
　膣内もこんな感じにぬるぬるとしているのだろうか……ぼこぼこと前後する度に膨らむ頬を見て、僕はそのぬるぬるの粘液に思いっきり射精してしまいたい衝動に駆られるが、すんでのところでとどまる。
　また彼女は技法を変えてきた。
「はぐっ、んぐっ」
　甘噛みだ。痛くない程度に竿を噛んでくる。
　程良い痛みが、快楽へと変貌を遂げていく。
　何回も何回も噛む場所を変えて、僕の一番気持ちいいところを探ってくる。
　そして、また違うやり方へ移り変わっていく。
　彼女の頭の中はもう、いかに早く僕を射精させるか、ということしかないようだ。
　無我夢中でペニスを探り探りしゃぶっている。
「はぐっ」
　何巡かして、偶然か否か彼女の犬歯が鈴口に入り込んだ。
　あまりの痛みに悲鳴を上げそうになるが喉元で飲み込む。
　しかし。
　ビュクビュクビュク！ドププッ！
　射精の方は抑えきれなかった。
「んんんっ♥ぁん、零れちゃったぁ♥」
　ベルのいやらしい笑顔が、白く濁る。
　恐らく、常人では耐えきれないほどの臭いと感触だ。しかし、彼女にとってはこの上ない至福なのだ。
　顔も、髪も、手のひらも、身体も、胃の中も、すべて真っ白になるまで、きっと彼女は満足することはない。
　そういうことなのだろう。


　そして、それから何時間か経った。
「じゅる、ぐちゅ、ぶちゅ、じゅぷ」
　何十回、もしかしたら百回以上射精したかもしれない。テクノブレイクしていないのが不思議なくらいだ。
　ベルも休まず、出された精液はすべて飲み込んできた。お腹痛くなったりはしないのだろうか。
「ぐぷっ、ぬぷっ、ぢゅう」
　もはやテクニックもなにもなく、ただ深く深くしゃぶっているだけである。
「くちゅ、んふーっ、はやくぅ♥はやくらひてっ♥」
　とは言っても僕はそろそろ撃ち止め寸前であって、精液は枯れ果てかけている。
　それは彼女もわかっているのだろう。
　だけれども、やめられない。
　典型的な中毒の症例だ。
　きっと彼女は精液中毒なのだ。そうに違いない。
「んぐっ……はぁ」
　一旦、彼女が僕のペニスを口から離した。
「ねぇ………早く出しなさいよぉ……♥早く特濃ザーメン出しなさいよぉ………♥もう我慢できないぃ………」
　泣き出しそうな声で懇願するご主人様。一体何が彼女をここまでさせるのか──奴隷に懇願するほど追いつめてしまうのか。
　彼女はゆっくりと、これまで以上に深くペニスを飲み込んでくる。口内だけには留まらず、喉の奥の方にまで侵入してしまった。
「おぐっ、うぐっ、じゅる、ぐぽっ」
　そんな状態からでも、彼女は顔を前後して僕のペニスをしごく。
　狂気の沙汰だ。
「うぐっ、ううっ！」
　そんな彼女に応えるように、精液が昇ってくる。彼女が満足できるようなものかどうかはわからない。でも、ここまでしてくれている彼女のためにも、頑張って出すしかないのだ。
「んむっ！おぇっ！ぐむっ！」
　えづきながらもペニスを貪るその姿は、餌にかぶりつく動物のようにも見えた。
「ははふぅ！らひへっ！」

　ドピュッ！

　決壊した。
　一番深いところで、ペニスが精液を垂れ流し暴れ始める。
　縛られた僕の身体が、快楽のあまりのたうち回ろうともがく。
　呼吸がままならない。
　ピュルルルルと長い射精が続き、大量の精液が彼女の中に注がれていく。
「──────────っ♥」
　嬌声とも悲鳴ともつかないくぐもった声の振動がペニスに伝わり、射精を促す。
「ん────────っ♥ん───────♥がぼぼっ」
　胃の中が精液で満たされ、食道も満杯になり、口や鼻から白濁液が漏れ出す。彼女は白目をむいていて、今にでも気絶してしまいそうだ。
「がほっ！おえっ！げほっ！」
　口からペニスを抜き出すと、滝のように精液が外に漏れてきた。苦しそうに床に精液を吐き出していく。
「えほっ！げほっ！──────い、いいわ」
　？
「許してあげる。これからもあたしのために尽くしなさい」
　涙目になりながらも、彼女はご主人様らしく高慢にそう言い放った。
　だが、これではさっきとなにも変わらないではないか。僕が犯したとき──いや、それよりも苦しそうだったじゃないか。
「いいのよ───うぅ……さて、今日は一日寝るわ。拘束は外してあげるからあなたも休みなさい」
　こうして、僕は許され。
　明日も奴隷で居続けることができるのだった。


「んちゅ♥むちゅ♥」
　休日は明け、学校。
　屋上で彼女は弁当を食べていた。
　僕の搾りたての精液がかかった弁当だが。
「あなたのはいつだって濃くておいしい………本当、いい奴隷を選んだわ」
　どうしてだろうか、今までよりも嬉しそうに見える。
　気のせいだろうか。
「はむっ、むぐ、んぐ」
　そんな僕の考えもよそに、ベルは白くテカっている弁当を笑顔で食べ続けるのだった。




　そんな彼女を見て、誰かが隠れて見ているだなんてこの時は思えなかったんだ。

■作者メッセージ
〉〉ゆうていさん
　知ってたか、ベルゼブブからは逃げられない！
　彼が感じているのは不満とかじゃないですねーあんまり言わないでおきますが。

〉〉２コメさん
　果たして一日何百発も発射する覚悟があるんでしょうかね……