読切小説
[TOP]
洞窟に光る怪しい眼


 黒光りするほどに使い込まれた皮鎧を付け、背には解れが有りながらも丈夫そうな毛皮のマントと荷物が入った背嚢、腰に大きな両手剣を佩いている、そんな格好の一人の剣士が山の中を歩いている。
 旅慣れた様子の男なのに、その顔は苦しげに歪んでいる。
 それもそのはず。この山はそんじょそこらにあるような、生易しい山ではない。
 もう少し行けば魔界と言うほどの秘境にある、へばり付く様にして上らなければならない斜面に、様々な獰猛――無論性的にだが――な動植物が溢れる、そんな場所。
 何故その様な、百害あって一理も無いような場所を彼が歩いているのかと言うと、それは単なる一つの噂の所為である。
 それは――

「この山の中に、一つ目の化け物が居るって噂だったが、本当かどうか疑わしいなぁ……」

 荒くなった息を整える為にか、斜面に立っている木の根元に座り込みながら、背嚢から水の入った皮袋を取り出し、一口だけ口に含む。

「ふぅ……一つ目って事はサイクロプスだろ。いくら人見知りが激しい魔物娘だって言ったって、こんな場所に工房を作るとは思えないんだけどなぁ……」

 水を飲むときに止めた息を吐き出しつつ、男はそう独り言を呟いた。
 どうやらこの男は、あの噂の化け物というのをサイクロプスだと思っているようだ。
 しかしながら、態々サイクロプスに会う為だけに、滑落すれば死にそうな斜面をよじ登っているのは、普通の感性からすれば少々おかしい気もしよう。だが剣士ともなれば、一本の名剣の為に命を投げ打てる輩が多いため、そんな可笑しい行動ではないと判じる事も出来はする。

「果てさて、もう少しで噂の洞窟が見えるはずだな。さて、蛇が出るやら一つ目が出るやら」

 背嚢を背負い直しつつ、男はそう言葉を零すと、ぐっぐっと音が出そうな程の力強さで斜面を登っていく。
 そんな調子で空の陽が明らかに移動するまで移動すると、山肌がぽっかりとくり貫かれた様な、大きく口を開いた洞窟が見えてきた。
 街に住むような人間には分からない程度に、明らかに誰か――もしくは何かが、その洞窟に住み着いているのを現している、踏まれて倒れた下草がその洞窟の口の周囲に広がっている。
 噂の一端が真実であった事に、男は胸をなでおろした様子だったが、次の瞬間には訝しげな表情を顔に浮かべる。

「鉄を打つ音も、炭で焼かれた鋼への添加物の匂いもしない?」

 もしこの洞窟にサイクロプスが住んでいる場合、その二つが無いのは明らかに可笑しい。
 件の種族は、生まれてから死ぬ直前まで、鍛冶と伴侶の事以外は頭に無いようなものなのだから。
 これはどういうことだろうかと、疑問に思った様子の男は、腰にある剣を抜いて油断無く両手に持つと、そろそろと忍び足で洞窟へと向かっていく。
 そんな男の行動が呼び水になった訳ではないだろうが、彼が洞窟の入り口に近づくと同時に、洞窟の暗がりから一つの影――いや、大きな一つの影の周りに、何本もの縄の様な影が纏わり付いたのが出てきた。

「魔物娘……か?」

 それは男が思わず呟いてしまった通り、確かに歳若い少女に見える。ぼさぼさの黒髪と色白の肌に、黒曜石が地肌に付いたかのような黒く艶やかな模様が手足にあり、何より一つ目の女性であるため、魔物娘だと判断できる。
 しかしその彼女に付き従う様に、人に嫌悪感を抱かせる様に触手の如きナニカが蠢き、その先にある真っ赤な瞳がギョロギョロと周りを睥睨しているのを見ると、魔物娘とは別の何かのように見えもする。
 そんな衝撃的な見た目の少女――いや、それに付き従うモノの内の一つの瞳が男を捕らえると、その他のソレらが一斉に男へと視線を向けた。
 そうしてから漸く、少女の透き通るルビー色の瞳が、男の方へと向けられる。

「あら〜ら。こんな辺鄙な所に、人間の、それも雄とは珍し〜」

 少々驚いた様子を見せてから、少女と触手が合わさったソレは、街角で出会った知り合いに挨拶をする様に、胸の手前で片方の掌を左右に振ってきた。
 そんな軽い調子に男は少々混乱した様子を見せながらも、両手に剣を握ったまま、思わずといった感じで次のように言葉を漏らす。

「確かに、一つ目の化け物っていう噂は本当だった……」

 予想外の相手を目の前にした混乱と、ここまでの旅路での疲れから出たであろうそんな小さな呟き。しかして目の前に居る存在の、少女然とした表情を怒りに染めるのに十分だったようだ。
 存在感の強い大きな一つ目が男を睨む様に細まり、一本しかない眉頭は顰められ、眉尻は上がる。そして周りにある一つ目触手も、睨みつける様に男の顔の一点を見据えている。

「初対面の、しかもレディーに向かって〜。化け物っ言うのは、余りにも失礼なんじゃないかな〜?」

 そう棘が含んだ言葉を受けて、男は自分が失言した事を悟った様だった。
 しかし男が何かを弁明する前に、全ての触手の一つ目が、鏡で日の光を反射させたかの様に、ピカッと一瞬だけ煌いた。

「これでも、化け物って言えるかな〜?」

 ニヤニヤと牙が並んだ口を歪めながら、男に向かって告げる。
 あたかも、先ほどの光で、男の認識が変わってしまったのだと、理解しているかのように。

「ああ、とんでも無い化け物だよ。君は」

 だが、そのニヤついた笑みも、男がそう言い返してきた事により、一気に不満顔へと変わる。
 そして再度、彼女の周りにある一つ目の触手から、眩い光が放たれた。
 しかし――

「本当に君は、何て化け物なんだ……」

 相変わらず男の口からは、化け物という言葉が消える事は無い。
 なのだからか。今度は、周りの触手の目ではなく、彼女本人の赤い目から、一回り眩い光が迸り、男性の網膜を焼いた。

「これなら――」
「ああ、何て、何て、厄介な化け物なんだ、君は……」

 どうやら絶対の自信があったらしいその行為も、何故だか男には効かなかった様だ。相変わらず男の口からは化け物という単語が出てきた。
 一体如何して男が無事で居られるのか分からない様子で、彼女は呆然とその場で立ち尽くしている。
 そんな彼女の様子を見たからか、男は手に持った剣を鞘に戻すと警戒無き歩みで、その目付きの触手を従えた、一つ目の彼女の方へと近づき、まるで薄いガラス細工を捧げ持つ様に、彼女の頬を両手で挟みこんだ。
 そこまでされて漸く我に帰った様子の彼女。

「な、なにを――」
「俺の心に、恋と言う炎を巻き起こす、危険で愛らしい化け物だ――!」
「むぅ!!?」

 最初、彼女は男から何をされたのか分からない様子で、その一つ目を大きく見開いて、眼前にある光景を直している。
 彼女の目の前には、大写しになった男の顔。それがやや斜めになって写っている。そこにある男の両目は、彼女の一つ目を確りと見据えたまま。
 やがて自身の口に湿った感触を感じたのだろう、その一つ目が顔の下に向けられる。男と彼女の唇が合わさっているのが見えたはず。そこまでして漸く、彼女はキスをされていると言う事に気が付いたようだった。

「や、やめ――むぁ、ちょっと、むぅう!?」
「本当に可愛らしい、むちゅ、俺の、俺だけの、あむ、ちゅちゅ、一つ目の、化け物め、ちゅちゅ!」

 キスをされた自覚で、顔を真っ赤にした彼女の表情がそそられたのか。男はそこから一気に、触れるキスから貪るキスへと行為を変えた。
 閉じられた唇を舌でこじ開け、鍵を掛けた金庫のように頑なな歯を、頬に添えた手を操作して開かせてから、舌を口内へと進ませる。

「むううぅ!」

 ぬるりと入ってきた舌の感触に、一つ目を見開いて彼女は大きく驚く。その反応に男は気を良くしたのか、さらに彼女の口内を舌で責め始めた。
 ぐちゅぐちゃ、と音を立てて二人の唇が合わさり、溢れ出る唾液が二人の唇の端から漏れ、二人の顎先から地面へと滴が垂れる。
 彼女の周りに付き従っている目が付いた触手は、男の行為を止めようか、それとも受け入れようか迷っている様子で、うねうねと動きながらもその場から大きく動こうとはしない。
 やがて触手の動きが緩慢になるにつれ、彼女の大きな一つ目が潤み始め、頬も酸欠とは違う赤さが差してくる。もうその頃には、彼女の舌もぎこちなく男の舌を受け入れるような動きを始めていた。
 そうして五分ほどの熱烈なキスは、男からゆっくりと顔を離す事によって終わりを迎えた。
 
「はぁはぁ、酷い、初めてのキス、だったのに、こんな――」
「キスをされたら、俺以外は受け入れられなくなるって?」

 息も絶え絶えな彼女の言葉を、無理矢理繋いで勝手な事をいう男。
 しかし彼女は否定する事は無く、逆に頬を染めて俯く始末である。
 その俯いた顔を、男は両手で上げさせて、その特徴的な一つ目を自分へと向けさせる。

「さて、順番が逆になっちゃったけど、自己紹介だ。俺の名前はジョエク。可愛らしい、一つ目の化け物の君の種族とお名前は?」

 可愛いと言いつつも、化け物とこき下ろされている様な言葉に、ジョエクと名乗った男に顔を手で挟まれている彼女は、赤い顔ながらも複雑な表情を浮べている。

「……種族はゲイザー。名前はアメニィ」
「ゲイザー。初めて聞く種族だ」

 ゲイザーとは、確かに珍しい種族である。
 一般人はほぼ知る者は無く、魔物に詳しい者でも魔術と暗示を司る種族である事以外、ほぼ生態が謎の種族。
 その一つ目と、周りに浮かぶ目付き触手による見た目は、通常の常識を持つ者にとっては嫌悪を抱きかねない。
 だが――

「しかしそんな事はどうでもいい。アメニィのその大きな瞳に、俺は恋に落ちてしまったのだから!」

 そう愛の言葉を大声で注げたジョエクは、今度は彼女を抱き締める様にして腕で身体を捕まえると、そのまま熱烈なキスを彼女の唇へ。粘りつくような水音が二人の間にまた流れ始めた。
 しかし今回は、それは長続きしなかった。

「あくぁ!?」

 驚いた様な声を上げて、ジョエクはアメニィの唇から口を離した。
 逆に今まではされるがままだったアメニィの口元には、余裕から来る笑みが浮かんでいる。

「もう〜。愛してくれるのは嬉しいけどさ〜。ちょ〜っと、調子に乗りすぎじゃないかな〜って」

 そうジョエクに聞こえるように呟きながら、アメニィは彼のズボンの中に潜り込ませた片手で、ナニかを二度ほど強めに握ったのが見えた。

「こんなにビンビンでギンギンにして〜、如何するつもりなのかな〜?」

 相変わらず手で男のナニかを握りつつ、反対の手でジョエクのズボンを下ろしていく。
 やがて見えてきたのは、青筋が浮かび上がり、ぱんぱんに膨れ上がった陰茎。アメニィが手に力を入れて握る度に、ビクビクと反応を返す。

「ほらほら〜、早く言わないと、手で出させちゃうよ〜?」
「な、なら、く、口で、口でーッ!」

 ジョエクが望みを口にした途端、アメニィの掌が握る位置を、根元から亀頭へと移していた。

「口が良いの〜?さっきまで嘗め回していた、この口が良いの〜?」

 んあぁ〜っと声を上げつつ、開いたアメニィの口は、唾液で濡れた赤い舌と口腔が艶かしい。それこそ、そこに一物を突っ込みたくなる程に。
 ジョエクもそう思ったのか、首を縦に振っている。

「もぅ〜、しょうがないな〜……」

 口ではそう言いつつも、ニヤけた笑みを浮べてジョエクの腕から脱出すると、いきり立っている陰茎を口にぱくりと含むと、その大きな一つ目をジョエクの顔に向けたまま、それを飲み込んでいく。
 根元数センチを残して飲み込んだら、今度は口を窄ませながら引き抜いていく。

「んぅ〜〜〜……ふぅ〜〜〜〜〜……」
「あぁぁ、なんだ、これ……」

 ゆっくりと前後にアメニィの頭が振られると、ジョエクは与えられる感触に戸惑った様な声を上げる。
 それに気を良くしたのか、アメニィの頭の前後運動は、一往復毎に早さを増していく。

「んぅ〜……ふぅ〜……んぅ〜、ふぅ〜、んぅ、ふぅ――」

 アメニィの鼻から漏れる空気の音と連動するかのように、唾液が溜まったらしい彼女の口からは、じゅっぽじゅっぽと、粘つくいやらしい音が響く。

「あぉぉ〜、あ、お、あひ!」

 陰茎に感じる感覚そのままが声になるのか、ジョエクの口からは間が抜けた声が漏れ出ている。
 そんなジョエクの反応や表情を、アメニィはその大きな眼で見取っているのか、口の中で絡ませる舌や頭の捻りなどを加え始める。
 するとそれに答えるように、ジョエクの陰茎もビクビクと反応を返す。

「あはッ。もう出そうだね〜。良いんだよ出しちゃっても〜」

 一端口から陰茎を離したアメニィは、具合を確かめる様に手でそれを上下させる。するとその鈴口からは、透明な液体がとろとろと止め処無く溢れ出てくる。
 根元から優しく握り、亀頭のくびれまで扱き上げると、その透明な液体の量が増す。
 その手の動きに、陰茎だけでなく表情でも反応を返すジョエクの姿を瞳に入れて、アメニィはより一層嬉しそうな笑みを浮べた。
 
「ま、待って。もう、本当に――」
「駄目〜。待ったないよ〜……」

 何を待って欲しいの分からない様子で、思わずといった感じで口に出したジョエクの要求を、アメニィは笑顔で遮る。
 そして大口を開けて再度陰茎を咥え込むと、今度は根元までをその口の中に入れる。更にはジョエクに腰を引かさないためか、両手を回して彼の腰を抱き締めつつ、喉の奥の奥まで陰茎を押し込むように引き寄せる。
 そしてそのままの位置を保つと、ジョエクの顔をその一つ目で見つつ、首と頭を捻り始める。それはあたかも、ジョエクに射精を促しているようだった。

「駄目だぁ――!!」

 とうとう堪え切れなかったのか、ジョエクは声を上げながらアメニィの頭を手で下腹へと押し付けてから、陰茎に溜まった精液を放った。

「ごきゅり、ごきゅり、ごきゅり――」

 しかしアメニィはそんな乱暴な扱いをされても動じる様子は無く、喉の奥に放たれた精液を、嚥下の音を辺りに振り撒きながら、舌と唇と吸い込みでジョエクの射精を手助けする。
 それが更に射精感を増すのか、ジョエクの陰茎から迸る勢いは留まる事を知らず、実に二分もの間、射精し続けていた。

「こきゅ、こく、んぅ、ちゅぅぅ〜〜〜〜……」

 その全てを飲み終えて、ジョエクの尿道に溜まったものすらも吸い取りながら、射精による多幸感で緩む彼の表情を見つつ、アメニィは喉から陰茎を引き抜いていく。

「はぁぅ!!」
「え、きゃぁ!」

 やがてちゅぽんと音を立て、彼女の口から引き抜かれた陰茎が、一度大きく震えると、その鈴口からまた精液が飛び出してきた。
 二人してその射精は思惑の外だったのか、ジョエクは驚きながらも幸せそうな、アメニィは驚きつつ呆れた様な表情を浮べて、その射精を見ていた。

「もぅ〜、いくらこの口が気持ち良かったからって、出しすぎでしょ〜?」

 目の前数センチの位置から、精液の直撃を受けたアメニィは、髪、額、眉、目蓋、頬に掛かり、粘り付きながら地面へと向かう。
 それらをアメニィは指で掬い取ると、見せ付ける様にしながら口へと運ぶ。

「んぅ〜、ちゅぱちゅぱ、まだここにも、ちゅぱちゅぱ」

 指で口に運ぶたびに、その指を愛撫する様に舌を巻きつかせる姿を、ジョエクに見せ付ける様にする。
 愛おしそうに舐める淫靡なその姿を見て、心の奥底に眠っていた獣欲を呼び覚まされたのか、ジョエクの喉元がゴクリと鳴り、陰茎は射精したばかりだというのに、下腹に付くほどに勃起していた。
 そしてアメニィが最後の一掬いを口に運ぶのと、ジョエクの我慢の限界が訪れるのは同時だった。

「アメニィ!!」
「きゃ!!」

 覆いかぶさる様にアメニィを押し倒し、無毛でピッタリと閉じたスジがある股間に、ジョエクは一層硬くなった陰茎を擦りつけ始める。

「もぅ、そんなに、擦り付けなくても」
「いいよな、いいよな?」

 押し倒され、犯される一歩手前だというのに、アメニィは余裕綽々の笑みを浮べ。一方のジョエクは、逆に切羽詰ったような必至な表情を浮べている。

「別に、こっちはいいんだけど。彼方はそれでいいの?」

 口から出た言葉がジョエクの耳に入るのと同時に、アメニィのその一つ目から光が瞬いた。

「これで催眠は解いたわ。それでも私を犯したい〜?」

 くすくすと笑いながらも、その一つ目はジョエクの表情の変化を読み取ろうとするかのように、真剣なものが含まれている。
 催眠を解かれたというのは本当なのだろう、ジョエクの二つの瞳には少し知性の光が戻り、前後に振りつつ押し付けていた腰の動きも止まっていた。

「良いのかしら〜。一つ目の化け物なんでしょう。そんな相手を犯したいの〜?」
「……舐めるなよ?」

 小さく笑い続けるアメニィの姿が癪に障ったような、少し怒った表情をしたジョエクは、がしりとアメニィの顔を両手で掴むと、そのままの勢いで口付けを交わした。
 それは余りにも荒々しいものだったため、お互いの歯が当たった音が響き、続いて両者涙目になりながら自分の唇を双方押さえていた。

「痛ッ。もぅ〜、情熱的なのは良いけど、唇から血が出ちゃったじゃない……」
「す、すまん。で、でもだな!」

 少し怯んで、だが持ち直したように、ジョエクはアメニィのその一つ目を見て語りかけ始める。

「俺がここまで来たのは、一つ目の魔物娘を嫁に貰うためだ。その綺麗な赤い瞳を見て、俺は君以外の娘には興味がなくなった!」

 突然の告白は、受ける側のアメニィの状況把握能力の許容を超えたのか、しばらくぽかんとしている。
 そして段々と言葉の意味を理解してきたのか、アメニィの眼が疑わしげに細められる。

「えっ、本当に?」
「嘘を吐く意味が在るか?」
「いやでもさ〜。まだ催眠が抜け切っていない可能性だって――」
「五月蝿い。いいから俺の嫁に、なれ!!」

 言い合いの最中に、ジョエクは腰を引いて亀頭をアメニィの膣の口に付けると、今度は腰を突き出して陰茎を膣内へと押し込んだ。

「え……えぇええ!は、入ってる。入っちゃってる〜!?」

 すんなりと抵抗無く入ったためだろうか、全ての陰茎が収まってから、下腹部の違和感を覚えたのか、アメニィは視線を自分の下半身へと向けてから、驚いたような声を上げた。

「これで俺が本気だった分かったろ。それと、もうお前は俺の嫁だからな!」
「え、でも、本当に。え、どうして?」
「何を混乱しているんだ、よッ!」
「あくぅうう〜!!?」

 陰茎全てを入れたまま、両手でアメニィの腰を掴んだジョエクは、自分の下腹部にアメニィの股間を押し付けながら、ぐいぐいと腰を押し付けていく。
 すると身体の深い場所を抉られたアメニィの口からは、驚きと快楽からのうめき声が漏れ出てきた。
 そのままアメニィが現実を理解できるまで、ジョエクは同じ行為を続け。アメニィはその行為をされる度に、段々とその表情が蕩けたものへと変わっていった。

「どうだ。これでもう俺の形になっただろう。それでもまだ、四の五の言うか?」
「はうぅぅ……本当に、おちんぽの形、覚えちゃってる〜。お腹が〜、もっともっとってぇ……」

 形を覚えこまさせるためにか、挿れたままの状態だったために、少ない刺激しか与えられない。だからか、アメニィは一つだけしかない大きな眼を、切なそうに歪ませながら、ジョエクの方を見つめる。
 瞳からはもっとして欲しいという、女の情欲が透けて見えている。

「じゃあ俺の嫁になるんだな?」
「なる、なるよ〜。だってぇ、おちんぽを覚えさせられて、魔物娘が離れられる訳無いじゃない〜」

 観念したようにそう告げるアメニィに、ジョエクは安堵したような溜息を吐いた。
 こうして変な形で夫婦になった二人だったが、しかし数秒待ってもジョエクが動き出さないのに痺れを切らせたのか、今度はアメニィがジョエクの頭を両手で掴むと、無理矢理その一つ目を覗き込まさせる。

「夫婦になったんだったら、もう我慢しないから〜。これからもずーっと『愛して』ね〜」

 強調した口調の部分と同時に、アメニィの一つ目から今までで一番力強く光が瞬く。
 光の残滓もが収まり、その後二人の間に数瞬の沈黙が流れる。

「ぅぅぅぅううううう……」

 沈黙を破ったのはジョエク。その口からは、知性の消えた獣のような唸り声が漏れ始めた。
 それを見て聞いて、アメニィの大きな眼が爛々と輝き始める。

「ううおおおおおぉおおおお!!」
「ひやあぁぁああ!!はげ、しいぃ〜〜!!!」

 そして唸り声が咆哮へと変わると、人が変わったようにジョエクは、腰を乱暴に前後に振り始める。それは根元から亀頭の先端までを使って、アメニィの膣内を蹂躙するピストン運動へと変じる。
 いっそ暴力的とも取れるその行為を受けているアメニィだが、その自分を激しく求める動きが嬉しいと言いたげな緩んだ表情を浮べながら、ジョエクの腰つきに合わせて膣内の当たる位置を調整して、好意的に受け入れている。

「ふうふうふうふうふうふおおおおお!!」
「はげし、すぎて、からだが、ういちゃうぅう〜〜!」

 最初は正常位の抱き合った状態から始まった性行為は、ジョエクが段々と状態を上げ、さらには膝立ちになって腰が振りやすい状態に移行するに従い、アメニィは彼の腰に足を巻きつけていた関係で、肩甲骨から上だけが地面に接する様になってしまっていた。
 しかしながら、アメニィは膣壁を削る陰茎のくびれの感触が良いのか、不平不満を言うよりも、気持ち良さの嬌声を迸らせ続けている。
 激しい性行為が何分か経った後、ジョエクが大きく――それこそ陰茎を全て抜く寸前まで腰を引くと、今度は今までで一番の力強さで、アメニィの奥へと突き立てた。

「くおおぉおおおおおおおお!!」
「ひきゅうひゃーーー!!」

 突き立てて押しつぶした子宮へと、ジョエクは亀頭の先から精液を吐き掛ける。そしてアメニィは、押しつぶされた子宮とそこに掛かる熱い液体の感触を受けてか、言葉にならない声を吐き出すと、舌を突き出し肺の空気を空にしたまま、全身を絶頂の震えで満たしていく。
 射精の音が周りにも聞こえるのではないかと言う程に、大量の精液を勢い良く放つジョエク。精液を受け続けると、その熱さに息が吸えない様子のアメニィ。
 ジョエクに絡まっていたアメニィの足が解かれ、ゆるゆると地面へと下降していく。やがてその足が地面へと落ちると、図ったかのようにジョエクとアメニィが絶頂が途切れた荒い息を吐き始める。
 静かな周りとは対照的に、二人の呼吸音が木霊する。恐らく二人の間では、お互いの拍動の音も聞こえて、さぞ五月蝿いだろうと思われる。

「はふ、はふぅ〜。すごい、いっぱい〜」
「ふぅふぅふぅ……」

 うっとりと下腹部を撫でるアメニィとは対照的に、ジョエクは荒い息を吐きながら、アメニィの足を掴んで動かしていく。

「はふ……あれ?」

 アメニィが何かされているなと気が付いたときには、ジョエクと彼女の位置関係は、後背位の姿になっていた。

「うぐるぅぅ〜〜〜」
「え〜、そんなぁ〜」

 正気を失ったジョエクの唸り声を背後に聞きながらも、アメニィの顔は終始嬉しそうなまま。
 そして繋がった状態のままで、位置関係だけを変えた、第二回戦が二人の間に始まった。

「あひゅあひゅ、すごいすごぃ〜〜!!」
「うごぅぐおおお!」
「そこぉそこがいいのぉ〜〜……もっとぐりぐりぐりぐり〜〜〜!」
「ふおぉふおおぉお!!」
「ひゃぁぅ。うで、うでつかまれて、はげ、はげしくなったぁ〜〜!!」
「うぐうぅううううう!!!」
「でてるぅ、でちゃってるぅ……まって、だしたまま、ずこずこしちゃ。ああぁんぅ、今度は立ったまま向き合うのぉ〜〜……」

 そのまま三回戦四回戦が始まって終わり、お互いが仲良く同時に気絶したのは、中天にあった日が落ちて更に日が昇った所であった。

 
13/09/22 06:34更新 / 中文字

■作者メッセージ

というわけで、ゲイザーさんでした
待ちに待った単眼娘さんなので、軽く張り切ってみましたがいかがでしたでしょうか。

ネタ方向で、『パワードゲイザーさん』とか『一眼レフ娘』とかも思いつきましたが、流石にアレなので取りやめましたw

それではまた次回のSSにてお会いしましょう。
中文字でした〜 ノシ

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33