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狂乱祭
 目の前を炎と火花が飛び交っている。武者の口から炎が噴き出され、手に持った槍から砲火が打ち出されているのだ。あちらこちらで爆発が起こり、火の手が上がる。
 辺りは、逃げ惑う人々であふれている。右へ左へと、滅茶苦茶に逃げ回っている。中には、服に火が付いている人もいた。家から爆発とともに飛び出す人もいる。家の中に砲火が飛び込み、爆発したからだ。
 武者の乗った車がぶつかり合い、車の破片が飛び散り、人が転げ落ちる。何人かの者は、車から車へ飛び移り、相手の車に乗っている者に殴り掛かる。
 金色に髪を染めてサングラスをかけた男が、巨体を持つ者に振り回されていた。まるで砲丸投げの様な振り回し方だ。緑色の肌を持つ巨人は、哄笑を上げながら振り回している。
 俺は呻き声を抑えられない。何故こうなったのだ?これは、単なる祭りのはずなのに。

 祭りは、以前とは変わってしまった。魔物娘達が参加するようになったからだ。外国人が日本人の祭りに参加するだけでも、祭りは変わる。ましてや、魔物が参加したら大きく変わる事は当然だろう。
 俺の参加する祭りは、地域によって行われて市が支援している。地域社会に魔物が住み始め、魔物娘の経営する企業が地域に浸透している。それにつれて、魔物娘達は祭りにも参加し始めたわけだ。
 魔物娘達は、地域に溶け込もうと努力を重ねている。人間とは異質である彼女達が、人間社会に溶け込むことは難しい。だが、彼女達は特異な力を持ち、それを人間社会の為に惜しみなく使う。その結果、少なくとも俺の住む地域では受け入れられつつある。
 俺の勤めている魔物娘の会社も、祭りに参加する事となった。その会社は、祭りの行われる地域にあり、地域のある市内で活動している。会社のこれからの活動を考えると、祭りに参加したほうが良いわけだ。

 俺は、ガウナと共に祭りの準備に励んでいた。ガウナは、俺の同僚であるオーガだ。オーガとは、巨体を持つ鬼の様な魔物娘だ。緑色の肌をして、頭に黒い角を生やしている。怪力を持つことでも知られている。
 俺達は警備会社に勤めており、ガウナは俺の先輩にして同僚だ。共に警備の仕事をしている。そして、俺の私的なパートナーでもある。
 俺は、太鼓の練習をしながらガウナを見た。ガウナは、山車を引く練習をしている。二メートルを超える巨体を持ち、筋肉質な体をしている。彫の深い整った顔をしており、汗で濡れた体には官能的な魅力があるのだ。
 俺は、ガウナの汗の匂いを嗅ぐと、ペニスが勃起しそうになる。俺は、ガウナと繰り返しセックスをしてきた。その体の魅力は十分わかっているため、ガウナの汗の匂いを嗅ぐだけで勃ってしまうのだ。
 セックスの誘いをしてきたのは、ガウナだった。仕事の最中に俺に抱き付いてきて、そのままやってしまったのだ。何でも俺のそばにいると、やりたくて仕方が無くなるそうだ。普通だったらありえないだろうが、ガウナは魔物娘だ。パートナーがいない魔物娘は、側に男がいたらやりたくなるのだろう。
 それから、私的な時はもちろんの事、仕事最中でもガウナとセックスをした。普通の会社でこんな事をしたら首になるが、この会社は魔物娘の会社だ。パワハラは厳禁だが、セクハラは奨励するというふざけた会社だ。まあ、あまり仕事をさぼってセックスをすると、お仕置きをされるが。
「そろそろ休もう。冷たいものが飲みてえよ」
 俺は、ガウナの声で太鼓を叩くことを止めた。

 俺とガウナは、冷えたオレンジジュースを飲んだ。ビールを飲みたいところだが、もう少し練習をしたい。練習が終わるまでは、ビールはお預けだ。
 俺とガウナは、隣り合って座っていた。ガウナは、タンクトップにショートパンツ姿だ。腕や肩、胸元が汗で濡れて光っている。ガウナは、タンクトップの胸元をつかんで風を送っていた。股を開いて、汗で光る太ももをさらけ出している。ガウナからは、甘い汗の匂いがただよってくる。
 俺は、ペニスが勃起することをこらえていた。いくらセックスを繰り返した相手だとしても、簡単に勃起することは恥ずかしい。俺は、オレンジュースに意識を集中させようとする。だが、うまくいかない。俺の体は、ガウナの姿や匂いを楽しんでしまう。
 俺は、ガウナから目を離して太鼓を見る。俺は、つい苦笑いしてしまう。もう、太鼓を叩くことは無いと思っていた。祭りに参加することは無いと思っていた。
 俺は、祖父から太鼓を習った。祖父は、祭りで毎年太鼓を叩いていたのだ。俺も、子供のころは祭りに参加して、町内の山車に乗って太鼓を叩いていた。
 だが俺は、祖父の死と共に祭りに参加することを止めた。俺は不器用なガキで、町内のガキどもから馬鹿にされていた。町内の大人たちは、俺を馬鹿にするガキの側に付いた。その方が、町内のガキをまとめるのに都合がいいからだ。俺にとって、町内の連中はクソだ。祖父が死ぬまで我慢していたのだ。
 俺は、町内の連中と必要最低限の付き合いしかしていない。挨拶もせずに、お互いに無視しあっている連中もいる。町内は、今年も山車を出して祭りに参加する。だが、俺は少しばかり寄付を出しただけで、それ以上の協力はしない。本当は一円も出したくないが、町内で生活するためには仕方がない。
 俺は、ずいぶん久しぶりに祭りに参加する。俺の勤めている会社が祭りに参加しなければ、今年も祭りに参加しなかっただろう。魔物娘が住むようになって、俺の町内も変わってきた。それは悪くない変化だ。だが、それでも町内の山車にかかわる気は無い。
「どうした?ずいぶん険しい顔をしているな」
 ガウナが、眉をひそめて尋ねてきた。俺は表情を改め、何でもないと答える。
 ガウナは、いきなり俺の股間を愛撫し始める。ガウナの露出度の高い格好と汗の匂いに欲情していた俺は、たちまち勃起する。
「つまらない事を考えるな。気持ちのいい事をしよう」
 ガウナは、俺の勃起を見ながら笑った。

 俺は、ガウナと抱き合った。ガウナの体は、筋肉質なうえに胸は大きい。俺は、弾力のある体と抱き合う。ガウナの体は、汗で濡れてぬめっている。女の汗独特の甘い匂いで、俺は包まれる。
 ガウナは俺から体を離すと、素早く服を脱ぎ捨てた。筋肉による造形美を体現している裸体が露わとなる。ガウナは、間を置かずに俺の服をはぎ取る。俺達は裸になると、再び抱きしめあう。そして互いの体を愛撫する。ガウナの銀髪が俺の頬をくすぐる。
 ガウナは俺の頭をつかみ、自分の胸に俺の顔を押し付けた。ガウナの体は筋肉で硬いが、胸は柔らかく張りがある。汗で濡れた胸は、俺の顔を強く包む。硬い乳首が俺の顔を刺激する。俺は深呼吸し、ガウナの濃密な匂いを吸い込む。
 俺の顔からガウナの胸が離れた。ガウナは微笑むと、俺のペニスを胸で包んだ。胸を強く押し付けて、俺のペニスを揉む。胸は面白いように形を変え、俺のペニスを愛撫する。胸は汗で濡れており、俺のペニスを程よく滑らせる。
 ガウナは、胸の谷間から顔を出す俺のペニスに舌を這わせた。唾液をたっぷりと塗り付け、胸とペニスの滑りを良くする。亀頭と裏筋を舐め回しながら、胸の谷間でさおを扱く。ガウナは俺を見上げて笑い、鈴口を強く吸う。俺が出そうだと言うと、音を立てて吸い上げる。乳首を強く押し付けながら、俺のペニスを扱き上げる。
 俺は、ガウナの顔と胸に精液をぶちまけた。ガウナの健康的な緑色の肌に、白濁液が飛び散る。紫色の入れ墨の入った左頬が、精液で染め上げられる。形の良い鼻も、精液で覆われる。顔から滴った精液が、汗で光る胸を汚していく。
 俺の射精が終わった時は、ガウナの顔と胸は精液で汚れきっていた。俺はインキュバスとなっており、強い精力を持っている。人間だったころには考えられないような量の精液を出せるのだ。ガウナの顔からは、重い精液がゆっくりと胸へ滴っている。
 ガウナの顔と胸からは、むせ返る様な精液の刺激臭が立ち上っている。だがガウナは、嫌がるどころか喜んでいた。白濁液で汚された鼻をうごめかせながら笑っている。そんなガウナの姿を見て、俺の精力はたちまち回復してくる。
 俺は、ガウナの股に顔をうずめた。ガウナの股は、汗の匂いと愛液の匂いが混ざったもので充満している。俺は、その匂いを吸い込みながらヴァギナに舌を這わせた。ヴァギナからは、ねっとりとした液が次々と湧き上がる。銀色の濃い陰毛を舌でかき分け、ヴァギナに口を付ける。
 俺は体を起こし、ペニスをヴァギナにあてた。ガウナと対面座位の格好になり、そのままペニスを埋め込んでいく。ガウナは、歓喜の声を上げながら俺を抱きしめる。俺は、筋肉質な体の感触を味わいながら、肉の渦の中をペニスで楽しむ。
 俺は、ガウナと口を重ねて舌を絡めた。ガウナの口の中は、俺の精液の苦い味がする。ガウナの顔に大量の精液が張り付いており、俺の鼻を刺激臭が突き刺す。だが俺は、構わずにガウナと舌を絡めあう。
 俺は、ガウナの口から自分の口を離した。顔を下ろして、ガウナの右肩を軽く噛む。硬い弾力を俺の口で味わう。肩から口を離すと、二の腕を噛んでみる。筋肉の弾けそうな感触がする。ガウナは、笑いながら自分の腕を俺に押し付ける。
 俺は、ガウナの筋肉で覆われた体が好きだ。引き締まるべきところは引き締まり、盛り上がるべきところは盛り上がる。その様は、官能を掻き立てる魅力がある。ガウナの腕の盛り上がりや、割れた腹筋、引き締まった太腿が汗で濡れていると、俺のペニスは容易く勃起する。俺は、右手でガウナの腹筋を、左手でガウナの太腿を愛撫する。そして、ガウナの二の腕を口で楽しむ。
 俺は、ガウナの筋肉を楽しみながら、ガウナの肉壺で快楽を味わっていた。肉と蜜の渦が、俺のペニスを締め付けてくる。俺のペニスを追い込んでくる。俺は、ガウナの右腋に顔をうずめ、くぼみに舌を這わせる。ガウナの匂いと味を堪能しながら、くすぐったそうに身をよじるガウナをペニスで突く。
 俺とガウナは、同時に弾けた。俺がガウナの中に精液をぶちまけると同時に、ガウナは俺のペニスに熱い潮を放った。俺達は互いに液をぶつけ合いながら、快楽の渦の中であえぎ、声を上げていた。ペニスが、腰が、全身が熱と快楽で侵されていく。
 俺達は、快楽の戦慄が通り過ぎるまで、抱き合いながらあえいでいた。痙攣はゆっくりと収まっていく。俺は、快楽の渦が収まるのを待ちながら、ガウナの体の感触を、匂いを、味を楽しむ。
 俺とガウナは、顔を見合わせて笑う。俺達は、口を重ねあった。

 こうして俺とガウナは、セックスにのめり込みながらも祭りの準備を進めていた。俺は、今度の祭りを楽しみにしていた。町内のクソ共と衝突せず、祖父と楽しむことが出来たころの祭りを思い出していた。
 俺は、魔物娘のことをもっと知るべきだったのだろう。そうすれば、あの騒動のことを予測出来たかも知れないのだ。

 祭りは、例年以上の賑わいだった。魔物娘達が祭りに続々と参加したからだ。地域に溶け込むには、祭りの様なイベントを利用するのが手っ取り早いのだ。
 祭りの実行会も、魔物娘の参加に積極的だ。魔物娘が祭りに参加すれば、地域振興に役立つと考えているらしい。俺の住む県は、過疎化が進んでいる。県都も縮小を続け、他の市町村は消滅の危機を迎えている。地域振興のためには、手段を選んでいられないというのが実情だ。それで反対意見を押し潰して、魔物娘の参加を推進した訳だ。
 俺は、祭りのために続々と出てくる山車を見渡した。山車は大きな物であり、高さは五メートルほど、幅は三、四メートル、長さは十メートル近くになる。山車には、複数の武者の人形が乗っている。人形は、それぞれ等身大よりも大きく、鎧兜姿や半裸の姿で見得を切っている。物によっては、龍や虎の人形が乗っている。
 この祭りは、戦国時代にこの地域で起こった合戦に基づいて行われるようになったものだ。そのために武者人形を乗せた山車が出るわけだ。現在では、前九年、後三年の役、源平の合戦、太平記、戦国時代の各合戦を描いた山車が出ている。妖怪退治を描いた山車もある。
 この山車が、六、七十人の引手によって牽かれていくのだ。太鼓や笛で拍子をとり、引手が掛け声を上げながら引いていく。観客は、二,三メートルの近さで見ることが出来るため、なかなかの迫力だ。
 山車は、例年だと三十台くらい出る。今年は六十台以上出るそうだ。魔物娘達が参加をしているために、山車が増えたのだ。山車を持っていても維持費の関係で、数年に一度しか祭りに出せない町内もある。その町内に、魔物娘達が金を寄付したのだ。曳き手の足りないところには、魔物娘達が曳き手として参加した。しかも、魔物娘の団体や企業が山車を作って参加を希望し、実行会がそれを歓迎したのだ。それで山車の数が倍に膨れ上がったのだ。
 俺は、例年にない壮観な光景に嘆声を上げる。この祭りがこれほどまでに規模が大きくなったことは無い。ただ、魔物娘の作った山車を見ると、微妙な気分になる事も確かだ。元の祭りから離れているのではないかと思える山車が多いのだ。
 例えば、俺達の会社が出す山車だ。山車には四体の人形が乗っていて、合戦を演じている。だがその人形のうち、一体はオーガ、一体は牛の魔物娘ミノタウロスだ。それぞれ半裸の格好で、メイスや戦斧を構えて見得を切っている。対する二体の人形は、鎧をかぶって剣を構えた武者だ。中世ヨーロッパの鎧を、和風にアレンジしたような格好だ。
 何でも、ガウナ達が元いた世界の合戦を描いた山車らしい。魔王軍と、反魔物国家連合軍の合戦を描いたそうだ。このオーガとミノタウロスは、武闘派の魔物娘の指揮官らしい。対する人間の武者は、反魔物国の将軍らしい。合戦は魔王軍が勝ち、このオーガとミノタウロスは、人間の将軍をおいしく頂いたそうだ。
 まあ、この祭りは、日本中の合戦を節操なく描いた山車が出る。だったら、異世界の合戦を描いた山車が出てもいいかもしれない。
 山車はどんどん出てきて、道路で曳かれていく。それぞれの山車は、数十人の引手が掛け声を上げながら引いている。掛け声も曳き方も荒々しい。この曳き手の中には酒を飲みながら曳く者も多く、祭りが始まったばかりだというのに既に一杯やった者もいるようだ。今はいいが、祭りが進むにつれて山車の進み方がおかしくなる。
 曳き手たちの格好も、なかなかユニークだ。法被を着ているのは普通の祭りと同じだが、髪形やメイクが普通では無い。金色に染めた髪をリーゼントにした男、赤く染めたモヒカン刈りにした男などがいる。彼らは青や緑のサングラスをかけている。女達の中には、デスメタルみたいなメイクをしている者もいる。
 彼らは、たぶん祭りの時だけこのような格好をするのだろう。もし普段からこんな恰好をしているとしたら、どんな仕事に付き、どんな生活をしているのだろうか?ちょっと想像し辛い。
 それに対する俺達の格好もすごい。俺達は、紫色の地に金色の糸で刺繍された法被を着ている。しかも、日本と西洋をごちゃ混ぜにしたようなデザインだ。髪は、魔界製の整髪料で逆立てられている。魔物娘の長い髪が逆立っている様は、昔のロックバンドの様だ。ガウナ達の様な筋骨たくましい魔物娘がこのような格好をすると、間違いなく人目を引く。
 俺達の山車が出発した。俺は山車の上で太鼓を叩き、ガウナは山車を太い綱で曳いている。ガウナの他にも、オーガやミノタウロス、猛犬の魔物であるヘルハウンド、そして人間の男達が曳いている。他の山車の引手に負けずに、野蛮な掛け声を上げている。
 こうして祭りは始まったのだ。

 山車が進むにつれて、魔物娘の山車も目立ってきた。やはり魔物娘の山車と恰好は、目を引く。
 エロス教団の山車が出てきた。エロス神の教えを広めようとする教団で、魔物娘主体の教団だ。山車には、天女と戦士の人形が乗っている。褐色の肌の天女の人形が、戦に行こうとする男の人形に抱き付いて引き留めている。天女の人形は、露出度の高い薄物をまとい、裸よりも卑猥だ。
 山車を引いている男達のそばで、ビキニの様な服を身に着け、金色の装身具を付けた褐色の肌の女達が踊っている。彼女達はアプサラスという魔物娘で、エロス神の踊り子らしい。その官能的な格好と踊りは、サンバカーニバルのようだ。山車の上で、アプサラスに負けずに卑猥な格好をした魔物娘がいる。金の翼を持った、エロス神の楽師ガンダルヴァだ。彼女達は、ヴィーナという弦楽器で欲情を掻き立てる曲を奏でている。
 堕落教団の山車も出てきた。堕落神の教えを広めようとする教団で、こちらも魔物娘主体の教団だ。山車は黒色で、赤い色で縁取られている。山車には、黒い鎧を着た青い肌の女戦士の人形が乗っている。背には黒い翼が広がっている。ダークヴァルキリーという魔物娘の人形だそうだ。そのダークヴァルキリーの人形は、騎士らしき男の人形にしなだれかかっている。
 その山車には、本物のダークヴァルキリーや、堕落神の聖職者ダークプリースト、堕落した天使ダークエンジェル達が乗っていた。彼女達は半裸であり、その格好で山車の上に寝転んだり人形に抱き付きいている。手足を変な方向に曲げて、身をよじっている。その様は、土方巽の暗黒舞踏のようだ。
 その後から、やけに小さな山車が曳かれてきた。少女達が山車を曳いている。山車には、山羊の角を持ち、手足を獣毛で覆われた少女の人形が乗っている。その人形は、サバトの主催者バフォメットらしい。その人形そっくりな少女が、山車の上で音頭をとっている。山車には「兄さまLOVE」と大書してある。
 山車を曳いているのは、可愛らしい少女達だ。金色や茶色、赤色の髪をして、青色や緑色、紫色の瞳をしている。その髪は染めた物でも無しい、瞳もカラーコンタクトではないようだ。彼女達は、バフォメットに使える魔女らしい。少女達の中には、黒い翼と尻尾を振りながら山車を曳いている子もいる。彼女達は、ファミリアという使い魔らしい。魔女とファミリア達は、バフォメットの音頭に従って可愛らしい掛け声を上げている。
 中華の魔物娘達の山車も出てきた。山車の人形は、三国志を演じていた。劉備、関羽、張飛の義兄弟が、猛将呂布と戦っている。人形は、京劇の物を日本風にアレンジした感じだ。少々違和感はあるが、結構祭りにあっている。
 山車は、人虎、火鼠、カク猿達が曳いていた。彼女達は、日本と中華を合わせたような法被を着ている。露出度は高く、人虎の割れた腹筋が露出している。人虎の筋肉質の体は、オーガやミノタウロスに勝るとも劣らない。その人虎が山車を曳けば、迫力がある。
 もちろん日本の魔物娘達も参加していた。彼女達の曳く山車は、祭りの元となった合戦を描いたものだ。半裸で髪を振り乱した武将が、見得を切っている。俺は人形や山車については詳しくは分からないが、昔ながらの山車を再現した物らしい。
 山車を曳いているのは、アカオニ、アオオニ、ウシオニといった武闘派の魔物娘だ。オーソドックスな法被を着て、激しい掛け声を上げながら山車を曳いている。彼女達のたくましい体は、半被の上からでも十分わかる。オーガと肉弾戦をやったら、見ごたえのある勝負をするだろう。
 沿道や周辺の人家から見ている観客は、魔物娘の山車を喜んでいた。元々この祭りは見ごたえがある。魔物娘が参加することで、見ごたえは二倍どころか三倍、四倍となっている。
 実行会の人達は、祭りの成功を確信して喜んでいるようだ。反対意見を押し切ったかいがあったと考えているのだろう。
 そう、この調子でいけば成功だったのだ。

「そろそろ本当の祭りを始めるか!」
 ガウナは、山車に乗って楽しげに言い放った。俺は、首を傾げながらガウナを見る。何をするつもりなのか分からない。打ち合わせには無かったはずだ。
 だが、他の魔物娘の曳き手達は、「おおー!」と心得顔で掛け声を返す。俺と同じ人間男の曳き手や奏者達は、怪訝そうな顔をしている。
 突然、俺達の山車から爆発音が響き渡った。オーガ人形のメイスとミノタウロス人形の戦斧から火花が出ている。そこから火の玉が次々と発射され、他の山車にぶつかって爆発している。山車から打ち上げ花火を水平発射しているのだ。花火が炸裂した山車から、人々が転げ落ちる。「ヒャッハー!」とガウナは歓喜の声を上げ、花火を発射している。
 オーガとミノタウロスの人形は、口から火を噴き始めた。火炎放射器の様に、辺りに火を噴きつける。沿道の人々が悲鳴を上げながら逃げ惑う。「汚物は消毒だ!」とガウナは叫んでいる。
 逃げまどう山車と人々で、叫喚が渦巻いている。山車の中には操作を誤り、人家に突っ込んでいる物もある。木造住宅が、木端を上げて粉砕されている。
「どういうつもりだ!テロでもやるつもりか!」
 俺は、ガウナに喚く。
「祭りっていうのは、騒動になるくらいでなければつまらないんだよ!」
 ガウナは、楽しげに吠える。
「警察沙汰にするつもりか!」
 祭りは、警察官が警備している。警察官が、すぐさま俺達の山車に向かってきた。
 山車から花火が発射される。警察官たちのそばで、次々爆発していく。警察官達は、地面を転げまわる。
 俺は、頭を抱えたくなった。ガウナのやっている事は、言うまでもなく犯罪だ。しかも、俺まで巻き込まれている。
 その時、一台の山車が俺達に向かってきた。アカオニ、アオオニ、ウシオニ達が曳いている。激しい怒気を全身から放っている。
「ヤンキーども、よくも日本の祭りを汚してくれたな!」
 アカオニが吠えている。ヤンキーとは、ガウナ達の事か?ガウナは、アメリカ人では無くて異世界の魔物だが。それとも不良という意味のヤンキーか?それは、当たっているような、間違っているような気がするが。
 アカオニたちの山車が火花を噴いた。火の玉が放たれ、俺達の山車にぶつかる。辺りに火花が飛び散る。俺は山車から飛び降り、地面に突っ伏す。アカオニ達の山車からも打ち上げ花火が発射されたのだ。
「お前らも同じことをしているじゃねえか!」
 俺は喚くが、双方の山車は花火と炎の打ち合いをしている。辺りには、花火の爆発と火炎放射器の噴射が炸裂する。まるで、どこかの世紀末映画だ。ガウナ達は、ウィスキーやウォッカをラッパ飲みしながら花火を発射している。向こうの山車では、アオオニが日本酒の一升瓶をラッパ飲みしながら発射している。
 この二台が暴れているだけだったら、警備の警察官にも鎮圧可能だったかもしれない。だが、他の魔物娘の山車も、騒動に参加し始めた。
「日本鬼子ども、中華の祭りを教えてやる!」
 人虎、火鼠、カク猿達の曳く山車が向ってきた。山車から、次々と黒っぽい物が発射される。発射されたものは、激しい炸裂音を響かせ、辺りを火花と煙をまき散らす。
「どうだ!中華の祭りは爆竹で始まり、爆竹で終わるのだ!たっぷりくれてやる!」
 辺りに爆発音が立て続けに響き、山車や人家、人が吹き飛ばされる。これは、爆竹というよりは爆弾だ。
「兄さまたち、ワシらの勇姿を見てくれ!」
 子供達に曳かれた山車が、騒動の直中へ飛び込んできた。山羊の様な角を持った少女に率いられた山車だ。
「引き返せ!大怪我するぞ!」
 俺は、子供山車に向かって叫ぶ。だが彼女達は、笑いながら突っ込んでくる。
 少女達は、ステッキの様な物を出す。子供向けのアニメに出てくる魔法少女が持つようなステッキだ。そのステッキから、赤、青、オレンジ、黄、緑、紫、ピンクなど様々な色の光の玉が放たれる。光の玉は炸裂し、辺りに七色の爆発を引き起こす。
 砲撃音と共に爆発が起こった。一台の山車が爆発炎上している。俺は、砲撃の音が起こった子供山車の方を見る。子供山車に乗っているバフォメットの人形は、大型の鎌を持っている。その鎌の部分が外れて筒状になっている。筒からは煙が出ていた。
「どうじゃ、57 mm 砲の威力は!チハたんが搭載していた物と同じじゃぞ!」
 バフォメットは、無い胸をそらしながら叫んでいる。
 俺は、呻き声を上げながら頭を抱えた。これではもはや戦争だ。
 戦場と化した祭りの会場に、エロス教団の山車がやってきた。山車に乗っているガンダルヴァがヴィーナを奏でている。俺は、救い主の登場に歓喜の声を上げる。ガンダルヴァの演奏は、人々の戦いへの気持ちを萎えさせるものとして知られる。彼女達の手で、騒動は収まるかも知れない。
 だが山車同士の戦闘は、どんどん激しさを増していく。よく聞くと、ガンダルヴァの演奏は闘争心が沸き上がるような激しいものだ。ガンダルヴァは、騒動を煽っているのだ。俺は、再び呻き声を上げ始める。
 エロス神の山車には、エロス神の天使であるキューピッドが乗っていた。彼女は、次々と矢を放っている。矢で射ぬかれた男女は、爆発音と炎が荒れ狂う中でセックスを始めた。服の脱ぎ散らかして、激しく抱き合っている。最早、祭りの会場は混沌の世界と化してしまった。
 この闘争の世界で、堕落教団の山車は平然としていた。ダークヴァルキリーやダークプリースト、ダークエンジェル達は、半裸の姿で地べたや山車に横たわり、体をくねらせて踊っている。戦場のさなかで暗黒舞踏を演じているのだ。ここまで来ると、シュールという言葉では表現できない異常さだ。
 俺は、祭りから逃げ出すことにした。もう付き合いきれない。今頃、県警機動隊が向ってきているだろう。この馬鹿どもと一緒に逮捕されてはたまらない。それ以前に、祭りによって俺の命が危ない。
 逃げようとする俺の目の前を、オーガが走って行った。俺とガウナの同僚のオーガだ。オーガは、金髪リーゼントの男に襲い掛かった。どうやらこの金髪リーゼントは、山車から放り出されて地面を這いつくばっていたらしい。オーガは、自分の半被の前を開け、ズボンを脱ぎ捨てる。そして、金髪リーゼントの半被をひん剥き、ズボンをパンツごと脱がして放り投げる。
 オーガは、金髪リーゼントのペニスをしゃぶって強引に勃起させる。そして、即座に自分のヴァギナの中へ飲み込む。オーガは、金髪リーゼントを逆駅弁しながら走り回りだした。その挙句、ヴァギナでペニスを銜え込みながら、金髪リーゼントを振り回し始めた。
 金髪リーゼントは、喚き声をあげながら振り回されている。オーガは、砲丸投げの要領で金髪リーゼントを振り回しているのだ。ただ、その砲丸を投げ飛ばそうとはしない。哄笑を上げながら、金髪リーゼントと交わりながら振り回し続けている。
 俺は、逃げる事を忘れてその光景を見ていた。爆発と炎が交差する中、オーガが男を振り回してセックスしている。迫力がある上にエキセントリックな光景だ。俺は、目の前の光景をよく理解できない。ただ、砲丸投げの様に振り回されているにもかかわらず、乱れることが無いリーゼントを見ている。どこの整髪料を使っているのかと、馬鹿みたいなことを考えていた。
 ぼんやりと見ていた俺は、いきなり羽交い絞めにされた。ガウナが、俺を強く抱きしめている。逃げようとしていた事を思い出して身をよじる。だが、怪力の持ち主であるガウナを振りほどく事は出来ない。
「あたしもみなぎっていたぞ、やらせろ!」
 ガウナはそう叫ぶと、俺の半被の前をはだけさせ、俺のズボンをむしり取る。トランクスもむしり取り、俺の股間を露わにする。
 ガウナはひざまずくと、俺のペニスをいきなり奥まで飲み込んだ。そして激しくしゃぶり始める。激しいだけでは無く、俺の弱点を知り尽くしたフェラチオ責めに、俺のペニスはたちまち固くなる。
 ガウナは自分の半被の前をはだけ、ズボンを脱ぎ捨てた。ガウナは、ズボンの下に白い越中ふんどしを締めていた。ガウナの愛液と汗で、白いふんどしは透けている。ガウナは褌を引っ張ってずらし、濡れたヴァギナを露わにする。ヴァギナは、爆発と炎に照らされて光っていた。
 俺のペニスは、ガウナのヴァギナに飲み込まれた。肉の渦に奥まで引きずり込まれ、強く締め付けられる。ガウナは俺をしっかりと銜え込むと、俺を持ち上げて辺りを走り始めた。逆駅弁の格好で、爆発と炎が交差する中を走っているのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
 ガウナは雄叫びを上げると、俺をヴァギナで銜え込んだまま振り回し始めた。ガウナは砲丸投げの要領で自分が回り、俺を振り回しているのだ。
 俺の目の前で世界が回った。爆発と炎、光の炸裂が回る世界で繰り広げられている。炎が舞い上がり轟音が響くたびに、山車や人家、人が吹き飛ぶ。その最中で、法被姿の魔物と人間が交わりあう。金髪リーゼントが円を描いている。俺も円を描いている。
 俺は混沌と無秩序の中で、ガウナの哄笑を聞いた。それは、ガウナが心底楽しい時に上げる笑いだ。半裸のガウナの体は、汗で濡れて光り輝いている。たくましく美しい雌鬼の姿だ。俺は、回る世界の中でガウナの歓喜の笑いを聞きながら、精液をぶちまけた。

「せっかく祭りを盛り上げたのに、なんでこんな所にぶち込まれるんだ。お役人は野暮だな」
 ガウナはぼやくが、俺は同意出来ない。当たり前の結果になっただけだ。あんな騒ぎを起こしたら、警察に捕まって留置所へ入れられる。
 俺は、これからの事を考え憂鬱になった。ガウナのやった事は、明らかに犯罪だ。凶器準備集合罪だの、騒乱罪だの、傷害罪だの、どれだけの犯罪を起こしたか分からない。自業自得とはいえ、ガウナに臭い飯を食ってほしくはない。
 それに俺の事でも気が滅入る。俺は、巻き込まれただけだと取り調べの席で主張している。だが、取り調べの刑事は、俺をガウナの共犯者として取り調べているのだ。たまったものではない。それでガウナと共に留置所にいるわけだ。俺は、留置所の殺風景な壁を見てため息をつく。
「まあ、いいや。ここから出たら、また祭りを盛り上げよう」
 ガウナは明るく言い放つ。俺は目眩がしてきた。ガウナは全然懲りていない。馬鹿に懲りろと言っても無駄なのだろう。
 俺は、何も言わずに目をつぶった。

 ところが、この後におかしな事になった。ガウナ達のやった事が評価されたのだ。
 俺達が参加した祭りが、この騒動で全国に知れ渡ったのだ。そして、荒ぶる祭りとして賛美されたのだ。ネットでは、マッド○ックス祭りと呼ばれて持ち上げられている。すでに、次の祭りの開催を待ちわびている連中が、全国にいるそうだ。
 魔物娘が、騒動を起こしながらも意外と良い対処をした事も、評価される理由だ。祭りでは、あれほどの騒乱になったにもかかわらず、死者はいなかった。魔物娘にとっては、死者を出すことはご法度だ。騒動で死者を出さない配慮が行われたそうだ。
 さらに、魔物娘の各団体は、被害者にきちんと補償を行ったのだ。ずいぶんと怪我人やぶっ壊れた物も多かったが、それらに補償をしたのだ。俺達の会社も、補償金を出したそうだ。
 祭りの実行会は、次の祭りでも魔物娘を参加させる事を決定したそうだ。派手な祭りで地域振興が出来ると踏んだらしい。知事や市長も乗り気だという話だ。ただ、県警は猛反対しているらしい。地域住民は、賛成派と反対派に分かれている。
 俺は、俺達の会社の事が気になった。かなりの補償金を払い、しかも前科者だらけになってしまったのだ。会社はつぶれるのではないか?
 ところが、俺達の会社は新しい事業を始めた。イベント業を始めたのだ。全国の祭りに参加して、盛り上げる仕事を始めたのだ。
 俺としては呆れるしかない。祭りを盛り上げるのではなくて、ぶっ壊すことになるだろう。さらに呆れたことに、全国から仕事の依頼が舞い込んできた。派手な祭りを行い、地域振興をすることを画策している者が続出しているのだ。俺達の会社は、さっそく依頼に飛びついた。俺とガウナは、イベント事業部に異動させられた。
 地域振興が成功するかどうかは分からない。ただ言える事は、日本の祭りは大きく変わるだろう。狂乱祭が全国各地で行われるのだ。
15/08/16 00:57更新 / 鬼畜軍曹

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