連載小説
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第7回 後編

エル「そう言えばクレイベルはんが言うてましたなぁ〜。」

友華「何をでっか?」

エル「快適な環境は時として人をアカンようにすることがあるんやって。」

ユリア「まさにその通りですね〜」

友華「ほんまや〜、わて…もうここから一歩も動きとうないわ〜」


ファーリル「要望に応えてコタツを導入してみたんだけど、
      やっぱやめたほうがよかったかな?
      おーい三人ともー。そろそろ収録始まるからしゃきっとしようね。」

エル「そんなせっしょうな〜、もうちっとはんなりさせてくれんと〜」

友華「おこたで食べるミカンは最高やがな〜」

ユリア「ほうじ茶が入りましたよ♪」

ファーリル「…………………ま、いっか。」


エル「しかし、こないに便利な道具があるやなんて、
   ジパングの文化もあなどれんどすなぁ。」

友華「もうすぐ年越しやさかい。わてら日の本人…もといジパングの人は
   大晦日にはおこたで除夜の鐘を聞きながら、年越し蕎麦食べたりするんや。」

ユリア「オオミソカ…ですか。変わった風習があるんですね。」

エル「ユリスやと、年始の月と年末の月の間に『白曜の一日』いうて
   どんな人でも仕事をせんでええ日があるんどすが、
   それと似たような習慣のようやな。」

友華「そう言えば、わてこの放送の収録が終わったら
   作者(チェチェ様)に『くりすますぱーてぃー』に呼ばれてるんやけど、
   エルはんの世界にもそないな行事がありまんの?」

ユリア「残念ながら、私達の時代にはまだクリスマスはないんですよ。
    ちなみにバレンタインデーも本当はないのですが、ネタということで。」

エル「クリスマスが今の形になるんは、うちらの時代から約1000年も後なんどす。
   しかも反魔物国ではクリスマスを祝ったりはせえへんそうどす。」

友華「さよでっか〜。うちも『くりすます』は初めてやさかい。
   もしかしたらエルはんたちのほうが知っとると思ったんやがなぁ。」

ユリア「ですが、聞いた話では……たしかクリスマスには『サンタさん』が
    よい子に無償でプレゼントを配っているみたいですよ。」

友華「ほんまかいな?」

ユリア「どうなんでしょう。真偽のほどは確かではありませんが、
    親魔物国では普通に信じられているそうです。
    ただし、夜…家の人が全員寝静まらないとこないそうです。
    サンタさんはよほど恥ずかしがり屋なんでしょうね。」

エル「不思議な人どすなぁ。家に不法侵入してまでプレゼントを配るやなんて。」

友華「ん?そう言えばジパングでも似たような人たちがおったな。」

ユリア「あら、どんな行事ですか。」

友華「悪いこんした人がいたら、おさむらいはん四十七人がかりで
   お家を襲撃しにいくこんがあるんやて。」

エル「なにそれこわい。」


※参謀本部注:友華ちゃん…それクリスマスじゃなくて赤穂浪士の討ち入りです…




ユリア「では、時間もだいぶ進みましたので次のコーナーに行きましょう。」




―――――『おいでませ!マインシュタット!』――――――





エル「はて、タイトル変わりよったんどすな?」

ユリア「はい。ユリス語(ドイツ語)にしてみました♪
    でもやる内容は変わりませんのでご安心ください。」

友華「何をするコーナーなんやの?」

エル「このコーナーは、リスナーが住んでる村や町について

   宣伝も兼ねてこの場で紹介していくことが目的どす。」

ユリア「では、今日紹介する都市はこちらです。」





――――――――《ライン》――――――――




ユリア「作者様の一人であらせられます、星村空理様からの投稿です。
    異世界貿易街と呼ばれる特殊な親魔物領街で、
    異世界の物品を独占し、それをつかった貿易によって栄えています。
    これといった特産品はないそうなのですが、物によっては
    絶対に手に入らないような珍しいものが並んでいる時があるため、
    考古学者や冒険家達にとっては宝物庫のような存在なのだそうです。
    元々一帯は大平原だったそうですが、領主さまのご先祖が館を立てて
    その周りに建物を建設していった結果、
    現在のような中規模の円形街になったそうです。」

友華「この絵の街がラインやの?」

ユリア「画像はあくまでイメージです♪違うところも多々あるかと存じますが
    星村様におかれましてはどうかご容赦のほどを。
    街の作りは中世ヨーロッパ風で、住宅は石造りのものが一般的なのですが、
    一部の建築物はどこか時代を超越した作りをしていることもあるそうです。
    町に入るための許可証の類などは一切なくとても開放的な社会です。
    中心には領主であるテベルナイト家の屋敷がありまして、そこから放射線状に
    大通りが東西南北に伸びています。四つはそれぞれ……
    南・商店が多く集まった商業中心のヤバザ通り、
    西・住宅が多く学校もあるツイア通り、
    東・主に自警団の詰め所や冒険者ギルドの集まっているアダマ通り、
    北・緑が多くまたテベルナイト家と同じだけの力(地位)を持つ
    ある一族の住むハラバ通り……で構成されています。
    そのほかにも教会や学校、孤児院など様々な公共施設が備わっています。」

エル「星村様が執筆なさってはるお話の多くがこの街を舞台としているんどす。
   【喫茶店『アーネンエルベ』の日常】が有名なんやけど、それ以外にも
   【風使いと古の魔女】の起点になっとったり、【聖夜異軸録】いう話では
   主人公とヒロインたちがラインに引っ越してきたりしたんどすえ。」

友華「一つの作品にとどまらんで、複数の世界観の基礎になっとるんやなぁ。」

ユリア「ええ、そのため共通軸がぶれないよう、
    しっかりとした設定がなされているんですよ。」

エル「その中でもとくに重要なのが『魔法使い』の存在なんどすわ。」

友華「魔法使い……うちの故国ではあんまりみかけへんが(ジパングは妖術使い?)
   大陸を旅しとった時には何人か会うたなぁ。手から火や雷放っとったで。
   わても小雪はんと修行してた時にはいくつか妖術も使えとったし。
   あんまり珍しいことじゃないんとちゃう?」

エル「う〜ん、友華はんの言うとる『魔法』とラインにおける『魔法』は
   ちょいと性質が異なるんやさかい。図鑑世界の魔法は『魔力』を
   燃料として用いてさまざまな現象を引き起こす力のことやね。
   けど、それとはまた別に…有形無形問わずエネルギーなしで
   『奇跡』を起こすことができるのがライン独自の『魔法』なんどす。」

友華「…ええっと、エネルギーなしで奇跡を起こす?なんやのそれ?」

ユリア「そうですね、もう少し簡単に説明しますと
    魔法…ここから先は便宜上『魔術』としておきますね。
    魔術はいわば人が持ってる才能の延長線上にあるものらしいです。
    魔法も確かに才能に大きく依存しますが、『ファイア』の魔法くらいは
    才能がイマイチな人でも一生かけて習得することは可能です。
    ですが魔術は『その人限りの特殊能力』ですので、力を他人に譲ることも
    他人に教えることもできません。遺伝は可能らしいのですが。
    ただし、エネルギーを必要としない代わりに、術の使用と等価交換で
    『その人限りの欠点』ができてしまうそうです。」

エル「うちらも詳しいことはよう分かっとらへんのどすが、
   魔法を使っても起こせへんような事象に干渉できるんやとか。」

友華「えらい不思議やさかいな。せやけどちょいと気味悪い気も…」

ユリア「そうなんですよね。こういった得体の知れない力を持っている人々は
    往々にして畏怖されるか迫害されてしまうのです。
    そこで、ご自身も魔法使いのこの街の領主様が、
    各地で冷遇されていた魔法使いをこの地に集めたのが
    そもそものこの街の始まりなんだそうです。」

友華「同じ境遇の人が集まれば、そら心強いやろな。
   うちも大陸を旅しとるきわに、たまたま同胞に会えたらめっちゃ嬉しいさかい。」

ユリア「そして今では、皆さん長所を生かしてお互い支え合いながら暮らしています。
    たまに近隣の反魔物諸国から攻撃を受けることもあるそうですが、
    その都度簡単にあしらわれてしまうそうです。そのせいか、
    反魔物国からは要塞でもないのに『不沈の街』などと仇名されているそうです。
    そのほかにも、原始的に作ることが不可能な物が作れたり、
    はるか以前に亡くなった人が目撃されるなど、まだまだ謎が多い街でもあります。」

エル「うちらの活躍しとる時代にはまだ街が出来てなかったらしいんやけど、
   なぜか極稀にラインに行ったことがあるいう奴もいるんや。
   詳しゅう聞こうにも証言がばらばらでややこしのどす。」

友華「エルはんは行ったこんあるの?」

エル「うちは『英雄の羽』作中では一切知らへんな。
   でも参謀本部のキャラの一人として何回か顔を出したことはありますえ。」

ユリア「私も本編では特に関わりませんが、私用で遊びに行ったことはありますよ。」

友華「なんや、行こうと思えば簡単に行けるんやな。」

ユリア「私達には一応特殊なつてがありますからね。特に南大通り…
    ヤバザ通りはあらゆる店が並んでいますので歩くだけでも楽しいですよ。
    エルフさんの夫妻のパン屋さんやサイクロプスさんの鍛冶屋さん、
    喫茶店のアーネンエルベもこの通りにあるんですよ。
    どのお店もおしゃれな外装で、とっつきやすいかと思います。」



エル「で、冒頭でもいってはったように、ラインは異世界貿易街と呼ばれてるんどす。
   実際どないなもんがあるか気になったさかい、ファーリルはんに
   珍しいもんを片っ端から買うてくるように言うておきましたわいな。」

ファーリル「はいはーい、色々あるから好きなのを見て行ってね。」


ドサッ


友華「まぁ、えらいぎょうさん買うてきたんやな。
   これはなんやろ?……筒みたいな形しとる、それと透明の板?
   はて…(覗いてみる)…お?おおお?なんやこれ!?
   エルはんの顔が大きくみえよる!?」

エル「…?ちょいとうちにも貸してみ。……ここを覗くんか?
   ……おう!なんや外の庭園が間近に見えよるわ!
   便利やなこれ!戦の時に偵察がぐっと楽になるわいな!」

ユリア「これは望遠鏡というそうです。クレシス放送局には配備されていないそうです。
   あら、私はこれなんか興味深いですね。『サクマドロップ』と書いてあります。
   ドロップと言うことは飴の一種でしょうか……
   蓋が硬いですね。エルさんお願いします。」

エル「ふんっ(ぱこん)開いたで。何が入っているんやろうな…っと。」

友華「やっぱ飴みたいやな。せやけどみんな色がちがいまんな。」

ユリア「では全員で一粒ずつ。私はせっかくですからこの赤いのを。」

エル「ん……めっちゃうまいわ♪この甘さが最高やわぁ。」

友華「何の味やろなこれ?少し酸っぱいけど、それが口の中に広がると
   なんともいえへん幸せな気分になりまんなぁ。」

ユリア「では…これはなんでしょう?
    ファーリルさんが言うには武器の一種だそうですが……
    太い槍のような形状をしていますが先端が丸みを帯びていますね。
    これでは敵を突けませんね。メイスみたいに殴打するのでしょうか?」

エル「!!あかんユリアはん!それは危険な武器やさかい!
   慎重にいらってくんなはれや!」

ユリア「え…えっと、何なのでしょうこれは?」

エル「それは対戦車躑弾銃(パンツァーファウスト)や!その先端の丸っこいのは
   爆発物どすえ!威力は大したこんあらへんが、それでも危険どす!」

ユリア「そ、そうなんですか!では…慎重に扱いますね。」

友華「あり?招き猫もあるんやね。」

エル「なんやのそのもっさい猫のような置物は?」

友華「ジパングでは有名な幸運を呼ぶ置物やさかい。
   これを玄関に置くと商売繁盛するんやそうな。」

ユリア「ユーモラスな雰囲気がかわいいですね♪」


ファーリル「あと、君たちが座っているコタツもラインで買ってきたんだよ。」

友華「おこたまで売っとるんかいな。もはやなんでもありやがな…」

ファーリル「それと……かなり気になったのがこれなんだけど。」

友華「おぉ、綺麗な石やなぁ。銀色に輝いとるで。
   おまけに触れてると落ち着くわ〜。」

エル「ま、まさかそれ『神竜石』ちゃうか!?
   なんでそんなモンが雑貨屋で売られてとんのや!?」

ファーリル「いやー僕も驚いたよ。まさかFEのアイテム…
      それも非売品が買えるなんてね。大分高かったけど。」

友華「どないにして使うんやろか。」

ユリア「それは…異世界のアイテムですので図鑑世界では使用できないかと。」



エル「さて、そんな不思議の街ラインなんやけど、行ってみれば分かるんどすが
   特に怪しい雰囲気もなくて、外の人にも友好的どす。」

ユリア「では最後に星村空理様からPRメッセージが届いています。」

   
星村空理:いろいろと珍しいものがありますし、全て……とまでいかなくても、
     ほとんどを受け入れる面白い街ですので、皆さん一度いらっしゃってください!



ユリア「だそうです♪異世界の住民も大歓迎だそうです。」

友華「うちも、もしかしたら行く機会があるやもしれへんな。」

エル「なお、星村空理様のSS【喫茶店『アーネンエルベ』の日常】では
   ただいまゲストキャラクターを募集してはります。
   興味がある方はぜひ一度ご覧になっておくんなはれ。」

ユリア「では、今回の『おいでませ!マインシュタット!』はここまでとなります。
    異世界貿易都市ラインの紹介でした。まだまだ募集しておりますので、
    紹介してほしい町や組織がありましたらご紹介ください♪」




―――――『オン・エル・バトル!』――――――



ユリア「では今回もオン・エル・バトル!』の時間がやってまいりました!
    エルさんとゲストが毎回お題を変えてバトルをします。」

友華「えー、今うちらは和室から移動して講堂にきよりました。」

エル「今回は何しはるんどすか?」


ファーリル「今日は友華さん自身からのリクエストで、
      エルと友華さんには剣道で勝負してもらうよ。」

エル「剣道やて?」

友華「いや〜、エルはんは強いんやって話を聞いたんで、
   剣士としていっぺん戦ってみたかったんや。」

ユリア「ですが真剣での勝負は危険ですので、
    ジパングで普及している『剣道』というスポーツで対決してもらいます。
    本当はダメなのですが、お二人ともせっかく着物を着ているので、
    胴や垂といった防具を着物の上に付けてもらいます。」

エル「ふむ、これが剣道の防具なんどすな。兜も被るんどすか?」

友華「それは兜やのうて面っていうんねん。」

エル「面…ね。仮面に近いんやろうか。」


…ただいま防具を装備中です…



ユリア「お二人とも防具の装備が完了したようです。」

ファーリル「さて、これから向かい合って試合……なんだけど、
      二人ともまだ武器を持たないでね。」

友華「んじゃうちは少し瞑想するさかい、試合になったら声かけてや。」

エル「うちは…型の確認をもういっぺんやっておきますえ。」



ユリア「どうしたんですかファーリルさん。
    審判のローディアさんも来てますし、いつでも始められますよ。」

ファーリル「うん…ちょっとね。試合の前に一つ確認しておきたくって。」


 御巫 友華(剣士)   比較例:十字軍一般兵士(フェンサー)

  力  9        力  10
  技  17        技  12
  速さ 15        速さ 10
  幸運 12        幸運 6
  守備 7        守備 5


ユリア「あら、さすがは友華さん。一般兵よりも一回り強いですね。」

ファーリル「でもね、肝心のエルの能力が……」


 エルクハルト(総司令官) 比較:審判ローディア(ソードマスター)

  力  36          力  18
  技  45          技  26
  速さ 47          速さ 28
  幸運 28          幸運 19
  守備 31          守備 14


ユリア「……剣道ですので実戦ほど差を気にすることもありませんが、
    友華さんは厳しい戦いを強いられるかもしれませんね。」

ファーリル「そこで、友華さんにはラインの雑貨店から取り寄せた
      秘密兵器でエルに挑んでもらおうと思います。」

ユリア「秘密兵器ですか……。ですが剣道は竹刀か木刀しか使えませんよ。」

ファーリル「大丈夫。その秘密兵器は木刀ですから。」



ローディア「では…両者とも木刀をとり、礼を。」

友華「ほな。」

エル「うむ。」


両者はその場から二歩進んで一礼した後、三歩進んでその場に蹲踞する。


友華「エルはん。手加減はなしや。」

エル「ええどす。全力で相手つかまつりますわ。」


ローディア「制限時間は10分、一本勝負となります。
      それでは……………始めっ!!」


スッ


ローディアの合図と共に二人はその場に立ち上がり、木刀を構える。
エルは木刀を上段に構え、友華は正眼の構えをとる。


エル(…なるほど、気配が一変しはったな。並みのもんが表せる闘気やない。)

友華(…?なんや、この木刀から力が溢れてきよる。これは…!)



ファーリル「あれは『木刀正宗』。所有者の潜在能力を引き出す武器だね。
      これでエル相手でも互角に戦えるだろうさ。」



   御巫 友華

  力  9→27
  技  17→41
  速さ 15→45
  幸運 12→36
  守備 7→21


エル「いやあぁっ!!」

友華「たっ!!」

ビュウン!  
ガンッ!! ガチィッ!

ギギッ…

ガチーンッ!!



とても木刀同士がぶつかり合ったとは思えない響音と衝撃。
エルが上段から振り下ろした打突に友華が素早く反応し、
一合打ち合った後一瞬の鍔迫り合い。そしてお互いに一歩間合いを取る。
一対一の対戦は大抵お互いが軽い攻撃を繰り出して探り合い行うのだが、
もしこれが探り合いだとすれば、決定打はどれほどの威力になることか。


友華(一撃が想像以上に重たい……そう何回も鍔迫り合えへんな。
   構えがえらい攻撃的やさかい。必ず隙はできる…)

エル(父親仕込みの剣技と聞いていたが、ふむ…
   相手の狙いは振り下ろしの隙から抜き胴…あるいは胸突き…)


友華の構え…正眼の構えは剣道の基本、攻撃にも防御にも素早く移ることができる。
剣先を相手の目に向け、その場の戦況で臨機応変に戦えるため隙が少ない。
また、剣先を相手の喉元に付きつけることによる威圧もあり、
相手は迂闊に攻撃できなくなることも大きい。
一方エルの構えは上段の構え。剣を頭上に振り上げ、攻撃力とリーチを最大限に生かす。
さらに攻撃速度も向上するが、構えている間は面以外の部分を曝け出している状態であり、
隙が大きい構え故に防御には向いていない。こちらは姿勢によって相手に
威圧感を与えるため、それすらも攻撃に転用できる。


ブンッ!! ギン!


友華「はああぁぁっ!!やっ!!せやぁっ!!」

エル「んっ!!ふっはっ!!」


ガツッ!ガッガキーン!!

友華からも攻撃を仕掛け、確実に踏み込む。いつ強力な反撃が来てもおかしくないので、
相手の動きを全体的に追いながら連撃を加える。並みの者なら連撃で大きく後退するか、
または焦って急な反撃に出た可能性もある。しかしエルは小手ギリギリの位置で
最小限の防御を行い、攻撃を弾くと驚異的な速さで木刀を振り抜いた。


エル「めええぇぇぇん!!」

友華「っ!」

ガアァンッ!!

反応できなければ面すら割りかねない危険な一撃だった。
しかし、エルの放った打突は間一髪のところで受け止められ…


友華「おおっ!!せやっ!こてえぇっ!!」

エル「むっ…」

キンッ!カッキーンッ!ガッ!


逆に友華が構えを戻す瞬間の小手を積極的に狙う。
めまぐるしく攻防が入れ替わり、その度にお互い驚嘆すべき技の鋭さを見せる。

友華が狙うのは三点…すなわちエルの予測する上段の死角ともいえる抜き胴、
それか重い一撃の後、構えの隙を突き小刻みに踏み込む小手打ち、
あるいは………

友華(あるいは……賭けや。エルはんだからこそ予測不可能な場所がある。
   せやけど、外したら最後…うちの負けや。)

もちろんリスクも非常に大きい。エルの攻撃は上段から変幻自在の攻撃を繰り出してくる。
その上緩急のつけ方が絶妙で、間合いと剣の位置から一瞬で最適な攻撃を判断し、
さらに防がれたことを想定し二手三手も先を読んできている。
一瞬でも隙を見せたら最後、あっという間に主導権を握られてしまうだろう。
その分体力の消耗も激しいが、十分程度であれば常に全力でも問題ない。


エル「いやあぁぁぁっ!!」

友華「ぬうぅぅん!!」


ブンッ!! ギン!

ガツッ!ガッガキーン!!


ギッ…ギギッ…



エル「………んっ、く…ぁ…」

友華「…………は…あぁっ…」

友華(…来る……きよる!恐らく次がエルはんの…必殺の一撃や!)


5秒にわたる鍔迫り合い。友華の予想が正しければ次の瞬間には


エル「ったあ!!」


剣術書曰く、起こり頭又は懸かり口は好機なり。
何か決定的な動きをする時には必ず隙が生じる。

今まさにエルは鍔迫り合いから離れる際の反動を用いて大胆な攻勢に出ようとしていた。
いくら常人離れしたエルといえども、上段に構える際に決定的な死角が生じる。


友華(それは……逆胴!!)


右利きの友華では最も攻撃しにくい部分であると同時に、最も注意がおろそかになる個所、
それは左の脇腹。よほど意識していないと反応はほぼ不可能だ。


友華「どおおおぉぉっ!!」

エル「っ!?」


それはまさに一瞬だけの隙。今まさに木刀を振り下ろした瞬間、エルは反応できても
木刀を逆胴の防御に回すことはできない、乾坤一擲の一撃。


バシィッ!!

防具を打つ乾いた音が鳴った。
しかし審判のローディアは友華の攻撃を有効と認めなかった。


友華「あっ…!(しもた!外した!今打ったのは垂の部分や!?)」


垂の飾りの部分は当たっても有効打突とならない。
身体の軸を大きく変えてしまった友華は決定的な隙を晒してしまう。


エル「めえぇん!!」


スパーン!!

ローディア「面あり!」


両者、礼をして武器を手放す。



友華「ふはぁ…やられたわ。まんまとエルはんの誘いにのってもうたわ。」

エル「正直うちも友華はんの隙を見いだせなかったさかい。
   ちょいとえげつないかもしれへんが、かんにんな。」


兵法書曰く、動あればすなわち反動あり。
こちらがわざと弱点をさらせば敵の動きを誘導できる。
エルはわざと自分に隙を作りだして友華の動きを誘ったのだ。
一歩間違えれば逆胴を打たれる危険な動きではあったが…


エル「しかし友華はん、思ってた以上に強いんどすなぁ。
   あれだけ微塵も隙のない動きはそうそうできへんどすえ。」

友華「いやいや、エルはんこそ打ち込みが鋭くて、木刀が割れるかとおもうたわ。」



ユリア「どうやら正式な対決ではエルさんが勝ったようですね。
    惜しかったですね友華さん。」

友華「うちでもあんな動きが出来よったなんて、信じられへんなぁ。」

ファーリル「では、その調子で次の試合といこうか。」

エル「へ?まだなにかやるんどすか?」

ファーリル「さてと…二人とも、今から僕たちがいろんなものを投げ込むから
      何か一つ適当なものをキャッチしてね。」

友華「な、なんやて?」

エル「何する気どす…?」


ファーリル「そーれ!みんな、思い思いの物を投げ込むんだ!」

野次馬ども『ヤヴォール!』



ぽいっ  ぽいっ  ぽいっ  ぽいっ


ユリア「この展開…どこかで見たことあるような……
   それはともかくとしまして、どうやらお二人とも
   好きな物を受け取ったようです。」

友華「む……これは?なんやの?」

友華が受け取ったのは、先端が剣のような形をしている棒…のような
短い板きれ。側面には難解な文字のような模様が墨で描かれている。


ファーリル「ええっと、それは悔悟棒(かいごぼう)だって。
      なんでも閻魔さまが罪人を捌くときに使うんだとか。」

ユリア「一体どこから持ってきたんですか…」

ファーリル「今投げた物は全部、ラインの雑貨店で買ってきたものですよ。」


エル「で、うちは……やけにリーチが短いもんとってもうたわ。
   なんやのこれ?この出っ張りは…(ポチッ)」


ウイン ウイン ウイン ウイン ウイン ウイン


エル「振動しよる!?ますます不気味どすなぁ…」

ファーリル「電動歯ブラシだね、それは。」


ローディア「で、では…両者とも礼を………くくっ」

エル「審判!笑わんといて!」

友華「こないな武器やけど、本気でいくで。」

エル「よかどす。手加減は抜きや。」


ローディア「それでは……………始めっ!!」


スッ


今度はお互いに武器を正眼に構えた。特にエルはリーチが非常に短いため
上段に構えてもメリットはほとんどなく、必然的に正眼の構えとなる。


友華「せえぇいやあぁぁっ!」

エル「ふんっ」


バッ!バシバシッ!シュッ!シュバババッ!カキーン!


武器が軽くなった分、両者とも小振りの攻撃を繰り出す。


エル「喰らえ」

友華「む…」

剣道にあるまじき足捌きで、友華の周囲に分身を形成し
ほぼ同時とも言える時間差からの乱れ切りを放つ。
対する友華は分身の動きに惑わされることなく、
テンポ良く攻撃を受ける。


友華「なら、これでどうや」

虚之太刀・朧月―――其ノ太刀、雲海に朧なる月の如し
悔悟棒が一瞬ぶれたかと見えたその瞬間、不可視の斬撃が襲いかかる。
だが、エルもまたその斬撃をすべて電動歯ブラシで受け止める。

ギチギチッ……!  ヴィヴィヴィヴィヴィ…

しばしの鍔迫り合い。エルの電動歯ブラシが振動し、悔悟棒に低周波振動を伝える。
ビクビクという小刻みな振動が友華の手にも伝わって、微弱ではあるが手が痺れるが
それも気にすることなく、悔悟棒の重量優位を生かして押しこむ。
エルの動きが一瞬止まった。

エル「くっ……」

友華「いまやっ!」

その瞬間を狙った友華の斬撃!だが、その斬撃は空を切った。
一瞬前までエルがいたところはすでにがら空きの空間となっていた。

エル「通じまへんえ」

友華「後ろか!」


ガシイィッ!


いつの間にか後ろにいたエルに対して友華が本能的に反応する。
リーチの優位を生かして攻撃的に立ち回る友華に対して、
機動力でリーチの不利を補うエル。
両者とも非常にハイレベルな戦いを繰り広げていた。


シュバッ!!シュババババババババ!!


エル「ふはははははははは!!」

友華「うちは負けん!まけへんでぇ!はあっ!やっ!おおおっ!!」


縦横無尽に飛び回る二人。とても雑貨で打ち合っているとは思えない。


バシバシバシバシッ!ガッキーン!


友華「せええいやああぁぁっ!!」

エル「……っ!?しもた!」


ベチーン!!


ローディア「小手あり!!」

結局エルはリーチの不利が災いして、小手を打たれてしまった。
友華は先ほどの負けをここで返上することとなった。


友華「か…勝ったんやな。」

エル「むぅ、惜しかったどす。」


ユリア「二人とも、お疲れさまでした。」

友華「こんなので剣道せえ言うのはちょいとかなわんさかい…」

エル「武人たるもの、手元にある物で戦うこともあるんどすがな。」

ユリア「よい子のみなさんは危ないですから決して真似をしないでくださいね。」

友華「それより、雑貨をこないな使い方してええの?
   店の人に怒られへんやろか?」

ユリア「本当はよくありませんが、偶にはこのようなこともありかと。」

エル「そっか……じゃ、いい汗かいたことやし、和室に戻ろか。」

友華「せやな。エルはんと戦えてほんまに楽しかったわ♪
   と、その前に防具脱がんとあかんな。」

エル「ん、よっこらせ…鎧よか外すのは簡単どすさかい。
   ファーリル、防具預かってくれへんか?」

ユリア「いいえ……私が責任を持ってお預かりいたします…」

エル「いや…その、ユリアはんが持つと……」

ユリア「はあぁ……エルさんの汗のにおいが染みて、たまりません………」

友華「ゆ、ユリアはん?顔がえらい艶っぽいで…。熱でもあるんかいな?」

エル「ちょいとユリアはん!うちの防具をにおがんでおくれやす!」


ユニース「ユリアさん、これは私が預かります。放送中に発情しては困ります。」

ユリア「残念です……」

友華「ユリアはん…変わった性癖を持ってるんやね。」

エル「いつか放送中に襲われないか心配どすな……
   ほんなわけで、以上『オン・エル・バトル!』どした♪」




―――――『エンディング』―――――

♪EDテーマ『えるく☆はーとフル』



ユリア「エンディングです。お疲れさまでした♪」

友華「おつかれさんでした。」

エル「ふぁ〜、やっぱおこたは落ち着きまんなぁ。」

ユリア「あ、エルさん。もう口調は戻していいんですよ。」

エル「さよか…………えと…ん?」

友華「どないしました?」

エル「……元の口調が思いだされへんのどす。」

友華「ええ!ほんまかいな!?そりゃえらいこっちゃ!
   せやけど放送中はずっと京言葉やったさかい、
   うちも元の口調がどないだったか分からへん…」

ユリア「着物を着てるからでしょうかね?
   ですがそのしゃべり方も艶があっていいと思いますよ。」

友華「せやな!エルはんなら舞妓はんにもなれまっせ!」

エル「舞妓はん…ジパングの踊り子はんやな。なりたかないわ!」

ユリア「では、この後ゆっくり思い出しておいてください。
   さて友華さんには毎回恒例となっております戦友様への記念品を贈呈いたします♪
   まずは先ほどバトルで使用しました『木刀正宗』を差し上げます。」

友華「へ?ええの、あんな強い武器もろうて。」

エル「遠慮することありまへんえ。『おいでませ!マインシュタット!』で紹介した
   ラインの領主はんがぜひ友華はんにとくれたものやさかい。」

友華「ほんなら、おおきに頂戴しておきまっせ。」

ユリア「それと、ロンドネルの特産品の琥珀を加工して作りました
    髪止めを差し上げます。ちょっとおしゃれしたいときにどうそ。」

エル「あと今着ておます夕日色の着物もお持ちかえりしてええどすえ。」

友華「この着物もくれるん!?むっちゃ嬉しいわ!この着物気に入ってたんねん!」

エル「それはなによりどす。作ってもろた『シルバーファーデン』はんにも
   お礼言っとかへんとな。」

ユリア「では、これにて本日の放送は終了となります。
    友華さん放送はいかがでしたか?」

友華「あっという間に時間が過ぎてもうたなぁ。楽しゅうて
   時がたつんを忘れてしもたわ。それにお二方も
   いろいろ教えてくれはったし、最高やったで。
   またいつか、もういっぺん来てみたいもんやな。」

エル「さよか。うちらも友華はんやジパングのことを色々知ることが出来て
   ほんまに楽しかったどすえ。」

ユリア「まったりとした放送でしたね。では、本日はここまでです。
   パーソナリティーは私エンジェル、ユリアと…」

エル「うち、エルクハルトがお送りしました。
   ほいでもって今回の戦友はんは
   『のんきな女性剣客御巫 友華ののんびり旅行記』より
   御巫 友華はんをお迎えいたしはりました。
   いらしとってもらえておおきに。」

友華「いんやぁ、こちらこそおおきに。」

ユリア「では、次回の放送もお楽しみに♪」



第7回放送、終わり




おまけ

ロンドネル 『真銀の蕀魚亭』にて


エル「突然どすが、友華はんはお酒飲めるんか?」

友華「お酒でっか?まだ未成年やけど…一応飲めるで。」

ユリア「では、せっかくですのでユリスのお酒をどうぞ♪
    果実酒ですので甘くておいしいんですよ。」

友華「さよでっか。ほんなら一口だけ。」

エル「ま、果実酒やし、それほど酔わんどすやろ。」

ユリア「さすがに未成年の友華さんにはこっちのお酒を飲ませるわけには…」


友華「………………ふは〜」

エル「あれま。もう赤くなっとりまんがな。」

友華「うまいわ〜〜、この一杯のために〜〜わては〜たたかっとるんや〜」

ユリア「酔ってしまわれたみたいですね。」

エル「ほんまかいな…。この果実酒…アルコール度数7%程度どすえ。」

友華「なんや〜こっちにもお酒あるんやないの〜。どないな味やろ〜か〜」

エル「あかん!そっちはドラゴンブロウ(ユリス一きついお酒)どす!
   そんなにいっぺんに飲んだら口から火を吹くどすえ!」

友華「ニャーーーーーーーーー!?」

エル「いわんこっちゃない…」

ユリア「わ、わたしお水持ってきますね。」


ぐわしっ


友華「どこいきはるんや〜〜ユリアは〜ん。ユリアはんも〜〜〜のみなはれや〜」

ユリア「いえ、私はお酒に強くないので……」

友華「わてのすすめたさけがのめんちゅうのかい!!」

ユリア「い、いえ!いただきます!」

エル「こらまずいわ。飲ますんじゃなかったわ。」

友華「あ〜う〜、いいきぶんや〜〜、つまみはあらへんのかいな?」

エル「女将はーん、すまへんが『ヴァールクラッベ』持ってきてくんなはるか?」


女将「また粋なものを頼みますね。どうぞ。」


友華「うわ〜〜お刺身や〜〜」

エル「えっと…これは『ヴァールクラッベ』いうてな。
   湯煎した生の魚を魚醤(ガルム)につけて…」

友華「こないなとこでもおさしみたべられるなんておもわんかったさかい!
   ユリスのもんらもわかっとりまんなぁ!」

ユリア「あ…えと……わたしよっぱらってしまいましたでしょうか……」

友華「せやな〜、そこにいる二人のエルはんが
   四人にみえたらよっぱらっとるとおもうがな〜〜」

エル「うちは一人しかおまへん。」

友華「せやったな!エルはんが二人おったら前と後ろから斬られてまうわな!」

ユリア「エルさんが二人いたら…………前と後ろを…同時に…」

エル(明日大丈夫やろか?)


※当然のごとく、二人とも二日酔いで撃沈しました。
11/12/28 18:46更新 / バーソロミュ
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■作者メッセージ

放送を終えて


みんなさんごきげんよう!今回は出られなかった妹のフィーネだよ!
私もあんな綺麗な着物着たかったのに、ユリアお姉ちゃんずるい!
年内最後の放送で、しかも年内最後の小説更新だったのにー!!
あーもー!責任者出てこーい!!



ごめんなさい。続けるね。
今回も『スーパー クレールヘン シスターズ!!』を聴いてくれてありがとう!

チェチェ様!二度目のゲスト紹介ありがとうございます!
どこまでもマイペースな友華ちゃんでした!
途中でクリスマス読み切りを書いたせいで放送日が遅れちゃいましたけど、
年内放送には間に合わせることが出来ました。
もしかしたら友華ちゃんのセリフが若干少ないかなと思うかもしれませんが、
友華ちゃん独特のほんわかな大阪弁は上手く表現できたと自負しています。
ただ、特に翻訳サイトとかは使ってないので、正しいかどうかは別問題だけどね。
むしろにいさんの京言葉のほうが苦戦したみたい。
京都弁紹介サイトでたくさん勉強しちゃいました。
バトルも、早速チェチェ様のラジオを参考にして表現してみました。
剣道の立ち回りは奥が深いから、上手く表現できてるといいな。


さて、来年になってもみんなからお便りをどんどん募集します!
いつもやってる『探求の羽』や縛りプレイ、さらには
『おいでませ!マインシュタット!』で紹介できる
町とか組織とかも大募集してます!
もちろんゲストも大歓迎!極端な大人数じゃない限り、何人組でもOKです!
最近は『探求の羽』が若干少ないかもしれません。
どんな質問でも受け付けていますので、どうかよろしくおねがいします。


えっと、次回のゲストは……
星村空理様の『忘却少年と神隠しの少女』より
ルシアさん、フィスさん、アーシェさんの三人が来てくれます!
三人なんて初めてだね!とってもにぎやかになりそう!

それじゃあみんな、次回の放送もお楽しみに!
次はちゃんと私が戻ってくるからね!
以上、妹のフィーネルハイトでした!

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