読切小説
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少年立志
きっかけは些細なことだった。

僕もそろそろ大人の仲間入りをする年齢になる。
そこで母さんは、僕が成人の儀の時に着る服を買いに行こうって言ったんだ。

だけど、僕は母さんと一緒に服を買いに行くのが嫌だった。
だって、そうだろう。友達に見つかったら、なんて茶化されるか。
服も自分で選べないのか、と。服を買うお金さえ親頼りなのか、と。
母さんの提案に、僕は、一人で行くからいいよ…と断った。

それなのに、母さんはしつこく、一緒に行こうと言った。
僕が何度断ろうとも、引き下がろうとはしなかった。
普段なら簡単に諦めるのに。何が母さんをあそこまで必死にさせたんだろう。

段々、僕は苛立ってきた。
話の道筋を外れ、日頃の母さんに対する不満を口にした。
対して、謝りはするものの、やはり諦めようとはしない母さん。
それが余計に僕の怒りを逆撫でした。そして…酷い言葉を浴びせてしまった。

その一言が堪えたのか、母さんは泣き出してしまった。
僕はその場に居辛くなって…何も言わずに、家を飛び出した。

駆けて、駆けて、駆けて…気が付いたら、街の外。
丁度近くに生えていた樹の根元に、よろよろと腰を下ろした。

…そして、今に至る。
つまりは…家出だ。家にはもう帰りたくない。
母さんにどんな顔をして会えばいいっていうんだ。
死んだ父さんは、今頃天国で僕の行いを見て、怒っているかもしれない。

でも、謝るのだけはゴメンだ。僕が…僕が、悪いワケじゃないのだから。
母さんがあんなことを言うから…。母さんが引き下がってくれないから…。

だから…。

「やあ、少年」

不意に、声。
驚いて顔を上げると…女性の姿。

「ひとりぼっちでどうしたんだい? もうそろそろ夜が来るぞ」

気さく、溌剌、明瞭に。
僕に声を掛けてきたのは、旅人のようだった。

朱と黒を基調とした、軽装の騎士の様な出で立ち。
服装とは対照的な、ブロンドヘアーと色白の肌。
腰に差した剣の鞘は、紫色に妖しく輝いて。

鍔の広い帽子を、指でくいっと押し上げ、彼女は言う。

「迷子になるような歳ではなさそうだね」

…僕のことを探っているのだろうか。
放っておいてほしい。行きずりの旅人に話すようなことじゃない。

彼女を無視し、僕は再び頭を伏せて、視界を自分の膝いっぱいにした。

「ははあ、これは困り事と見た。キミは悩んでいる」

何を当り前なことを。
この姿を見れば、誰だってそうだと分かるだろう。
僕が暗に言いたいのは、そういうことじゃない。
そっとしておいてほしいんだ。もう構わないでほしい。
親切心なのかもしれないけれど、余計な御世話なんだ。

僕は今、一人でいたい…。
一人になりたいんだ…。

「気を落とすな、少年。ボクが隣に居てあげよう」

と…そんな僕の気持ちを無視し、あろうことか、座り込んでしまう女性。

今日はなんてついてないんだ…。
家出をした後は、お節介な旅人に絡まれるなんて。
おまけに、妙に近い。それに、じっ…と僕のことを見ている。
それほど僕のことが気になるのだろうか。なんなんだ、この人…。

「………」

…これからどうしよう…。
この人はたぶん、無視し続ければ、その内諦めてどこかに行ってくれるとして。
当面の生活だ。寝るところとか、食事とか…。財布は家に置いてきてしまった。
…友達の家に……いや、限度がある。そう何日も長い間は無理だろう。
母さんにバレてしまう可能性もある。街の外で暮らすのが一番かもしれない。

「………」

待てよ…。隣町で、住み込みの職を探すのもいいかもしれない。
そうすれば、そのまま自立もできるし、一石二鳥だ。
問題は、道中の安全確保だけれど…誰かに付いていけばいいかな…。
でも、この人はやめておこう。あれこれ訊かれそうだ。
家出なんて知られたら、母さんの前に突き出されかねない。

「…ふぅむ…」

……母さん、今頃どうしてるのかな…。
僕が帰らないことを、心配しているかもしれない。
もしかしたら、友達の家に尋ね回っているかもしれない。

…でも…悪いのは、母さんだ。母さんが悪いんだ…。
どうして、僕の意見を聞き入れてくれなかったんだ。
どうして、僕の気持ちを分かってくれなかったんだ。

……どうして……。

「…いじめ、いや、喧嘩かな。後悔している顔だ」

っ!?

「それも、家族との喧嘩。友達との喧嘩なら、家に逃げ込むだろうしね」

なっ…。

「御名答かい? 景品はあるのかな?」

……………。

「話して御覧よ。スッキリするから」

…本当に、なんなんだ、この人は。
ちょっと言い当てたくらいで、得意ぶって。
それがどれだけ僕の苛立ちを募らせているか。

関係無いんだ。あなたには全然関係の無いこと。
放っておいて…、放っておいてよ。僕の問題なんだ。
これ以上、僕に余計な言葉を浴びせないでくれ…。

「キミは、もう充分に反省している。謝る勇気が出ないだけ」

…反省、なんて…。悪いのは僕じゃない…。
反省するのは…謝るべきなのは、母さんの方なんだ…。

「気持ちを誤魔化すと、勇気が鈍るぞ、少年」

っ…!

「おおっとっ」

僕は頭にきて…彼女に飛び掛かり、押し倒した。
倒れる身体。衝撃で、帽子がふわりと浮かび…草むらに落ちる。

「…乱暴だね。ボクも一応、女性なんだけれどな」

拳を握り締め、振り上げる。
震える身体を必死に抑え、僕は、その拳を彼女の頬に…。

「………」

………っ……。

「…キミは優しい人だ。だからこそ、喧嘩をしたことを後悔している」

「そして、恥ずかしがり屋だ。正直になれない、照れ屋だ」

「喧嘩の原因も、それじゃあないのかい?」

……………。

「素直になるというのは、確かに恥ずかしいことだ」

「でもね、常にじゃなくても、たまには素直にならなきゃいけない」

「それは相手のためでもあり、自分のためでもあるんだよ」

自分のため…。

「…教えてくれないかい? 喧嘩の理由」

「ボクは、キミの力になれるかもしれない」

……………。

「…恥ずかしい?」

……………。

……僕、は………。

……………

………



「…なるほどねえ」

僕の肩を撫でながら、相槌を打つ旅人さん。

…包み隠さず、僕はこの人に、事の全てを話した。
叱られたりするかと思ったけれど、意外と、何も言わずに聞いてくれた。
その間、ずっと僕の肩や背中を、軽く叩いたり、撫でたり…。

僕は、ほんの少しだけ…この御節介焼きな旅人に、心を許していた。

「今すぐ帰って、謝るべきだ。ビンタのひとつは覚悟してね」

出た結論は、予想通りのもの。
でも、出来るものなら、とっくにそうしている。
出来ないからこそ、ここで今だにお尻を地面に付けているのだ。

「キミは、何故お母さんがそこまで意固地になったか、分かるかい?」

…首を横に振る。

「では、問題だ。大人になるとは、どういうことだい?」

大人になる…。

…職に就いて…例えば、剣や鎧を作ったり、パンを焼いたり、
あるいは、武器を携えて冒険に出たり、街を警護したり…。
結婚をすることも、大人の証…なのかな。子供を作って…。
あとは、自立。お金を稼いで、自分の家を建てて…。

思い付いたことを、そのまま言葉にして答える。

「そうだね。それらはほとんどが、自分の力で成し遂げるものだ」

そう。自分の力で物事を解決するのが、大人だと思う。

「つまり、キミが大人になればだね…」

「お母さんは、キミにしてやれることが極端に少なくなるんだ」

………あ。

「気付いたかな? それは、お母さんが最後にキミにしてやれる事だったんだ」

「だからこそ、キミの意見に反発してでも、一緒に行こうと言った」

「キミが照れて嫌がるということも承知でね」

……母さん……。

「…少年、もう辺りも暗がりだ。家にお帰り」

……………。

「まだ踏ん切りがつかないかい?」

…分からない…。

謝りたいという気持ちはある。家に帰りたいという気持ちも。
でも、どうしても…母さんと顔を合わせるのが、辛い。
今の気持ちのままで行っても、家のドアを開けられる気がしない。
一体何が、まだ僕の心を縛っているのか分からない。
この人の言うように、恥ずかしさからなんだろうか。
分からない…。僕には、分からない…。

どうすれば、ちゃんと謝れるのか…分からない……。

「…成る程、意固地さは遺伝の様だ。なら、特別だ」

と、彼女はいきなり…。
僕が彼女を押し倒した時のように…その両手を、
僕の肩に掛け……ゆっくりと顔を近付けてくる…。

「キミに魔法を掛けてあげよう…。勇気が湧く魔法を、ね」

慌てて身体を離そうとするものの、背には樹の幹。
更に近付く彼女の顔。逃げ場をなくした僕。

このままじゃ……唇が…。
僕は、その瞬間まで見ていることができず…ぎゅっと目を瞑った。

「…少し、痛いよ」

…え?

「……んっ…」

ぁっ…。

「………ちゅっ…♥ ちゅぅぅ…ぅ…っ♥」

…彼女の唇が触れたのは……僕の、首筋。
何かが…恐らく、歯が喰い込み、血を吸い上げている。

予想外の出来事に…でも、首筋に感じる小さな快感に…
抵抗することも忘れて、彼女の行為を受け入れる僕…。
頭の奥の方で、ぴりぴりと小さな電気が弾ける。

「はっ…♥ …ぺろっ…♥」

傷口を一舐め、口を離して…彼女が僕を見つめる。
赤い瞳が、まるでそれ自体が光を放っているかのように輝いている。

「私の魔力を、少しだけ御裾分けだ。素直になれる様に…」

そう言って、思ったより痛くなさそうだね、と微笑む彼女。

…何故だろう。何故だか、急に…。
身体が熱い…。視界が潤んで。息も苦しい。
それに…それに、湧き上がってくる…この気持ちは……。

「…おや♥」

旅人さんが目線を下に、何かに気付いて、嬉しそうな声を上げる。
視線の先を追い、見ると…いつの間にか大きくなっている、僕のもの。
慌てて両手で覆い隠すも、僕の意思に従わないそれは、
手に伝わる程びくびくと震えて、見つめる旅人さんを愉しませた。

「こちらが先に素直になってしまったね♥ ふふっ…♥」

僕の手の上に、自身の手を被せる旅人さん。
直接触れているワケでもないのに、びくんっと反応してしまって。
その動きは、彼女の手にまで伝わってしまっているみたいで…
まるで愛おしいものかのように、僕の手越しに優しくそれを撫でた。

「この状態で、お母さんと会うのは賢明じゃないな…♥」

塞ぐ手を、指がかりかりと掻く。
除けてほしいというサインだろうか。でも、そうはいかない。
そんなことをしたら、僕は恥ずかしさで死んでしまうかもしれない。

小さく首を横に振って、彼女に否定のアピールをする。

「…初めてかい?」

っ…。

「照れることはないさ。誰だって、初めてはあるんだ」

……………。

……頷く。

「…そうか。なら…優しくしてあげよう…♥」

一瞬の隙を突かれ、綻んだ手の檻が解かれる。
驚いて、再び防ごうとするも、時既に遅し。
彼女の滑らかな手の動きは、するりと僕のズボンに滑り込み、
パンツの中で滾るそれを掴んで…表へと引きずり出してしまった。

「ん…、こちらも恥ずかしがり屋さんとはね…♥」

彼女の一言に、かぁっ…と顔が熱くなるのが分かる。

硬く、大きく勃起しているものの…皮を被ったペニス。
大きく…と言ったけれど、サイズだって、あまり大きくない。
友達と一緒に銭湯に行った時、僕のが一番小さかった。

僕の一番の秘密であり、一番恥ずかしい場所。
それが彼女の前に、余すところなく晒されている…。

「こらこら。隠そうとしてはいけないよ」

助けに入ろうとする両手を、空いた手であしらう彼女。
僕の気持ちを他所に、ペニスはどくどくと愛液を吐き出している。

「さぁ、まずは御対面といこう♥」

摘まれ…ゆっくりと皮が剥かれていく…。
皮が先端を撫でる度に…先端が空気に晒されていくに連れて、
駆ける快感と、エッチな気持ち。少しずつ……少しずつ……。

…そして、皮が剥けきると…むわりと臭う、ペニスの独特の臭気。
なのに、僕より近い位置に顔がある彼女は、恍惚とした表情を浮かべている。
それどころか、より顔を近付けて…ぺろりと、舌で舐め上げた。

「…濃い味♥ れろっ…♥ ボク好みだ…♥」

ペニスを通じて感じる、彼女の舌の柔らかさ。
亀頭を重点的に、全体を這い回りながら、唾液を絡めていく。

「大きさもね…♥ 根元まで飲み込めそう……ぺろっ♥」

僕は…もう、とても見ていられなかった…。
身体を横にして、腕で目を覆い、彼女にされるがままになった。
いいようにされてしまうことよりも、それを見ている方のが耐えられなかったから。

彼女は、そんな僕をお構いなしに、ペロペロとあそこを舐め続ける。
まるでそこが僕の本心と見ているかのように。絶え間なく愛撫して。
当然、ペニスはそれに悦んで、恥ずかしげもなく反応してしまう。
もっと、もっと…と言わんばかりに。乳ねだる赤ん坊のように。

「あむっ…♥ ちゅっ…♥ んぐっ♥ ふっ…♥ れろ…♥」

先端を咥え込み、口の中で転がす旅人さん。
その刺激に、とうとう耐えていた声までもが漏れ出てしまう僕。

「ちゅぅ…♥ 好い声で鳴くじゃないか♥ 可愛いね…♥ ちろっ…♥」

一度決壊してしまうと、後は脆い。
恥ずかしいとは思いながらも、口を通して出る喘ぎ声を止められない。
それを聞いて、余計恥ずかしくなって…興奮してしまって…。
悪循環が止まらない。どんどん僕の胸の中は、熱く焦がれていく。

「どうだい? ボクのフェラチオは……ちゅぅ…♥ 感想が聞きたいな…♥」

そんなこと…。言えるワケが…。

「かぷっ♥」

瞬間、意識が吹き飛びそうなほどの刺激。

噛まれた…。ペニスを、噛まれた。
甘噛みで、さほど痛くはなかったけれど…目も眩むような…。
僕の血を吸った歯が、幹の部分をチクリと突いて…。

「…今のは、好かったかい?♥」

雑草を握り締め…千切っても、僅かにも昂りが鎮まらない。
最後まで耐えていたものさえ、溢れ出しそうになっている…。

「…ふぅむ。答えてくれないのなら、もう一度…」

えっ…。

ま、待ってっ…!

「かぷっ♥」

あぅっ……っっっ!!

「ん……ぷぁっ!?♥♥♥ ははっ、出た出た♥ やっぱり好かったんじゃあないか♥」

勢い良く彼女の顔に精液を浴びせ、痙攣するペニス。
それこそ、おしっこをずっと我慢していた時のように、
尿道の中を駆け抜けて、噴水みたいに外へ飛び出した。

彼女は、そんなペニスから放たれる精液を、悦した表情で受け止めている…。

「んん…っ♥ 熱い…♥ 顔が溶けてしまいそうだ…♥」

……次第に、弱まっていく勢い…。

射精の勢いが、彼女の顔まで届くものではなくなると、
再びペニスを口に含んで、ちゅぅちゅぅと吸い始める。
強制的に射精させられているような感触に、自然と腰が引けてしまう。

「ぢゅるっ…♥ ちゅっ♥ ちゅぅぅぅ…っ♥ …ごくん♥ ……ぷはっ♥」

締めと言わんばかりに、鈴口をチロチロ。
が、それに反応して、また大きさを取り戻していってしまう…。

息も絶え絶え、涙目な僕を見て、彼女はにやりと妖しく微笑む。

「…好かったかい?♥」

………頷く。

「ふふっ…♥」

身体を前に出し、彼女が僕の頭を撫でる。
とろけていく心。剥き出しの自分になっていく僕。

「そう…♥ 素直に答えてくれると、ボクも嬉しい…♥」

ドキドキと脈打つ胸。目の前には彼女の顔。

…気付けば僕は、顎を前に出し…彼女にキスをねだっていた。

「…♥ …んっ…♥ ちゅっ…♥ ちゅ…♥」

口の中に広がる、甘さと苦さ。
流し込まれる彼女の唾液に、僅かに混ざる僕の精液。
でも、嫌という気分が湧かない。彼女の施しに幸せを感じてしまう。

もっと彼女に甘えたいという気持ち。エッチなことをしたいという気持ち。
嬌声しか出ない声に代わって、全身で彼女にそれを伝える。

「ふっ…♥ …そういえば、キスは?」

唇を離し、尋ねられる。

「初めてかい、ってことさ」

……首を横に振る。

「そこは嘘を吐くべきだよ、少年♥ ちゅっ…♥ ん…っ♥」

後悔する暇も無く、再開される口淫。

口付けに夢中になる僕の口へ、挿し込まれる彼女の舌。
ウネウネと動いて、舌の裏や歯茎を這って、独特の刺激を呼び起こしてくる。
息継ぎのために、少し離した互いの唇には、幾重もの糸がアーチを描いて。
それをまた貪るように唇を重ねては、ねっとりとした味わいを愉しんだ。

「れろ…っ…ちゅぅ…♥ …さて…、そろそろ…♥」

呟き…彼女は腰をもぞもぞと動かして、それに手を添えた。
今だ敏感なそこは、ただ触れただけの指に、必要以上に反応してしまう。

それが可笑しかったのか、爽快に笑う彼女。

「はははっ♥ 少年も待ち侘びていたんだねえ♥」

…くちゅりと、先端が彼女のあそこに触れる。

「…ボクもさ♥」

つぷり…。

小さな水音と共に…僕と、彼女が、ひとつになる。
僕の初めて。名前も知らない旅人さんのナカで散って。
ひとつだけ、大人の階段を先登りした、僕…。

「くぅ…んっ…♥ あぁっ…♥ ぁっ…♥」

言葉に出来ないほどの快感…。
それは表現的な意味でもあり、文字通りの意味でもあり。
ぎちぎちと千切らんばかりに締め付けてくるナカの感触に、
驚くほど早く、再び込み上がってくる射精感…。先程よりも強く…。

そんな僕の上で…快感を噛み締めていた彼女が、ゆっくりと顔を上げる。

「……きもち…い…っ…♥」

……その表情を見た瞬間……。

「わっ!?」

僕の我慢は、あっという間に弾け飛んだ。

「うあぁっ♥♥♥ あっ…♥ はっ♥ 嘘っ…♥ も、もうっ…♥」

上体を起こし、彼女の身体にしがみついての…膣内射精…。
抱き付いた際に、彼女の服からこぼれ出た胸が、僕の胸に押し当たる。
その心地良さに…更にナカを欲望で染め上げていく、僕のペニス…。
どくん…どくん…と、流れ、襞や子宮に沁み込んでいく精液。
僕のそれが弾む度に、彼女も身体をびくびくと震わせる…。

「ふは…っぁぁ…♥ はぁっ…♥ っ……は、早過ぎるぞ…少年…ッ♥」

恥辱、憂鬱、反省…どれよりも先に、欲望が顔を出す。
彼女の言葉に耳を傾けず、本能が叫ぶままに従う。

もう一度、噛んでほしい、と。
血を吸ってほしいと、彼女に乞う。

「っ…♥ …仕様がない子だな…♥ はっ…♥ その代わり…ちゃんとボクも…♥」

言い掛けながら…僕の首筋を、口で覆う彼女。

「んっ…♥」

チクリと。甦る感触。

「…ちゅっ…♥ ちゅぅぅ…っ♥ …ちゅるっ…♥」

牙が突き刺さった点を中心に、全身にじんわりとした快感が湧き起こる。
血管を通じて、身体中に快楽が送り込まれているかのよう。

そして、それは…血が集中している、ペニスも例外じゃない。
射精したばかりで、血も吸われているというのに、更に滾りを増して…
1分、いや、30秒も経たぬ間に、また湧き上がってくる……あの…。

「ちゅぅ……んぐっ!?♥♥♥ んむっ♥ んぅぅぅっ♥」

二度目の、膣内射精。
先程よりも激しく、僕のペニスを搾り取ってくるナカ。
飲めば飲むほど、渇き飢えて。それは彼女の快楽の表れで。
動いてもいないのに、僕は射精を繰り返し、彼女は快楽を溜めこんでいく…。

「ちゅぅぅっ…♥ はっ…♥ こ…こんなセックスッ…♥ ふぁっ…♥」

がっちりと掴んだ腕は、お互いの身体を固定して離さない。
根元まで挿し込まれた僕のものは、常に彼女の最奥で精液を吐き出す。
でも、彼女は嫌がるどころか、悦び狂い、更に牙を突き立ててくる。
混濁する意識。血、精液、心までも、彼女に奪われていき…。

「ぁっ…ひあぁぁぁっ♥♥♥ はひっ…♥ んっ…♥ んぐぅ…っ♥ ちゅぅ…♥」

三度目。
笑顔の端に、涎と血を垂らす彼女。とても蟲惑的。
夕月と先駆けの星達が、朱黒衣の旅人を映えさせる。
ミルクのような肌。蜂蜜のような汗。サフランのような香り。
思考が纏まらない。もう…きもちよくなることしか考えられない。

「ふっ…ぅ♥ ちゅっ♥ ぁっ…♥ イキ、そ…っ♥ あっ♥ イくっ♥ イくっ…♥」

音も無く。動きも無く。ただ嬌声を響かせて。
その中に混じらせて。素直な気持ちを。彼女への想いを。
かき消えようとも。何度も。ひとつだけでも。彼女へ…。

「んむっ♥ ちゅっ♥ ちゅぅ♥ ちゅるるっ♥ ちゅ♥ ちゅぅっ♥」

僕の想いを…彼女へ…。

「ちゅ♥ んっ♥ ちゅぅぅ♥ んぅっ…ぅっ♥ ぅぅっ♥」

彼女へ………っ!

「んむぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜っっっ♥♥♥♥♥♥♥」

……………

………



………ぅ……。

「…少年。そのまま聞きたまえ」

……僕の…部屋……?

分からない…。酷く身体がだるくて…。
眠気も凄まじい…。五感がまともに働かない…。

「キミはこの街の少年。そしてボクは行きずりの旅人」

「今夜は、ここでお別れだ。名残惜しいけれど」

声が聞こえる…。姿も、ぼんやりと…。
誰だろう…、知っている人の様な気がする…。

「…キミがこの街でやり残したことを終えた時…」

「そして大人になった時、まだボクを好いていてくれるのならば…」

「その時は、ボクを探しておくれ。キミ自身の手で捕まえてほしい」

……あぁ……。

また…意識が……。

「ボクもキミを想うよ。100年までは待とうじゃないか」

「その首の傷が、約束の証さ。」

………ぁ……。

「…少年よ、忘れるなかれ」

「僅かな勇気が…」

……………

………



「ほらっ、これなんてどうだい? お前にぴったりだ」

そう言って母さんが持ってきたのは…どこからどう見ても、
何かが間違っている貴族風の服。フリルが襟袖にびーらびら。

僕は無言で首を振って、強い否定の意を示す。

「えぇっ、そうかい? 似合うと思うんだけどねぇ…」

いったい何を勘違いしたらそうなるのだろう。
それならまだ、普段着の方が全然まともだと思う。
もう少し、こう…落ち着いた感じの服が良いのだけれど。

「じゃあ、こっちはどうだい? 騎士様っぽく…」

うわぁ…、白の基調に金色の刺繍…。派手過ぎる。
母さんの騎士のイメージはおかしい。世代レベルでズレてる。

再度、無言で首を振る。

「う〜ん…。なら、これかねぇ」

いや…もう、見ないでもNGって予感がする。
きっと次はスカーフなんかが付いたキワモノが…。

「ちょっと暗いけれど、良いと思わないかい?」

差し出された服を見て…僕は、一瞬固まってしまった。

朱と黒を基調としたスーツ。どこか見覚えのあるデザイン。
それはすぐに形となって思い出され…しばし、呆然とする。

「…? あらやだ、この子、立ったまま居眠り?」

母さんの言葉に我に返って、慌てて、これでいい、と返す。
すると、満足そうに笑顔を浮かべる母さん。意気揚々で店主の元へ。

…会計を済ませ、戻ってきた母さんの手を取り、店を出る。

すれ違う、街の人々。
やっぱり…まだ少しだけ、気恥ずかしい。
でも、それ以上に…なんだか、心地良さを感じる。

こうして、子供の僕が母さんと手を繋げるのは、あと何回程だろう。
僕はあとどれくらい、母さんとこうして手を繋いでいられるのだろう。
素直になれない気持ちが、危うくその機会を逃すところだった。

大人になれば、歳を取った母さんの手を、僕が引くのだろう。
それでもいつか、手を離さなければならない時が来るのだろう。
そのことを知っていて、親と手を繋ぎ歩くのが、大人なのかな…。

空いた手を、そっと首筋に添える。
思い出される彼女の言葉。夢の中で聞いた、最後の言葉。
あれを成してこそ、僕は本当の意味で大人になるのかもしれない。
彼女を探しに行くのは、その時だ。彼女に相応しい大人になってから。

それまでは、この街で…僕のやるべきことをやろう。
大丈夫。彼女は100年も待っていてくれるんだ。
1年早く会うための、1日の遠回りと思えば、なんてことない。
急がば回れ。早く会いたいと思うなら、早く大人になればいい。

そしていつの日か、母さんに彼女を紹介しよう。
その時は、きっと……きっと、僕のお嫁さんとして。

ねえ、旅人さん。

『僅かな勇気が、本当の魔法…』

また会おう。

『少年よ、大志を抱け!』
12/06/13 21:38更新 / コジコジ

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