連載小説
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知らなかった気持ち
朝・・・
相変わらず繁殖期だが、ここ数年の繁殖期とはだいぶ違う目覚めだ。
いつもより気分がいい。
そして昨日一昨日の締めつけられるような苦しさが本当に嘘のようだった。
とは言え、なんか落ち着かない気もする。
心がワーラビットのようにせわしなく飛び跳ねている気分だ。
私を昨日一昨日と苦しめ、今そんな浮かれた気分にさせるのは・・・
「ん・・・あ、みどりさん、おはようございます」
私の気配を感じ取ったのか、そんな気分にさせている本人が眼を覚ましてあいさつした。
「・・・ああ、おはよう・・・」
大事な人に私はあいさつを返し、そしてくちびるを奪った。


本当のところ、朝からそのまま吉田と交わりたいところだったが、昨日の夜、眠りに落ちる直前、二人でうとうとしながら明日はデートをすると約束したから、しない。
けれども昨日、吉田のスーツのパンツと下着を切り裂いてしまったので、このままでは出られない。
近くのショッピングセンターに走り、チノパンツとトランクスを買って吉田に与える。
そうしてから私たちは土曜日の街に繰り出した。
久しぶりのデートだ。
まず喫茶店でゆっくりとブランチをとりながら互いのことを話す。
考えてみれば私たちは仕事でしか話したことがなかったし、昨日の居酒屋ではろくにしゃべらなかったから、彼のいろんなことが聞けて楽しかった。
ブランチを終えたらショッピングに行く。
おしゃれなどは生きていく上で特別に必要と言うことはないので、正直、晋太と付き合っていた時以外は興味なかったが、今吉田と付き合い出したら、やはり彼にはきれいな私を見てもらいたいという気持ちが出てきた。
そしてそのあとは、デートらしく映画を見た。
特に見たいと言うものはなかったが、とりあえず有名な俳優女優が出ているものを見る。
内容はラブコメもので、クラスメイトの男子に恋をしたカラステングの女子高校生が、いろいろ男を落とす技術を調べて実践しようとして失敗したり、変なうわさを聞いて疑心暗鬼になったりするが、最終的には付き合う・・・というストーリーだった。
「まぁまぁ面白かったですね」
「・・・そうだな」
映画が終わり、私たちは出ながら話す。
ストーリーとしては・・・あまり映画やテレビと言う物を見ないので比較ができず、よく分からないが、まぁ面白かった。
だが・・・
「そんなことより、学んだことがあった・・・」
「学んだこと? なんですか、それは?」
「・・・秘密だ」
ごまかすように私は吉田の手に自分の手を絡める。
その映画を見て分かった。
映画の中でそのカラステングの少女は苦しんでいた。
その様子は昨日の私とそっくり・・・
それを見て私は気付いた。
私が昨日一昨日とたった二日だが、苦しんでいた気持ち・・・




それは、「恋する気持ち」だったのだと・・・


11/09/18 10:26更新 / 沈黙の天使
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■作者メッセージ
そう・・・思うんですよ。
男を押し倒すまで無感情で愛を知らないマンティスは、「愛しいという気持ち」は知っても「恋する気持ち」は、そう知るまいと・・・
すべてはそこから始まったこのSSでした(あ、いや、その前にもうひと手間あったや)
まぁ、タイトルやあらすじの時点でバレバレだったかもしれませんが(汗)

・・・はぁ、こんなSSを書くと恋をしたくなるなぁ・・・

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