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夢と父様と母様

夢を見た。
夢の中の父様と母様はとても仲が良くて。
とても忙しそうにしている。
私はそれを見てから。
ドアを閉めて。
自分で作った料理を食べていた。

首をかしげる。
昔、同じ事があった。
でもある時、父様と母様と私の3人で食事を取るようになった。
それを覚えている。
どうして私は今、父様と母様の巣で食事をしている?

父様が出てきた。
母様が出てきた。
二人が出てきて私を見ている。
これは覚えている。
一緒に食事をしようって、二人が言うんだ。

……首をかしげる。
二人は私の手を握って、寝室に連れて行く。
父様と母様が楽しそうにしているから、混ざりたいと思っていた。
でも、二人は混ぜてくれなかった。

今日は混ぜてくれるのかな?

「おはよう」
首をかしげる。
辺りを見回す。
私が寝ていた宿の部屋。
起こしてくれたのは少年。
首をかしげる。

「どうかしたの?」
夢、だったのかな。
父様も母様もいない。
不思議。
あんなにはっきりと二人の夢を見ることなんて、なかったのに。

「お寝坊さんだねぇ」
おばさん、おはよう。
「ああ、おはよう」
「あ、おはよー」
うなずく。

ラージマウスもすっかり宿の手伝いに慣れてきているみたい。
リザードマンは、焦がさないように料理を作ってる。
悪戯ピクシーが飛び回っているから、きっとまた失敗をする。
ちなみに、リザードマン以外へのちょっかいはしていない。
そういう時のお仕置きは、私の握力。

ちょっとやり過ぎたかもしれない。
ピクシーが私に近付かなくなった。

「済まんが、卵を割ってくれ」
「うん、いいよ」
「ねぎと白菜を切ってくれ」
サクサク切る。

「塩を取ってくれ」
「はいはいっと」
「コショウを少々」
「はいよー」

「……くしゅんっ。こら、私の顔に振りかけるな!」
「えへへ〜」
お玉を持ったリザードマンが、コショウ壷を持ったピクシーを追ってる。
その間に味を調えて。
「うん。こんな感じ?」
うなずく。

最近は花嫁修業や大会の準備があって、特訓はあまりしてない。
でも毎日欠かさずに行ってる。
日常の体の動かし方を、一つ一つ意識して動かせば、それが鍛錬になる。
金槌リザードマンが言ってた。

私も少年も、料理をするときの手の動かし方や物の切り方。
荷物を運ぶ時の足の動かし方や荷物を持ち上げる手の位置。
色々と意識をして宿屋の手伝いをしている。
思ったより大変。

手伝いが終わってお昼前の休憩の時。
私は二人のラージマウスに夢の事を話した。
「へー。何だか意外と辛い過去を聞いちゃったのかなーって微妙な気分だけど」
「夢を弄られた、というのかな」
首をかしげる。

「夢を扱う魔物って言うと、あれだよねー。ナイトメアか」
「ゴーストだな。或いはサキュバスか?」
「ああ。夢魔だしね」
首をかしげる。

「ああ、ごめんごめん。置いてけぼりにしちゃったね」
「君はご両親が何をしていたのか、具体的には理解していないのだろう」
うなずく。
「だがその様な夢を見た。それはある種、深層意識の願望に似ているが」
「ひっかかるんだよねー」

「と言う事で今日は」
「私たちも一緒に寝るよー」
ラージマウスと眼鏡を外した眼鏡ラージマウスが同じ布団に入ってくる。

「えへへ〜。何だかいい気持ちだよね。誰かと一緒の布団って」
「悪くない。私も夫を見つけたなら、恐らく、いや確実に同衾の虜に違いない」
よくわからないけど同感。

目を開く。
父様と母様がいる。
昨日と同じ、そして昔見た時と同じ。
ベッドの上で二人とも服を着ていないまま、抱き合っている。

今日の私は動かない。
父様と母様が私に気づいて、手で誘う。
一緒に楽しもうって誘ってくる。
これは私の望み?

部屋を出ようとするけど、体が動かない。
私は父様と母様に抱きかかえられてベッドの上に。
二人が私を抱きしめる。
でも私の体は動かない。

父様がキスをする。
母様が抱きしめる。
でも、何か違う気がする。

誰かが私を見ている。
でも私は動かない。

母様が服を脱がせる。
父様が服を脱がせる。
でも私は動かない。

翼を広げる事も出来ないまま、二人に体を触られる。
二人がしたことの無い触り方で。
父様と母様が私を触る。

どうして触るのと聞いても。
二人の返事は何時も同じ。
すぐにわかる。
でも、私はわからない。
わからない。

じっと誰かが、私を見ている。
その誰かが。

差し出した手を、私は握った。

「おはよ」
「まだ夜だがね」
目を開いたら、二人が私を見ていた。
二人のラージマウスが私を見ていた。

瞬きをして、首をかしげる。
「あはは。よくわかってないみたいだね」
「安心していい。元凶は捕まえた」
「いたい、いたいって〜」
薄透明な女の子?
「いや、この者が元凶の魔物」
眼鏡ラージマウスが眼鏡をかける。

「すなわち、ごーすふっ」
眼鏡ラージマウスがわき腹をくすぐられて変な声を出した。
薄透明な女の子の足は無くて、泡の先端の様に細くなっている。
眼鏡ラージマウスは、その細くなっている部分でくすぐられていた。

「いたいからはなしてってー」
「ゴーストの弱点は何があったかな。破邪も厭わん」
「やめなって。大人気ない」
この魔物はゴーストっていうみたい。

ところで。
「なになにー?」
どうしてあの夢を見せた?
「だって、どきどきするじゃない〜♪ お父様とお母様の秘め事、そしてそこに混ざる幼い一人娘♪ あぁ、熱くなるわぁ〜♪」
どういうこと?

「君は知らなくていいことだよー」
「君にはまだ早い知識だ」
「大人の階段昇る〜、ああ、だめ、降りれない〜♪」

よくわからないゴーストが宿屋にやってきた。
夢を変えれると言う事で少年の夢をお願いしようとしたけど。
二人のラージマウスに禁止された。
仕方ないので、二人を抱いて寝た。

「出して〜、外に出して〜、あ、でも、出すなら中に〜♪」
ゴーストは瓶詰めにされていた。

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13/02/02 23:35 るーじ

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