連載小説
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第二話 利用する者される者
 迷宮都市イシュルには魔力が満ちているとされている。

 以前、ある学者がなぜ迷宮都市に魔力が満ちているのかを調査したことがあった。その調査の結果から、学者が結論づけたのは以下の通り。

 ダンジョンは一種の魔界のようなものなので、傍らに作られた都市はその影響を色濃く受けているからではないか。

 この結論は、想像の枠内にきっちり収まる、ちょっと考えれば誰でも思いつくようなモノであったため、調査と称して遊んでただけじゃねえかと学者を罵倒する者もいた。
 学者が調査を真面目に行ったか否かは別とするにしても、ことイシュルにおいて、学者が言っていることは少なくとも間違ってはいなかった。

 イシュルのダンジョンは、そのほとんどが最奥に君臨する主が作り出した異界である。定期的にダンジョン内部に魔界でしか見られないような魔界銀や魔界ハーブ、淡い光を放つ魔灯花などが生成されるのもそのためだ。
 ただし通常の魔界と比べて、意図的にダンジョン内部空気の魔力含有量は低くされており、長時間ダンジョンを探索しても人間に影響することはないと言っていい。ダンジョンの上にある迷宮都市においてはさらに低く、ほとんど人間の暮らしている土地と変わりはしなかった。

 ならばなぜ、人は迷宮都市イシュルに魔力が満ちていると勘違いをするのか、その答えは簡単で、
 答えの一端を担っている魔物娘のシイは、ダンジョンギルドにおいて大声を張り上げていた。

「なんで、ダンジョン入るだけでこんなにお金がかかるの! もっと安くしてよ!」
 魔物娘だって人間と同じように、心に余裕がなければ言葉遣いが荒くなってもおかしくはない。さらに言うならば、人間と同じように懐の中身と心の余裕が直結することだってあるのだ。

 そう、端的に言うとシイには金がなかった。シイの現在の所持金では、ダンジョンに入れるのはあと三回が限界といったところ。すぐになくなってしまうのは目に見えている。
 だからこそ、なんとかダンジョンに入る料金を安くしてもらおうと、こうして受付相手に必死にクレームを出していたのだ。
 ただし受付もシイのようなクレーマーには慣れたもので、溜息を一つついたあとにシイをジッと睨みつけ、
「宝箱設置費用、ドロップアイテム費用、人間に対して行うイシュルの広報活動費用、ダンジョンギルド運営費用など様々な出費がございます。貴方の気持ちはよくわかりますが、私達も理不尽感じてるんだから我慢しろや」

「あ、はい。すみませんでした」
 シイは小心者なので、すごまれると弱かった。先ほどの威勢とはうってかわって、そそくさとギルドを出ていく羽目になる。


「はぁ・・・・」
 シイがダンジョンデビューしてから、まだ一日。昨日はギルドから立地的に遠い安宿に泊まり、寂しい一夜を過ごしていた。
 日数が嵩めば滞在費用もそれだけ増える。幸いイシュルにおいて宿賃や食費などは滅法安く、場所を選ばなければダンジョンに三回入るお金で一、二年は滞在できるくらいだ。夫さえ出来てしまえば、魔物娘にとって楽園の都市であると言っても過言ではない。実際に、イシュルで誕生した夫婦の八割ほどが都市に居着いていたりする。

 なんとか今の懐事情だけで、夫を手に入れることができないものか。うんうんと唸りつつ悩むけれど、あまり頭が良くない方だと自覚すらしてないシイには、ぴたりとパズルが一致するような名案を思いつくのはなんとも辛いものがあった。
 はあ、と一つ溜息をつき、なんとなく横を向いた店の扉。シイは目を見開いて口をあっ、と大きく開ける。そこには大きく武器屋と書かれてあった。

「そうだ、私には武器がない!」
 空っぽの手のひらに視線を向け、今更なことを言うシイ。シイもインプの端くれであるので下級魔法程度は扱えるが、昨日ダンジョンで人間達と相対した時のことを思い返すと、やはり相応の武装は必要であろう。
 思い立ったが吉日とばかりに、シイは店の扉を開く。

「らっしゃい」

 中には店番をするオークがいた。だるそうにシイのことを一瞥したあと、興味はないと言わんばかりに視線を横に流す。
 しばらくシイは店内の武器に目を通した、が、今まで武器を持ったことすらなかったシイにとって、善し悪しなんてわかるはずもなかった。

「あのー、オススメってある?」
 おそるおそる訊ねるシイに、オークは視線を前に戻し、
「・・・・あんたインプでしょ。大した金も持ってなさそうだし、そこらへんにあるナイフでいいんじゃない?」
 店の隅に乱雑に置かれた安物武器に指を向けた。
「うーん、でもこの刃物って危なくない? 人間大丈夫?」
 シイは武器を手にとって顔に近づける。窓の外から入る光によって刃がキラリと輝きを放った。
「・・・・あんた知らないの? この都市の武器は基本的に魔界銀製よ」
「まかいぎんせい? なにそれ」
 シイの頭がはてなマークで埋まる。
「魔界銀製の武器は、相手の肉体じゃなくて魔力を傷付ける不殺傷武器なの。魔王軍の正式採用装備にもなってるんだけど」
「へえー、すごい!」
「そうね。それにこの都市では魔界銀製の武器を人間たちにも与えることで、私達の負傷率も下げているって話よ」

 オークの話の通り、実際に深層に近づくにつれて、魔界銀で作られた武器を装備する探索者が増える。これは魔界銀製の武器で魔物を倒すと美味しい思いが出来るというダンジョンギルドが流布した情報によるモノで、実際に魔界銀製の武器で魔物娘を倒すと通常よりもお得なアイテム――俗にドロップアイテムと呼ばれている――が手に入るようになっていた。ちなみにドロップアイテムはギルド側が緊急転送魔法システムにより、倒された魔物娘と交換する形で置かれるもので、魔物娘のダンジョン利用料から捻出されている。
 魔物娘側も不殺傷の武器である魔界銀で倒された場合、死なない、回復早い、治療費安い、と良いこと尽くしなので、人間側と魔物娘側の双方に益があるのだ。
 ただし相場というものがあるため魔界銀製の武器を人間に安く売りまくることは出来ず、低階層は基本的に安物の金属武器を使う探索者がほとんど。現在一階層のシイにはあまり関係のない話である。

「んじゃ、これください」
 そういって、シイは魔界銀で出来たナイフを購入する。ちなみに価格は一番安いものだ。
「はいよ、毎度あり。またおいで」
「次は旦那様連れてくるねー!」
 そう言ってシイは機嫌良く店を後にする。
「・・・・あいつ、なじられフラグ立ててったか」
 オークがポツリと発した呟きは、店の扉に吸収されていった。

 シイは魔界銀製のナイフを手に入れた!

 

 これでいける! シイは心を燃え上がらせて意気揚々とギルドへ向かった。
 着いてすぐ中に入り、先ほどの怖かった受付とは別の受付を選んで、いざダンジョンへ!

「ここには、もう来たくなかったぜ・・・・」
 なんとなくかっこつけつつ、来るはダンジョン一階層。買ったばかりのナイフを片手に、人間探して走り回る。
「ふはははは!!! ふははは、あ゛ゲホッ・・・・、はぁはぁ・・・・」
 見つからず疲れてちょっと休む。そんなことを二回ほど繰り返している内に、シイは一人でいる人間を見つけた。
「やった!」
 ソロ探索者を短い時間で発見という、幸先の良いスタートに思わずガッツポーズをとるシイ。

 見つけた人間はちょっと大きめの外套に身を包んだ、小柄でとても可愛らしい顔立ちをした少年だった。もうすでにどこかのショタコンにロックオンされてそうである。
 しかしシイにとってはそんなの関係ない。少年と真正面から相対し、自分の夫にすべく「いくぞー!」と、気合いを入れて声を上げる。

 束の間、悠々と少年はシイの脇をすり抜けていった。

「ふぁっ!?」
 振り返ったらもういない。少年のあまりの速さに、シイは目で追うことすら叶わなかった。
「なにあれー! ずるいー!」
 ぶーたれて文句を言うも、どうしようもない。
 ちなみに『逃した旦那は大きい』という言葉が、イシュルにいる魔物娘達の間で存在する。なんとなくイヤラシイ感じが強い言葉だが、意味は『好みの男を寸でのところで逃し、やる気なくなったので宿に帰る』というだけである。

「ちぇー。いいもん!」

 シイの場合は、よくわからない内に終わったので心のダメージは少なかった。めげずに次の人間を探していく。

 基本的に広い上に幾重にも道が入り組む複雑な構造をしているダンジョンではあるが、都市の規模と比例してダンジョンに潜る人間もたくさんおり、探せば結構遭遇するものだ。ただし大抵の人間は三人くらいで固まっており、シイが手を出すことは難しかった。
 そういった人間達を物陰に隠れてやり過ごし、シイが探索を続けて二時間は経った頃のこと。

「きゃあぁあああ」
「げへへ、魔物とかいうが、随分めんこい顔してるじゃねえか。殺す前に少しくらい味見してもいいだろ」
「やっちまいましょうよアニキ!」

 シイは偶発的に、男二人に倒されてしまう寸前のくずおれたおおなめくじの姿を遠目に発見した。

「いけない!」
 同じ魔物娘として捨ておけるはずもなく、助けようと駆け出すシイ。
 しかし、突然何者かから足を引っかけられた。頭からずさーと転んでしまう。

「いったーいっ!」
「ちょっと、何しようとしてるのよ」
 シイの足を引っかけたのはハーピーの少女だった。両腕の翼を胸の前で組みながら、転んでいるシイを睥睨している。
「何って助けようとしてるに決まってるじゃない!」
「はあ・・・・、あんた新入り? よく周りを見なさいよ。あそこにいるでしょ、あの子の仲間」
「え・・・・」
 ハーピーに指示された方に顔を向けると、天井に張り付き様子を伺っているワーバットの姿があった。
「新入りっぽそうだからいちおう教えてあげるけど、戦闘時の横取りは基本ルール違反よ。ほら見なさい、もうすぐワーバットがあの子分に飛びかかるから」


「なんだ!? 魔物ってのはこんなに具合がいいのか? う、うう、搾り取られる」
「あ、アニキ助けてー」
「お婿さんげっとー」
「て、敵!? サ、サブゥ! 待ってろ、今」
「えへへ、逃がさないよー」
「こ、こいつ。全身を絡ませて・・・・!」

「「アッーーーーーーーー!」」


「ほら終わった。いきましょ」
 アヘ顔になった人間達を後目に、もう用はないとばかりにシイ達は離れていった。

 

 そうしてちょっと進んだところで、先行していたハーピーがくるりと振り返ってシイを見る。

「自己紹介しましょうか。私はハーピーのフナイよ」
「インプのシイだよ」
「そう。あんたここ入るの何回目」
「二回目ー」
「なるほどね。それじゃ、よくわかってないわけだ」
 納得顔のフナイに、シイは先ほどからの疑問を聞く。
「さっきは何であそこで様子見てたの?」
 一瞬、眼をパチクリさせるフナイ。
「ああ、あれね。もし、あの魔物娘達が倒されたときのために待機してたの。人間も連戦は辛いだろうしね」
 シイは忘れがちではあるが、緊急転送魔法システムがあるため魔物娘が死ぬことはまずない。結構考えてるんだなあ、と目の前のハーピーに感心する。

「そうよ、ここで会ったのも何かの縁。臨時パーティーを組みましょう」
「臨時パーティー?」
 フナイの提案に首を傾げるシイ。
「まあ簡単に言うと共同戦線ね。大抵の人間は複数でダンジョンに潜るから、それに対抗してこっちも数を増やしましょうってこと。ソロの探索者もなかなかいないし、いたとしても一人で潜れるくらい優秀な場合が多いから、お互い一匹だと辛いわよ」
 シイは先ほど会った少年を思い出す。確かにあれはどうしようもないレベルであった。
「うん、わかった。そうしよっか」
「よし、決まりね」
 ニッとフナイは笑みを浮かべた。

 

 それからシイとフナイは、話し合いながら人間を探してダンジョンを歩く。

「あんた、わかってないのね」
「えっ」
「そもそも、ダンジョンっていうのは・・・・」

 話し合いといっても、フナイがシイに対して都市やダンジョンのことを教える一方的なものであったが。そんなフナイの親切な態度に、シイは有難みを感じていた。

 

 フナイと組み始めて約一時間、外は昼時という時間帯に差し掛かったころ。
「しっ――」
 フナイが突然会話をやめて、先の道を示した。

「な、何?」
「先に、いる。・・・・三人かしら」
 神妙な顔で告げるフナイ。促されて注意深く確認すれば、確かに人間の姿があった。
 いつものシイであればスルーする人数であるが、今は二匹である。やろうと思えばやれるかもしれない。グッと拳を握り込んだ。
「縦に三人か。真ん中が杖を持っているからマジシャンとして、前衛二人の間に後衛を挟んだパーティーかしら。前を歩いてる人間の剣は重そうだし盾まであるとこ見ると、スカウト系はいなさそうね」
 冷静に分析していくフナイの隣で、「ふんふん、そうだね」とか相づちを打つシイであったが、正直言ってることはよくわかっていなかった。
「いい、シイ。作戦はこうよ。私はさっきのワーバットみたいにこの先の天井で張り付いて待つ。アンタはあの三人が私が待ち伏せている場所まできたら突然飛び出して驚かせなさい。相手が戦列を整えたのを見計らって、私は上から強襲。厄介なマジシャンを仕留めるわ。それで二対二になって数的不利はなくなる上に挟撃の形が出来るってわけ。オーケー?」
「お、おーけー」
「わかってなさそうね。いいわ、そこに隠れて私を見てなさい。私が襲えっていう合図出したら、飛び出す。これだけでいいわ」
「うん」

 フナイに言われたとおりにシイは岩陰に隠れる。フナイは翼をはためかせて天井の壁に取り付いた。



 やがて探索者達が隠れているシイの近くまで寄ってきたところで、フナイはシイに合図を出した。
 シイが指示通りに飛び出すと、突然のことに先頭にいた探索者が驚く。

「モ、モンスターだ!」
「慌てるな、相手は一匹だ」

 後ろを警戒していた男が、マジシャンを守るために前へ出てきた。前衛二人の壁と後衛一人の火力、単純故に強く、普通に戦えば崩すことは難しい。
 彼らは一階層の初心者といっても、ベターな選択は心得ていた。陣形や役割を意識することは初心者にはなかなか難しいことであり、そこそこの実力があることを証明している。
 パーティー移動の際の配置、一番の実力者を後ろの警戒に置き、どちらから魔物が襲ってきてもいいように真ん中にマジシャンを配置する。実に理にかなった行動である。
 ・・・・しかしそれも、

「とても読みやすい定石行動ね!」

 上で待ちかまえていたフナイに想定されていなければ、の話であったが。

 目の前のインプに注意がいっていたパーティーが、飛来するハーピーの速度に対処出来るはずもない。
 マジシャンの胸にフナイが装備している魔界銀製爪武器の強烈な一撃が突き刺さった。
「う、うぐ!」
 フナイの奇襲によって、マジシャンは即座に意識を失った。なんだかよくわからないが、上手くいっている展開に、シイの心が踊る。
「やった、これで――」
 フナイが言っていた通り二対二である。シイの脳内にはもう、旦那様とのイチャラブ展開まで見えていた。
 挟撃の連携をとるべくシイは、マジシャンを仕止めたフナイに視線を向ける。

 しかし何故か、男と男の隙間から見えたフナイは、シイに向かって意地が悪そうな薄ら笑いを浮かべていて、

「ごっそうさーん」

 倒した男を脚で掴み、この場から飛び去っていったのだった。

 

「私の! これは私のだ!」
 喜びを表すかの如く、全速力でダンジョン内部を飛ぶフナイ。一直線に帰り道を目指している。

 フナイにとって、イシュルでの活動は苦難の日々であった。

 いくらイシュルのダンジョンが広いといっても、いつも飛んでいる雄大な空とは比べるべくもない。ハーピーのフナイにとっては自分の持ち味が活かせないため戦闘が厳しく、待ち伏せも何かがなければ複数相手に成功は稀。他の魔物娘が戦ってる際を狙うことも考えたが、エンカウントした魔物娘が優先という横取り防止ルールが邪魔をする。

 明確な方針もたてられないまま、一回我慢できずに人間を襲撃した際、返り討ちにされ治療所に転送されてしまったことがある。それからしばらくは、高い治療費を返すための労働に明け暮れる屈辱を味わった。
 あの日フナイは、ハーピー属用スコップを振るいながら、ダンジョン拡張及び魔界銀の採取をしていたときに誓ったのだ。どんな汚い手を使ってでも、夫を手に入れてみせると。

 フナイは考えれば考えるほど自身だけでは困難だということがわかっていたし、身に沁みてもいた。
 だから探していたのだ。都合よく利用できるものを。
 そんなフナイの野心が魔王様か堕落神にでも届いたのか、扱いやすそうなアホの子とパーティーを組むことに成功することになる。
 あとは、シイの目の前で起こったことが全てであった。

「ほえ?」
 この時っ・・・・! シイはまだ裏切られたと理解出来ていなかった・・・・! シイは基本的に馬鹿だったっ・・・・!

「あいつ!」
「追うな! さきほどのように罠や奇襲の可能性は捨てられん! スカウトもいない我々が深追いしては全滅もありうる」
「・・・・くそっ! モンスターめ!」

「あれー?」
 二対二になるはずがフナイはいなくなってしまったので、シイは一対二という不利な状況に立たされることになった。足りない頭でどうやって切り抜ければいいだろうと、思考すること三秒。

「の、のーかうんと! のーかんのーかん!」
「ふざけるな!」
「あいつの仇は討たせてもらう・・・・!」
 シイはやり直しを要求したが、ちょっと無理があった。

「うぅ・・・・!」
 仇も何もそもそも死んでないのに、すごいとばっちりを受けることになったシイ、目の前の二人の眼力を見るに話を聞いてくれることはなさそうだった。

「ふえ〜ん!」
 シイは逃げ出した!

 

「あの女〜っ!」
 一目散に駆けてなんとか逃げ切ることが出来たシイは、憤慨していた。やっとフナイに騙されたことに気づいたのだった。

 ダンジョンから出て早々、昏倒している男を背中にくくりつけたフナイが受付にいるのを発見する。
「んじゃ、私はこれで」
 手続きが終わって出ていこうとしていたフナイに、シイは勢いよく突っ込んでいった。
「ちょっとあんた! この卑怯もの! 私にそいつよこせー!」
 フナイはシイの姿を確認すると、ちっ、と軽く舌打ちをする。
「はぁ? 何言ってんの。人間は手に入れた魔物に権利があるの。あんた、もしかしてギルドの規約知らないの?」
「うぐっ! そ、それは。・・・・それとこれとは関係ないっていうか」
「関係あります〜、私はルール破ってませ〜ん」
「ぐぬぬ」
 文字を読むのも面倒がるばかりか記憶力にも自信がなかったりするシイには、何も反論出来なかった。

「ま、悔しかったらあんたも騙す側に回ることねー。じゃ、これからラブラブするからバイバイ!」
「あ、待てー!!!」
 そういってギルドから飛び出し、勢いよく空を飛んでいくフナイ。シイは追いかけようとするが、ハーピー相手に空で追いつけるはずもなく、無駄に疲れて終わった。

 ちなみに、このことでギルドに文句を言ったが、
「臨時パーティーの問題は当ギルドでは一切関与しません」
 と、暖簾に腕押し状態であった。

「くそっ・・・・! ちくしょうっ・・・・!」

 シイがこの日食べた夕食のパンは、妙に塩辛かったという。

 
 続く!

 

 備考

 なじられフラグ
「今度は旦那を連れてくる」「旦那ゲットするのでもう来ない」などという台詞を最後に店を出ていった魔物娘は大抵、武器や防具の新調にまた店を訪れる。当然横に旦那はおらず、「旦那どこー?」とか「もう来ないんじゃなかったの?」とか言ってなじられる。このなじりを嫌がって店に行かない魔物娘もいるが、町中でばったり会ったりして気まずくなることも。
 
 緊急転送借金労働者コンボ
 倒された際は治療所に緊急転送され、結構な治療費がかかる。治療費が所持金を越えると借金となり、借金状態になると借金を返すまでダンジョンに潜ることは出来ない。イシュルに長くいる魔物娘なら、一度は誰もが通る道だという話も。

 パーティーについて
 大きく正規パーティー、臨時パーティーの二つに分かれる。ダンジョンギルドへパーティー申請したものを正規パーティー、ギルドへ申請してないものを臨時パーティーと呼ぶ。正規パーティーの場合、パーティーの結成期間やパーティー内の規約などがきっちりと決められ、内容に強制力を持つ。一匹の魔物娘だけが夫を手に入れた場合に対してのことが規約には書かれることが多く、内容は、他の魔物娘の夫を見つけるまで手伝う、手に入れた夫はパーティーのもの、のどちらかが書かれるようだ。
 今回のシイとフナイのパーティーはギルドに申請しない臨時パーティーだった。制約は強制力を持たず、組む場合は騙されても仕方ないという割り切りが必要。

 横取りについて
 基本的に横取り厳禁。
 なお、オプションのミミックはパーティー扱いとなる。
 ダンジョンにおいてミミックは仕事に困らないほど大人気。つぼまじんは壷の耐久力が低い問題とそもそも内気なものが多くダンジョンにわざわざ来ない。
18/07/14 17:43更新 / 涼織
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■作者メッセージ
 ふう、なんとか週一という偉業を達成できた・・・・と思ったらなぜか一ヶ月以上過ぎているっていうね。時の流れは不思議ですね。次話はほぼ出来てるんで一週間以内には大丈夫な気がしなくもないです。

 この作品は実験作の面が強かったりします。
 三人称メイン、パロディネタ、終わりを考えていない見切り発車、と自分自身初めての要素が三つ揃ってます。
 こんなんでもお付き合いいただけると嬉しいです。
 まあ、あんまり評判良くなかったら四話くらいで完結します。見切り発車とか言っておきながら、打ち切り終わりは考えているという脆弱さよ……。ブヒィ。

 Q ハーピーはこんなに狡猾じゃない、魔物娘図鑑見直せクソ野郎が。
 A ハーピーの本領は発情期にあると思っています。今までの性格ががらんと一変、陽気な性格が今回のフナイみたいな性格になることだってあると思うのです。ギャップ萌えです。決して一階層にいそうな弱さで空飛べる子誰かいないかな、可愛いからハーピーでいいやみたいな安直な考えから採用したわけではありません。実は作中設定だと冬ですが魔物娘は発情したときが発情期という俺設定があるんで大丈夫というのは無理がありますかそうですか。こ、個体差だし・・・・(震え声)。

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