連載小説
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Chapter1 緋の絨毯
グンタイアリ-Army ant-



社会性昆虫、数百万匹以上の群生昆虫(昆虫綱では世界一)


特定の巣を持たず軍隊のような隊列を組み、あらゆる動物に素早く集団で襲いかかる


主な攻撃は噛み付き、組み付き、ひっかき、蟻酸(毒)の注入である


獲物は全ての動物で昆虫は勿論、ヒト、ウシ、ジャガー、ゾウですら食い殺すことが可能


自身の体を繋ぎ即席の梯子、橋としどんな場所でも強引に行進してゆく


他の昆虫より遥かに小さいが1匹が100匹の仲間を脚に吊り下げることも可能
※人間に例えると700kgのバイソンを持ち上げる力


恐怖心、慈悲等の感情は全く存在せず一糸乱れず行軍する

彼らの行進した道には何も残らない











カレスティエル王国、ここはレスカティエ教国に次ぐ巨大な国家


高潔な精神を持った王が治めるこの都市国家は人類の栄光の象徴である
正義を愛し、病んだ心を持つ物には手を差し伸べていた


そんな理想的な国家ではあるが、決して穏やかでは無い


この強い正義は全ての者に平等であるが故、軽犯罪というものがこの国家に存在しない
つまりスリやいじめも殺人、詐欺と同等に厳しく罰せられるのだ


レスカティエ陥落の報を受けた全世界の教国は魔物の討伐に消極的になりつつあったが
この国家は今日も魔物の討伐に全身全霊を込めていたのだった...










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カレスティエル、兵舎



「皆の者、よく聞け!近隣の村が魔物によって崩壊した!」


大隊長、グスタフ中佐の声が兵舎の野外訓練場に響き渡る
整列している男性兵士、女性兵士は皆真剣な表情で報告を聞く


「敵はジャイアントアント!戦力は約500前後!おそらく相当な手練だ!」
「しかしっ!精鋭は我らも同じ事!元帥殿が直々にコマンド指令を発令した!」

我が国の総軍指揮官を担うお方、元帥殿からの直々の言葉と聞き、兵士達はより体に力が入る


「部隊は当然我々カレスト大隊が任命されたっ!明日こちらから攻撃をしかける!」
「今回の作戦は特殊大隊マグナスッ!お前たちが出撃するっ!」


「「「ハッ!!!」」」


大隊が大気を震わせるほど大きな返事をした


「よしっ!では作戦内容を・・・」



特殊大隊マグナス
男子500名、500女子名

堅牢な重歩兵と俊敏な軽装歩兵で構成されている短期決着をつけるために構成された
大規模な特殊部隊である

山賊、暴徒を一瞬の内に無力化し、捕縛することができるエリート集団だ

女性の軽装歩兵は常に重歩兵に守られており安全且つ迅速に敵を仕留める
男性の重歩兵は戦線を維持し軽装歩兵を守り抜けば必ず生還できる

まさに阿吽の呼吸、完璧な攻守一体のエリート集団であった




























「作戦の内容は記憶したか?」「うん」「では女王様に詳細を」
「たいちょーは?」「敵の動向を見張る、先に帰っていいぞ」

「「「いえっさー!」」」



堅牢な砦、厳重な見張り、完璧な魔法障壁
この全て掻い潜り軽々と作戦を密偵している者達がいた


ジャイアントアント、魔物娘である


しかしその姿は"ジャイアント"と呼ぶには程遠く、小さな少女のようであった

"蟻である部分"は緋色で通常種よりやや刺々しい印象があり、さらに原種よりも小さな体格である
しかし鮮やかにして靭やかな体でつぶらな瞳はまさしく美少女のものだった





ぬちゃっ、ぬちゃっ
ぱんっ、ぱんっ




「このまま三日間ぶっつづけセックスしよーね♥」
「ほらっ♥もっと精子だして♥タマタマさんがんばってぇ♥」


彼女たちの集団が淫らな水音を立てていた
自らで壊滅させた村の中で男たちと交わっている


もぐもぐ、むしゃむしゃ
ごくごく、ずるずる


「このご飯おいしいっ!ね、アナタもそう思うでしょ♥」
「そりゃあ俺達が育てたからなぁ...」

村人達が育てていた食べ物を豪快に夫たちと食べている者もいる
夫となった者達は幸せそうに苦笑している


「わぁ〜いいなぁお姉ちゃんたち、私も旦那さんほしいよぅ〜」

潜入した蟻の一人、セシリがつぶやく

「だから次の獲物の軍隊がいるでしょ、愚痴いってないで早く行くわよ〜!」


セシリを叱咤するもう一人の蟻、彼女はセシリの姉貴分であり
彼女の村を滅ぼし軍団に引き入れた張本人である



そう、セシリは元人間。この村の住人だったのだ



「セシリ、あなたとっても働き者でいい子なんだからすぐ旦那さんも見つかるわよ
それに素敵な体とココロだって・・・」

優しい声でセシリを慰めるが

「ふふん!やっぱりお姉ちゃんもそう思うでしょ!
お姉ちゃんより早く結婚しちゃうもんね〜♪」

「このッ・・・!早く報告しに行けー!」「はいは〜い」

大声で怒鳴られ、セシリはさっさと女王様の所へ向かうのだった



「...ふふっ心配して損したわ」






「女王さま〜偵察終了しましたよ〜」

「ちゅっ♥ちゅっ♥んふあぁ...♥」

女王は周りの者達と変わらず外で性交に耽っていた
仰々しい王冠や絢爛豪華な玉座も無く、ただ一回り大きいだけの女王


「ちゅうっ♥ぷあっ...♥あらセシリおかえりなさい」


この軍の王、夫との接吻を中断しセシリの方を向く
小さい蟻の魔物の一匹にすぎないはずなのに、どこか威厳たっぷりの雰囲気だ

「それで、人間達の様子は?」

「警備がとても甘く、兵も下の上程度の実力でした
砦は穴だらけ、国自体が脆弱です」



あれだけの国力、兵力を見たはずのセシリは言い放った
国が脆弱だと、砦は穴だらけと



「まぁ大方予想通りでしたね、して兵力は?」

「男500女500、合計1000名です
男は重歩兵、女は軽装歩兵の戦闘部隊です」

「...まぁ"そんな程度"ですか、じゃあ明日の正午に独身の子
300人で敵部隊を叩きなさい、もちろんあなたもよセシリ」

「やったっ!ありがとうございます女王さま〜」

「じゃ行ってよし、私達の歩く場所こそ我らの領土、有無を言わせずね・・・ちゅ♥ちゅぅ♥」

「はいっ!よ〜し旦那様みつけるぞぉ〜!」




異様だった


1000人のエリート部隊を"そんな程度"で済ませる女王が

攻撃部隊に任命された少女、セシリが喜んでいることが

明日、戦争が始まるにも関わらず欲の限り性を貪る彼女たちが







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運命の日



「グスタフ中佐ッ!向こうから来ますッ!」


偵察兵が慌ただしく走りながら報告する
真っ青な表情でグスタフの元へ辿り着いた


「何だと?奴らが我々よりも早く行動?」

「はい!それに異常なんですよ!赤くて、橋で!奇襲なんですよ!」

「何を言っているのかさっぱりわからんぞ!落ち着くのだ偵察兵!
カレスティエルの兵が情けない!ともかく双眼鏡を!」


完全に錯乱している偵察兵に嫌な予感を募らせるグスタフ
そわそわしながら双眼鏡を持ってくるのを待つ


「ゼェ...ゼェ...ど、どうぞ、この国一番の双眼鏡です!」

「この馬鹿者が!緊急事態に双眼鏡の質を選んどる場合か!
ええいもう良い!はやくそれをよこせっ!」


錯乱している愚か者な偵察兵から双眼鏡をブン取り、近くの川に目をやる
そこには


「何!?何なのだアイツラは!」

双眼鏡のレンズに映っていたのはカレスティエル川に架かった緋色の橋
それと同じ色の魔物娘達が渡っているではないか

「ええい、魔物が知恵を使って!
いつの間に橋を作ったと言うのだ!警備隊は何を...」


敵の奇襲は予想はしていたがまさか白昼堂々橋を架けて行進してくるとは

グスタフにも想像は出来なかった、橋を建設するなら警備隊の目に留まると考え
砦の中の警備を固めていたためこの奇襲は予想外であったのだ


「違うんですよ中佐!しょうがないんですよ!
よくあの橋を見てください!すごいですから!」

「しょうがないも糞もない!くそう、一体何が...」


偵察兵の言う通り橋を注視する
すると驚愕、なんと彼女たちが手足を繋ぎ合い、橋となっているではないか

なんという奇策!この偵察兵が慌てふためき、警備兵が気づかんわけだ
だが中佐は気づく


「ふふ...確かに気づかんのも無理はないだろうなぁ
だが偵察兵、お前は肝心な事を見落としたな」

「と、というと...」

偵察兵は不思議そうに聞く


「『鴨が葱を背負って来た』ということだ、見ろ奴らの人数を
予想を下回り、たったの300人前後しか居ないではないか!」


「ああッ!よく見れば確かに少ないですね!」


「さらに!あの小柄な体を見ろ、私が図鑑で見たのより小さいぞ!
何か赤っぽいが心配もないだろう!まさしく武器、防具を一切持たぬ少女のようではないか!」


グスタフ中佐が得意げに指摘する、魔物達が想定の戦力以下である事を
すると偵察兵の青ざめた顔はニッコリとした笑顔に豹変した

女王が程度を見切って300人に進軍させたという事実に気づかずに


「自分、これには驚きと喜びを隠せません!やっぱりグスタフ中佐は流石名将!
将来の夢はグスタフ中佐の近衛兵になりたいであります!」


「おい偵察兵、あまり浮かれるなよ敵の奇襲である事には変わらん
油断は敗北を招く、気を引き締め直すのだ」


浮かれた兵士に喝を入れる
いよいよ我が大隊の猛威を振るう時が来たようだ


「フッ、こんなことならもうちょっと早くに進撃してもよかったな
勝ち戦だ!、マグナスに出撃命令を出せ!」

「ハッ!」











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「魔物娘共!投降せよ!さすれば苦しみを与えず浄化してやる!」
「繰り返す!速やかに投降せよ!」



マグナス隊の男が999人の仲間の前に立ち、停戦を試みる


ザッザッザッ...
蟻達は表情を変えず、無言で行進を続ける

何も武器を持たないのに、小さい少女なはずなのに
マグナス隊は威圧感を感じた

だが彼らもエリート、すぐに戦意を取り戻す



「強がりめがッ、後悔するなよ!このままではマグナス大隊がみじめですぞッッ!グスタフ中佐!ご命令を!」

「よおおおオしっ!特殊大隊マグナス!
突撃いィィィィぃ!!!!!!!!!!」



「「「オオオオオオッ!」」」



凄まじい喊声と共に砂埃を舞い上げ襲い来る人間たち
しかしそれでも蟻達は無感情のように進軍をつづける

700人分ある戦力差に向かって


「俺らは切り込み隊長!重歩兵長ムスクとっ!」
「軽装歩兵長、リリアナっ!」

「「魔物共、覚悟ォ!」」



重歩兵ムスクが巨大な長方盾で先頭の蟻に襲いかかる
ムスクの背後には抜剣したリリアナが

ジャイアントアントの絶体絶命、と思われたその時


ブシャァ!


「何これえ!!!」

「ムスクッ、どうしたぁ!」



彼の巨大な鉄製の盾がボロボロに錆びた
そして


バギンッ!


「うおオォォオオあああああァァァァァ!?」

ガッシリとジャイアントアントが鎧に組み付く
掴まれた場所がべっこりと凹んでいる


「ムスクぅ!くそっ!どけええっ!」

助けに入ろうとしたリリアナが更に素早い蟻たちに囲まれてしまった
剣を振り下ろすが全く掠りもしない


「「ムスク兵長!蟻を振りほどいでください!これはまずい!」」


兵が蟻と格闘しながら助けを促し、なんとか振りほどこうとしたが
引き剥がそうと力を加えた瞬間、蟻が鎧に噛み付いた

ムスクの力と蟻の咬筋力により鉄の鎧は砕け落ちてしまった
そして蟻が接近し


「くんくん...んーお兄さん非童貞だね、おちんちんから女の匂いがする
あのリリアナって人とデキてるでしょ?昨日あたりセックスした?」


「な、なっ、はぁ?!貴様戦闘の最中に何を言って」

「私も皆もデキてる人を略奪なんかしないから平気だよ〜それにぃ」
「"変わっても"仲良くね?」


トンッ、うなじを手刀で一閃
ムスクは一瞬で地面に倒れこんだ


「これこれ♪これやってみたかったの♪」
「ムスク兵長ォォォォ!」


兵長がやられ、一気に士気がガタ落ちするマグナス部隊
それもそのはず常勝無敗、先手必勝の彼らが小さい少女に手も足も出ないのだ

挙げ句の果てには自ら先頭に立ち、敵をなぎ倒していた兵士長コンビ
この二人が瞬殺されてしまえば無理もなかった


「ねぇ!そっちのリリアナって女の人は?」「やっぱりそうだったよ〜」

蟻達が囲む真ん中、見るも無残に全裸にされたリリアナ兵長が横たわっていた

「ううぅ///まだ私を辱めるつもりなのか...?もういっそ殺...」



「殺すわけないじゃん、そんな残酷なことして誰が喜ぶの?」
「えっ、ひゃぁぁん?!」



くちゅくちゅ、どろり

「うん、やっぱり非処女!しかも精子も残ってる!
兵士を引退しなきゃいけなくなるかもしれないのにちゃんと中出しセックスしてるんだ!」

「「「わぁ〜ドロッドロ〜 羨ましい... 彼、すごいんだね♥」」」


昨日、彼と軍に秘密で禁じられた逢引をしていた証拠、ムスクの精液が溢れてしまう
蟻と仲間の兵士達に痴態を晒し、リリアナは思わず涙が出てしまう


「ぐすっ...ひぐっ...兵士の性行為がそんなに面白いか!
私達だっていつ戦場で死ぬか分からないんだ!愛しあうことぐらい...」

「ううん、とっても素敵な事だと思うよ」「ふえっ?」


残忍で冷酷と思っていた魔物娘からの以外な言葉
それは暖かく母のような言葉だった


「彼、他の女の匂いしないもんアナタも他の男の匂いしないし
二人共一途に愛し合っているんでしょ?私鼻良いからわかるもん」

「だからさ、もっと彼を幸せにしてあげてね」


ブシャ!と謎の液体を全身に噴射されたリリアナは気を失い昏倒した




後は蟻達の蹂躙ショーが長々と公開されるだけであった
マグナス部隊の要、攻防一体の戦術はまるで歯が立たなかったのだ



万力のような組み付きで鎧は砕け、破砕機のような顎に武器をへし折られた
盾や軽装は蟻酸に溶かされ、全身に噴射され無力化されてしまう


完全な敗北
特殊大隊マグナスは壊滅し、ジャイアントアント達に連れ去られた


彼女たちの帰還の行進は地面に敷かれた緋色の絨毯のようだった





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「むぐーっ!もがががっ!」

名将グスタフ中佐、彼も例外なく捕らえられた
全裸に猿轡という無様な姿で地下牢に入っていた


こつん、こつん、こつん
看守だろうか、誰かが牢に降りてきていた


「グスタフ中佐っ、やはりここに!ご無事でしたか!」
「今牢を開けて喋れるようにしますっ!」


驚くことにあの騒がしい偵察兵だった
救助が来たのだ、神はまだ私を見捨ててはいなかったのだ


「はぁはぁ・・・偵察兵、助かったよ
これは元帥の指令か?まぁ良い、とにかく停戦を!?---ちゅぅぅっ♥」


「ふふっ、グスタフ殿ぉ♥やっと二人きりになれたぁ♥」
「ぶはっ?!偵察兵!一体なんのマネだ!」


信じられない、部下からの唐突すぎる接吻
とうの昔に性欲は枯れた初老の男に抱きつく偵察兵


「敵に加担するつもりか!こんな事が発覚すれば軍法会議でお前は...」
「グスタフ殿も私達と一緒になるんですよぉ〜♥」


パキパキッと小気味よい礫音が鳴ったと思うと偵察兵の体が変異してゆく
大きな触角、緋色の甲殻、つぶらな瞳

偵察兵の面影や胸の大きさは残っているものの完全に奴らと同類になっていた

「お、お前魔物に...」

「グスタフ殿の若いころってどんななんでしょう?白髪で渋いお髭も素敵だけど
黒髪に髭無し、若々しくなったグスタフ殿のガチガチおちんちんも見たいでありますぅ♥」

「う、うおおおおおおっっっっ!!!」



後日、さらに膨れ上がった特異個体ジャイアントアントの群れが発見される
幸せそうな男たちと共に



マグナス部隊壊滅を聞き、住民達は恐れ慄いた

いつの間にか彼女達はこう呼ばれていた



""緋の絨毯""


Chapter1 END
16/09/26 07:35更新 / もけもけ
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■作者メッセージ
ここまでお読み下さりありがとうございました
とあるSS著者さんの変異体にこれまでにないくらいグッと来て自分も書いてみました

次回は愛が重いあの娘の特殊個体です。

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