読切小説
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笹食ってる場合じゃねぇ!
 彼女は獣道を全力で駆け下りていた。ここは霧の大陸でも一際険しい山々が連なり、仙人やそれを目指すものが修行に励む場所である。当然道など舗装されておらず、一般人が立ち入ることも殆どないので道が踏み均されていることもない。獣道なら尚更である。そこを駆け下りることは一般人には到底不可能なことだ。まず駆け下りていく過程を想像して恐怖する。足腰に甚大な負担がかかることは目に見えているし、途中で意に反する加速についていけなくなって転んでしまった場合など想像もしたくない。鍛えた人間でも分をわきまえる。転んだ場合ただでは済まないことがわかりきっているからこそ、加減をして躓いてもすぐ体勢を立て直せる程度の速さを保ち続ける。全力疾走などするわけがない。
 当然そんなことをしている彼女が一般人であろうはずもなく、さらに言えば人間でもない。彼女は人熊猫――レンシュンマオである。半分が人でもう半分がパンダである彼女は、この山奥で静かに暮らしていた。たまに修行のために立ち入った火鼠と遊ぶ(火鼠当人としては遊んでいるつもりはなく真剣に勝負をしているのだがレンシュンマオの彼女はじゃれあいに近い遊びだと思っているのである)以外は主食である笹を探してうろつくか、笹を食べているか、寝ているかであり、基本的にその場からほとんど動かない。
 では何故そんな大人しい彼女が今にも前転してそのまま転がって行ってしまいそうなほどに山を駆け下りているのかといえば、単純に今回は普段と事情が違っていたのである。簡単に言ってしまえば、男の来訪。山籠もりに来たらしき男が山を登っているを確認したとき、彼女はその時一緒にいた火鼠を置いてけぼりにして男の方へ一目散に駆けつけているのである。
 男が彼女を視認した時、既に二人の距離は男が飛びついてくる彼女に反応しきれないほどに縮まっていた。彼女は男に抱き付くと、勢いを殺しきれずに男の体もろとも宙に浮いた。彼女は男を抱えたまま空中で一回転し、両足をそろえ見事に着地した。
 未だに状況を理解していない男を尻目に、彼女は男を一度おろしてからゆっくり押し倒し、彼と遊ぶことにしたのである。正確にいえば、彼“で”遊ぶことに。
 彼女は押し倒した男の首周りの匂いを嗅ぎ、体を撫で回しながらぴちゃぴちゃと音を立てながら首を舐めまわしては甘噛みするのを繰り返した。男は未だ混乱していたが、彼女が自分に害意がないことはなんとなく理解した。かつて別の山に籠っていた際に出会った熊(魔物娘ではない)と同じ気配を感じたからだ。ただ、野生の熊の爪や牙によるじゃれつきは人間にとっては致命的なのでやむなく撃退したが。
 彼女の場合、爪は鋭いが彼女はそれを触れるか触れないか程度の強さで撫で付けているし、歯に至っては犬歯が若干鋭い以外は人間とさほど変わっていない。加減をしているのは明らかであり、もし彼女が自分を殺すつもりなら、既に自分の喉は噛み千切られ、体は引き裂かれていることだろう。男は彼女を振り払うことなく、逆に彼女がしているのと同じように、彼女の体を撫で回し始めたのである。黒い体毛に覆われている野性的な腕や鼠蹊部まで見えてしまっている程に大胆なスリットから覗く太腿、余分な脂肪がまるでついていない脇腹を陶器製の逸品を愛でるように優しく丁寧に。通常ならその場で叫ばれて頬をひっぱたかれても文句の言いようがない行動ではあるが、彼女は拒絶するどころかむしろ気に入ったようで、体を密着させ、まるで自分の匂いを男の体に擦り付けるかのように前後してきた。
 男の胸に伝わってくる柔らかな感触は、長らく修行ばかりで女っ気がなかった彼の理性を奪うのには十分であった。男はスリットに手を滑らせ、安産型の臀部を揉みしだく。もう片方の手で零れ落ちんばかりに実った胸にかかっている布をずらし、全てが露わになったそれを撫でる。彼女はそれに怯むことなく、体の位置をずらして男の顔が目の前に来るように調節し、そのまま彼の唇を自らの唇で塞いだ。男もそれに応戦して舌を絡めだす。
 しばらく両者の愛撫が続いたが、彼女はゆっくりと体を起こすと、舌なめずりをしながら服越しにもはっきり分かるほど屹立した男の肉棒を肉球で一撫でした。彼もすっかりその気になり、自らの欲望を開放するために陰部を取り出すと、彼女はその肉棒を胸で挟み込み、谷間から出ている彼の先端を咥えた。両手で横から圧を加え、胸を上下させて擦り扱き、亀頭を舐めまわして鈴口から出る透明な粘液を啜る刺激に、やがて男は精を彼女の口の中に吐き出した。普段彼が自慰した時とは比べ物にならないほど大量に出るそれは、彼女が頬を精一杯膨らませてもなお口内に収まりきらず、口の端から零れ出る。彼女が口の中に入っているものを全て飲み込んで、尿道に残っている分を吸い出してもまだ彼の屹立は治まっていなかった。
 彼女はその上に跨ると、しとどに濡れた自らの秘所に突き入れる。挿入したきり強直して一向に動かない彼女の様子を訝しんだ男は、彼女の股を伝う破瓜の証を確認し内心驚いた。これほどまでに性の技巧を持っており、かつ自ら男性を求めるような行動をしてきた彼女が未だ性行をしていないなどとは俄かには信じられなかった。それと同時に、これほどまでに見目麗しい女性の初めてを奪えたことにある種の優越感を覚え、このまま彼女を自分のものにしてしまいたいという支配欲が首をもたげた。彼は彼女の体を抱き寄せ口づけを交わすと、そのまま腰を振り突き上げた。舌を絡ませ抱きしめたままなので動ける範囲は限られていたが、うねり締め付けてくる彼女の膣は彼を、そして彼女自身も高みへと上り詰めさせていた。痛みに慣れ、快感の方が勝ってきた彼女も腰を振り始め、肉と肉のぶつかり合いはより激しくなる。一旦口を放し、抱擁を解いた彼は彼女のくびれた腰をつかみ、より一層激しく腰を打ち付け、彼女もまた彼の胸の上に手を置いて支えにし、腰を上下させた。彼が深く突き入れたとき、短く呻きを挙げて二度目の射精を行い。最奥に精液を浴びせられた彼女も咆哮じみた嬌声を挙げ、体を弓反りにして達した。
 男が息を整えていると、彼女は再び腰を振り始めた。満足するには不足だったのである。彼女にとっての“遊び”も“交わり”もまだ終わるには早く、男はあきらめた表情で彼女の手を握りまぐわいを再開する。
 結局彼女が満足したのは日が暮れて再び昇り始めた頃であり、既に男は息も絶え絶えであった。彼女は手ごろな竹を折って爪で短く切り、断面を爪で削って滑らかにしたうえで肉壺に入れ、溜め込んだ白濁が漏れないように栓をすると、男を担ぎ上げてそのまま自分のねぐらまで運んで行った。



 様子を見に行った火鼠が情事を目撃しながら一人寂しく自ら慰めていたのは誰も知らない。


14/11/21 23:51更新 / 宗 靈

■作者メッセージ
皆様お久しぶりです。久しぶりすぎて初めましてかもしれません。
タイトル・あらすじと本文のギャップに戸惑った方も多いことでしょう。
でもタイトルがあれしか思い浮かばなかったんです。本文もこんな感じでしか書けなかったんです。エロ有とうたっておきながら淡白で申し訳ないです。


レンシュンマオらしさちょっとしか出せなかった…。

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