やぁみんな。僕の名前は鵜呑 喝采(うのみ かっさい)という人間だ。
僕は『魔物娘大学』という少し変わった学校を受験した男だ。4年制の魔物娘大学、通称マモス大と呼ばれているが、そこでは普通科、体育科、理系科、外国語科、商業科の5つの科があり、僕は見事商業科に合格することができた。あまり知られていないが、この学校は校内の設備が充分であり、さらにこの学校を卒業してからの実績も素晴らしい物だそうだ。

中でも、一番の噂になっているのが『彼女が出来やすい』という噂だ。一説だと彼女出来る確率75%。中には卒業前に彼女と身体を交わした、なんていうのも少なくないらしいな。正直に言うと、僕はここに惹かれて受験をした。素直だろ、僕？


さて、入学まで残り2日になった。俺は大学から実家までは遠いから、近くの九沙汰アパートで部屋を借りるはずだった。

はずだった。

はずだった...

のに......

「次のニュースです。昨夜7時ごろ、九沙汰アパートで火事がありました。原因は漏電と見られ、警察は詳しい原因を...」


鵜呑 喝采、入学2日前にして路上生活の危機です。


現在、市内の不動屋を廻っている。そして、8件目の不動屋の答えが
「この条件の場合、申し訳ありませんがかなり離れた市外でしかアパートはありませんねぇ...」

8件目、失敗。

オワタ......。ついに市内の不動屋を廻ったが、条件内のアパートは見つからない。詰んだ......。

あぁ、商業科に入って自己紹介の時に「僕は鵜呑 喝采。路上生活をしている彼女募集中の18歳です！」って言ったら彼女どころか友達も出来ない。さらに商業科なのに路上生活って、僕の未来の就職も危ぶまれる。

僕がモテないのはどう考えてもアパート火事が悪い！

そんなこと言っている場合じゃない...。もう、マヂムリ...実家に帰ろ...。帰って号泣会見して、親父が経営しているカーネルのチキンを揚げる手伝いをしよ......。


この街も、面白そうだから10日前から来ていたけど、お別れになってしまうのか。ここの駄菓子屋って射的があるんだよな。折角だし、実家に帰り前にここで1回やってみるか。

「お願いしますよ〜。ウチ、あの葉暮れアロエが欲しいんですよ〜。頼みますわ〜」

「ダメだダメだ。射的で落とさない限り差し上げることは出来ない。これが射的の掟だ」

「摂取な〜」

何やら駄菓子屋の店員と客が言い争っているな。大の大人が子供の様に駄々をこねるっていうの本当に居るんだな。

「ほんなら、この値段でどうですかい？さらに有耶無耶無しで承諾するなら、追加でこの額で取引せぇへん？」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

「な...こ、こんなに...。どうしよう、渡そうかな...？」

訂正、駄々をこねた大の大人が心理を掴んだ商売交渉している。てか、ソロバン捌きスゴイなおい。

「だ、だがダメだ！あの景品は手に入れてからこそ商品だ。俺は心理を貫く！」

「なんでやなんでや〜！頼むでほんま〜」

経済感に対しては大人だが、性格が子供みたいな感じだな。さっきまでの交渉していた時の顔から、駄々をこねる様な子供みたいな表示になっている。

見た目は大人、頭脳は子供。その名は......って、バーロー。何いっているんだ僕は。

交渉をしているのを見ているだけでも面白みはあるが、少しイラつきがある。やっぱ学校に行くのを諦めている不幸な奴の前でこんなに表現豊かなことをされるとこんな反応してしまうよな。
逆恨みだなこれ。

「すいません、3回射的をやらせてください」

「あ、はいはい。200円な。500円て9発だけど？」

「3発でいいです。で、そのなんとかアロエってどれですか？」

「え？あの、2段目の左にある奴や」

あの5個入りの横長のケースか。子供の頃に射的屋の手伝いをして、観ているうちに景品の落とし方を学んだんだっけな。

「アレだな。射的っていうのは、1発では落とせない物なんだよ」ﾊﾟﾝｯ！

「兄さん、当たりはしたけど傾いてしか動いてないで」

当たり前だ。後ろに動かすためにワザとやったんだからな。

「んで、景品と垂直になる所まで移動して更に傾ける」ﾊﾟﾝｯ！

「おお！景品が90°にまで傾いとうだわ！」

「あとは元の位置から真っ直ぐ撃てば...」ﾊﾟﾝｯ！

屋台屋の中で、俺はこう呼ばれていたな。

コトン。

ウノミ13(サーティーン)、と。

「お、おめでとう。はい、葉暮れアロエだ」

「ありがとうございます」

さて、このアロエだが...。

「、、、、、♥」ｳﾙｳﾙ

彼女は 物欲しそうに こちらを みている

「......あげるよ」

「え、いいの！？ほんまありがとさん！あんさんいい人や！！」

貰って嬉しいのは分かるが、ハイジャンプをするほど喜ばなちゃいけないのかな？

「あんさん名前を聞いとらんやったな。あんさん、名前は？ウチは狸差 蜜樹(たたけさ みつき)というんや」

「僕は鵜呑 喝采。彼女募集中の18歳でs...」

おいィィィィ！？何を言っているんだ僕は！？間違ってはいないけどな。間違ってはいないけど言ってはいけないだろこれ！

「ん？いまなんて言うた？」

「俺のログには何もないな」

「でも『僕は鵜呑 喝采。彼女募集中の18歳です』まで聞こえたような気がするとやけどちゃうの？」

「全部聞かれてた！！」

あぁ、最悪だ。最後にこの街を離れる時に最後に放った言葉がこれだなんて......。最後はもっとキレのあるセルフを捨てて去りたかったのにな。
なんで僕は日常的に話されると本音が出てしまうタイプなんだ。注意はしているのに...注意はしているのに。

「へぇ〜そうなんや。鵜呑は若う見えるけど、高校、大学生かい？」

「もうすぐ大学生です」

「なるほど...なるほどな〜」ﾏｼﾞﾏｼﾞ

な、なんだ？この大人...狸差さんはメガネを光らせながら僕をマジマジを見ているぞ？手荷物や僕の顔、更には今着ている服まで見ているぞ？んでもって、下半身を集中的に見ているぞ。

ゴクッ...♥

いま狸差さん、生唾を飲まなかったか！？ゴクッって言ったよな！？

「なるほど、なるほど...。鵜呑は大学に入る前の日にアパートがなくなったから不動産を廻ったけど全く見つからなくて、結局実家に帰ろうとした。んで、実家に帰る前にこの駄菓子屋に寄った。ということやな」

「お前はエスパーか！？」

な、なんだこの人？僕の現在の事態をまるまる当てやがったぞ？新手のスタンド使いという奴だな！？
待て、まだ慌てるような時間じゃない。よくよく考えてみよう。僕はいま手荷物のキャリーバッグを持っている。大きさからして旅行か引越し者と思うだろう。そして、今着ている服。3日前から連続で着ていたから、ヨレている部分が目立つ。つまりホテルに泊まってはいないということが分かるな。更にいまの僕のテンションとさっき口走ってしまった路上生活と合わせれば......。それならエスパーの可能性はほとんどないな。エスパーだったらエスパーだったで面白そうだけどな。

「やっぱりやな、ウチの予想通りや。ところで鵜呑よ。大学生ということはあの魔物娘大学に行くんかいな？」

「その通りです」

「じゃあ、アロエをくれたお礼や。ウチからのプレゼントや」



「鵜呑に部屋をあげたる。それも魔物娘大学近くの」

僕はこの一言に拒否をしない他は無かった。
でも拒否をしていたら、僕のココの見方は変わっていなかっただろう。



「お客さん。200円払ってください」

「あ、すいません」

■作者メッセージ
〜前回の作品『多分...いや、絶対オーガです、はい』の返信コーナー〜

>「その2」を読んだ感想
【「花」　ではなく「雛」見沢では？マジレスすんませんｗｗｗ】
↑『「嘘だ！！！！(嘘じゃないです)」間違いの指摘をありがとうございます。直様手直しますので、オヤシロ様の祟りとかやめてください』

>「その4 ラスト」を読んだ感想
【バイオハザードネタがはいってくるとはｗｗｗ面白かったです！】
『感想ありがとうございます。気付いてくれる人がいましたね。他にもこの小説の中にいくつか、漫画、ゲーム、アニメなどのセリフがあるので、良かったら探してみてください』