読切小説
[TOP]
初めての保健体育〜実践編〜
 松代達也が寝室の戸を開けると、そこには布団の上でこちらに向かって三つ指をつき、恭しく頭を下げる白澤の姿があった。白澤は全裸であり、達也が寝室に入って来た事を気配で察すると、頭を下げたまま声を彼にかけた。
 
「お待ちしておりました」

 それだけ言って、白澤が頭を上げる。頬は僅かに赤らみ、達也を見つめる目は潤んでいた。彼女は待ち望んでいた瞬間を前にして、それでも自制心を最大限に働かせて己の獣欲を抑えつけた。
 彼の前で無様な姿は晒せない。自分は彼の先生なのだ。襲い掛かるなんてもってのほかだ。
 
「達也君。さあ、こちらへ来てください」
「リン先生……」

 しかしそんな葛藤はおくびにも出さずに、白澤のリンはいつもの調子で、教え子である達也に優しく声をかけた。達也もまた、その愛する先生の呼びかけに応えるように、リンの近くへ歩み寄っていった。
 そして達也はリンの前で腰を下ろし、正座をして彼女と向かい合った。生真面目で女性経験のない彼は、教師兼恋人であるリンを前にして、自然と改まった態度を取ってしまったのだ。
 そんな初心な彼を、リンは笑ったりしなかった。それから二人は互いに正座をしたまま、相手の顔を見つめ合った。達也は緊張と羞恥で顔を真っ赤にして、リンはそんな達也を微笑ましく見つめていた。
 
「先生、その……き、今日はよろしくお願いします」

 やがてたどたどしい口調でそう言いながら、達也が頭を下げる。リンもそれに合わせるように、「こちらこそ、よろしくお願いします」と言って再び頭を下げた。
 どこか堅苦しい、これから授業でも受けるかのような空気が、二人を包み込んでいった。
 
「……恋人同士でこういうことをするのって、やっぱり変ですかね」

 その後互いに頭を上げ、気まずそうに達也が口を開く。今までまともに恋をしたことのない彼も、今の空気が恋人同士の纏うそれでは無いことは、うっすらとではあるが自覚していた。
 そんな彼に対してリンはクスクスと笑い、それから困惑する達也に回答した。
 
「確かに変と思う方もおられるでしょうね。何をそんなに畏まる必要があると訝しむ方もいるでしょう」
「やっぱりそうなんですね……」
「ですが、礼をもって事に臨むというのは、大変良いことです。どれだけその作法が変だと思われても、あなたのその真摯な姿勢は、必ず相手に伝わりますよ」

 大丈夫。達也君の気持ちは、私にもしっかり伝わりました。リンはそう言って微笑んだ。いつもの優しい白澤先生からそう言われた達也は、それまで「自分は変なことをしたのだろうか」と気落ちしていた心が軽くなったような感覚を味わった。
 そんな肩の荷が下りてほっとしていた達也に、リンが優しい顔で続けて言い放つ。
 
「それが初夜なら、なおさらのことです」

 直後、達也は体を堅くした。言い出しっぺのリンも、緊張と期待で体を震わせていた。そしてこの後自分達が何をするのか、互いにそれを再認識した。
 二人はこれから、処女と童貞を捨てるのだ。
 
 
 
 
「今日からこのクラスの担任になる、ジン・リンです。皆さん、よろしくお願いしますね」
 
 白澤のリンが松代達也の通学する高校に赴任してきたのは、今から三か月前のことであった。魔物娘の存在が当たり前となったこの時代、膨大な知識を持つ白澤が教師として招かれるのは珍しいことではなかった。なのでリンの存在は疎ましがられることはなく、生徒や他の教師たちから大いに歓迎された。
 そしてその中で、リンは達也と出会った。
 
「あの……松代達也君、でしたっけ?」
「はい、そうですけど。リン先生、どうかしましたか?」
「いえその、最近よく会うなあって思っただけでして」
「そう言えばそうですね。先生も屋上でお昼ご飯食べたりするんですか?」
「はい。前にいた学校でも、こうしてお昼は屋上で食べてました。室内で食べるより、こっちのほうがずっと開放的で気持ちがいいんですよ」
「ああなるほど。それ、僕もわかります。教室とか学食とかって息苦しいんですよね」
「達也君もそう思うんですか? 私達、実は結構似た者同士かもしれませんね」

 リンが彼のいたクラスの担任になったのはまったくの偶然であるが、彼らが惹かれ合ったのは必然であった。顔を合わせて一週間で二人はお互いを意識し、一か月で告白を経て恋仲となった。この時代、生徒と教師が恋人になる、そしてそのまま結婚する、というのは、良くある話だった。実際彼らの周りにも、そうして出来たカップルはいくつもあった。
 だから誰も、彼らを蔑んだりはしなかった。それどころか、彼らの恋路を応援する者も多かった。
 
「その、リン先生」
「あら達也君、どうしたのかしら?」
「胸が当たってます……」
「当ててるんですよ♪」
「周りの視線が痛いんですけど」
「見せつけてやればいいんですよ。恋人同士がラブラブして何が悪いのですか?」
 
 その後、二人は至って健全な付き合いを続けた。学校内、特に授業中は「生徒と教師」という立場を頑なに――少なくともリンはそう思っていた――守り、恋人として接するのはプライベートな時だけだった。周囲の暖かな視線を受けながら、リンと達也は恋人としての甘い時間を存分に楽しんだ。
 デートだって何回もした。ファーストキスも済ませた。長くて短い二か月の中で愛を育む内に、次第に二人はキス以上のものを求めるようになっていった。
 さらに次を望むようになった。
 
「リン先生。僕、もう……」
「わかっています。本当言うと、私もその、我慢できなくて……」
「じゃあ、今日、いいですか?」
「……ええ。夜に、私の家に来てください。そこでたっぷり、いたしましょう?」
 
 その結果、今彼らは次のステップを迎えたのである。
 
 
 
 
「大丈夫ですよ、達也君。ちゃんと私が、あなたをエスコートしてあげますからね」

 緊張する達也にリンが声をかける。そして彼女は両手を広げて「さ、いらっしゃい」と達也を招き寄せ、達也もまたそれに応じて彼女に抱き着いた。
 たわわに実った乳房が、達也の胸板に潰されて形を崩す。その初めて味わう柔らかい感触に達也が驚愕していると、リンがそんな彼の衣服におもむろに手をかけた。
 
「えっ、あの、何を」
「服を着たままセックスは出来ませんからね。さあ、じっとしていてください」

 戸惑う達也を尻目に、リンはそう言ってさっさと達也の服を脱がせ始めた。そして最初驚いていた達也も、すぐに体の力を抜いてリンの行為を受け入れた。リンは慣れた手つきで達也の服を脱がしていき、達也もまたリンの求めに応じて手を挙げたり足を浮かせたりした。
 そうして一分も経たないうちに、達也はその裸身をリンに晒すことになった。サッカーの部活で鍛えられたその肉体は筋肉質ながらもしなやかさを失っておらず、そんな達也の引き締まった体躯を見たリンはうっとりとため息をついた。
 
「達也君の裸、初めて見ました。バランスが取れてて、とっても綺麗……」
「そんな立派なものじゃないですよ。それに僕だって、その、先生の裸見るの初めてだし」
「そう言えば、あなたに私の裸を見せるのは初めてでしたね。どうですか? 私の体、変じゃないですか?」

 恐る恐るといった調子で、リンが達也に問いかける。達也はそれを聞いて、リンの裸体を改めて視界に納めた。
 卑猥だった。リンの体はどうしようもなく淫らで美しかった。小ぶりの顔。すらりと伸びる腕。前に突き出した豊満な胸。きゅっと締まったウエスト。大きく実ったお尻。長く伸びた脚。
 まさに男の欲望を具現化したような、完璧な肢体だった。

「すごい……エロいです……」

 生唾を飲み込みながら、達也が呆然と呟く。こんな極上の女性を自分が抱いていいのか。達也は遠慮すら覚えた。
 そんな達也の遠慮は、リンにはお見通しであった。
 
「遠慮なんてする必要ありません。私はあなたに惚れたんです。私が身を任せるのはあなただけ。だからあなたも、もっと自分に自信を持ってください」
「自信、ですか?」
「はい。あなたはやれば出来る子なんです。私が保証します」

 リンはそう言って達也から離れ、おもむろに布団の上で仰向けになった。そして手足を広げ、達也に向かって手を伸ばし、彼を見上げて微笑みながら言った。
 
「だから躊躇わないで。達也君、一緒に楽しみましょう?」

 それはいつもリンが見せる、優しい微笑みだった。しかし今、そこにはいつもと違う、淫らな気配が漂っていた。そしてそんな欲望に呼応するかのように、リンの全身から魔力が溢れ出し、達也を求めるようにその足に絡みついていく。
 魔力が足から染み込み、全身に広がっていく。体が火照りだし、股間に血が集まっていく。脳が桃色の靄に包まれ、思考と理性がかすみ、目の前の雌にむしゃぶりつきたくなる。
 
「先生!」
「やあん♪」
 
 そんな衝動を前に、達也はそれに抵抗しなかった。彼はリンが求めるまま彼女に覆い被さり、その柔らかな体を目一杯抱きしめた。
 
「先生の体、あったかい……それに、いい匂いがする……」
「達也君の体も、とっても堅くって素敵ですよ……頼もしい感じがします……」

 初めて触れる恋人の裸身。その感覚に恍惚としながら、二人が想いの丈を吐露しあう。その後も互いの背中に手を回し、互いに頬を擦り合わせ、相手の存在を全身で感じる。
 
「先生の髪、こんなに柔らかかったんですね。すべすべなのにふわふわで、気持ちいいです」
「達也君こそ、こんなに熱い体だったなんて思ってもみなかった。触ってるだけでドキドキして、こっちまで体が火照ってきちゃいそうです」
「先生のおっぱいも、その、あったいかいですね」
「あら、そうですか? 私、おっぱいには自信があるんですよ。喜んでくれて嬉しいです」
 
 肌の温度。髪の感触。体の匂い。汗の味。
 初めて尽くしだった。どれもこれも初めて味わうものばかりで、未知の体験の連続だった。リンも達也も、恋人でありながら相手の事を全然わかっていなかったことに驚き、同時にますますその欲求を強めていった。
 
「先生……僕、もっと……」
 
 もっと知りたい。もっと恋人の事を知り尽くしたい。真っ先に達也が己の願望を言葉に出す。リンは口で肯定する代わりに、達也の体をより強く抱きしめた。
 
「じゃあ、次の段階に行きましょうか」

 そして耳元でリンが囁く。今度は達也が無言で頷く。相手の肯定を受け取ったリンは微笑み、達也を抱く腕の力を緩める。
 
「今更言うまでも無いことですが、初めてからいきなり男根を膣に挿入するのはマナー違反です。そうされて喜ぶ人は、まずいないでしょう。では挿入する前に何をすればいいのか、達也君はわかりますか?」

 そして上半身を僅かに浮かせて近距離で向かい合った達也に、リンが教師の顔で問いかける。教師のサガか、それとも白澤と言う種族のサガなのか、いきなり授業を始めたリンを見て、達也はほんの僅か苦笑した。
 しかし達也は真面目だった。そして性的な事と無縁の生活を送れるほど、無私無欲な男でも無かった。達也は自分がベッドの下に隠している「お宝本」を通して得た知識を思い出し、リンからの問いに正直に答えた。
 
「ええと、まず、膣を濡らす、ですかね……?」
「正解。……達也君、えっちな本からそういう知識を覚えましたね?」
「えっ!? いや、それはその……」

 心中を察せられ、咎められたと思い狼狽する達也に、リンが笑って言い返す。

「怖がらなくていいですよ。怒ってる訳じゃありませんから」
「本当ですか?」
「本当です。それくらい、年頃の男の子なら普通のことですから。それから今後は、膣のことをおまんこと言うように」
「どうしてですか?」
「そっちの方がムードが出るからです」
「な、なるほど。わかりました」

 真面目な達也はリンからの注文を素直に受け入れた。達也が首肯するのを見たリンは満足げに微笑み、再び口を開いた。

「よろしい。では改めて……私のおまんこを濡らすために、達也君はまず何をするべきでしょう?」
「あ、愛撫をする、ことです」
「それも正解。では最後の質問。そこを触られただけでおまんこを最も濡らしてしまうような、私の弱点はどこでしょう?」
「え、えっ? それは……」

 達也はあからさまに戸惑った。初めて体を重ねる相手の弱点なんて、知ってる訳なかった。
 しかしリンはそのことも織り込み済みだった。目の前で狼狽する達也を見てクスクス笑い、彼の頬に手を添えながら言った。
 
「いいんですよ。今わからなくても、今からわかればいいんですから」
「どういうことですか?」
「実際に私の体に触って、どこが弱点かを探るんです。女性の弱い所は人それぞれですから、こればかりは実践で覚えるしかないんですよ」
「それって……」
「はい♪」

 さあ、どうぞ。リンはそう言うと、達也の頬から手を離し、彼の前で大の字になった。そして眼前で無防備な姿を晒したリンを見て、達也は生唾を飲み込んだ。
 
「……いいんですか?」
「ええ。お好きに触っていいんですよ。さ、勇気を出して、頑張ってください」
「はい……」

 リンから励まされ、達也はまだほんの少し残っていた謙虚さを完全に振り払った。おずおずと両手を伸ばし、傷一つついていないリンの体に触れる。
 最初に角。側頭部から生えた一対のそれに、恐る恐る手を当てる。角と指がふれあい、リンはこそばゆいかのように身悶えしたが、それ以上の大きなリアクションは見せなかった。
 
「あれ? 角じゃない?」
「確かに角が性感帯な方もいらっしゃいますが、私は違いますよ。ついでに言うと尻尾も違いますからね」
 
 予想と違う反応を見て訝しむ達也にリンが断言する。当てが外れた達也は少し落胆したが、それでもリンは彼に触れられることを嬉しく思い、達也に向けて暖かな眼差しを向けた。
 もっと触って。自分で「私」を確かめて。リンの目が言外に告げる。達也の手はそれを受けて腹を括り、「お肌の触れ合い」を続けた。
 
「じゃあ、続けますね」
 
 達也の指が、次に髪に触れる。その次に瞼。睫毛を爪で揺らし、頬、鼻、唇を指先でなぞる。細い首を両手で触り――あまりに綺麗過ぎて一瞬絞め殺したくなった――鎖骨を通って両の肩を手のひらで撫でる。
 肩から腕へと移る。上腕、下腕、手へと降りていき、指先を慎重にこねくり回す。弱点を探すという名目で、恋人の――リンという生物の構造の全てを、達也は手触りで覚えていった。
 
「あっ、あぁん……ふふっ、いいですよ、その調子……」
 
 そんな彼の愛撫に対して、リンは例外なく反応を返した。しかしそれは、どちらかというと単にくすぐったそうなものであり、どれも「これだ」という確かな手応えのあるものではなかった。
 
「先生、どうですか? 気持ちいいですか?」
「ええ。達也君の優しさが伝わって来ますよ。でもどれも私の弱点ではないですね」
「ああ、やっぱり……」
「気を落とさないで。もっと続けてください。諦めてはいけません。継続こそ力なり、ですよ」

 成果が見込めず、おずおずと問いかける達也に、リンが笑って返す。そう言う彼女は興奮するように肩で息をし、全身からは汗が浮き上がり始めていた。たたでさえ美しい美貌が、更に艶めかしく淫猥なものに変貌していた。
 それを見た達也の息も自然と上がっていく。股間に熱が溜まっていく。それでも彼は死力を尽くして理性を保ち続け、調査を続けた。先生を感じさせるまで、暴れてはいけない。彼は固く心に誓った。
 
「よ、よし、行きます……」
 
 次に彼が触れたのは胸だった。彼は両手でリンの乳房を掴み、その二つの双丘が押し潰した。直後、自慢の胸を力強く触られたリンが「やン」と艶めいた声を出す。
 
「あっ、ごめんなさい」

 桃色の悲鳴を聞いた達也はすぐ我に戻り、慌てて手を離した。無礼なことをしただろうか。興奮して熱くなっていた頭が一気に冷えていく。
 そんな初心な達也に向かって、リンはすぐに息を整え、柔和に笑って言った。
 
「安心してください。おっぱいを触られると、女の人は大抵こんな反応をするんです。だから驚かないで、続けて?」

 リンが促す。達也は頷き、気を取り直して愛撫を続けた。彼の両手が改めて豊満な乳房に伸び、二つの果実を鷲掴みにする。リンが再び艶やかな声をあげ、達也はそれにも怯まずに彼女の体を触っていく。
 乳首をつまむ。下乳を撫でる。乳から手を離し、へその穴に指を入れる。脇腹を通って太ももを触る。リンはくすぐったそうに体を揺らし、楽しそうに笑みを浮かべる。
 やがて達也の手が脛に触れる。頭髪と同じようにふわふわとした体毛で覆われた脛を達也の手が掴む。
 
「きゃん!」

 直後、リンがあられもない声を上げる。達也はまたしても反射的に手を離したが、すぐに何か思いついたようにリンの顔に視線をやる。
 
「達也君……」
 
 リンは目元に涙を溜め、じっとこちらを見つめていた。その姿はまるで何かを懇願するようであり、そしてそれを見た達也は、それまで抱いていた疑念を確信に変えた。
 
「脛が弱いんですね?」

 自分の推論をリンにぶつける。リンは何も言えず、ただうんうんと首を縦に振った。
 
「もっと、触ってほしいな……」

 そして物欲しげな表情のまま、リンが弱弱しい声で達也に続きを促す。そこにいたのはいつもの頼もしく優しいリン先生ではなく、松代達也の恋人であるジン・リンだった。
 ただ愛する人の愛撫のみを求める、恋に落ちた一匹の白澤だった。
 
「先生……リン……!」

 そんな魔物娘の誘惑に、童貞高校生が勝てるわけが無かった。彼はリンの足を束ねて持ち上げ、そのふさふさの脛の部分を両腕で抱きしめた。さらに脛と同じく毛で覆われたふくらはぎの間に顔を埋め、リンの体毛の感触を顔面で思う存分味わった。
 
「ここが、リンの弱い所なんですね……ふかふかで、いい匂いがします……」
「あっ、やん……達也君、息吹きかけないで……頬ずりもだめぇ……♪」

 もこもこでふかふかなリンの足に顔を埋め、中で熱い吐息を漏らし、気持ちよさそうに目を細めて頬ずりをする。脛の部分もまた抱きしめていた腕を動かし、肌を体毛ごと指先でなぞり、優しく刺激していく。
 
「あ、あ、あっ、やんっ、くすぐったい……んんっ、あんっ♪」
 
 そうした達也の愛撫に、リンはこれ以上ない程激しく反応した。その顔を幸せそうに蕩かし、身をよじって嬌声を上げる。達也がリンの毛を一撫でするたびに、彼女の脳に電撃が走り、そこに甘い靄を生み出し、まともな思考を奪っていく。
 しかし脚は達也ががっしり拘束していた。なのでリンはなすすべなく、彼の愛撫を受け続ける羽目になった。
 
「んっ、ンっ、あっ、あっ、ああん……脚、脛、気持ちいい……馬鹿になっちゃう……♪」
「リン……リン……!」

 もちろん達也は悪戯心からこんなことをしているのではない。彼はただ純粋に、リンに気持ちよくなってもらいたかったのだ。自分でリンを気持ちよくしてあげたいという、彼氏としての意地が、今の達也を動かしていたのだ。
 
「リン……もっと感じて……僕で気持ちよくなって……リン……!」
「あん、やんっ、ううン……達也君、もっと……♪」
「リン……?」
「もっと、気持ちよくして、あン♪ ……もっと私を可愛がって……♪」

 そしてリンもまた、達也の愛撫を受け入れた。その上さらに、彼女はより激しい愛撫を達也に求めた。
 
「もっと、もっとです……! もっと私を愛して、私をあなたの虜にさせて……!」

 リンが大声で懇願する。達也がそれに応えるように、口を開けてふくらはぎにむしゃぶりつく。唇を押し付けてフェラチオをするように勢いよく吸い付き、口内に入り込んだふさふさの体毛を舌で舐めしゃぶる。
 
「じゅるっ、じゅっ……ずぞぞっ、ちゅっ、ちゅるんっ……」
「あ、ンひい! ひぃ、ひッ、ふううン! ひゃッ、あッあァあン!」

 リンがあられもない声をあげる。今まで聞いたことも無い、メスの雄叫びを上げる。顔は快楽で蕩け、体は電流が走るように小刻みに震え、股間からばしゃばしゃ愛液を迸らせる。それが達也の獣欲を燃え上がらせ、さらに愛撫を激しくしていく。さらに吸引を強め、毛を甘噛みし、地肌を舌で舐める。
 ぬるりとした感触が足を襲う。舌が肌を這い、唾液でべちゃべちゃに汚されていく。 
 
「ひっ――」
 
 そのぞわりとする感覚を味わった瞬間、頭の中で何かが切れた。
 
「ひぃやあああああンンッ――♪」

 直後、リンが絶叫する。背骨を反らし、頭と尻でブリッジをしながら、悦びの叫びをあげた。

「イ、イイ、ひィ、はッあああああん♪」

 気持ちいい。
 きもちいい♪
 キモチイイ!
 
「イイ、イイよッ! タツヤくん、とってもステキッ、いッ、イィィィィンッ♪」
 
 思考を快楽に塗り潰されたメス牛が叫ぶ。絶頂を迎えた白澤は、その後も理性と外聞をかなぐり捨て、肉悦を思う存分味わった。達也に脚を拘束されたまま体を跳ね回し、髪を振り乱して蕩けた表情を晒す。
 リンの暴走は、その後五秒ほど続いた。
 
 
 
 
「お恥ずかしいところをお見せしました」

 そして絶頂の波が引き、元の思考と理性を取り戻した後、リンは達也に向かって土下座した。彼女は彼の前で無様な絶頂を見せてしまったことを、心から悔やんでいた。
 
「まさか、あそこまで気持ちよかったなんて、思いもしなかったから……本当にごめんなさい」
「い、いや、僕は別に気にしてませんよ。なんで謝る必要があるんですか?」

 そんなリンに達也が声をかける。本心から放たれたその言葉に、リンが上半身を上げて反応する。
 
「だって、変じゃなかったですか? 幻滅しませんでしたか? 私があんな、その、ひどい所を見せてしまって……」
「そんな訳ないじゃないですか。僕だってすごい興奮したんですから」

 口の端から垂れていた涎を拭いつつ、達也が想いの丈を正直に伝える。それを聞いたリンはほんの少し顔を輝かせ、そしてそんな白澤を見ながら達也が続けて言った。
 
「あの時の先生、とってもエロかったです。エロくて、えっちで、凄い綺麗でした」
「綺麗って……そんな……」
「僕、嬉しかったです。先生のエロくて綺麗なところが見れて、すごい嬉しかったです」

 目を輝かせながら達也が言い放つ。予想外の返答に、リンが顔を真っ赤にする。
 
「……本当に、綺麗だった? 私のえっちなところが見れて、嬉しかった?」

 そして確認を取るようにリンが問いかける。達也は真面目くさった顔で首を縦に振り、リンはそれを見てますます顔を赤くした。
 
「じゃ、じゃあ……」
 
 リンが達也から顔ごと視線を逸らす。そして斜め下を見つめながら、おずおずと口を開く。
 
「……もっと見せてあげます……」
 
 そう言って、達也に向かって右手を伸ばす。
 
「私の、えっちで、綺麗なところ……もっとあなたに見せてあげたい……だから……」

 続き、しましょう?
 
「達也君……しよ……?」

 リンが顔を上げる。うっとりとした表情を達也に向ける。快楽に溺れたメスの顔だった。
 思わず達也は生唾を飲み込んだ。そして誘蛾灯に誘われる虫のように、ゆっくりとリンの伸ばした手を掴み取る。
 互いの手がしっかりと握りしめられる。リンが上体を後ろに傾け、達也もそれに身を任せていく。
 リンが布団の上で仰向けに倒れる。達也がその上に覆い被さる。
 
「いれてください」

 耳元でリンが囁く。達也がリンの耳元で、同じように囁き声で問いかける。
 
「もう、ち……おまんこは濡れてるんですか?」
「はい、びしょびしょです。あなたのおかげですよ」
「じゃあ、今回の実習は合格ってことですよね」
「百点満点です。あなたは私の弱い所を見つけて、いっぱい私を感じさせてくれました。だから、そのご褒美をあげちゃいます」

 リンが微笑む。達也はそれを聞いて、恐る恐るといった感じで体を浮かせる。
 
「私の処女、あなたにあげます……いっぱい、えっちしましょう」
「はい……」
 
 リンと達也が向かい合い、言葉を交わす。リンが彼の顔を見ながら小さく頷く。達也も頷き返し、すっかり堅くなっている自分の肉棒に手を添える。
 
「大丈夫ですか? ちゃんと入れられますか?」
「だ、大丈夫です。どこにどうすればいいかは、その、覚えてきましたから」
「……えっちな本で?」
「は、はい……」

 心配そうに問いかけるリンに、達也が控え目な声で答える。リンは恥ずかしそうに顔を赤くする達也を見てクスクス笑った後、「お手並み拝見ですね」と楽しそうに言った。

「じゃあ、お願いします」

 そして改めて、リンが達也にゴーサインを出す。達也も頷き、ゆっくりと肉棒を膣にあてがう。
 亀頭が膣口に触れる。腰を動かして角度を調節し、慎重に中に入れていく。
 最初に亀頭が膣内に飲み込まれる。つぷり、くちゅりと瑞々しい音を立て、リンの中に達也の欲望を挿入する。
 
「あ」

 しかしその先端を入れた直後、達也が腰の動きを止める。亀頭の先が薄い壁のようなものに触れ、反射的に動きを止めたのだ。
 
「これって……」

 それがなんなのか、性の経験の無い達也もすぐにわかった。女にとって、ある意味一番大事なもの。メスが最も愛するオスにのみ捧げる、重要な部分。
 そして今から自分が散らす、リンの最後の砦。
 
「いいですよ」

 動きを止めた達也に、リンが声をかける。熱で肌を赤く染め、汗だくになった裸体を晒すリンが、弱弱しい微笑をたたえながら達也に言い放つ。
 
「私の処女……あなたに捧げます」
「先生……」
「私を、あなたのものに、してください……」
「先生……!」

 覚悟を決め、達也が腰を打ち付ける。
 処女膜が引き裂かれ、肉棒が膣の奥まで食い込んでいく。
 結合部から血が流れだす。体を傷つけられたショックで、リンが口を開けて舌を突き出し、ビクビクと体を震わせる。
 
「先生、大丈夫? 平気ですか?」

 そんなリンを見た達也が、不安げに声をかける。リンはすぐに平静を取り戻し、笑顔を取り繕って達也に答える。
 
「平気ですよ。痛いけど、とっても幸せです」
「どうして?」
「あなたと一つになれたから……本当の意味で、私があなたのものになれたから……」

 リンの手が伸び、達也の顔を優しく撫でる。
 
「でも、まだ足りないの。もっとあなたが欲しい。あなたを感じさせて」

 汗の滲んだ顔で、リンが心から微笑む。
 
「私を、あなたで染めてください」

 それが引き金となった。達也の理性が音を立てて崩れた。
 彼はリンの体を強く抱きしめ、力任せに腰を振り始めた。
 
「ふッ、ふッ、ふうッ……先生、リンッ……!」
「あッ、あン、やン、ううン♪ ……たつ、やッ、くゥん……♪」

 相手の事を全く考慮しない、肉欲に任せた暴力的な腰遣い。しかしそれさえも、リンにとっては至福の行為であった。
 愛する彼が、自分のためにケモノとなった。それがたまらなく嬉しかった。彼女はそれを言葉で伝える代わりに、達也の背中に手を回し、彼の体を強く抱きしめた。
 二つの果実が達也の胸板に押し潰される。リンの体温と柔らかな感触が達也の頭から良識を奪い、彼をさらに獣に堕としていく。
 
「いい、いいですっ、アン♪ 達也君、ふッ、ふうぅッ、さッ最高です……ッ♪」
「先生、先生ッ……リン、ああ、リンッ!」

 達也がリンの名前を呼ぶ。それだけで膣肉が締まり、中の肉棒を優しく締め付ける。蜜で濡れそぼったヒダヒダが剛直の表面を包み込み、母が子をあやすようにしっとりと触れていく。
 いつもの優しいリン先生のように、自分の分身を慈しんでくれる。それが達也の心を幸せで満たし、さらに彼女を悦ばせたいと奮起させる。腰の動きを速め、何度も何度もリンの名前を叫ぶ。
 
「リン! リン! 可愛い、好き、ああっ、リン! 愛してる! 好きッ、愛してるよ! リン!」

 股間と股間がぶつかりあい、水音が響き渡る。その音に負けない声量で、達也が狂ったように己の感情を吐き出していく。
 腰と腰をぶつけ合う。亀頭が子宮口をつつき、互いの脳を悦楽で汚していく。
 リンと達也の頭は壊れていった。脳から理性と知性が完全に吹き飛び、代わりに愛欲と幸福と、愛する者で埋め尽くされた。
 人が獣に堕ち、母がメスに堕ちる。唾液を垂れ流し、仲良く肉欲の底に沈んでいく。
 
「リン! リン! 好きだよ、リン!」
 
 頭の中にあるのはリンのことだけ。
 達也さえいれば他はどうでもいい。
 そして今、自分の目の前にリンがいる。
 自分が達也を独占している。
 自分がリンをグチャグチャに汚している。
 達也はその喜びのまま、猿のように一心不乱に肉棒を叩きつけた。
 
「達也! タツヤ! もっと犯して! あッ、ああン! もっと私を、こわしてぇ!」
 
 その彼の愛は、リンにもしっかり届いていた。達也の愛を一身に受け、だらしなく目と口を開け、歓喜の涙を流していた。達也と同じように脳味噌は快楽に焼けただれ、身体は汗でびしょ濡れになり、膣からは愛液がとめどなく溢れていた。
 もう誰にも止めることは出来ない。
 
「タツヤ、素敵♪ きゃんッ、あんッ、ふぅン♪ 私、めちゃくちゃに、されてるッ♪ タツヤにもてあそばれてるぅン♪」
「リンっ、もっと、もっと気持ちよくなろう? 二人で、一緒に、気持ちよく……ッ!」
「うんっ……うんっ! 私、なるっ! タツヤと一緒に、きもちよく、なりたい♪ ならせて、くらさぁい♪」
 
 体液塗れの牛と猿が愛を交わし合う。パンパンパンと、盛った音が寝室を満たす。二人が一つに重なり合い、汗と体温と交わらせる。
 知性のかけらもない、肉のぶつけあい。
 それでも二人の間には愛があった。
 
「リン、リン! リン! もうイク! イクよ!」
「タツヤ、ああ、タツヤ! イっちゃうのね? 私の中で、イっちゃうんですねっ!?」

 愛さえあれば、後はどうでもよかった。

「うん! もうイク、我慢できない! リンの中で、いっぱい出したい!」
「いいですよっ、見守っててあげますから、あン♪ いっぱい、いーっぱい、出してくださいねっ♪」

 達也が限界を伝え、リンがそれに応える。二人は互いを強く抱きしめ合い、果てに備えてラストスパートをかける。
 
「リン、イク、イク、あッ、出る――」

 限界はすぐに来た。達也が白濁液を盛大にぶちまけ、リンの膣と子宮を真っ白に染めていく。
 
「あっ、来た、びゅるびゅるっ、来たァ♪」

 それがリンを絶頂に誘う。
 
「はあああああああああああ――ッ♪」

 リンはこの日、それまでの人生の中で一番の幸せを噛み締めた。
 
 
 
 
「やっちゃいましたね……」
「うん……」

 事を終えた後、二人は気怠い空気の中に身を置いていた。互いに裸体を摺り寄せ合い、横並びになって布団の上に倒れ込みながら、二人は反省会を開いていた。
 
「気持ちよかったですか……? 僕、気持ちよくできましたか……?」

 恐る恐る、達也が問いかける。完全に理性を取り戻し、いつもの調子に戻ったリンは、彼の方を向いて微笑みながら彼に言った。
 
「はい。とっても気持ちよかったですよ」
「ほ、本当ですか?」
「本当ですよ。花丸あげちゃいます♪」

 そう言って、リンは達也の鼻頭にキスをした。鼻面にキスされた達也は露骨に戸惑い、視線を泳がせ、そしてそんな達也を見ながらリンは楽しそうに笑って言った。
 
「うふふ、達也君ってば、本当に可愛いですね。食べちゃいたいくらいです」
「も、もうっ。先生、そうやって僕で遊ぶの、やめてくださいよ。それに……」

 ひとしきり不満を漏らした後、消え入りそうなくらい小さな声で達也が告げる。
 
「それにもう、僕は先生に、食べられちゃったんですから……」

 言っておいて、達也は顔を真っ赤にした。そうしてそっぽを向く達也を見て、リンは自分の体が芯からゾクゾク震えてくるのを感じた。
 この子はどうしてここまで可愛いんだろう。どうしてこんなに愛らしいんだろう。
 
「ねえ、達也君」

 そしてその感情のまま、リンは達也に問いかけた。そして恥ずかしげにこちらを見てくる達也に、リンが柔和な笑みを浮かべて提案する。
 
「今から補習しましょう♪」
「えっ」

 達也はリンの言葉の意味がすぐにはわからなかった。リンもそのことをすぐに察し、続けて達也に言った。
 
「えっちなこと、もう一回しましょうよ。私。あれだけじゃ満足できないです」
「あ、ああ、そういうことですか。でも、今すぐにですか?」
「もちろん♪ 私もう我慢できないです。それに、達也君もあれだけじゃ、満足できてないでしょう?」

 そう言って、リンが視線を下に降ろす。つられて達也も視線を下に向ける。
 二人の視線が達也の肉棒に向けられる。次の瞬間、むくむくと彼の肉棒が硬さを増し、まっすぐそそり立っていく。
 
「まあ♪」

 それを見たリンが嬉しげに声を漏らす。一方で達也は自分の浅ましさに恥じらいを感じ、体を火照らせて顔を真っ赤にする。
 
「いいんですよ、達也君。こういうことは遠慮しなくていいんです。もっと自分に素直になりましょう♪」

 すると即座にリンがそう言って、有無を言わさず彼の上に乗りかかる。
 
「そ、そんな、いきなり……!」
「さっき言ったでしょう? もう我慢できないって。それとも――」
 
 そして突然のことに目を丸くする達也に、リンが笑顔を向けながら問いかける。
 
「それとも、達也君はこういうこと、嫌いですか?」
「……ッ」

 眉根を垂れ下げ、瞳を潤ませ、熱のこもった顔でこちらをじっと見下ろしてくる。
 その顔は反則だった。愛する人からそんな顔をされて、断れる人間などいなかった。
 達也は恥ずかしそうに頬を掻いた後、彼女の顔を見上げながら答えた。
 
「……嫌なわけ、無いじゃないですか」
「やった♪」

 その達也からの返答を同意と受け取ったリンは、そのまま一息に彼の肉棒を膣内に飲み込んでいった。達也は唐突にやってきた快感に悶絶し、リンは隠すことなくその快感に酔いしれた。
 
「ああン♪ 堅ァい♪」
「あッ、ぐうッ、先生……!」

 そんなリンを、達也が苦しげに呼び止める。何事かと思いリンが彼の顔を見下ろすと、達也はそんな彼女に開き直ったような笑顔を向けながら、おずおずと言い放った。
 
「お手柔らかに、お願いしますね」
「……了解♪」

 快諾した白澤が腰を動かし始める。達也はそんな白澤の腰を掴み、自分からも腰を動かし始める。
 
「あン、あはっ、達也君、その調子です♪ もっと、もっと気持ちよくなりましょう……?」
「先生、今度も、気持ちよくさせて、あげますからね……?」
「まあ、嬉しい♪ じゃあ私も、あなたを気持ちよくさせてあげますからね♪ 覚悟してください♪」
「喜んで……!」

 達也が心得たとばかりに、一際強い勢いで腰を持ち上げる。リンはそれだけで軽く達してしまい、小さく嬌声を上げる。するとリンはお返しとばかりに力任せに腰を落とし、達也の浮いた腰を無理矢理布団に押し戻す。
 その拍子に亀頭が子宮口とふれあい、軽くキスを交わす。直後、二人の脳に電撃が走り、せっかく落ち着いて来ていた二人の頭を再び甘く溶かしていく。
 
「あン♪」
「うっ、ああ……っ!」
 
 そして達也がその甘美な刺激に酔いしれていると、リンが彼に話しかけてきた。
 
「達也君」
「……なんですか?」
「……これからも、いっぱい幸せになりましょうね……♪」
「はい……♪」




 二人はこれからの幸福な人生を想像しながら、第二回戦を全力で楽しんだのだった。
16/09/14 19:03更新 / 黒尻尾

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33