読切小説
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魔物娘結婚相談所
 俺はしがない街の道具屋の従業員だ。毎日朝起きて、職場に行き、仕事をして、夜になったら帰って、家で夕食を作って寝る。日々、そんな平凡な暮らしの連続だ。
 こんな俺でも、彼女が欲しいと常に思っている。だけど、俺はそんなに魅力的でもなければ顔がいいわけでもないし、金持ちなわけでもない。

 この国は魔物に関しては中立の国で、魔物を決して排斥しているわけでもないが、かと言って魔物を積極的に受け入れるわけでもない。戦争も基本的にどこの国にも加担せず、中立を保ち続けている。
 だが、隣は反魔物国家で、つい数か月前、親魔物国との戦争で敗戦し、旧政権は全員終身刑。親魔物国の保護領となった。
 そのせいだろうか? 最近よく自宅に怪しい広告が届くようになった。

「ん? 魔物娘結婚相談所? あなたも素敵な魔物娘と結婚して、幸せになりませんか・・・? なんだこれ?」

 どうやら魔物娘を扱う結婚相談所らしい。明らかに怪しげだが、住所も運営母体の企業もしっかりと記載されている。場所はここからそう離れていない場所だ。

(魔物娘か・・・。何度か街で見たことあるけど、とても異様だったな・・・。でも、中にはサキュバスみたいな、綺麗でエロい女の子の魔物も居るのかなぁ・・・?)

 どうせこのままでもモテないだろうし、一生童貞だろうし、騙されたと思って行ってみるか・・・。

「お、あそこだな!」
 場所は旧反魔物国で、現在は親魔物国の保護領となっている街の一角だ。
 街の様子は非常に荒れていた。辺りはがれきの山と貸しており、舗装された路面もヒビだらけだ。街のインフラは完全に破壊されてしまい、辺りは廃墟と倒壊した建物が並んでいた。幸いにも死者は出なかったらしいが、到底信じられなかった。

 そんな中、奇跡的に無傷だった建物の看板に、魔物娘結婚相談所と書かれた看板が見つかった。俺は意を決して、中に入ってみた。

「いらっしゃいませ!」
 褐色の、白い翼をつけた女の子・・・確か、キューピットって言ったっけ? 天使種の魔物は比較的クリーンなイメージを持たれやすく、自分の国でも信仰する宗教がある。

 キューピットが出迎え、席に案内された。しばらくすると、紅茶を出された。
「あの、ここって、魔物娘の結婚相談所なんですか?」
「そうですよ。あ、失礼ですが、こちらに記入をお願いします。」
「えっと、登録料は?」
「無料です。」
 無料で登録できるなら、まぁ、気休め程度に登録するのも悪くないだろう。俺は必要事項を記入し、キューピットに提出した。

「ありがとうございます。まず先に、当店の説明をさせていただきますね。当店は魔物娘結婚相談所と言いまして、まぁ、簡単に言ってしまえば、人間と魔物娘のマッチングを仲介しています。あと、この街は戦争の激戦地となり、元々反魔物感情が強いだけに、魔物に対する敵意が強いです。そこで、リリム女王からの命令で、この街に結婚相談所を作り、人と魔物娘のカップルがたくさんできれば、魔物娘とのいさかいもなくなるだろう・・・ということで、ここに当店を開くことにしました。」
「なるほどねぇ・・・。」
「えっと、先ほどの登録情報によると、お客様は反魔物国出身ではいらっしゃらないみたいですね?」
「ええ。自分の国は中立国です。ただ、魔物娘は珍しいですね。」
「なるほど。では、まだ魔物娘は見慣れていないのですね?」
「ええ、まぁ・・・。」
「よろしかったら、こちらをどうぞ。」
 キューピットは一冊の本を差し出した。「魔物娘図鑑」と書かれていた。
「そこにはありとあらゆる魔物娘のことが詳細に書いてあるので、魔物娘のことがよく理解できると思いますよ。よろしかったら、今日は一度お帰りいただいてその本を熟読し、ある程度お望みの魔物娘の種類を絞ってから、改めて来ていただく・・・というのはどうでしょう?」
「確かに・・・この本を読んでからの方がいいかもしれませんね。分かりました。明日、また来ますね。」
「大まかな種族を絞るだけで大丈夫ですよ。あとはこちらでおすすめの魔物娘のデータをお見せしますので。」
 俺はキューピットに見送られ、帰宅した。

 次の日、再び魔物娘結婚相談所を訪れた。昨日は無人の廃墟の街だったが、今はドラゴンやゴブリンが街の復興を手伝い、建物を直したりしている。

「いらっしゃいませ!」
 昨日と同じキューピットが出迎えた。
「図鑑、読みましたよ。大体好みのタイプの魔物娘も分かって来ました。」
「そうですか! それはよかったです! それでは、どのような魔物娘をご希望ですか?」
「えっと、サキュバスや、ホルスタウロス。あと、天使種の魔物をお願いします。」
「なるほど・・・人型の魔物がお好きだということですね。」
「ええ。」
「当店では、お客様の希望に対し、こちらの独自のデータ収集により、お客様のポイントを計算します。それにより、おすすめの魔物娘を紹介させていただきます。」
「え? 自由に選べるんじゃないんですか!?」
「はい。結婚相談所ですので。相手がOKしなければ、人間だって無理でしょう?」
「まぁ、それはそうですが・・・。ちなみに、そのポイントって、やっぱり、顔とか、収入とかですか?」
「そうですね・・・一概には言えませんし、企業秘密なので詳細は教えられませんが、必ずしも顔がいいから、収入があるから、あと、ペニスの大きさなどで決まるわけではないです。実は私もよく分かっていないんですよね。アハハッ」
「そ、そうなんですか・・・。」
「あと、当店はまだオープンして間もないので比較はできませんが、首都にある本店では、太っていてブサイクな方でも、高いポイントを出された方もいらっしゃいますよ。」
 う〜ん・・・よくわからない。

「で、自分のポイントは・・・」
「そうですね・・・お客様が当店初めてのお客様なので、他店と比較することはできませんが・・・中の下ぐらいじゃないかと。」
「ええ!?」
「まぁ、一概に比較はできませんから。・・・そうですね・・・。お客様のポイントですと、サキュバス種もないことはないんですけど、あまり相性のよさそうな子が居ないんですよね。ですから、ここは思い切って他の種族を検討された方が、上手く行くかもしれませんね。」
「他の・・・種類ですか?」
「ええ。昆虫類とかどうですか? 昆虫類でしたら、いろいろ選べますよ? そうですね・・・たとえば、ハニービーとかとうですか? 性格も温厚ですし、はちみつも美味しいですよ?」
「あの、自分、虫は嫌いなので・・・」
「昆虫種はNGと・・・。それなら、魚類型とかどうですか? マーメイド種もいろいろ選べますよ?」
「う〜ん・・・確かにマーメイドも悪くないですけど、あ! エルフとか居ませんか!?」
「申し訳ございません。当店まだオープンしたばかりなので、エルフ種の登録はまだございません。ダークエルフなら居るのですが、お客様は温厚な魔物娘がお好みだということなので、ダークエルフは強気ですからおすすめしません。」
「そうですか・・・あ、あれ!」
 店内の張り紙を見て食いついた。

「リリム! あれなんてまさに自分の好みにピッタリですよ!」
「申し訳ございません・・・実はあれは、オープンして間もないということで、経営が軌道に乗るまでの間、載せてもらっているだけなんですよ。ですから、登録はしていないんです。」
「そうですか・・・あ、ドラゴンなんていいじゃないですか! かっこいいですし!」
「申し訳ございません。ドラゴンはお客様のポイントではちょっと・・・」
「なら・・・シー・ビショップとか!」
「それも、厳しいです。」
「それなら・・・あ、ダークプリースト! いいじゃないですか!」
「それも、ちょっと・・・あの辺りは人気種なので、ある程度ポイントが高い方でないと無理ですね。」
「そうですか・・・。」

「別に、ポイントが低いから、悪い魔物娘しか選べないというわけでもないですし、逆に人気が低いから悪い魔物娘というわけでもありませんよ? ただ、ポイントが低いと、制限がかかってしまうというのは、確かにありますね。」
「そうですか・・・」
「でも、ご安心ください! 必ずベストな魔物娘が見つかりますから!」

「人型がいいなら、アンデッド種もいいかもしれませんね、。ワイトなんておすすめですよ。大抵が貴族の成れの果てなので、経済的に不自由することはないですよ?」
「あの、自分、ホラーとかも苦手なので・・・」
「そうですか・・・あ! ありました! 今とても人気上昇中の魔物娘! サンドウォームです!」
「え!? こ、これ化け物じゃないですか!」
「よく見てください。外側は殻ですよ。本体はこのピンク色の女体ですよ。」
「あ、こっちが本体なんですね。で、何で人気なんですか?」
「サンドウォームと一緒になった人間が感じる快楽は、恐らくこの世の物とは思えないほど凄いものなんですよ。それはもう、普通の人間同士のセックスの、およそ数百倍です!」
「え!? その話、もう少し詳しく聞かせていただけませんか?」

「サンドウォームは人間を飲み込むと、体内で女体の本体と交わることになるんです。このサンドウォームの体内では、ずっと快楽が続くんです。恐らく、魔物娘の中でもトップクラスでしょうね。さらにそれが、24時間365日、ずっと続くんですよ!」
「そ、それはすごいですね!」
「さらに、養分もサンドウォームから与えられるので、飢えたりする心配はありませんし、サンドウォームの餌も、人間の精液なので、セックスし続ける限り、まずお互いのどちらかが飢え死にすることはありえません。」
 サンドウォーム・・・これはいいかもしれない。

「それに、殻の中では2人の愛だけが満たされますから、社会的なストレスや、人間関係のわずらわしさも感じることはありません。ただずっと、気持ちよくなることだけを考えて、永遠の快楽を味わえるんですよ。」
「よし! 決めました! 自分、サンドウォームにします!」
「分かりました。では、面談の日程などは後日連絡しますね。」

 こうして俺は、サンドウォームと会うことに決めた。初めはその姿に圧倒されたが、本体の女体を見たときは、まさに自分好みの女性だと思った。この女性と、永遠に殻の中で交わり続けられるなんて・・・
 向こうも俺のことを気に入ってくれたみたいで、トントン拍子で話が進み、入籍した。

 その後、俺はサンドウォームと共に砂漠地帯へと移り住んだ。そして今は、サンドウォームは俺を飲み込み、土の奥深くに潜り、ずっと交わり続けている。

 こりゃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
 気持ちいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
 サンドウォーム最高おおおおおおおおおおおおお!!
 
 みなさーん! 魔物娘と結婚するなら、サンドウォームがおすすめですよおおおおおおおお!!
18/01/17 17:20更新 / 風間愁

■作者メッセージ
世にも奇妙な物語の来世不動産をベースにして考えたSSです。
このシリーズは今後ももしかしたら書くかもしれません。
まだ、エロ表現は苦手なんですよね・・・うまく書けないです。

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