夜の町を全力疾走してたら、ドラゴンに攫われました

ぴちゃ・・・・・・ぴちゃ・・・・・・
本来なら誰も来ない様な洞窟の最奥・・・・・・数えきれない財宝に埋め尽くされた部屋の真ん中で、水っぽい音が響く
「彼女」が私の全身をその舌で愛撫している音だ・・・・・・

「ん・・・む、ちゅ・・・・・・ぷはぁ・・・・・・ねぇねぇ、今の気持ちよかった?」
「あぅ・・・・・・もうやめて・・・」
「いやよ・・・それにケイだってこんなに感じてるじゃない」
「感じてなんか・・・っひゃう!?」
「舐めただけでこんなになっちゃってるのに?」
「そ、それはちが・・・っひゃ、やめて・・・」
「だーめ、私の事しか考えられない様になるまで離してあげない」
「そ・・・そんなのっっぁ、っひぅ!?」

・・・なんでこんな事になったかと・・・いえ、私が聞きたい所ではあるのだけど
あれは遡る事五時間前―――


「眠い・・・・・・」

私の名前はイリハナ ケイ、ジパング出身の母方の名を貰っているのでこの辺りでは浮いた名をしていると思う・・・ちなみに、今年で18になる
周りが金髪や赤毛なのに、私の髪はジパング特有の黒・・・しかもストレートだ
仕事は一応、剣術道場の師範をしている・・・と言っても、西洋式の剣術では無く、ジパング独特の剣術ではあるけど

「ストレートヘアの何が悪い!!!」
「ちょ!?どこから入ってきたのよ!!?」
「ちっ、寝付いた頃だと思って侵入してみれば・・・まだ起きていたとは・・・早く寝ろ!!」
「寝付いてたら何をするつもりだったの!?」
「もちろん(大人の都合によりお見せ出来ません)とか(大人の都合によりお見せ出来ません)とかだ」
「帰れ変態」
「はっはっはー、だが断る!!」

この変態はエレクトロアル・メイネス・クロイネント・・・・・・この町の領主である吸血鬼だったりする・・・
みての通り、同性愛思考の持ち主で・・・最近寝ている間に貧血になる町娘が絶えないとか
それでいいのか、領主・・・って言うか、こいつでいいのか

「それで・・・結局何しに来たのよ・・・」
「なに、ほんの少し血を貰いにきただけだ」
「はいそうですか、って言うとでも思ってるの?」
「安心しろ、私とて貴様がそんなに馬鹿だとは思っていない」
「じゃぁ・・・」
「素直じゃないからこそ調教しがいがあるんだ!!」
「いや・・・もう、ほんとに帰ってよ」
「ふふふ・・・そう言うな」
「にじり寄って来るな!!」
「ほーら、もう逃げ場がないぞ?」
「ちっ・・・仕方ない」

私は壁に掛けてあった刀を素早く構え、居合の構えをとる
この刀は母の形見で、ある程度の魔力を払いのける霊刀と言われている

「ふふ・・・そんな刀で私に抵抗出来るとでも思ってるのか?」
「そのセリフは死亡フラグよ」

とりあえず、居合を一閃
狭い部屋なので、飛び退くとすぐに壁にぶつかる

「おっと・・・危なっかしいな」
「流石魔物・・・今のは人間なら反応出来ない速さの筈なのだけれど・・・」
「夜に私に喧嘩を吹っ掛けるのは・・・それこそ真性のドMくらいだろう」
「生憎、私はドMでは無いけどね」

部屋の中央に出来た空間を利用して、(非常に不愉快ではあるが)変態に近づく
こちらが刀を持っていると言うのに・・・どうしてこうも恍惚しているんだろう・・・そうか、ドMなのか

「そちらから近づいてくるとは・・・君は馬鹿か?」
「黙れ変態!!」
「君は確かに人間としては優秀だが・・・生憎私は魔物でね」
「・・・・・・っ!?」

一瞬目が合って、変態の目が紅く染まる
それを見た瞬間、体が金縛りにあった様に動かなくなる・・・・・・力も抜けていく
刀を握っていた手からも力が抜ける・・・刀を持っていられない

「そう、それでいい・・・もっとこっちにおいで」
「・・・・・・ぁ」
「うんうん、上出来だ」
「・・・・・・・・・」
「それじゃぁ・・・首を出して」
「・・・・・・・・・・・・」

朦朧とした意識が、首に噛みつかれた痛みで一気に覚醒した
全身を駆け巡る痛みと快楽で催眠が解けたらしい

「・・・っ離して!!この変態!!」
「な・・・まだ動け―――」
「っっっ」
「うわっ、何をする!?」

変態を振り払って、手に付いた花瓶を投げつける
花瓶は変態に当たる前に、魔力の壁の様な物に当たって割れて・・・中に入っていた水だけが変態にかかった

「っぁ―――」
「っっっ!!」

変態が一瞬怯んだのを見て、素早く足元にあった刀を拾い上げ
そのまま窓から飛び降りる・・・ここにいるよりは幾分か安全だと思う

「あ――っ待て、今外には・・・・・・」
「それじゃっ」

変態の言う事に耳を貸すとロクな事にならないので、言い終わる前に窓から飛び出す
ちなみにこの部屋は二階にある・・・・・・

「っつ、痛っ・・・」
「・・・追いかけてくる前に行かなきゃ」

流石にこの高さからの着地は無理があったらしく、左足が悲鳴を上げる
しかし、多分すぐにでも追いかけて来そうなので、裸足のまま町を駆けていく
ちなみに、パジャマ姿だったりする

「・・・・っはぁ、はぁ」
「流石に・・・ここまで来れば・・・」
「・・・・・・それにしても暗いわね」

町の街道を一直線に街外れまで走ってきたが・・・何とも言い難い違和感があった
・・・確かに時間は遅い、それでも・・・外に人がいなかった事は無かった筈だ
この町は親魔物領なので、夜でも魔物は普通に外を出歩いているし・・・もっと風俗的な看板も目立っていた
それなのに、どこの店も明かりを消し、中から人の気配もしない
いつもなら夜でも活気溢れる町なのに・・・

「―――っっ!?」

不意に後ろから、隠しきれない程の大きな気配を感じて振り返る

「人・・・なぁんだ、いるんじゃない」

暗闇に光る金色の瞳・・・暗黒の闇の中でさえその姿が影に見えるような圧倒的な存在感

「なぁっ―――っぅ」
「綺麗な髪をしているのね・・・顔立ちも申し分ないし・・・」
「な・・・何を、っっ」
「声も素敵ね・・・うん、あなたにしましょう」

反応す暇も無く壁に押さえつけられた私は、間近でその金色の瞳に見つめられる
押さえつける力とは裏腹に、優しげな瞳と・・・ひどく欲望に駆られた捕食者の眼
そして、絶対的な・・・圧倒的な圧力のあるその存在感に・・・身が竦む

「は、はなせっ」
「駄目よ、私は目の前にある宝は絶対に自分の物にする主義だもの・・・こんな綺麗な物を奪わないわけにはいかないわ」
「やめてっ」

押さえつけられていない左手で、無理やり刀を抜き・・・目の前の異形を切りつける
元々両利きなので、抜刀の不自由さ以外はいつもと変わらない筈だ・・・が

「・・・痛い」
「・・・・・・な!?」
「随分と物騒な物をもってるのね」
「あ・・・あぁ・・・?」

身が竦む・・・これはなんだ?
刀の刃が・・・その皮膚に傷一つ付けずに止まった・・・・・・硬い物に当たった様に、切れない物を切ろうとした様に・・・
同時に気づく・・・今当たったのは皮膚ではない―――鱗だ!!

「こんな危ない物は・・・綺麗な貴女には似合わないわ・・・という訳で没収」

異形の手が、刀身を素手でつかみ・・・そのまま刀身の腹を折った
・・・駄目だ、勝てない・・・多分逃げ出す事も出来ない

「そんなに怯えないで・・・悪いようにはしないわ」
「や・・・やめっ・・・・・・」
「・・・・・・お休みなさい」
「―――っっぁ?」

一瞬、全身に痺れる様な感覚が走って、意識が遠のいていく・・・
チカチカする目が最後に見たのは・・・金色の瞳の後ろから、真紅の瞳が近づいてくる光景だった・・・


・・・・・・・・・・・・暗い街外れの街道、二人の女性が向き合っていた
暗くてよく見えないが・・・片方は黒と赤で装飾されたマントは羽織っている
向かい合うもう一人は、巨大な翼と・・・その身に鎧の様な鱗を纏っている
ヴァンパイアとドラゴンだ

「・・・その子を返して貰おうか」
「嫌よ・・・この娘はもう私の物だもの」
「私の治めている町で人さらいなんてさせない」
「美しい物は・・・奪ったもの勝ちよ」
「どうしても・・・攫って行くか?」
「攫うんじゃないわ・・・奪うのよ」
「同じことだ・・・ケイを町の外に連れ出す気か?」
「へぇ・・・この娘、ケイって言うんだ」
「答えろ」
「うるさいわね・・・そうよ、ケイは私の洞窟に連れて行くの・・・それから、一番綺麗な宝石として扱わせてもらうわ」
「・・・それは困る」
「あら・・・どうしてかしら?」
「ケイは、この町のアイドルだからな」
「あら、それは初耳ね・・・この町の事はそれなりに知ってるつもりだったのだけれど」
「本人すら知らない程だがな・・・その黒髪はよく目立つだろう?」
「そうね・・・暗い夜でも一層存在感を持つ・・・・・・とても魅力的な色だわ」
「顔立ちも整っているし・・・歌も上手い、本人は剣術道場の師範をやってるつもりだが・・・門下生の大半がその姿に見入って、練習に身が入らないほどだ」
「ふふ・・・何となく分かるわね、確かにこの肢体は造形美と言うに値するわ」
「そんな有名人を易々と攫われては、この町を治める者としての名が廃る」
「貴女の立場なんてどうでもいいの、私は私の欲しい物を奪うだけ」
「ケイには親衛隊なる者どもがいるそうだが・・・攫われたと知っては、そやつらも黙ってはいないと思うが?」
「私を誰だと思ってるのかしら・・・平和ボケした町の人間なんて、いくらいたって怖くもなんともないわ」
「もちろん、私『達』も黙っているつもりは無いがな」

エレクトロアルの紅い瞳が一際強く、鋭く光る
同時に、周りの民家の屋根の上や狭い道の隙間などから・・・光る眼が大量に出現する

「あら・・・随分とたくさんいるのね」
「もちろん、ケイは魔物にも人気があるからな・・・さっき使い魔を飛ばしてこの数だ、貴様の寝床を襲撃するのはどれくらいの数だろうな?」
「そんな脅し、全然怖くないわよ?」

ドラゴンの口元に、青白い炎が溢れている
周りの警戒すらせずに、目の前の吸血鬼に向かって・・・
獄炎とも呼べるその劫火を放った

「っぅ・・・この程度の炎・・・」
「それじゃぁ、御機嫌よう」

ドラゴンが翼を広げる
周りの視線は炎の柱に集中していて・・・誰もそれに気づけない

「まて・・・逃がすな!!」
「もう遅いわよ、それじゃ・・・ケイは貰っていくわね」

エレクトロアルの叫びが聞こえた時には、すでにドラゴンは飛び去った後だった・・・


そこから、しばらく時間がたった後
私は見知らぬ部屋で、金銀財宝の山に囲まれて目を覚ました・・・

「・・・・・・ここは?」

くらくらしていて、考えがまとまらない
何故、自分がこんな場所にいるのか
ここは何処なのか、誰が私を・・・それは多分、あの時の金色の瞳の持ち主だろう

「目が覚めたのかしら?」
「・・・っっ!!」

顔の上にノソッと現れた薄い紫色の髪をした女性に驚き、すぐに起き上って距離を取ろうとして
思いのほか柔らかかった足元に足が埋まって、そのまま滑って転んでしまった

「きゃっ!?」
「あ、今「きゃっ」って言った・・・ねぇねぇ、もう一回言ってみてくれない?」
「え・・・あ、いえ・・・あの」
「そんな困った顔しないで・・・」
「え・・・っと、ここ、何処ですか?」
「もう一回、「きゃっ」って言ってくれないと教えてあげない」
「急にそんな事言われても・・・」
「じゃぁ、言わせてあげる・・・・・・ペロッ」
「ひゃぁっっ!!!?」
「う〜ん・・・まぁ、これはこれでそそるわね」
「あ・・・あの、舐めないで・・・く、だ・・・っひゃぁ!!」
「ここは・・・ペロ、貴女の町の、っちゅ・・・東にある・・・私の住居よ・・・っちゅぅ」
「っひぅ、そ、それで・・・っぁ、これ・・・は・・・?」
「貴女はもう、私の物なのよ」
「・・・・・・・・・ぇ?」
「なので・・・貴女に私は何をしてもいいのよ」
「あ・・・あの?」
「そんなに不安そうにしないで・・・すぐに楽になるから・・・」
「え・・・あ、あのっっひゃっ!!」
「こんなに綺麗な肌・・・初めて見た気がするわ」
「ぬ、脱がさないで・・・・・・」
「だーめ、貴女にはもっといい服をあげる・・・」
「い・・・いらなっ・・・」
「あら・・・裸の方が好みなのかしら・・・?」
「ち・・・ちがぅ」
「まぁ・・・なんにしても、このパジャマ駄目ね・・・エロくないわ」
「な・・・ぁ、ひぅ・・・ぁ、駄目、だめ」
「ふふふ・・・さっきのパニック状態も可愛かったけれど・・・・・・弱気なのも可愛いわね」
「やめ、て・・・・・・舐めないで・・・・・・ぁ」
「力むと、気持ち良くなれないわよ?」
「きもち・・・よくなんて、っぁぁ」
「こっちは・・・気持ちよくなりたいみたいだけど?」
「っやぁ・・・そこは・・・触ら・・・ない、で」
「・・・ふふふ、嫌よ・・・貴女にはここから離れるなんて考えが浮かばなくなるほどに、感じてもらわなきゃ・・・ね」
「いやっ、やめてっ!!」
「暴れちゃだーめ♪」
「っぁ、だめ、やめて・・・」
「我儘言っちゃ駄目よ・・・貴女はもう、私の物なの・・・分かる?」
「ち、違う・・・私はっっっぁぁ!!?」
「そうね・・・まだ印を付けて無かったわ」
「っ!!!ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「この尻尾・・・立派でしょう・・・?」
「い、痛い・・・っっ痛い!!」
「これから・・・この尻尾で、貴女が何も考えられなくなるまで・・・貴女が私の事しか考えられなくまるまで・・・」
「痛い・・・止めてっ、壊れちゃぁぁぁぁ!!!」
「大丈夫・・・ちゃぁんと、加減してあげる・・・まだ」
「あ・・・っぅぁ・・・ああっぁ」
「あら・・・トんじゃったかしら?」
「あ・・・・・・・・・あぁ、うぁ」
「ふふ・・・でも、休ませてなんかあげないんだから♪」
「ふぇ?・・・・・・ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「良い顔・・・そそるわね」
「あっ・・・はぁっ・・・んっ」
「あら・・・随分と艶っぽい声になったわね」
「あ・・・はぁ・・・っくぅ・・・・・・っぁ」
「そう・・・それでいいの・・・もっともっと・・・その声を聴かせてちょうだい・・・?」
「あ・・・っは、っぅぁあ」
「いいわ・・・とっても、最高よ・・・」
「あ・・・ぅぁ・・・」
「ふふふふふふふふふふふ・・・・・・」


・・・・・・・・・と、言う事があって
しばらくして意識が戻った私は・・・・・・すでに腰が抜けていて、このドラゴンの好きなように弄りたおされていた・・・
まぁ・・・・・・別に悪い気はしない・・・・・・
気持ち良いし・・・何も考えなくていいし・・・・・・
何より・・・・・・いつでも彼女が傍にいてくれるし・・・



後日談

「こっちね・・・匂いで分かるわ」
「・・・・・・・・・」(ハァハァ
「みーつっけた♪」
「・・・っ」(ビクッ
「まーた、こんなにして・・・そんなにさみしかった?」
「・・・・・・」(ドキドキ
「ほら・・・・・・今夜はちゃんと可愛がってあげるから・・・ね?」
「・・・・・・」(パァァ

こんな光景があったとか無かったとか・・・

ドラゴンさんの名前が不明なのは仕様です
きっと、前魔王時代からの魔物で名乗る名もなかったんだと思います

百合はもっと増えてもいいと思います・・・
あと、最後のケイさんが無言な理由は個人が一番萌える様に妄想してください

11/08/05 02:01 稲月 乙夜

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