夜もすっかり深まっていた。

　窓からは月の光が降り注ぎ、蝋燭を使わなくても視界の確保にはあまり困らないほどの明るさがあったが、特にすることもなくなったので、二人とももう寝ることにしたのだが。

「……って、本当に二人で一つのベッドで寝るのか!?　タマノはそれでいいのか……？」

「暖炉の薪も節約する時代じゃし、わっちかぬし様のどちらかが床で寝るなど、とてもではありんせんがどちらも寝付きが悪くなりんす。ほれ、ぬし様や、二人でくっつけばそう寒くはありんせん」

「いや、だがな……!?」

　なおも逃れようと、あらぬ方向を向いて狼狽えるシーフォン。
　そんな様子を見やりながらタマノはうつむき加減がハッキリと判るような声色で、

「それとも……魔物なぞとは閨を同じくなどできぬということかや……？」

　そんなことを言われたもので、慌ててシーフォンは振り返りながら言う。

「違っ……!　俺は良いんだが、その、タマノが困るんじゃないかとだな……!!　…………って、ああ、やられた…………」

　シーフォンが振り返った先のタマノは極悪と言っていいくらいのしたり顔でいらっしゃった。

「くふふっ……！　なんじゃぬし様や、わっちのことを襲う気なのかや？」

「そ、そんなことは、ない」

　うろたえたようにシーフォンが言う。

「まあ、わっちがぬし様に襲われるのは、もう少し先のことじゃと思いんす。じゃから今回は」

　タマノの目が一瞬、妖しい色に光った。

「……素直に襲われなさんし」

「ぅっ!?」

　シーフォンの体が、不思議な力でタマノの元へと引っ張られる。
　そして彼はそのままベッドに仰向けにされた。

「(体が……、思うように動かない!?)」

　――ああ、これから俺はタマノに食べられるのか……

　シーフォンはそんな感想を抱いたのだが、しかし、続く次の瞬間はタマノが思いきりシーフォンに抱きついて、胸に顔を埋めて深呼吸をするという、彼が思ったよりはずっと軽く、可愛らしい行為であった。

「……タマノ」

「なんじゃ？」

「顔、……緩んでるぞ？」

「……ふぁっ!?　そ、そんなことありんせんっ！」

　タマノの頬は朱に染まり、恍惚とした表情を浮かべていた。
　先程の束縛の妖術は精神状態も関係するのだろうか、いつのまにか体を縛る不可視の何かは消え去っていた。
　それを確認したシーフォンはゆっくりとタマノに触れ、その頬に手をあて、目を合わせる。
　そして問うのは、タマノの意思。

「……本当に、俺でいいのか？」

　問いに対して返ってくる声はない。
　タマノはただ、くふ、と笑ったあとに眼を閉じ、微かに下顎をシーフォンの方に突きだした。

「……すまない。心配は要らなかったみたいだな」

　タマノの仕草にシーフォンは応え、唇を合わせる。
　ついばむように軽めだったこれまでと違い、深く、互いを求めるように舌を絡め合う。

「ぅん……っく、ふ……ちゅっ、はふ、ん……♪」

　唇が重なると同時に、二人の身体も重なった。
　タマノはシーフォンにゆっくりと自重を預け、より強く結びつこうとし、シーフォンはタマノの背中に腕をやり、力を込めて抱きしめる。
　タマノの柔らかさと、胸の膨らみをその身に感じ、シーフォンの鼓動はさらに速まった。
　しばらくの間キスを続けてから名残惜しそうに、二人とも口を開いたまま体を離す。
　二人の舌に架かった糸が、入り込んだ月の光を受け銀色に輝き、やがて細くなり夜に溶け込んだ。

「月が綺麗じゃの……。こんな夜は、わっちの心がざわざわしんす。……ぬし様や、どうかわっちを鎮めてくりゃれ？」

　タマノは舌なめずりをして、シーフォンに馬乗りになった状態から、身を前に乗り出し、耳元でそう囁いた。
　長い赤茶色の髪がシーフォンの顔に落ち、タマノの匂いとそれとが、二つの意味で彼をくすぐる。

「鎮めるって……、どう考えても逆効果じゃないのか、これは……？」

　シーフォンが言うが、タマノはそのまま頭を下ろし、彼の耳を、はむっ、と口に銜(くわ)えた。
　彼の腕が粟立つ。タマノはそれから耳朶を唇で上下に挟んだあと、だんだんと上部に移動し、ねっとりと耳の内から外まで執拗に舐め回した。
　耳から口を離したあと、タマノは頬擦りを始め、両腕でシーフォンを強く抱きしめながら言った。

「逆効果などではありんせん。……むしろこのまま何もせずに終わったりなぞしたら、わっちは今晩気持ちが昂ったままで、眠ることができんじゃろうの」

　もう抑えきれんのじゃ、と言葉は続き、そして程無くしてタマノの体がシーフォンの下半身へと移動した。
　そこでタマノはローブをはずすと、隠していた三本の尻尾が露わになり、ふさふさとした感触をシーフォンに伝える。
　そのまま彼女は上に着ていたものをすべて脱ぎ去ってシーフォンの方を向いた。

「……綺麗だ」

　シーフォンは素直な感想を漏らした。
　スタイルのいい体つき、形の整った胸、そして、勾玉のような形の紅い首飾りが神秘的な光を発している。　

「素直なのはよいことじゃの。くふっ……、ぬし様のここもこんなに硬く、大きくなっていんす……♪」

　言いながらタマノはシーフォンの下の服に手をかけ、それを露わにさせた。

「タマノ、何を……ぅっ!?」

　言いかけたシーフォンだが、タマノがそこを口に銜え、上下に扱き始めたことで中断されてしまう。

「ぬし様の、なかなかに美味いの……♪」

「くぁああぁ……っ!」

　シーフォンの口から快感が漏れた。
　
「んふ……、ろんろんかふぁくなってきんした……♪」

　そこでタマノは一旦その口を離す。
　そのことに若干の寂寥感を覚えてしまうシーフォンだったがしかし、

「ぬし様や、そんな顔をするんじゃありんせん。終わってなぞいないんじゃからな……！」

　タマノはそう言って、そそり立つシーフォンのそこを胸で挟んだ。
　先ほどの口淫のおかげで潤滑油は充分だ。　
　ニチャニチャといやらしい音を立てながら、タマノの胸が上下する。　

「タマノそれ、すご……っ!?」

「ぬし様、どうかや、気持ち良いかや……？」

　言いながらタマノはその先端が顔を見せるたびにそれを嘗めたり、息を吹きかけたりして弄ぶ。

「あ、ああ……っ！　タマノ、やば……っ！」

　シーフォンがそういった瞬間、タマノは鈴口にキスをして、そのまま口に含んだ。

「ん、んむぅぅぅぅぅうっ!?　んく、んくっ……♪」
　
　喉を鳴らしてタマノはシーフォンの欲望を飲み込む。
　その顔は幸せ一色に彩られているかのようだった。

「ふ、はぁ……っ、今度は、ぬし様がわっちを気持ちよくしてくりゃれ？」

　口の端からわずかに白い液体を垂らしながらタマノが言うのに、言いようもないほどシーフォンはどきりとする。　
　それだけで先ほどの放出など無かったかのように彼のそこは硬さを取り戻した。

「ああ……。じゃあ、下、脱がしても良いか……？」

「……そんなことを訊くものではありんせん。恥ずかしいじゃろう……？」

「……悪かったな、こういう経験が無かったものだから」

「……それは、わっちも同じでありんす」

「そうなのか？」

「わっちはそんなに安くありんせん」

「まあ……それこそ、金では買えないくらいだしな」

「当たり前じゃ。ぬし様が特別なんじゃぞ？」

「俺たち……、何か惹かれ合うものがあったんだろうな。……そんな気がする」

「奇遇じゃの？　わっちも同じ気持ちじゃ。初めて会ったとき、ぬし様の手癖の悪さに気がつけたのは、……もちろんわっちの感覚が鋭いのもそうじゃが……、それ以前に、ぬし様を見てから、目が離せなくなっていたからなんじゃ」

「どう転がるにしても、もしかしたら俺たちはこうして一緒に居て、こんなことをしてたのかも知れないな？」

「そうじゃの……じゃとすればそれは、素敵な話だと思いんす」

「……そう、だな」

　二人はそこで、小さく笑いあった。

　
　　　　　　　　　　　
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　シーフォンの手がさらに進む。
　タマノの頬に触れ、そこからだんだんと下に。

「くぅ……っ、あっ♪」

　指がタマノの膨らみをなぞって登り、頂点に達した瞬間、タマノの口から甘い息が漏れた。

「んっ……♪　だ、駄目じゃ、そこは……っ!　んっ、ひぅ、んはぁっ！　ぬし様の指でっ、気持ち良くなってしまいんす……///」

「俺も伊達に手指の動かし方が大事な職業には就いていなかったってことだな…………。っと、タマノ、両足……少し上げるぞ？」

　ついにシーフォンは下に到達し、そこにある衣服を脱がしていった。
　タマノは力が入らないのか、抵抗もなくするりと下の服を脱がされる。
　シーフォンは露わになっている胸を、あらためて弄り始めた。
　薄桃色のそれを避けるようにして、下部からゆっくりと、タマノを焦らすように柔肉に指を沈めていく。

「ぬし様も……っ、意地が悪いの……！」

「……先っぽの方、触って欲しいか？」

「ぬし様、わざとやっておるじゃろう……!?」

「どうなんだ？」

　問われたタマノは真っ赤になりながらも、か細く、しかしシーフォンの耳に届く声で答えた。

「もっと……もっと、先っぽまで触って、わっちを気持ち良くしてくりゃれ……？」

「……じゃあ、お望み通りにいくぞ？」

　シーフォンはすっかり硬くなっているその先端を本格的に攻め始める。

「はぁっ♪　っあぁぁあぁあんっ！」

　それだけで、タマノは開いた口が塞がらなくなる。
　その開きっぱなしの口を、シーフォンが唇を重ねて塞いだ。
　刺激を受ける度、無意識のうちに伸びてしまうタマノの舌が、シーフォンの口内へと浸入し、絡み合った。

「ここがいいのか？」

　薄桃色の突起への刺激を続けながら、シーフォンが問うのに、タマノは無言で頷く。

「だが、まだすごいところがあるぞ……ここより、もっと気持ちいいだろうな？」

　シーフォンの指が下へ、タマノの秘部の方へと動き、十分すぎる湿りを持ったそこに指を当て、女性におけるもっとも敏感な場所を優しく擦った。

「んあぁぅあっ//　あっ!?　あぁっ、ひぁんっ!!」

　瞬間、タマノは背筋に電撃が走ったような、これまでに経験したことの無い快感に襲われ、淫らに嬌声をあげ、身体を断続的に痙攣させた。

「は、……っ、はぁ……っ。ぬし様の番も、これで終わりじゃ……っ……」

　息を整え、タマノは言う。

「次は……、一緒に、気持ち良くなりんす」

「……そうだな。俺もそろそろ我慢の限界だ。タマノと……繋がりたい」

「ぬし様はそのまま横になっててくりゃれ。……わっちが上から被さりんす」

　言われた通りに、シーフォンは横になる。
　その上にタマノは四つん這いになり、ゆっくりとシーフォンの一部を入り口へとあてがった。

「く……っ、……ふぅぅっ、んぅ……っ!!」

　ツプツプという擬音と、タマノの辛そうな声が混ざる。

「タマノ、大丈夫か……？」

「っ、平気じゃ……っ、思っていたほどではありんせん。ぬし様がわっちを気持ち良くしてくれたからの……♪」

「タマノ……っ!」

「ほれ、……全部、入りんした……っ///」

「じゃあ……、中で少し動いても構わないか……？」

「ん、……頼みんす。わっちからはとても動けそうにありんせん……っ」

　シーフォンはゆっくりと上体を起こし、両腕でタマノを抱えて唇どうしを繋げ、持ち上げる力を入れては抜き、入れては抜き、を繰り返す。
　時折愛しそうにその頭を、耳を、三本の尻尾を撫でてやることも忘れない。
　
「ん、ふ……っ♪　ぬし様ぁ……♪」

　小さな振動がタマノの中にじわじわと伝わっているのが、繋いだ唇からシーフォンにも解る。

「ぬし様や、もう大丈夫じゃ……。これにも慣れてきんした。次はもっと激しく動いてくりゃれ……♪」

　タマノを押し倒して、今度はシーフォンが上になる。
　シーフォンはそこでタマノの入り口近くの浅さまで自身を抜き、一気に奥へと突き挿れた。

「ぅあぁっ……!」

「ふぁあぁんっ!?」

　双方に途方もない快感が訪れ、それが二人の動きをより一層助長した。

「これ、続けるぞ……っ!!」

「どんどん、来なさんし……っ!」

　二人の奏でる水音だけが、しばらくの間断続して部屋を包む。

「んっ、、んぁっ！　はっ、あぁ、あん♪　ぬし様っ、ぬし様ぁ……！」

「タマノ、俺、また出そうだ……っ!!」

「あんっ// ぁっ、わっちもっ♪ わっちも、そろそろじゃっ!!　ぬし様、ぬし様のをもう一度いっぱい、わっちにくりゃれっ!!　ぬし様でわっちをいっぱいにしてくりゃれぇっ!!」

「ああ、いくぞ…………っ!!　ぅっ、く、あぁああぁっ……!!」

「くふっ、ふぁあっ♪　くひゃぁあぁぁあぁんっ!!」

　果てる瞬間は二人同時だったようで、二人ともが力なくベッドに横になり、最後に口づけを交わしてからまどろみに落ちた。

　月の光が優しく二人を包み、タマノの首飾りが応えるように紅い光を反射していた。

■作者メッセージ
はい、待望の夜伽です！
元々かなりのところまで書きあがっていたのですが、ヒバゴン様の熱い要望（欲望？）により急遽おっぱい成分を追加しましたｗｗｗ
ニーズに沿えたかどうかは分かりませんが、如何でしたか?
これからも要望（欲望）にはできる限りお答えしていきますので、よろしくお願いいたします＊
そしてそろそろ物語は佳境に……