連載小説
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五蘊盛苦
──五蘊盛苦──
人間の生そのものが、あるいは生の過程で発生する精神的活動が苦であるという。
仏教の八苦のうちの一つ。

生きること、ソレがそんなに苦しいことかね?俺は苦しいとは思わない。でも──
しかし、皮肉にも死んでしまった今は、そう、思う。

『───!!!』
もう、声もでない。
叫ぼうとしても口からは金切り声の様な甲高く小さな空気が漏れる音が響く。
ずっと、ずっと………、俺の肉体が朽ちても尚、俺は彼女にとらわれたままだった。

ウィル・オ・ウィプス
孤独に死を迎え、生者の嫉妬と幸せへの羨望が強い魂が最終的に行き着くソレ。

君は、孤独だったのか?
俺は、君を、孤独にしたのか?

わからない。考えようとしても、彼女がソレを許さない。檻の中で、ぐちゃぐちゃと、品も何もない音が響く。
正常位で、
対面立位で、
騎上位で、
背面側位で、
立ちバックで、
まんぐりがえしで、
シックスナインで、
ただ、ただ、ひたすらに、死者同士のイカれた交わりを繰り返す。
まるで、そうしないと消えてしまうかのように、必死で君は俺を貪る。


心中未遂で君は死んだ。俺は生き残った。
帰ってきてからも、君は捨てられることを恐れていたのか?君を心のどこかで罵っていた事を見透かされていたのか?
その姿を醜いと思った。
その執着が哀れだと思った。
気持ちの悪い人だと思った。

─気が遠くなるほど時間は過ぎた。
疲れてもう動けない。─

-ひーくん…ひーくん…-
私の声はもう届かない。ひーくんは私の檻の中で息絶えた。死因は…良く覚えていない。でも、私のせいでひーくんが死んだことはわかっていた。
漸く、一つになれた。1つの檻の中で永遠と交わり続ける。檻の中で亡霊となったひーくんは快楽にのたうち回って、声もだせない。動かない。一方的に私がひーくんを犯し続けていた。そこには存在する。でも、私の声に応じることはない。私の愛撫に反応しない。抱き返さない。何度でも何度でも呼び掛ける。いつか、ひーくんが私を愛してくれると願って…。

─また、気が遠くなるほどの時間が過ぎた。
疲れきった男は何かに気づいた。─

不意に男は魂の中から沸き上がる力を感じました。動けない体を無理矢理動かせる程の力の正体に男は今更気づきました。
『愛する気持ちが欠けていたから、今なら彼女を愛せる』と。
男は彼女を抱き締めました。
男は彼女の体を撫で回しました。
男は彼女に謝罪しました。
そして、恥ずかしがりながら、確かにもう一度、愛を語りました。

彼女の目から零れた涙は止まりました。
泣きながらの呼び掛けは対に終わりを迎え、その顔には笑顔が灯りました。

檻の中で永遠を誓った二人は、初夜のような気持ちで行為に及びました。
何度も繋がったはずの性器から伝わる新たな快感に二人の溜め息がシンクロし、二人は少し嬉しくなって「えへへ」と笑います。
男性器を租借するが如く勢いで吸い付き締め付けた女性器は、暖かく男性器を包みそれでいてしっかりと抱き締めます。
女性器を貫こうとするほど勢い良く打ち付けていた男とその男性器は優しく、それでいてしっかりと彼女の中をつつきます。

「気持ちいい・・・。」
「もっと・・・。」

えも言えぬ充足感に包まれつつも彼女は更に繋がりを求めます。
舌を絡ませて、互いに抱き合い背中を撫で合い、暖かな快楽を享受しました。

くちゅ─くちゅ─ぱんっ─ぱんっ─

二人の体は零れ落ちた唾液、あふれでた愛液、先走って飛び散った情欲でヌラヌラと妖艶に照っており、目眩がするほど濃い臭いに息を荒くします。

体の境目が分からなくなるほど密着し、濡れた頃に男は大きく身震いをします。
彼女も次に起こることに更なる興奮を得て体を大きく反らせます。

ごぽぽ・・・どぴゅぅ・・・こぽっ・・・

離れていても聴こえるほど大きな音を立てて男は全てを彼女に注ぎ込みます。
永遠と続くかのような長い射精は彼女の腹を歪に膨らませます。限界を超えて外に零れ落ちた精液はやがて卑猥な水溜まりを作りました。

ごぽごぽ・・・どぼどぽ・・・

精を吐き出す度に男は存在を見失っていきました。精を流し込まれる度に女は寂しさを忘れていきました。

最後に残ったのは愛し合いたいという素直な思いでした。
それから、いつまでも、いつまでも。
ゆったりとした交わりは続きました。
最早、二人は自分が何であったかも分からず、何故目の前の亡霊を愛しているのかもわかりません。ですが、愛し合いたい。目の前の亡霊だけが全てでした。
たとえ、世界が混沌としても
たとえ、世界が滅びても
たとえ、何もかもが無くなっても

二人は愛し合いました。ずっと・・・ずっと・・。
18/06/15 00:40更新 / Mr.A
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■作者メッセージ
お久しゅうございます。間が空いてしまいましたが、これにて寂しさをまぎらわせる為にを完結いたします。だらだらと書いた駄文と、なってしまった感じは否めません。それでも、お時間を割いて読んでいただきありがとうございました。

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