読切小説
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寂しくないように
ここはジパング地方の高校、そこに通う高校三年生の葛城真はお人良しのバカとして名が通っていた。なんでも首を突っ込んでしまう彼の性格を煩わしく思うものもいたが、親友は多かった。

「ふ〜やっと学校終わった・・・今日もお供え物に行かないとな」

彼は毎日欠かさずしていることがあった。それは小さな神社へのお供え物である。それをはじめた理由は、『誰かがお参りに来たとわかったら神様も寂しくないだろう』というもの、我ながら可笑しなことをしているなと思っているが、やめたことは一度たりともなかった。

「やっと着いた・・・今日は俺手作りの餃子だからな・・餡にはいなりもいっぱい入ってるし、気に入ってくれるといいんだけど・・・あっ!」

境内に到着すると彼の高校の不良たちが昨日のお供え物(きな粉のおはぎ)を食べていた。走ってあわてて問い詰める。

「おいお前ら何勝手に神様へのお供え物食ってんだよ! 罰当たりだろ!」

「ちッ! 葛城ぃ・・・てめぇ毎度毎度うざってぇんだよ!」

「一発殴らせてもらうぜ! 憂さ晴らしだ!」

「ちょ・・・ちょっとま「オラァ!」ふべぇっ!?」

制止の声も聞かず不良の拳は見事に葛城の頬にクリーンヒット、彼は素っ頓狂な声を上げながら錐揉み回転しつつ倒れた。不良たちは気が済んだようでぞろぞろと帰っていった。

「いって〜・・・あいつらホントに殴りやがった・・・学校であったら覚えてろよな・・・」

「あの・・・大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、口の中切ったけど軽い怪我だし・・・ってうおおおおおおおッ!?」

そう話しながら横を見ると、いつの間にか和服の少女が立っていた。心配そうな顔で葛城の顔を覗き込んでいる彼女を見て、申し訳なさそうに苦笑いしながら彼は言う。

「格好悪いところ見られちゃったかな・・・俺、神様に毎日お供え物持ってきてるんだけど、それ盗み食いするやつらが居たから怒ってやったらこの怪我だよ・・・」

「そんなことないです。格好良かったですよ・・・いつもありがとうございます。あなただったんですね、お供え物くれたの」


「ありがとう・・・でもえらいね、まだ小さいのに神社の手伝いなんて・・・」

「えへへ・・・私、神様なんです」

「へー・・・うおおおおおお? ホントだ! 耳生えてる! 尻尾も! え、じゃあ君が神様なの?! ホントに?!」

彼女はこの町の守り神のような神様だったらしいのだが、現代になり信仰が減少し、寂しい思いをしていたところに、葛城のお供え物が届くようになり、嬉しかったのだそうだ。

「だったら尚更ごめんね。あのきな粉のおはぎ食べられちゃった」

「いえいえ良いんですよ。後で彼らには天罰を与えておきますから、それより、今日のお供え物はなんなんですか? 私、気になります!」

「へへへ・・・よくぞ聞いてくれました! 今日は俺特製の餃子です!」

すると神様は鼻をクンクンさせて匂いをかいでいた。するといなりの匂いに気付いたのだろう。彼女の耳と尻尾がぴんと立った。

「はわわわわ! これはいなりですね? 私大好きなんですよ!」

「ホント! よかった気に入ってくれて・・・それじゃ、一緒に食べよう!」

その後、二人でおいしく餃子を食べて、これからもお参りとお供え物を続けることを約束して、俺は
家に帰っていった。その後学校に行ってみると、あの不良たちがボロボロになっていた。理由を聞くと、あの後小石に躓いて川に落ちて滝からまっさかさまに落ちて溺死しかけたらしい。たぶん彼女の仕業だろう。俺はその不良たちに胸を張りながら「ほらな! 罰が当たったろ!」というと奴らはあわてて逃げ出した。もうお供え物に手を出すことはないだろうな、と思いながら俺は神社にお供え物を持って出かけた。

「おーい、神様! 今日は俺手作りのだしが染みた油揚げおいておくから食べてくれよな!」

俺はあれから、神様とは会っていない。彼女の姿を見たのも、声を聞いたのもあれっきりだったし、夢だと思ったけど、彼女と食べた餃子の味と、思い出が、それを否定していた。きっとまた会えるだろうな、なんてことを思いながらお供え物を置いて帰ろうとすると、

『はーい。美味しくいただきますね』

そんな声が、聞こえてきたような気がした。

15/03/23 01:24更新 / クロゴマ

■作者メッセージ
どうもこんにちは、クロゴマです。

7作目です。純粋なほのぼの路線を目指してみた結果文章がズタボロのぼろ雑巾のようになってしまいました。

ちなみに全然関係ない話ですが、私はきつねうどんのだしを吸った甘いあげが大好きです。マミーさんくらい好きです。本当です(迫真)

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