連載小説
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寝バック限定マンコ
 好奇心とは恐ろしいものだ。
 猫を殺すほどの禍々しいものなのだが、これは別段、恐懼するものだった。
 この世界には妖精と呼ばれる存在がある事は御存じでしょう。
 その中でも、四大妖精と呼ばれる者がいて、その内のノームと云う妖精に激しく思い入れがある。
 何故ならば、住処の近くの丘には、妖精の巣食う洞窟があり、そこでは毎夜、大人たちが何かをしているのだが、子どもながらにそれが何かは知る由もなかった。
 つまるところ、人間で謂う好奇心とは、子どものことを指す。
 私は、その洞窟に行ける朝の折に洞窟に向って、何をしていたのか見に行くのが日課となっていた。
 しかし、そこに証拠を残す人間もそういないだろう。
 ノームたちがそこにいるだけで、どこにも怪しいものは見えなかった。
 訝し気に洞窟の奥を覗き込む私に、一匹のノームが近づいて来て、話しかけて来た。

 「あなたは、だ〜れ?」

 モジモジ恥ずかしがる私は、赤面しながら俯いて答えようとはしなかった。

 「お〜な〜ま〜え〜は〜?」

 下を向く私の視線の先に顔を回り込ませて、言う。
 女の子は、ニヤニヤと小悪魔な笑みを浮かべて、引き下がらないつもりなのだろう。
 後ろ手に組んで、見つめたまま、そよ風が過ぎる音だけが聞こえてくる。

 「ねぇ……」

 それは、群青色の心に冪冪たる空が、ドラゴンの通った後のような爬搔を描いて、煢煢としていた。
 優気な微笑みがリフレインする。
 あの娘は、夢だったのだろうか。
 家に帰った後、棚という棚からプレゼント出来る物はないか探した。
 この時は、ただ夢中になっていたので気が付かなかったが、恋していたのかもしれない。
 そんな中、発見したのは、お隣の養蜂場の夫婦から貰ったロイヤルゼリーだった。
 これをプレゼントすれば喜ばれるに違いない。
 幼いながらにも、そんな都合の良い妄想をしていた。
 次の日には、話の出来なかったあの娘と向かい合って、確かにハチミツを手渡した。
 目の前で美味しそうに食べてくれたのだが、その時のムズムズとした心を引き締めるような不安な感情によって、その情緒は四季のように揺らいだ。
 ハチミツを指で掬い取り、天井を仰ぎ見ながら手を目の前に持ってきて、唾液に富んだ口内から現れるサンドウォームのような舌で絡めて、口腔内でグチッグチュと遊ばせる。
 こちらを流し目で見つめている。
 口の端からハチミツが流れた。
 この日から私たちの運命は、思いもよらぬ道を辿るのであった。
第一マンコ19/07/28 15:16

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