連載小説
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ラミアの場合


「お替りいかがですか?」
「あぁ、同じものをお願い」
空いたグラスを彼女に渡す


あなたはこの店に頻繁に通うようになっていた


目の前いる彼女に会いたくて

彼女が作る濃いめのお酒が飲みたくて








2か月ほど前のこと


あなたがいつものようにカウンター席で飲んでいるとスフィンクスが話しかけてきた
「お客さん、今日から新人が入るんだにゃ」
「へえ、種族は?」
「ラミアにゃ、スタッフ内では大型新人といわれてるにゃ、あと10分もすれば支度して出てくると思うから楽しみにしててほしいにゃ」


彼女がどんな容姿なのかいろいろ想像しながら待つこと数分
新人のラミアが店奥からカウンターに現れた


(かわいい・・・・)


あなたは彼女を見てそう思う


(そして輝いて見える、まぶしいくらいのオーラを放っている)


あなたが新鮮な感動を覚えてしまうのはこれまで店で見てきた種族と違うだけではなく彼女が若いからだ


(まだ幼さの残る顔立ち、細い体つきからして・・・この店で一番若い子なんだろな)


あなたは彼女に見入ってしまう


日替わり責任者のアヌビスが店にいる客に紹介する。

「今日からここに入った○○です」←各自、名前を入れてください
「よろしくおねがいします」
照れながらも明るく元気よく挨拶する。
パチパチと拍手がわく。
店内の客に一通り挨拶し終えるとカウンターに戻ってくる
「緊張しました」
彼女はアヌビスに話しかける、

「最初はみんなそうだ」
「どうでした私の対応は?」
「今のところ問題ない」
「ありがとうございます」
「○○ちゃーん、こっちおいでー」
「はーい」
とびっきりの笑顔で彼女はボックス席の客の接客にはいる
彼女を見つめるあなた
アヌビスが話しかける
「どうです?」
「かわいいよね、そういえばラミアって砂漠に住んでたっけ?」
「森や人里にいるイメージが強いですが砂漠にも住んでるんですよ。まあ意外に思うのも無理はありません」







十数分後


「改めまして、○○です。よろしくお願いします」
カウンター内に入った彼女があなたに挨拶する、

「こちらこそよろしく」
「飲み物のおかわりはいかがですか?」
「あぁ、同じものをお願い」


しばらくして彼女がお替りを持ってきた
「どうぞ・・・」
緊張しているのか少し不安げな声であなたの前にグラスを置く

「いただきます」
あなたは一口飲んで驚く

「―――――っ!? ごぽ、ぐええっふ、えっほ、えっへっ、えっお、えっほ」

盛大に噴出し、激しくむせる

「どうしたにゃ」
スフィンクスが布巾をもって駆け寄る

「大丈夫ですか」
驚いたラミアも心配そうに声をかける
「これ・・・・すごい濃い、飲めない」
グラスを指差すあなた
スフィンクスがそれを一口なめ、驚く
「!?、こんなもの飲めにゃいにゃ、ていうかものが全然違う、作り直しっ、それからお冷とおしぼりも」
「すいません」
ラミアにグラスを下げさせ、お冷とおしぼりを持ってこさせた後彼女を店奥に引き上げさせる
「ごめんにゃ、お客さん、服は濡れてないかにゃ?」
「大丈夫・・・うん」
スアフィンクスは濡れたカウンターを拭き終えるとあなたの両肩に手を置き
「本当にごめんにゃ、マニュアルをよく読んでおくようにいっとくにゃ」
彼女なりにあなたの機嫌を取りたいのか肩をもんできた
「あの子が間違えて出したのって」
「よりによって魔界で造られた強いお酒、しかも魔物娘しか飲めないものを割らずに出しちゃったんだにゃ」
「そうなんだ」
あなたはお酒が置いてあるカウンター内の棚に目をやる

(なるほど・・・)

ワインやウイスキーなど知っているお酒に交じって見たこともない形、色のお酒が置かれている
「ほんとに申し訳ないにゃ・・・・ところでお客さん」
スフィンクスは肩を揉むのをやめ、あなたの隣に座った
「『きれいな花にはトゲがある』って言葉は知ってますよね」
彼女はまじめな顔で聞いてくる
「うん」
「意味もわかりますよね」
「うん」
「では『かわいい花には毒がある』という言葉は知ってますか」
「いや・・知らない」
「意味はさっきと同じです、きれいなもの、見栄えが良いものには裏がある、だから気をつけろというとです」
「うん、で・・・何が言いたいのかな」
「そのままの意味ですよ」
「・・・・うん」
彼女の意図がつかめないあなた
「ではもっと踏み込んで謎かけです、なぜ私たちはきれいな花にはトゲがあることもしくはかわいい花には毒があることを知っているんでしょうか」
「それは・・・・」
腕組みをして考えるあなた

(言われてみれば、当たり前すぎてそんなこと考えたこともなったな)


「お待たせしました、さきほどはすみませんでした」
新人ラミアが作り直したお酒を持ってきた
「ああ、ありがと・・・」
グラスを受け取るとあなたは再び考える


しばらくして
「それは・・・大昔のご先祖様が実際に花に触ってトゲでけがをしたからじゃない」
考えてみればすぐわかること
「その通りです、痛い思いをしたからきれいな花にはトゲがあるから気をつけろと教訓として周りの人や次の世代に伝え、現代の私たちも知っているんです」
「うんそうだね、でもなんかすごい屁理屈を言われた気がする」
「まあまあそういわず、同じようにかわいい花を触って毒にやられた私のご先祖様も『かわいい花には毒がある』という言葉を残してくれました」
「あっ、君の家の言葉なの?」
「ええ、だからみんな知りません、で、小さいころから言い聞かされてきたんですが、『きれいな花にはトゲがある』とどう違うんだろうとずっと考えていたんですが大人になってわかりました」
「どうちがうの?」
「ではヒントの謎かけです、トゲと毒、被害が大きいのはどっちでしょう」
「毒」
「正解、トゲは身体から離したり、抜いたりすればそこで被害が止まりますが、毒は解毒したり、体外に出さないと毒が入ったところから全身に広がり被害が広まります、加えて毒を持っているものは目で見えにくいからわかりにくい、ホーネットやアポピスなんかは例外中の例外です。だから『かわいい花には毒がある』という表現のほうがメッセージとしては強いんですよ。ほんと私のご先祖様は素晴らしい金言を残してくれました」
いつにもまして語る彼女
「ですからお客さん、私たちの安心安全な生活はご先祖様の尊い犠牲の上に成り立っているんですよ、だからきれいな花、かわいい花を見つけてもいきなり触らないでくださいね、そんな行為はご先祖様の犠牲を無駄にしてしまうんですから」
「えーと・・・・」
「なんで私がこんなことを言うかというと」
あなたの疑問に先回りした彼女が続ける
「そのことを知らない人や子孫にも安心安全な生活をしてほしいから『きれいな花にはトゲがある、かわいい花には毒がある』という言葉を伝えたかったんです、覚えてくださいね。」
「・・ありがとう、覚えておくよ」
「今度ちゃんとつくれたようですね」
グラスを一瞥し彼女は立ち上がる
「ところでなんで口調が変わったの?」
「こっちが素の私ですよ」
「えっ」
「語尾のにゃをつけるのは営業用です、接客のプロですから」
彼女はにやりと笑うと席を離れた

(スフィンクスはそもそも頭がいいんだった・・・・)

いままで彼女の「にゃ語尾」に癒されてきたあなたはすこしショックを受ける

「・・・・・・・」
気を取り直してあなたはクラスに口をつける
「!?」
再び驚く
しかし吹きだしたり、むせたりしない
「いい濃さだ」
新人ラミアは酒の種類は間違えなかった。しかし割合を間違えたのか普段のものより濃かった

(同じ料金ならこっちのほうが徳だ)

あなたは黙って飲み干したのだった






「今日は本当にすみませんでした」
あなたが会計を済ませ店を出ると新人ラミアが見送りに来てくれた
「お詫びに少し作り直した方は少し濃いめにしたんですが」
「えっ、・・・・まあ気付いたけど」
なんとわざと濃いめにつくっていたのだ
「次も私に注文してもらえば・・・・・また来てくださいね」
そういうとにっこり笑う
彼女の言いたいことを理解しあなたも答える
「ああ、またくるよ」






話は2か月後に戻って




飲み過ぎたあなたは小さな部屋のボックス席に座っていた
「大丈夫ですか」
新人ラミアが心配そうに話しかける
「はい・・・・」
あなたは横になろうとする
「待ってください、スーツとネクタイを・・・」
彼女は制止しスーツを脱がせ、ネクタイを外すのを手伝う
「はあ・・・・・」
ようやく横になり今の状況を思い出す
新人ラミアの虜になってしまったあなたは今日も濃いめのお酒を数杯の飲み、彼女との会話を楽しみ・・・・

(飲んで・・・・しゃべって・・・・飲んで・・・・そろそろ帰らなきゃって、会計して・・・・・えーと、ここは?あの子がいるってことはまだ店内?)

あなたは周りを見渡す

「今日は私が鍵当番なので、朝まで休めますよ」

(やっぱりまだ店内なんだ)

あなたは目を閉じる

「まったく先輩も余計なことを言ってくれますね、もっともあなたには伝わっていなかったようですが・・・・いやこの場合は違いますね、ふふっ・・・・先輩も詰めが甘いですね『人間は忘れる生き物』だという言葉を忘れているですから、笑うしかありません」
ハンガーにスーツとネクタイを掛けながら新人ラミアが続ける
「私のことをあんなふうに言うなんてまったく失礼しちゃいますね」

(何を言っているんだ?)

こちらを向き、近づいてくる
「まあ当たってるんですけどね」

(・・・・・・?)


彼女の意味深な発言を理解しようとするが酔いで進まない
「それにしてもずいぶん飲まされ、いや飲まれましたね」
必死に考えるあなた

(人間は忘れる生き物・・・・・・・)










『かわいい花には毒がある』


「・・・・・・・・・っ!?、そいうことかっ」

あなたが全てを思い出し、状況を理解する
同時に全身に電気が走ったような衝撃を感じ酔いが吹き飛ぶ
目を見開くと刹那、目前に彼女の顔がくる
いつものような愛くるしい顔ではない
まるで―――――—







「いただきます」
17/03/04 22:00更新 / 明後日の女神
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■作者メッセージ
というわけでラミアさんの話でした
本当に久々の更新です。ラミアさんの話はずーっと温めていたのですが、なかかな進まなくて
ファラオ登場はいつになるのか・・・。

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