連載小説
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前編
「取り敢えず、何処に降りましょうかねぇ……」
月と星が輝く夜空を飛ぶ人影はポツリと呟く。
骨と皮だけと表現出来る程に痩せた身体、生気の抜けた不健康そのものな顔色。
手入れらしい手入れのされていないボサボサの短髪は顔色に反して綺麗な若草色だが、点々と斑のように色素が抜けて薄くなっている。
そんな病人じみた風貌の人影は草臥れた無地の深緑色のスーツを纏い、上着の下は所々に蝶が描かれた緑青のシャツ、その姿は何処からどう見てもチンピラヤクザ。
このチンピラヤクザの名は碧澤一心(ミドリザワ・イッシン)……ナリはアレだが青春真っ盛りの一七歳で、こんなナリでも彼は『勇者』なのである。
尤も、勇者の前に『元』が付くが。



結論から言えば、碧澤一心は異世界の住人である。
事の発端は一ヶ月と一七日前……家族との夕食の最中に、ファンタジーそのものといった異世界に一心は召喚され、現在彼が居る世界の情勢は平和とは言い難い。
この世界を創造した神・アザトースを唯一絶対の神と信仰する武装宗教組織『教団』。
アザトースと敵対する絶対悪・魔王を中心に人類を滅ぼそうとする『魔物』。
両勢力は日夜争っているが人間より身体能力等が高い魔物に教団は劣勢を強いられ、この劣勢を覆す為に一心は三人の義兄弟と共に召喚されたのだ。

だが、現実は違った……六〇年前の魔王の代替わりを機に、魔物は嘗ての名残を残しつつ見目麗しい美女へと姿を変え、同時に平和と人間を愛するようになった。
そして不殺を絶対戒律に同族は勿論、無闇に人間を傷付けるような事をしなくなった。
欲求に忠実な快楽主義者な点は玉に瑕だが、ソレを除けば平気で同族と殺し合う人間より遥かにマシな存在に魔物はなったのだ。
ソレを知らないのか、知っていても過去の怨恨から認めたくないのか、教団は魔物を悪と決め付け、『魔王、討つべし』を掲げて魔物に挑むのである。
つまり、教団は啖呵を切って魔物に喧嘩を売っては返り討ちに遭っているのだ。
結果、教団は自業自得で徐々に勢力を弱め、この世界は平和に向かって微速全身している。

一心が真実を知ったのは召喚から一ヶ月後、血よりも濃い情で繋がった義兄・赤尉紅蓮(セキジョウ・グレン)が真実を教えてくれたのだ。
真実を知った紅蓮は『力在る者は弱者を護る』という義父の教えに従って教団から離反、裏切り者である彼を教団は追っているが行方は未だ掴めていない。
義兄の裏切りから三日後―つまり、今現在―、一心は夜闇に紛れ、警備網の隙間を狙って脱走、その理由は勿論敬愛する義父の教えである。
『他者の正義を悪と断じる独善こそが最大の悪である』、魔物を悪と決め付け、己の正義を絶対と信じる教団に嫌気がさしたからだ。
教団も人間の集まりである以上は一枚岩ではないのは一心も分かっているが、彼を勇者に祭り上げようとしたネルカティエは独善の塊としか言えない。

ネルカティエは一五年前に陥落したレスカティエという宗教国家の奪還を当面の目標に、魔物の殲滅を目論む軍事都市である。
強固な防衛網、質・量共に最高クラスの軍備の前にレスカティエ奪還は失敗の連続。
何度も失敗した事に教団上層部はレスカティエの奪還を諦めたが、それでも諦めきれない一部の幹部が中心になってネルカティエを興したそうだ。
魔物は絶対悪、魔物は勝手に増えるゴミ、魔物は滅ぼすべき存在。
ネルカティエを束ねる王は勿論、前線で戦う兵士達も口を揃えて同じ事しか言わず、寧ろ彼等が口を開けばソレしか出てこない。

―戦争を仕掛けた側に正義が在るように、仕掛けられた側にも正義は在る
―仕掛けた側から見れば仕掛けられた側が悪であり、その逆もまた然り
―善悪は背中合わせ、どちらか片方しか持たない者は存在しない
―だから、『悪だけを殺す』なんて出来ないんだ

義父は一心にそう説き、幼い頃から何度も聞かされた言葉は彼の中に深く根付いている。
故に魔物を悪と決め付け、滅ぼそうとするネルカティエと一心は袂を別ったのだ。



「ふぅ、此処で一晩明かすとしますか」
ネルカティエと袂を別ち、夜闇に紛れて脱走した一心が降り立ったのは森の中。
風雨を凌げる場所さえあれば何処でも眠れる一心は保存食と換金用に『盗んだ』貴金属、着替え一式を包んだ風呂敷を提げた杖を肩に預けて夜の森を歩く。
「しっかし、樵の小屋もねぇってのは困りましたねぇ……」
この森がどの程度広いかは分からないが見渡す限り―当然と言えば当然だが―木々ばかり、夜目は利く方だが見える範囲では鬱蒼と並ぶ木々に一心は苦笑を浮かべる。
恐らく、樵の小屋も朽ちた木片の山と化している可能性が高い。
いざとなれば木の根元で寝よう、そう考えながら一心は一晩の宿を探して歩き続けた。

「……………………ぁ」
「…………?」
歩き続けている一心の耳にか細い声が届き、微かに聞こえた声に彼は立ち止まる。
「…………ぁ…………さい」
「向こう、からですね」
微かに聞こえる声に何処か切羽詰まったモノが感じられ、一心は何事かと思いながら声のする方向に向かって歩き出す。
ガサガサと草を掻き分けていくと、徐々に近づいてきているようで声が次第に大きくなる。
暫く歩き続けていくと、視界の端っこにサッカーボール程の大きさをしたパールピンクの何かが見えた。
パールピンクの何かはもぞもぞと動いており、何だと思って近付いた一心が見たのは
「あぁ! 見知らぬ殿方、助けてくださいまし!」
「……………………」
派手な兜を被り、目元に涙を浮かべた生首……一心に気付いた生首は助けを求め、助けを求める生首に一心は言葉を失った。

「ありがとうございます、お陰で助かりましたわ」
何故生首が転がっている―而も喋っている―のか分からないが放っておくのも気が引ける、一心が生首を拾い上げると生首は彼に礼を言う。
「首を刎ねられてもくっ付けりゃ治る人間を見た事はありますがね、喋る生首ってぇのは初めて見ましたよ」
「……私としては、くっ付ければ治る人間を見た事がある貴方の方が不思議ですわ」
脇に抱えた生首の案内に従いながら歩く一心の呟きに、生首が呆れたような声で返す。
首を刎ねられてもくっ付ければ治る人間というのは滅多に見ない、というか絶対に見ない。
「因みに、ソイツはアタシの義理の弟でして」
「貴方の弟は一体どんな身体をしていますの!?」

「そう言えば、自己紹介がまだでしたわ。私の名はヴェルディール・フォルチュセーヌ、魔王軍ダンウィッチ防衛隊に所属しています」
「おや、御丁寧にどうも、アタシは碧澤一心って言います」
自己紹介がまだだった事に気付いた生首は自分の名前を告げ、一心も自分の名前を生首、改めヴェルディールに告げる。
「ところで、ヴェルディールさん……オメェさん、何で首だけがこんな所に?」
「え、えぇ、ソレはですね……」
当然と言えば当然な一心の問いに、ヴェルディールは恥ずかしそうな笑みを浮かべながら答える。

曰く、ヴェルディールはデュラハンという武芸に長けた魔物の騎士、この森の近くにある親魔物派領・ダンウィッチに駐屯している魔王軍に属している。
代替わり以前は首無しの騎士だった名残でデュラハン達は首の着脱が可能だそうだが、元々首が無かった所為か彼女達の首は外れやすいそうだ。
ヴェルディールが警邏に出ようとした時、家の玄関に簡易転移魔法陣(ポータル)が仕掛けられており、ソレに気付いた彼女は直ぐに飛び退いた。
然し、首を固定する留め具の締め付けが甘かった所為で首が外れ、その為彼女の首だけが森に転移してしまったそうだ。

「全く、あの悪戯っ子には困ったものですわ」
玄関に転移魔法陣を仕掛けたのはヴェルディールの家の近所に住むインプという魔物で、悪戯好きな彼女にヴェルディールは手を焼いているそうだ。
唇を尖らせ、プンプンと怒るヴェルディール……今頃、首の外れたヴェルディールの身体がアタフタと慌てている様が思い浮かんだ一心は苦笑を浮かべる。
「碧澤さんは、どうして此処に?」
「えぇ、アタシは逃げている途中の脱走兵でして」
「脱走兵?」
聞かれるだろうと分かっていたからか、ヴェルディールの問いに一心はスラスラと答える。
自分は異世界から勇者としてネルカティエに召喚された事、ネルカティエの思想に嫌気が差して逃げ出した事、夜も更けて寝床を探していた途中だった事。
「……成程、そうでしたの」
一心が異世界の住人だった事には驚いたが、一心の話にヴェルディールは納得したようにもぞもぞと―どうやって動いているのかは不思議だが―動く。

「なら、今夜は私の家に泊まったらどうでしょう?」
「え、いいんですかい?」
「私の首を拾ってもらったお礼ですし、構いませんわ」
ヴェルディールの提案に一心は戸惑うが、首を拾ってもらった礼と言われれば断れない。
「へへっ、それじゃ今夜はお邪魔させてもらいます」
木の下で寝る事を覚悟していただけあって、柔らかなベッドの上で眠れるのはありがたい。
インプの悪戯に内心感謝しつつ、ヴェルディールの首を抱える一心は彼女の案内に従ってダンウィッチを目指して歩く。
「ところで、ダンウィッチは何方の方角でしょうか……」
「…………はい?」
が、転移で跳ばされた為、ヴェルディールが方角を見失っていたのは想定外だった。

×××

「ふぅ……」
何とかダンウィッチに到着した一心だが、到着したらしたでトラブルも多かった。
首を探して彷徨う身体を見つけるのに難儀し、身体を見つけたと思ったら見つけた場所はヴェルディールの家と正反対。
途中で出会ったヴェルディールの上司に事情を説明し、道行く住民に恋人かと冷やかされ―ヴェルディールは満更でもなかった―。
ヴェルディールの家に着いたと思ったら件の転移魔法陣が残っていた所為で、今度は一心が彼女の身体を見つけた場所に跳ばされ、何とかヴェルディールと合流。
再びヴェルディールの家に着いた―今度は踏まないように注意した―時、既に時刻は深夜。
そして、家主が先か客人が先かで風呂の順番の譲り合いが勃発、ジャンケンで決めた結果一心が先に風呂に入り、今はヴェルディールが風呂に浸かっている。

「〜〜♪ 〜♪ 〜〜♪」
「それにしても、中々品の良い家ですねぇ……」
ヴェルディールの鼻歌を聞きながら、失礼にならない程度に一心は周囲を見渡す。
見た目を重視した派手な鎧を着ていたヴェルディールだが、部屋の内装は見た目の派手さに反比例してシックで落ち着いた雰囲気だ。
本人曰く、親元を離れての一人暮らし中らしく、家具は必要最小限より少し多めといった数だが、家具の一つ一つが高級感を控えめに漂わせている。
「ふぅ、サッパリしましたわ」
「あぁ、ヴェルディールさん……アタシは何処で寝ぇ!?」
何時の間にか風呂から上がったらしいヴェルディールの声に反応して振り向いた一心は、彼女の格好に座っていたソファーからずり落ちそうになる。

「え、な、ちょっ!? ヴェ、ヴェヴェ、ヴェルディールさん!?」
「…………?」
アタフタと慌てふためく一心に不思議そうに首を傾げるヴェルディール。
まぁ、一心が動揺するのも無理はない……今のヴェルディールの格好はパンツ一丁、更に彼女はボンッ、キュッ、ボンッ、のナイスバディで特に最初のボンッが凄まじい。
実はヴェルディールはデュラハンではなくホルスタウロスなのではないか、そう思える程―尤も、一心はホルスタウロスを知らないが―の爆乳だ。
思春期男子悩殺モノのナイスバディに加え、ヴェルディールは元の世界では中々拝めない美人である事も一心の動揺に拍車を掛けている。
薄くピンクの混ざった金色の長髪は、出会った時は御嬢様らしさを感じさせる縦ロールに後ろ髪をお団子にした髪型だったが、風呂上り故か髪を下ろしている。
顔立ちも美女と言っても過言ではない程に整っており、肌に張り付いた髪が艶めかしい。
知り合ってから間もないヴェルディールの艶姿は、義姉以外の女性と交流の無い一心には刺激が強過ぎる。
因みに一心はボタン全開のシャツにトランクス、露出度はヴェルディールとドッコイだ。

「……と、ところでアタシは何処で寝ればいいんで?」
「案内しますわ」
何度か深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせた一心は改めて何処で寝ればいいのかを問い、彼の問いにヴェルディールは先導するように歩く事で答える。
艶めかしいナイスバディを極力見ないようにしながら一心はヴェルディールの後を追うが、
「……………………」
案内された部屋に言葉を失う……案内されたのは一通りの家具一式と可愛らしい小物類が置かれた部屋、どう考えてもヴェルディールの部屋である。
知り合って間もない男を部屋に案内するという行為に一心は眩暈を覚える。
一体、ヴェルディールは何を考えているのだろうか。

「…………すいません、アタシはソファーで」
「ふふっ♪」
コレは不味い、と本能で悟った一心は回れ右、最初に通された居間のソファーに向かって全速前進しようとするが、ヴェルディールに腕を掴まれて失敗に終わる。
「えいっ♪」
「のぁっ!?」
そして、一心はベッドに突き飛ばされ、ベッドの上に尻餅をついた彼をヴェルディールは獲物に飛び掛かる肉食獣宜しく押し倒す。
ベッドの上に仰向けで転がる一心に跨るヴェルディールの目は餓えた猛獣宜しくギラギラ輝いており、彼女の頬も真っ赤に染まっている。

「うふ、うふふふふふ♪
「ちょっ、ヴェルディールさん!? オメェさん、本気で目が危ねぇんむぅっ!?」
猛獣じみた目で見下ろし、壊れ物を扱うようにそっと顔を押さえるヴェルディールに不安を感じた一心が彼女を突き飛ばそうとした瞬間、彼の唇に柔らかいモノが触れる。
ソレがヴェルディールの唇だと気付いた一心は突然のキスに困惑し、困惑を隠せない彼の口内にヴェルディールの舌が入り込む。
「んっ、ぢゅるっ……んんっ、れるっ……」
「〜〜〜〜!?」
押し込み強盗宜しく一心の口内に侵入したヴェルディールの舌は物色するように舐め回し、口内を物色する彼女の舌に一心は目を白黒させる。
舐め回している内にヴェルディールの舌は奥で縮こまる家主……一心の舌を見つけ、家主を引っ張り出すようにヴェルディールは自分の舌と一心の舌を絡ませる。
濃厚なディープキスに一心は次第に抵抗力を失くし、抵抗する気力が徐々に失せていく事に気を良くしたヴェルディールは口内の蹂躙を続ける。

「ぷはっ……あぁ、碧澤さんの精、とても美味しいですわ……」
どのくらい口内の蹂躙を続けていたのだろう、流石に息苦しさを感じたヴェルディールは唇を離し、恍惚とした表情を浮かべる。
恍惚とするヴェルディールに対して一心は息を荒げ、呆然と彼女を見上げている。
「ふふっ……碧澤さんのココも、元気一杯ですね」
「そ、そりゃあ、お互い様ってやつでしょう……」
ヴェルディールのウットリとした視線の先にはトランクスを押し上げ、痛い程に勃起した一心の逸物。
ファーストキスが濃厚なディープキスだったのだ……見た目はアレだが一心も華の一〇代、思春期真っ盛りの男子には刺激が強い。
興奮しているのはヴェルディールも同じであり、彼女のパンツはまるで粗相をしたようにビショビショになっている。

「それでは、御対面……まぁ♪」
「……………………」
跨ったまま器用にトランクスをずり下ろしたヴェルディールはトランクスから解放された逸物に嬉しそうな声を上げ、一心は羞恥で顔を赤くする。
ギンギンに勃起した一心の逸物は少なくとも男性の平均を上回っており、城門を打ち破る破城鎚を思わせる迫力だ。
「お、大きい……お父様のも大きかったですけど、碧澤さんのはお父様以上ですわ……」
その大きさにヴェルディールは唾を飲む……コレからこの逸物が自分を貫くのだ、期待と緊張と情欲で胸が高鳴る。
「それでは……」
「ちょ、ちょいとお待ちくだせぇ」
最後の一線を越えようとするヴェルディールに、一心は快感で摩耗した理性を総動員して彼女を止める。

「碧澤さん……?」
「オメェさん、アタシなんかでいいんですかい? 自分で言うのもなんですがね、アタシは女受けの悪いブ男ですよ」
ネルカティエに居た時、病的なまでに痩せた体格と長身―最後に測った時は一九五センチだった―から『ナナフシ』と呼ばれていた一心。
『シッカリ食って、猫背を直せば女にモテるってのに勿体ねぇよなぁ、オメェ』
血よりも濃い情で繋がった義弟は言っていたが、ナナフシじみた痩躯と不健康そのものな顔色は女性受けが悪い事を一心は自覚している。
一〇人に問えば満場一致で美人と答える事間違い無しであるヴェルディール、ナナフシを思わせる病人じみた風貌の一心の組み合わせは何処からどう見ても不釣り合いだ。
「何でこんな事をしようとしたのかは分かりませんがね……それでも、もちっと自分を」
「そんな事、関係ありませんわ」
自分を大切にしろと言おうとした一心の言葉をヴェルディールは遮る。

「貴方は優しい殿方……見ず知らずの首だけだった私を助け、突然襲われたのにこうして私の身を案じてくれる。だから、私は碧澤さんが欲しい」
「ですが、ねぇ……」
「ふふっ、本当に優しいですのね」
欲しい、とハッキリ言っても躊躇う一心にヴェルディールは微笑むと、突然カポッと自分の首を外す。
すると、ただでさえ林檎の如く真っ赤だったヴェルディールの顔が更に赤くなり、彼女の目がトロンと蕩ける。
「私、貴方に一目惚れしましたのぉ❤」
「はぁ!?」
自分の首を抱えながらの告白に一心は目を見開いて驚く……絵面のインパクトもそうだが、ヴェルディールのような美人がブ男の自分に一目惚れするとはどういう事か。

「好き、好きぃ、大好きですのぉ❤ 私、貴方の事が大好きですのぉ❤」
「ちょ、ちょっと、ぬあぁっ!?」
自分の首をベッドの上に置き、好きだと連呼しながらヴェルディールは一心の逸物を掴み、掴んだ逸物を秘所に挿入する。
ブヅッ…と何かを裂いたような音の直後、逸物から理性を焼き切る程の快感が一心を襲い、快感に戸惑う彼を尻目にヴェルディールは彼の腹に手を置いて腰を上下させる。
「あぁ❤ 好きですの、愛していますのぉ❤ 私、碧澤さんが大好きですぅ❤」
ナナフシじみた痩躯に反した逞しい逸物が肉壁を擦る快感に喘ぎながらヴェルディールは愛を叫び、彼女が腰を動かす度に爆乳がブルン、ブルンと揺れる。
「うっ、くぁっ……」
滅多に拝めない爆乳がダイナミックに揺れる様に加え、肉同士がぶつかり合う音、淫らな水音、ヴェルディールの告白が一心の理性をゴリゴリと削り取る。
首の外れた美女が激しく腰を上下させる、という非現実的な光景も吹き飛ぶ快感に一心は暴発しないように堪えるので精一杯だ。

「愛しています、愛していますわぁ、碧澤さぁん❤」
「ぐっ、あっ……ちょっと、激し……」
視線を横に向ければ目元から溢れんばかりに涙を流し、口端からだらしなく涎を垂らし、快感でドロドロに蕩けたヴェルディールの首。
アヘ顔晒す生首というシュールな光景、逸物を襲う強烈な快感が無ければ夢幻の類いだと思っても不思議ではない。
「あぁ❤ 碧澤さんのオチ○ポ、私の中で大きくなってきましたぁ❤」
ヴェルディールの齎す快感は、つい先程まで童貞だった一心には強過ぎる。
胎内で膨れる逸物にヴェルディールは歓喜の声を漏らし、間近に迫った射精を促すように彼女は更に激しく腰を上下させる。
激しい上下運動に加え、逸物を甘く締め付ける肉壁に一心は急速に追い詰められ、コツ、コツ、と最奥を叩かれる感覚はヴェルディールも絶頂へ追い詰める。

「わ、私、イっちゃいますぅ❤ 碧澤さんのオチ○ポでイっちゃいますのぉ❤ あ、あぁ、あああ――――――❤」
「がぁっ……」
一心の逸物を深く飲み込み、最奥を叩かれた衝撃でヴェルディールは絶頂を迎える。
絶頂で逸物をキツく締め付ける肉壁に一心も限界を迎え、呻きと共にヴェルディールの中に精液を勢いよく吐き出す。
「ふあぁ……碧澤さんのが、私の中に一杯ぃ……」
中にタップリ出された精液の熱さと絶頂の余韻でブルブルと身体を震わせ、脇に置かれた首はウットリとした表情を浮かべる。
恍惚とした表情浮かべるヴェルディールに一心の中の何かがブツリ…と切れ、黒い感情がムクムクと鎌首を擡げる。
「はぁ……ひゃあっ!?」
湧き上がる黒い感情のままに一心は魔力を体内に巡らせ、自分を中心に極小規模の竜巻を起こすと、絶頂の余韻で脱力していたヴェルディールは突然の竜巻で体勢を崩す。
「よくもヤってくれましたねぇ……」
体勢を崩した瞬間に巧みに上下を入れ替え、後背位の体勢を取った一心は枕元に転がったヴェルディールの首にニヤリと黒い感情が露になった笑みを向ける。

「何がどうしてこうなったのか知りませんがねぇ、アタシもヤられっぱなしってのは性に合わないんですよ」
「あ、あの……碧澤、さん……?」
一心の笑みにヴェルディールは冷や汗を流し、恐怖と期待が半々の乾いた笑みを浮かべる。
「そう言う訳で仕返しさせてもらいます、よっ!」
「んひぃっ!?」
ゆっくりと腰を引いた直後、一心は勢いよく腰を奥に向かって突き出し、勢いよく最奥を叩かれたヴェルディールは甲高い声を上げる。
「こちとら、華の一〇代、なんで、ねぇっ!」
「んっ、あぁっ❤ 碧澤さん、いきなり、激しいぃ❤」
荒れ狂う獣性のままにより深く、より強く、一心は何度も叩き付けるように腰を往復させ、一突き毎にヴェルディールは甘く艶やかな嬌声を上げる。
つい先程まで童貞だった一心の動きに技術は無く、ただ単純に腰を往復させるだけだが、若さに任せた勢いで足りない技術を補っている。
元々、魔物は愛する人間から与えられる快感には敏感だ……勢い任せの荒々しい動きでも充分過ぎる快感で、獣の如き荒々しい性交は確実にヴェルディールに快感を与えている。

「あひぃっ❤」
腰を動かしながら一心は腰を掴んでいた手を離し、離した右手でヴェルディールの爆乳を掴むと、乱暴に彼女の乳房を揉み始める。
瑞々しい弾力を楽しみながら一心は指の腹で撫でたり、指で乳首を摘まんだりと文字通り手探りでヴェルディールの爆乳を味わう。
「オッパイ、揉みながらなんてぇ❤ 碧澤さんの、エッチィ❤」
胸と秘所の同時攻撃にヴェルディールは嬌声を漏らし、乳房への愛撫にお返しするように彼女の秘所が一心の逸物をキュッ、キュッと甘く締め付ける。
勢い任せの動きと秘所の締め付けに限界を感じ始めた一心は歯を食い縛るが、魔物の魔性の身体の前では砂上の楼閣に等しい。
「また、碧澤さんのオチ○ポ、大きくなって、きましたぁ❤ 私の中に、出してください、私も、イきますからぁ❤」
二度目の射精の予兆を感じたヴェルディールはギュッと締め付けを強める。
その締め付けに一心は堪らず射精し、再び吐き出された最上級の御馳走にヴェルディールは絶頂で身体を震わせる。

「ひあぁぁ❤ 出したまま、んっ、動かないで、くださいましぃ❤」
だが、吐き出された精液を掻き出すように一心は腰を動かし続ける……自分のモノだ、と教えるように精液を垂れ流しながら、一心は我武者羅に腰を動かし続ける。
どうして精液が延々と吐き出されるのか、を疑問に思う理性は既に一心から消えており、今の彼は荒れ狂う獣性に支配された一匹の獣に過ぎない。
吐き出され続ける精液の熱と肉壁を抉られる感覚にヴェルディールは涙を浮かべ、二度目の絶頂から直ぐに三度目の絶頂を迎えるが、絶頂を迎えても一心は腰を動かし続ける。
「らめ、だめれすぅ❤ わらくひ、おかひくなっひゃいまひゅぅ❤」
快感に対して過敏になった身体は一突き毎に軽い絶頂を迎え、積み重なった後に大きな波となってヴェルディールを襲う。
絶頂の連続はヴェルディールを焼き焦がし、許容量過多の快感に呂律が回らなくなる。
何度も交わりを繰り返す一心とヴェルディールは既に性欲に溺れた獣と化し、獣と化した二人の性交はまだまだ終わりを見せない。



「…………一体、何回出したらこうなるんすかねぇ」
一心が我に返った時、ヴェルディールはドロッドロに蕩けた顔でだらしなく涎を垂らし、白目を剥いて気絶していた。
そして、ヴェルディールの腹は妊婦のように精液で膨れており、入りきらなかった精液が破瓜の血と混じって秘所から溢れていた。

×××

「「……………………」」
ヴェルディールの首をくっ付けた後、眠りに就いた一心……目を覚ました時、既に太陽が西に沈みかけていた。
そして、一心の横にはシーツで胸を隠し、気絶する前の情事を思い出して顔を完熟トマト宜しく真っ赤に染めたヴェルディール。
気まずい、非常に気まずい。
気まずい沈黙が二人の間に流れ、二人は気まずそうに視線を泳がせる。
「あのですね……」
「あの……」
「「……………………」」
二人は同時に口を開き、ハモった所為で二人の間に再び沈黙が流れる。

「えっと、ヴェルディールさん。あの、ですねぇ……」
「ヴェル、でいいですわ。私も一心さん、と呼ばせてもらいますから」
「は、はぁ……そ、それでですね、昨夜のアレは一体……?」
気まずさを感じながら一心は昨夜のアレについて尋ね、聞かれる事が分かっていたらしいヴェルディールは羞恥心で俯きながら答える。
曰く、デュラハンの首は『蓋』。
精を蓄えた胴体を首で蓋をする事に因って魔力の自然放出を抑えている為、必要最低限の精で長時間活動出来ると同時に他の魔物と比べて理知的に振る舞う事が出来る。
然し、首が外れると精と同時に文字通り胸中に秘めていた感情や本音等が漏れてしまい、その為、首の有無でデュラハンは性格がガラリと変わるそうだ。
尤も、ヴェルディールは両親の教育の甲斐あってか、首が外れても外れる前と然程性格が変わらないそうだが。

「そ、それでですね、一心さんは昨夜のアレでインキュバス化していますの」
「インキュバス? 何ですか、ソレは?」
「インキュバスというのは、その……」
聞き慣れない単語に首を傾げる一心にヴェルディールは答える。
インキュバスとは魔物の魔力の影響で性欲旺盛な魔物との性生活に適応・変質した人間で、身体能力が強化された上に絶倫になるそうだ。
本来、インキュバス化を促す効果のある魔力を持つサキュバス種は兎も角、デュラハンのヴェルディールではインキュバス化には時間が掛かる。
然し、首が外れて精がダダ漏れ状態なら話は別で、首の外れたデュラハンとの性交は底が抜けたバケツに水を注ぐ―つまり、無駄―ような行為。
その為、短期間で相当数交わった結果、性交の途中で一心はインキュバス化したそうだ。

「成程、ねぇ……」
その説明に納得するように呟く一心、昨夜の精液垂れ流しはインキュバス化の影響らしい。
「昨夜の一心さん、凄く野性的でしたわ……」
「そいつぁ言わねぇでくだせぇ」
ポッと赤く染まった頬に両手を当て、ウットリとした表情を浮かべるヴェルディール。
然し、昨夜の情事は一心にとって黒歴史、自分にあんなケダモノじみた一面があった事を再認させられるのは勘弁してほしかった。



「一心さんはコレからどうするおつもりですの?」
昨夜の汗を流すべくヴェルディールの強い押しもあって一緒に風呂に入った後、普段着に着替えたヴェルディールはコレからの事を一心に問う。
無論、風呂場でもナイスバディの誘惑に負けて五回もヤってしまったのは言うまでもない。
「取り敢えず、アーカムに向かう予定です」
一心の目的地は魔王の居住地であるアーカム、アーカムに向かうのは先日離反した義兄の紅蓮の目的地だからだ。
紅蓮の離反の切欠はネルカティエ近隣の小さな魔物の集落・セイレムへの焼き討ち。
セイレムで知り合った魔物を護る為に紅蓮は反旗を翻し、去り際にセイレムの長の知人がアーカムに居ると彼は一心に伝えた。
一心がアーカムに向かうのは、目的地が同じなら先に離反した紅蓮と自然に合流出来ると判断したからだ。

「アーカム、ですか……よろしければ、私も御一緒させてもらえませんか?」
「一緒に? 別にアタシは構いませんがね、此方の仕事はどうするおつもりで?」
アーカムに向かう事を告げるとヴェルディールは同行したいと言い、その申し出に一心は難色を示す。
一心も言ったように別に同行自体は構わないがヴェルディールはダンウィッチ防衛部隊の一員、職場から勝手に離れるのは問題がある。
「あぁ、ソレなら休暇届を出せば問題ありませんわ」
一心の問いにヴェルディールは休暇届を出すから大丈夫だと答える。
仕事に真面目で忠実なデュラハンであるヴェルディールは何かとサボる同僚達に代わって仕事に励んでおり、サボった同僚の穴を埋めるべく休日返上で出る事も多い。
実際、昨日も仕事そっちのけで交わりに耽っていた同僚の代わりに警邏に出たそうだ。
その為、職場からの信頼は厚く、休暇届を申請すればスンナリ受理されるだろう、との事。

「それに、私……もう一心さんから離れられませんから(ポッ)」
「はい?」
両手を頬に当て、顔を仄かに赤くするヴェルディールの一言に一心は首を傾げる。
自分から離れられない、とは一体どういう事だろうか。
「私達魔物は気に入った殿方と一度交わると、その殿方から離れられなくなりますわ」
曰く、一人の男性を強く気に入り、その男性を伴侶として迎えた魔物は伴侶以外の男性を『雄』として認識しなくなる。
伴侶にしたいと思う男性を見つけるまで性交を『食事』と割り切っている魔物は別だが、伴侶以外の男性から得た精は青汁以上の相当不味い代物らしい。
ヴェルディールで例えれば、本人曰く一目惚れした一心の精以外彼女は既に受け付けない身体になっているのだ。
「……………………」
取り返しのつかない事をしてしまった、と一心は眩暈を覚える……仕方なかったとはいえ、自分の行動がヴェルディールの未来を決めてしまったからだ。

「はぁ、分かりましたよ……」
ヴェルディールが一心専用の『女』になってしまった以上、既に選択肢は一つしかない。
現役軍人且つ武芸に優れたデュラハンである事を差し引いてもヴェルディールはかなりの強者だと一心は踏んでおり、そんな彼女の同行は頼もしい。
そもそも、一線を越えてしまった女性を捨てるという真似は一心には無理である。
「コレからよろしくお願いしますよ、ヴェル」
「えぇ、こちらこそ」

×××

「もう少しでレスカティエに到着しますわ」
「いや、地味に遠い道程でしたねぇ」
ヴェルディールを連れてアーカムに向かう一心……ヴェルディールの実家に居た首無しの馬に乗る二人の視線の先には、見るからに堅牢な城壁。
時間帯的には昼間だと言うのに二人の周囲は薄暗く、何処か禍々しさを感じさせる草木が生い茂っている。
二人が目指しているのはネルカティエが奪還に躍起になっているレスカティエ、寄り道に思えるがレスカティエを目指しているのには理由はある。

『先ずはレスカティエに向かいましょう』
盗んだ貴金属類を換金し、防衛部隊の詰所に寄って休暇を申請した後、旅に必要な物資を買い集めている途中でヴェルディールはレスカティエに向かおうと言った。
無論、その理由を一心は尋ねると、レスカティエに向かった方が最短ルートになるとの事。
現在、親魔物派領同士の往来を楽にする為、各領土に転移魔法陣を設置する計画が魔王軍内部で進められている。
然し、教団からの攻撃を受けた際に迅速に援軍を送る為に交易の要地や希少資源の産地、防衛の最前線等、重要度の高い領土へ優先的に設置されているのが現状。
将来的には全親魔物派領に設置される予定だが、予算等の都合で計画の進みは遅いらしい。

転移魔法陣設置計画の一環で魔王の居住地であるアーカム、魔王の娘であり第四王女たるデルエラが実質的に治めるレスカティエは転移魔法陣で繋がっている。
無論、アーカムかレスカティエのどちらかが教団の攻撃を受けた時、もう片方から援軍を送る為の軍人専用の転移魔法陣だが。
そして、ヴェルディールは田舎の駐屯部隊所属とはいえ魔王軍の一員で、煩雑な手続きが必要になるが転移魔法陣を利用する権利がある。
ダンウィッチからアーカムへの道程は徒歩だと最短で二ヶ月は掛かるが、レスカティエの転移魔法陣を使えば半分程に短縮出来るそうだ。
その為、二人は旅支度を整えた後、レスカティエに向かって出発したのだ。

「あら……?」
「おや……?」
間近に迫った目的地を前に馬を走らせる二人の視線の先には閉ざされた城門、その前では人魔混合の団体が足止めされていた。
その様子に首を傾げながら二人は閉ざされた城門に近付くと、頭一個分飛び出した禿頭がピカピカと陽光を反射している。
「おやおや、追いつちまいましたか。はっ!」
「一心さん!?」
灯台宜しく輝く禿頭に一心は見覚えがある、というより忘れようがない……懐かしい禿頭を前に一心は馬を走らせ、突然走り出した彼をヴェルディールは慌てて追う。
「紅蓮!」
「……む?」
団体に近付いた一心は禿頭に声を掛けると、彼の声に反応した禿頭が振り向く。
「お、おぉ!? 一心ではないか! いや、彼是一ヶ月と数日振りよのぉ!」
振り向いた禿頭は一心の姿を見ると、驚きと喜びの混ざった表情で彼を迎える……そう、この威圧感溢れる大男こそ一心の義兄・赤尉紅蓮である。

「それにしても、よく小生が分かったな」
「いやいや、ピカピカと頭を光らせてりゃ誰でも分かりますって。へぇっへへへ」
「小生、毎日欠かさず乾布摩擦で磨いておるからのぉ! ぬぁっはっはっはっ!
よく分かったなと言う紅蓮に一心はその禿頭で分かったと返すと、返ってきた言葉に紅蓮は豪快に笑う。
豪快に笑う紅蓮を近くで見てみれば、真紅の神父服に包まれた熊の如き逞しい巨体、顔の左半分には炎を模った刺青、首には般若心経の書かれた深紅の帯と赤い数珠。
目が痛くなる程に赤で統一された風貌は、刺青もあって威圧感が半端ではない。
「ねぇ、紅蓮? この人、紅蓮の友達なの?」
再会を喜ぶ一心と紅蓮だが、その横では二人の関係を知らぬ魔物が首を傾げている。

「おぉ、済まぬ済まぬ。佐久夜(サクヤ)殿、彼奴が以前小生の話した義弟、碧澤一心よ」
「へぇ、この人が紅蓮の弟さんなんだぁ」
横に立つ魔物―佐久夜、と紅蓮は呼んでいた―の問いに紅蓮は一心を紹介し、一心の名前は知っていたらしい佐久夜はジロジロと一心を見つめる。
「お嬢さん、初対面の人間をジロジロ見る前にする事があると思うんですがねぇ」
「あっ、ゴメンね。ボクは木花(コノハナ)佐久夜、紅蓮の恋人だよ」
一心の注意に舌を出して佐久夜は自己紹介し、紅蓮の恋人という発言に一心は驚いた目で紅蓮を見る。
「うむ、佐久夜殿は小生のコレぞ……小生がまだネルカティエに居た時、ペロペロと蜜を舐めておったのは覚えておろう? その蜜をくれたのが佐久夜殿なのだ」
一心の視線に紅蓮は照れたような笑みを浮かべながら頬を掻き、小指を立てる。

「へぇ……」
照れる紅蓮を尻目に一心は佐久夜を観察する、先程ジロジロと見られたお返しも兼ねてだ。
膝から下は琥珀色の蜜の溜まった巨大な花に浸し、その花の花弁は桜草に近い。
幼さを感じさせるが魔物らしく綺麗に整った顔、左右に短いツインテールを作った薄紅色の短髪には巨大な花と同じ花弁を持った花を簪宜しく挿している。
淡い緑色の肌をした身体を包むのはタンクトップとパレオ、ヴェルディールには負けるがそれなりに大きい巨乳がタンクトップを押し上げている。
タンクトップの胸元にはデフォルメされた紅蓮の顔が描かれており、その下には『I LOVE GUREN』と書かれて―よく見ればLOVEのOがハートマークだ―いる。
「突然走り出したから驚きましたわ……って、一心さん? この方々は誰ですの?」
紅蓮の彼女はどんな魔物なのか、を考えていると漸く追いついたヴェルディールが紅蓮と佐久夜の事を尋ねてくる。
「おっと……ヴェル、男の方は以前アタシが話した義理の兄貴ですよ。魔物の方は紅蓮の彼女だそうで」
「あら、そうでしたの。私、ヴェルディール・フォルチュセーヌと言います」
「おぉ、御丁寧にどうも。小生は赤尉紅蓮、コッチは小生の彼女の」
「木花佐久夜、だよ。よろしくね、ヴェルディールさん」
馬から降りたヴェルディールに一心は二人を紹介し、初対面の三人は自己紹介を交わす。

「それで? 隣の御婦人といい、お主が此処に居る事といい、色々と聞きたいのだが」
「そいつぁ、アタシも同じですよ。折角ですんで、此処で情報交換といきましょうや」
軽く自己紹介を済ませた後、再会するまでに何があったのかを四人は話し合う。
紅蓮がレスカティエに居るのは疲れを取る為……セイレムから碌な準備も無しに強行軍で進み続けた結果、セイレムの住人の疲労はピークに達しつつあった。
このままでは不味い、と思った紅蓮達は丁度進路上にあったレスカティエで強行軍の疲れを取ろうと訪れたそうだが、何故か城門は固く閉ざされていた。
今、セイレムの長のサキュバス・キザイアがレスカティエの代表に城門が閉ざされている理由を聞きに行っているそうだ。

「成程、のぉ……」
「まぁ、此処で合流するとは思って」
「紅蓮、ちょっといいかしら」
情報交換を終えた直後、背後からの声に紅蓮が振り返ると其処には一人のサキュバス。
紅蓮の事を名前で呼んでいる以上、紅蓮とは親しい仲なのだろう。
「おぉ、キザイア殿。話は聞けたのか?」
「まぁ、ね……ところで、ソッチの二人は?」
「うむ、小生の義弟とその嫁殿よ」
近付いてきたサキュバス―どうやら、彼女がセイレムの長らしい―に紅蓮は二人を紹介し、『嫁』の単語にヴェルディールは頬を仄かに染め、一心は照れたような苦笑を浮かべる。
照れるヴェルディールにキザイアは内心羨ましいと思ったが、ソレを顔に出さずに彼女はデルエラから聞いた話を四人に話す。

「結論から言うと、私達間が悪かったみたい」
デルエラ曰く、レスカティエは戦争の準備中、ネルカティエを中心とした教団の大部隊が奪還の為に動いているらしい。
以前は手持ちの戦力で撃退出来たそうだが、今回は教団の新兵器―軍事機密、という事で教えてもらえなかったが―が投入されるという情報がある。
その為、万一に備えて住民を近隣の親魔物派領に避難させている最中で、軍人及び関係者以外は立ち入り禁止らしい。
「レスカティエの奪還、ですか? 全く、教団の方々も懲りませんのね」
「「……………………」」
キザイアの話にヴェルディールは呆れた溜息を吐くが、教団の新兵器という単語に一心は眉間に皺を寄せる。

教団の新兵器、で一心の脳内に思い浮かぶのはネルカティエに残してきた義弟二人。
諜報に暗殺、破壊工作といった汚れ仕事が得意な義弟がネルカティエに残っている以上、こうしている間にも何かしら仕込んでいる可能性が高い。
二人の性格からして出てくるとは思えないが、仮に出てきたとしたら厄介なのは確実だ。
険しい表情を浮かべて無言なのは紅蓮も同じ……同じなのだが、紅蓮の心配はセイレムを襲った『アレ』が出てくるのか、という事。
あんな代物、如何に魔物が強かろうと太刀打ち出来る存在ではない事を紅蓮は知っており、仮に現れたら自分が何とかするしかない。
然し、『アレ』が大量に現れたら、一対多数戦闘を得意とする自分でも流石に厳しい。

「中に入れないって事は……ボク達、このままアーカムに行くの?」
一心と紅蓮の懸念を他所に、佐久夜は不安を滲ませた表情を浮かべる……まぁ、佐久夜の不安も尤も、強行軍の疲れを残したままアーカムに行くのは魔物でもキツい。
「あぁ、ソレなら大丈夫よ。一日だけだけどデルエラ様が宿屋を用意してくれたわ、而もワーシープウール製の寝具が備えられた高級宿♪」
「えっ、本当!?」
佐久夜の不安にキザイアは笑顔―この非常事態に呑気な事だが―で心配無用と答え、その答えに佐久夜も目を輝かせる。
無論、五人の周囲に居たセイレムの住民達も嬉しそうな顔を浮かべている。
(ヴェル、ワーシープウールってなぁ何です? まぁ、何かの毛ってのは分かりますがね)
(ワーシープという魔物から採れる毛ですわ。どんなに疲れていてもグッスリ眠れる上に一晩で疲れが取れますから、寝具の材料として重宝されていますの)
素朴な疑問で喜びに水を差すのに気が引けたのか……小さい声で一心はヴェルディールに尋ね、返ってきた答えに納得するように頷く。

《……一心》
《けへっ、分かっています》
すると、痺れるような感覚と共に一心の頭の中に紅蓮の声が響き、脳内に響く声に一心は分かっていると返す。
脳内に響く声はテレパシー……思念で会話をする為盗聴の心配は無用で、短時間で膨大なやり取り―テレパシーでの会話一〇分=現実の一秒だ―が可能という便利な代物だ。
尤も、半径一キロメートル以内に相手がいないと繋がらないのだが。
《やるんですね?》
《然り、戦を傍観するのは性に合わん》
《開戦までどうします?》
《上手く隠れるしかあるまい》
《調べが甘い事を祈りましょうや》
《まぁ、逃げろと言われても無視するがな》

×××

「ヴェル、準備は?」
「私は問題ありませんわ」
一心とヴェルディールはレスカティエの東側、宿屋街の路地裏に潜んでいた。
無論、ネルカティエ率いる教団の大部隊と戦う為だ……三日前、用意された部屋で一心は教団と交戦する事をヴェルディールに告げ、彼の戦意に彼女は首を縦に振った。
避難し損ねた者が居ないか確認に来た軍人を屋根裏部屋に隠れてやり過ごし、確認に来た軍人が去ってから二人は人気の少ない路地へと飛び出し、現在に至る。
ピリピリと肌を刺すような空気が二人を包み、意識の網を広げれば周囲から剣呑な気配がヒシヒシと伝わり、空気と気配に二人は自然と身体を強張らせる。

「赤尉さんは大丈夫でしょうか……」
一心の手には使い込まれた結果艶を失った一本の杖、ヴェルディールの手には穂先の脇に蝙蝠の羽根を思わせる二枚の刃が付いた長柄の槍。
愛用の得物を手に気配を殺し、小さな声で呟くヴェルディール。
その声には心配が混ざっているがソレも当然だろう……二人と同じく、教団と交戦する事を選んだ紅蓮は見た限り丸腰だったからだ。
今頃、気配を殺しつつレスカティエの北側に向かっているのだろうが、コレから戦うのに丸腰というのは大問題である。
「アイツなら心配要りませんよ」
ヴェルディールの当然と言えば当然な心配に、一心は僅かに口端を釣り上げる。

「紅蓮は『歩く要塞』ですんで」
「歩く要塞、ですか? ソレは一体」
「しっ、連中が来ますよ」
その発言に首を傾げるヴェルディールが意味を問おうとした瞬間、一心は唇に人差し指を当てて黙らせ、その仕草に彼女は耳を澄ませる。
―ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ……
ヴェルディールの耳に届くは金属同士が擦れる音、この音には聞き覚えがある。
なにせ、この音は自分も出す事が多い―――そう、『鎧を着た人間が歩いている』音だ。
「先に行きます。アタシが合図したら出てきてくだせぇ」
「分かりましたわ」
足音に混ざる明らかな敵意、戦争の開幕を告げる音に一心は路地裏から飛び出す。

「なっ!?」
「き、貴様、碧澤一心!? 何故、貴様が此処に!?」
飛び出した一心の視界に入るのは予想外の人物の出現に戸惑う教団兵。
その数は三、四人程、この程度の数なら一瞬で終わらせられる。
「何故、と問いますか」
戸惑いながらも抜刀する教団兵達だが、彼等の抜刀は既に無意味な行為。
杖を構えた一心は滑らせるように『杖の中身』を抜き、『杖の中身』を振るいながら教団兵の隙間を縫うように駆け抜ける。
一心の動きは宛ら一陣の風、瞬く間に教団兵の間を駆け抜けると時間が止まったかの如く彼等の動きが止まる。

「コレがアタシの答えですよ。へ、へへっ、へぇへへへへへへへ!」
一心の手が握るのは刀。
そう、一心の杖は中に刀を仕込んだ仕込み杖……卑屈さを感じさせる笑い声を上げながら一心が納刀した瞬間、教団兵達の身体が斜めにずれる。
そして、ベシャリ…と音を立てて上半身が落ち、切断面から噴水のように鮮血が噴き出る。
コレが一心の答え、コレが彼の反逆の狼煙。
14/01/20 15:14更新 / 斬魔大聖
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