読切小説
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ケンカの後に…
 狩の成果を背負い、愛剣を片手に歩いていた。
 空は、オレンジからピンクへと変わっていく。
 実にきれいな光景。西の空には、巣へと帰るのであろう鳥たちが群れをなして飛んでいく。
 彼らは、きっとこれから夫婦の時間なのだ。夫婦の時間…思わず口が緩む。

 目の端に揺れるのは、あいつから貰った角飾り。これを目にするたびにあいつの顔が目に浮かぶ。
 あいつとわたしが夫婦となって、1ヶ月くらいになるのだろうか?旅の途中で道に迷っていたところをわたしが助けたのだ。
 助けた礼に、あいつはわたしの夫になった。お披露目の舞台上で喜びに沸きながらこの男はわたしのモノだと他の者たちに見せびらかしていると、あいつも涙を流してうれしそうに腰を振るっていたのが今にも思い出される。
 さて…わたしも早く帰ろう…。

 丸まった背中をしゃんと伸ばして歩こうとすると…背骨が、ポキッと鳴った。
 さて、今日も疲れたものだ。狩の成果もまぁまぁだったし。
 肩に手を当ててみると、ずいぶんと凝っているのがわかる。
 こんなに疲れたのだ、今日のあいつは一体どんな手でわたしの疲れを癒そうとするのだろうか?
 そう思うと自然に足取りが軽くなる。

 家の前に着くと、なにかこう…いい匂いが漂っていた。
 煙突からは、肉の焼けるいい匂いが…
 あいつは肉を熟成させるのがうまいからな…つい、涎が出てきてしまう。

「今帰った!」
「あ、おかえりー」

 奥の部屋から、足音をたてないようにすっと我が夫は出てきた。

「おかえり。今日もお疲れ様」

 挨拶はすれども、立ち尽くしたまま何もしようとはしない。
 わたしは、剣と獲物を置きながら不満顔で言った。

「…お迎えのキスはどうした?」
「え?いやぁ…その…」

 なんだかまごついている。いつもならばすぐにでもキスをしてくるというのに…どうしたというのだ?

「それが疲れて帰ってきた妻への仕打ちか!」
「違うよ!今、肉の仕込み具合を見てたから、口の中が…」
「…そんなことを気にしていたのか。構わん!いつもしているであろう?…お出迎えはお帰りなさいのチュゥだと」
「……」

 チュッ♥

「んふぅん…♪」

 一瞬、恥ずかしそうに困った顔などしおって!まったく世話の焼ける男だ。口の中のことなど細かいことに気にしおってからに。
 うむ、確かに肉の味がする。どうやら、今日のめしは大層うまい具合になっていそうだ。
 けれど、それ以上に…この病み付きになる精の味。今朝、味わってからどのくらいになるか…待ち遠しかったのだぞ?
 それなのに…もっともっと味わいたいのに、すぐにやめようとするのだ。まったく夫は、いつまでたってもわたしの心を読むことはできんのか?
 許さないと言葉にするよりも早く、抱きかかえる腕の力を強くする。
 舌先で遊ぶように舐めあっていたが、吸い込むように夫の舌をわたしの中へと招待してやる。

「ちゅ…ちゅぅ…ん…んん…んっ…」

 ふふふふ♪ 吸い込みながら舌を絡みつかせてやると、この男はたちまちうれしそうにキスをしてくるのだ。
 わたし達は夢中になってキスをしていたが…
 もっとキスを楽しもうと顔を抱きかかえるように手を回そうとしたら、我が夫は鼻をひくつかせるや我に返ったように口を離そうとしおった。

「なに…して…んっ…る?…ちゅ…わたしは…ちゅっ…こんなっ…ちゅ…キスで…んん…はっ…満足…できんぞ?」
「んっ…はっ!…焦げてるっ!の!…んちゅっ!…焦げちゃう…あっ…んんんーーーちゅっ…」

 なんだ。肉が焦げてしまうからか…そんなモノ放っておけ!少し焦げたからといって大げさにするものではあるまい。
 だが、それでもわたしに抱きつかれながらも暴れるように体をくねらせる夫…
 はぁ…まったく…疲れているのだがな…困った夫だ。仕方がないと離してやる。

 ダダダダッ!

さっきは音をたてないように歩いてきたが…すごい勢いで台所へと走る夫。

「あーーーーーーー!!」

 絶望と諦めにも似た声が聞こえてきた。
 そちらに行くと、台所で焼いていた肉を皿にのせている夫が見えた…
 口をあんなにあんぐりとあけて…まったくだらしの無い奴だ。

「どうした?肉など少しこげたほうがうまいではないか」
「……少しのこげ?」

 恨めしそうにこちらを振り返ったその手元には…真っ黒な塊が…

「……」

 …あー…真っ黒こげだな。

「…っ…くっ…」
「え?」
「うっ…く…せっかく…折角いい具合になっていたお肉だったから、一番おいしい状態で食べてもらおうと思ったのに!」

 瞳に涙を溜めてそういう夫…すこしやりすぎたのだろうか?
 それを見たわたしは、心の中がざわざわした。
 …そう!この男の泣き顔は…よいものなのだ。なにか…こう、そそられるものがあるのだ!
 初めての舞台上での時もそうだったが…この泣き顔を見ていると…グッとくるのだ!

「あーー…そのな。焦げててもうまいものはうまいだろ?おまえの作った料理だしな」

 取り繕ったような世辞を言ったが…そんなものでは満足しなかったようだった。

「誤魔化してもダメ!最高のものを食べてもらおうと思っているのに“おまえの作った料理ならなんでもうまい”とかそんな言い草で誤魔化されません!クッソッ!なんだよこれ!これじゃぁ俺が満足できないよ!最初っから作り直す!」

 涙に濡れたまま散らかっている器具を手に取ると、また作り直そうと片付け始めた。

「おいおい。今から作り直すというのか?それじゃ、いつまで待てというんだ?」
「二時間!手間隙かけて台無しにされたこの料理!君にはできるまでお預け!」
「では、それまでおまえはわたしを癒してくれるんだろうな?まさか、放っておくつもりではないんだろう?」
「はぁ?何言っているのこの人。なにもしないで満足いく肉が焼けるわけ無いじゃないか。仕込みをしなきゃなんないんだよ?ただ単に肉を火にくべているだけなら誰だってできるじゃないか」
「なんだとう?疲れて帰ってきた妻を放っておくだと?!夫の務めがなってないぞ!」
「その仕事の成果を台無しにしたのはどこの誰!君の笑顔が見たくて手の込んだ料理をしていたのに…」

 わからない奴だ。なんでわからない!なんでわかってくれないんだ!!
 わたしは、はやくお前と飯を食べてこの身体と心を蝕む疲れを一掃したいというのに…。おまえもそれを楽しみにしているというのではないのか?

「肉は焼くだけでいいのだ!おまえは、手の込んだ食事よりもわたしを癒すことこそが使命なのだ!さぁ!とっとと飯だ!それとも、癒しだ!持てる限りの愛でわたしの労を労うのだ!」

 わたしの言葉が気にいらなかったのか、目に涙を湛えて絞り出すような声をいっぱいに上げて叫んだ。

「…このっ!分からず屋ーーーーー!!

 叫びながら、外へと飛び出そうとする。横をすり抜けようとしたその足に、尾を絡みつかせるとたちまち転んだ。

「どこに行こうというのだ?そっちは外ではないか。これから、夕食だろう?まさか…出て行こうとしたのではないだろうな!」

 尾でずるずるとこちらに引き寄せたその顔は、もう涙でくしゃくしゃに濡れていた。

「…おいしい料理を、“あーん”って食べあいっこしようといろいろ手の込んだもの作っていたのに台無しにされて、落ち込んでいるのに労を労え?全力で愛せ?…そんなこと…そんな……できるわけないじゃないかっ!わかってくれないならもういいよ!…実家に帰らせていただきます!」

 そういうと、尾を振り解き今度は寝室へと駆けていく。
 実家?あいつの居場所はここしかないはず…。
 寝室に逃げ込んだのか?

 ふっ…可愛い奴め。
 布団に潜って涙を見せまいとしているのだろうか?
 それとも、夕飯は自分だとでも言うつもりか?
 まったく、寝室へ逃げ込むとか…犯してもらいたい…としか思えんな

 さって?あいつは…布団に潜って泣いているのだろうか?ならば、やさしく抱きしめながら犯してやるのもいいかもな。そうすれば、あいつはまたわたしに甘えてくるだろうから…。そうしたら…どうしてくれようか?
 ゆっくりと、寝室へと歩む。足を忍ばせながら、あんなことをしてやろうとかこんなことをしみようとか…邪なことを考えながら向かう。
 わたしが、ぐふぐふと妄想を膨らましながら寝室へとやってくると、布団の中にはこんもりとした膨らみがひとつ…
 ここか…。さぁ!どう料理してやろうか?
 いろいろ考えたが…ヤリたいことが多すぎた。とりあえず…捕獲しようと足を忍んで…がばっ!っと覆いかぶさってみた。

「……」
「泣いているのか?…それとも拗ねているのか?ほら…拗ねるな?おまえにはわたししかいないのだから…」

 おかしい?あいつはこんなにやわらかかったっけ?

「……」
「だが…拗ねているのも…それもまた可愛いなぁ…意地を張っていないで、さぁ!その顔を見せておくれ?」

 ばっと布団を捲くると…クッションと丸まった布団があるだけだった。

「………え?」

 布団の中には何もいなかった。
 瞬間に、頭の中が真っ白になった。
 え?…え?
 どこにいったのだ?どうしてしまったというのだ?
 見れば、部屋の窓がほんのわずかに開いていた。

 まさか?!本当に出て行ったのか?
 急いで外に飛び出す。けれど、外は真っ暗闇。いったいどこへと行ったのだろうか?
 …わたしは戦士。獲物を狩り出すのには慣れている。まして、もっとも愛してやまない男なのだ。これを見つけ出すのは容易。
 あいつのにおいを辿って行くと、里の外を見るための見張り櫓が見えてきた。
 そんな時、" ヒュッ ” と仲間の口笛が聞こえた。
 櫓の上から、何かを合図している。その動きで、どうやら櫓の真ん中辺りに何かがあるらしいと分かった。
 櫓の中ほどを目を凝らしよく見ると…なにか黒いものが支柱に貼りついていた…
 よく見ようと下へと回り込んで見ると…あいつが、里の向こうを…じぃっと見つめていた。
 ここからでは、あいつの表情は見えない。
 里の向こう。森の向こうだろうか。そのまた向こう…なのだろうか。どこを見ているのだろうか?

 わたしは…
 声をかけることができなかった。
 声をかけてはいけないような気分になったのだ。
 そっとしておこう…。仲間にそっとしておいてくれと手振りで合図して、わたしは家に戻った。

 なんだかすごく悪いことをしたような気分だ。何がいけなかったのだろうか?
 とぼとぼと家に帰る。
 しんっとした家の中…だれもいない。こんな風に、しんっとした家に帰るのはいつ以来だろうか?
 あいつを捕まえる前…。一人暮らしだったとき、こんなのは何も感じなかった。
 ただ、早く男がほしい。わたしも男を捕まえ、一人前の戦士となったことを見てもらいたい!夫となる男を…このわたしの力の象徴である男を捕らえる事ができたのだ!と、認めてもらいたいと思っているにすぎなかった。
 男を手に入れたのならば、舞台の上で下でと幸せそうに愛を語る者達の仲間入りをしたいと、いつもいつもそう思っていた。

 シンとした家の中…ぐぅぅぅと、鳴るお腹の音が嫌に大きく感じた。
 いつもならばあいつがいて、お腹が減ればすぐに何かを作ってくれた。寂しそうにすればすぐに察してくれて、ベッドに連れて行ってくれた。寒そうにしてれば抱きしめてくれた。…あいつが…あいつが…。
 今頃になってあいつの存在のありがたみが、ひしひしと心に浮かぶ。
 あいつのいない家の中…さみしい…なァ。

 あいつの作った、すっかりと黒焦げになってしまった肉の塊。
 あいつの作ったものだ。なんとか食べられるだろうと思ったけど…
 苦くて食べれたものではなかった。
 あいつの料理は本当にうまい。思い出すだけで口の中に唾が溜まってくるほどに。
 あいつがいれば…もっとまともなものが食べれたのかなぁ…いや、あいつがいればあいつが作ったものだからと無理に食べれたのだと思う…。
 いつも我を忘れたように、うまいうまいと食べていると隣でにっこりと笑っているのだ。

 あいつのことでこんなに悩んでいるわたし…。
 ………ッ!
 あああっ!なんだか今日は嫌になった。あいつの機嫌もそのうちよくなるだろう。
 すぐに帰ってきてくれることを祈って…わたしは眠りについた…。

 眠れない…
 眠りについたはずなのに…すぐに起きてしまった。
 きっと腹も心も空腹だからだろう。
 いつも、寝るときはあいつがいた。
 抱き枕にして寝るとあいつの体はちょうどいい。
 女の背に比べて大きな背。胸板だって広い。
 すっぽりとわたしを包みこんでくれる。硬さだって、その温もりだって心地いいのだ。
 そう、あのあったかさが…。
 でも、今はひとり。冷たい布団のなか…
 寒い…淋しい…。
 わたしは、膝を抱えて眠ることにした…

 どのくらいしただろうか?
 ふっと布団の中が温かくなった。暖を求めて擦り寄る…
 あったかい♪
 あいつの匂いだ。あいつの…
 あいつの腕がわたしの身体を抱きしめる。
 …落ち着く。こんなにも落ち着く。深い息づかい…。どこからか聞こえてくる鼓動…
 トクトクと聞こえてくるのだ。それが、いつも子守唄のように聞こえて、すぐにウトウトとしてしまう。
 これならば…よく眠れるだろう…
 求めてやまないこの男と、好きなにおいに包まれてゆっくりと…。乾いた土が泥の中へと落ち込むように、眠りへと落ちていった。



 目覚めると…わたしはあったかいものを抱きかかえていた。
 布団のあったかさだけではない。人肌のあたたかさを。
 心待ちにしていた匂いが鼻をつく。
 あいつだ。あいつがいてくれているのだ。
 すり寄り、顔を上げてみると…二つの瞳と目が合った。だが、まともに顔を見れずにわたしは視線を下げた。
 気まずさから、抱え込むのもやめた。
 どの面下げて顔を合わせればいいのだろうか?出て行ってしまうほど怒らせたのだぞ?
 恐る恐る、見上げてみると…こちらを見つめる瞳。その顔にはなんの感情もこもっていない。
 けれど、わたしが何かを言うのを待っているようなのだ。
 こんな時…なんて言ったらいいのだ?
 …ごめんなさい?…おまえの気持ちを何も考えないですまない…?
 …だめだだめだ!謝るのは…やりづらい…というか…慣れてないという…か…
 心の中でそう思っていると、葛藤しているわたしを見抜いたのか…彼は向こうを向いてしまった。

 何も言わない。言ってくれない。
 沈黙が続くだけ…ただ、背中越しのぬくもりが腹に伝わってくる。それなのに、何かを待っているような…そんな気配だ。
 わたしは、何も考えつかないまま意を決して話しかけてみることにした。

「…そのな、…えーっと」
「……」
「…せっかくの料理…すまなかった」
「……」
「丹精込めて作ってくれたのに…な。…わたしは…早くおまえと……」
「……」
「…ええい!おまえとキスしたかったのだ!朝別れたっきりだったじゃないか!だから、ずっとずっとキスしたかったのだ!」
「……」

 仕方がないじゃないか!朝別れて…帰ってきたら、いっぱい、いっぱいキスしようと思っていたんだから!!

「昨日の夜…おまえのいない布団の中で…いろいろ考えた。えーとな…淋しかった。淋しかったんだ!布団は冷たいし、腹は減っているし、…なによりもおまえがいなかったから!」

 後から抱きついてみる。大きな背中。どっしりとした硬さが安心感を引き出す。
 そんな時に聞こえてきたのは…

「…焦げたお肉食べてくれる?」

 え?そんなこと?

「いいぞ!おまえの作った料理だ。こげて冷めてカチンコチンになっていようが、吐き出してしまうほどまずくなっていようが食べてやろう」
「あーんってやれば、パクッて素直にたべてくれる?」

 彼は、腹に絡みつかせようとしたしっぽを捕まえると、しっぽの先を指先でくりくりと弄くり始めた。
 …モジモジしているのだろうか?
 “ あーん ” は…まだ、恥ずかしいのだ。けど、わたしだって甘えたい!他の誰よりも愛しているこの男といつまでも甘え合っていたい!けれど、わたしは戦士。この家の長だ。だから、甘えすぎるのはどうかと思って素直には食べていなかった。
 そうなのか…やはりやりたかったのだな…

「…食べてやろう!恥ずかしさなぞ乗り越えて!」
「外でも、イチャイチャくっついてみてもいい?」
「それは…」

 外では、戦士の威厳を誇示するためにイチャイチャすることもいつも抑えてきた。
 このわたしの威厳を、他の者に見せつける。だらしないところは見せられない!そう思ってイチャつくことを抑えていたのだ。
 …ああもう!そこのところおまえだって、わかっているだろう?それでも、やりたいのか…。

「いいぞ!おまえの好きにしろ!!」
「騎乗位の時、おっぱいつねっても怒らない?」
「なんだって聞いててやるぞ!おまえがそれを望むなら!」

 そういうと、向こうを向いていた彼はこちらに向きなおった。
 彼の真剣な目がわたしを見ている。温厚ないつもの顔とは違い、キッと真剣な眼差しに…キュンとした。

「じゃぁ…キス…しよう」

 こんな真剣な目は初めて見たような気がする。

「え?」
「仲直りのキッス。…言うことなんでも聞いてくれるんでしょう?」

 仲直り…キス…。
 キス!
 …………くぅぅぅぅぁぁぁぁ!!
 ……あああ、なんだかドキドキしてきたっ!

「…バカ♥ 」

 キスだ…キスできる!!
 そう思うと、ドキンッと心がはねる。

「んー…ちゅ…んんん」

 久しぶり…なんだか何年もキスしていなかったように思える。
 たった一晩なのにこんなにも久しく感じてしまうものなのか?
 口をひらくように促して、舌を差し入れる。
 すぐに待ち遠しかったように彼の舌がわたしの舌に絡み付いてきた。

 じゅっ…ぢゅ…ちゅる……

「ん…ふぅぅんん…あふ……んっ…」

 目の前に彼の顔がある。
 はずかしそうに目をきょろきょろさせている。
 そんな彼の頭を強く抱きかかえて目を見るように仕向けると
 恥ずかしそうに目を逸らしながらもわたしの目を見るようになった。

「…ん…おまえ…は…わたし…んっちゅ…のものなんだ ♥ …んっ♥ …んっ♥ …だからっ…ちゅ♥ ……わたしも…ちゅるっ…もっとおまえを…ちゅる…大事に…ちゅっちゅっ♥ …してやるぞっ♥ 」

 彼の顔…恥ずかしそうに頷いた。
 ふふふ。最初からこうすればよかった。
 もっともっとと、心が急いて息するのも忘れた。いつまでも放れたくない!
 恥ずかしげな顔は、今や真っ赤に染まり一心にわたしの目を見つめてる。鼻がぶつかるその距離で、舌で遊ぶような楽しみはいつまでも続けたい。足りない♥ もっともっとと押し付ける。
 けれど…もっとと口奥へと求めようとしようとしたとき…彼は、顔を両手で包むや突然キスをやめて言った。

「ちゅっ…ほら…もう起きる時間だよ?夫婦喧嘩で朝の鍛錬に遅れましたなんて言ったら、みんなに笑われてしまうよ?」
「いい。鍛錬よりわたしたち夫婦の鍛錬の方がどれほど大切なものか」
「…だーめ。それは、帰ってからすればいいよ。君は戦士。戦士はいついかなるときでも戦士でいなきゃ。男は家を守り、女は外で戦ってくる…そして、その癒しを求めて家に帰る。そうでしょう?」
「そのとおりだ」
「ならそのときは、全力で癒してあげるからさ…ねっ…カッコイイ戦士でいてよ」

 ちゅ♥

 んふふふふふふふ…いいなぁ……いいぞぅ!こうでなくては!

「ん。じゃぁ、手早く朝ごはん作るね?あの様子じゃ、夜は食べてないよね?」
「…なんとかあの黒いのを食べようとしたけど…」
「やっぱり…待っていて。おいしいの作るから」

 わたしをぎゅぅぅぅっと抱きしめると、ベッドを出て行った彼。
 力いっぱいぎゅぅぅぅしてくれたぁ♥ 。ああ、なんと心地好いんだろうか♪♪♪

 手早くといったとおり、すぐに好い匂いが鼻をくすぐった。
 トントントン、という音がしてきてそれがまた耳に心地いい。
 すぐにできたと、言う声が聞こえてきた。
 食卓に行くと、いい匂いのスープ。崩れかけたが芋がたくさん入っていて、これは空腹の腹にたまりそうだ。
 焦げをそぎ落としたような所々黒い肉が入っていて、苦味もなく…たぶんこれがいい味を出しているのだろう。
 それを食べているとパンが出てきた。目玉の卵とハムを焼いたものが乗っていて思わず唾がでてきてしまう。

 聞けば、昨日の残りと焦げを使ったもので、たいして時間はとらないよう作ったらしい。
 うまさからむしゃむしゃと食べるわたしを、微笑みながら彼もゆっくりと食べている。
 いいなぁ。こういうのも…
 それを口に出して言ってみるが…“いつもの風景じゃない?”と返されてしまった。
 彼はこんなことを当たり前としながらも幸せだと思っていたのだ。なんということだ…勿体無いことをしたものだ。

「では、行ってくる!」
「うん…あっ、ちょっと待って…」

 そう言うと、櫛を持ってきて梳いてくれた。
 髪を梳く感じが心地いい。

「これでよし…んじゃぁ…」

 ちゅぅ…

 行ってきますのちゅぅ…なんだか今日はいやに恥ずかしい♥。むず痒い。だが…いいものだ。

「行ってくる!」

 わたしは彼に見送られながら家を後にした。



 どうやら、わたしは一日中にやけていたらしい。いろいろなことが心地いいのだ。これこそが幸せというのだろうか?
 仲間にも、成人となっていない戦士達にも顔が綻んでいるのがわかってしまうほどに顔がにやけてしまっていたらしいのだ。
 昨日のことを知っている仲間がそれとなく夫婦喧嘩を洩らしてしまい、冷やかしで大変だったが…そんなことがあって期待に胸を膨らましてわたしは家に帰宅した。

「今帰った!」
「お帰りなさい!」

 帰宅すると、もうそこに待ち構えている彼の姿が…
「疲れたでしょう?…ん♥ 」

 ちゅ…ん……んっ…ちゅぅ…

 積極的なキス…昨日とは違うな。

「どうしたんだ?今日は積極的だな」
「イヤ?」
「いや、好いものだ♥ 」

「そう。じゃぁ…食事にする?お風呂にする?それとも…」

 にやりと笑う彼。
 そこまで言われては、わたしの心が跳ね上がってしまうだろうが!

「食事は後だ!風呂と…な…な♥♥♥ 」
「わかった。では、こちらへ…お姫様…ん?…ナイト様かな?」

 戦士のわたしを姫扱いするのはこの男だけだが…今はそれがとてもいい。
 今だけは、姫でいさせてもらおう。

 今日は、身の回りは任せてしまおう。
 風呂はすっかりと用意がされているようだ。

「そこで立っていて?」

 と、妙な要求をした彼は…わたしの身につけ物を脱がしにかかった。
 胸当てと腰巻…それ以上は動きづらくなるからつけていない。
 それなのに、脱がしたいという。

 わたしのうしろに回りこむと、髪の中に顔をいれて匂いを楽しんでいるようだ。
 ふぅぅっと吹きかけられる息が、わたしをくすぐる。
 それから、頬ずりをしながら背を舐め胸当ての紐を解く。
 だが、胸当ては胸にひっかかったままだ。
 彼は、胸当てはそのままに頬ずりを続け、片翼の付け根を舐めてから、尾を撫でるように舐めながら尻へ。そして、腰巻の上からわたしの尻を頬ずると顔を離して目の前へと来た。
 彼の鼻息は粗くなっていた。
 舌を出してわたしを舐めるでもなく…舐めるようなそんな仕草をして視線を胸へ。
 胸に顔をうずめると、谷間を舐め始めた。ひっかかっている胸当てを顎で落としながら、そのまま谷間を舐め続ける。
 粗い鼻息とペロペロとなめ続ける彼のうれしそうな顔を見ていると…なんだかわたしも早く彼のその身体を触りたくて仕方がなくなってくる。いつもならここで我慢することなく襲っていただろう。だが、すべてを任せることにしたのだ。ひたすら我慢…。わたしの鼻息も荒く深くなっていた。
 彼の舌は腹へと動き、へその中を細かくペロペロとなめる。思わず声を出してしまう。
 するとうれしそうな顔をしてこちらを見やり、ようやく、腰巻に手を掛けてそれを取った。
 すると…“はぁぁぁぁ…”っとうっとりとした声を上げた。
 そんなによかったのだろうか?

「この…君の匂いが凝縮したようなそんな好い匂いがするんだよ。一日の…いや昨日もか…甘い汗のにおいがしていてね?もうすぐにでもここで君と肌を合わせてしまいたくなってしまうほど心が躍るんだ」

 と、またしてもそんなうれしいことを言ったのだ!

 それを聞いて、もうわたしは我慢が出来なかった。目の前の彼を抱えると風呂の中へ…
 そのまま、湯船の中へ入ろうとしたら止められた。
 いつもだったら、我慢できずに抱きしめたまま入っていたろうが…
 すぐに、“おたのしみがあるのだから待って”と言った。
 お楽しみ…なんだろうか?いつもと違う彼の行動。昨日の今日でいろいろ考えてくれていたのだろう。
 その態度はやはり、どこかが違うように思う。わたしとのことを考えながら動いてくれているようにも思える。
 喧嘩をしないように大らかに接してみようとしているみたいだ。いや、違う。一緒に楽しもうとしてくれているようだ。

 わたしに床に寝そべるように言うと、少しずつかけ湯をしてくれた。
 ゆっくりゆっくりと湯に慣れさせてくれる彼は、目を細めてすごく楽しそうだ。
 湯が身体を伝うのに合わせる様に手を這わせ、吐息を洩らすわたしを楽しんでいる。
 それが終わると、石鹸とタオルを手にして泡立て、わたしの身体を洗い始めた。

 おもわず声が漏れてしまう。
 わたしの身体の俊敏なところ、汚れているところをこまめに満遍なくマッサージするかのように手を使い泡立てながら洗ってくれる。
 頭を…顔を…胸を…腹を…股を…そして足を…。乳首やクリトリスなどの突起は、指先で揉み解すようにやさしく洗ってくれるのだ。一族の証である刺青も丁寧に洗ってくれた。
 ぬるぬるとした石鹸の感触に、おもわず少女のように声を上げていると、興奮しきった彼の顔が見えた。
 興奮しきった顔…一体どこまで興奮しているのか?と腰に目を移すと…股間のモノははち切れんばかりに立っていた。
 泡を流すと、彼は言った。

「さぁ、こんどは君のお腹の中を掃除してあげないとね。昨日は出来なかったから、今日は特に念入りにね」
「そんなことを言われると、期待してしまうではないか!」
「じゃぁ、期待していて?ふふ♪ きっと気持ちいいんだから」

 期待に胸が弾む。こんなことを言うからには何かを企んでいるのだ。
 彼は床に横になると足を広げた。
 そそり立つチンポがわたしを誘う。

 もう我慢でできない!
 飛び起き、もっと彼の欲情を誘おうと恥肉を見せ付けるようと、横たわっているその顔の目の前で大きく股を広げてオマンコがよく見えるように見せ付ける。もう、わたしのオマンコからは、つゆが溢れ滴っているのかわかるほどに濡れていた。
 期待が心を覆っていく。身体ははやくはやくと早鐘のように血を廻らせて、心躍る時を待っている。
 もう、待ちきれない。心が最高潮に達したそのときを狙って青筋をたててビクビクとしたそれに、ゆっくりと腰をおろしていった。

 はぁぁぁ…きたっきたぁぁぁ!!
 久しぶりだ!このかったいの…!心待ちにしていたそれに、血が沸いている。身体の隅々が喜んだようにさらに熱くなっていく。わたしが動かなくても膣の中では勝手に襞が動き回ってチンポに絡みつく
 彼といえば、うれしそうにしながらも耐えるような顔をして、わたしが動くのを待っているようだ。

「わたしは期待しているからな?おまえが気持ちよくきれいにしてくれることを。おまえの石鹸でわたしの中をきれいにしてくれることを!」
「ん。…頑張る」
「よし!」

 そうして、わたしはゆっくりと腰を使い始めようとして…

「…そうだ、その前にこれ食べよう?」
「なんだこれは?」
「陶酔の果実だよ」
「陶酔の果実か。そうだな、前準備にはぴったりだ。他のことなど気にせずおまえだけを見ていたい」

 わたしは、紫色した半透明の果実を手にとる。実の中には果汁が詰まっている。これを口に入れると、甘みの強いフルーティな酒のような味わいの果汁が詰まっていた。口の中をさわやかに流れていくこの喉越し…。時々口の中に入れた果実を交換こするようにキスをしながらいっしょに食べる。ぷちんとした食感。口の中いっぱいに広がり、繋がった口と口から漏れ出る赤い果汁。くちゅくちゅと、舌の上で伸ばすように食べあう。大地の恵みと彼の精が混ざり合いなんともいえない幸せが駆け抜ける。
 すべてを平らげると、満足げな顔をして彼は頷いた。

「それじゃ、…ね?」

 繋がっているままのわたし達。大事そうにお腹を撫で、続きを促す彼。わたしはそんな彼が愛しくってその手を握り合ってまた動き始めたのだった。
 陶酔の果実の影響か…だんだんと身体が熱くなる。同じように火照った顔をした彼の顔を見つめるたびに、欲しくて、欲しくて何でもしたくなってきてしまう。でも、だめだ。一緒に愛し合うと決めたのだ。ここで劣情に流されてはいけない。
 握り合った手にキスをしながら、わたしはなんとか一緒に気持ちよくなれるように心を戒めた。



 …おかしい。
 …?…おかしい。

 なにかがおかしい。


「ど、どう…うあっ…したの?」
「あ…あん♥ ……おかしい…のだ……ん♥…はぁぁん♥……こんなにもっ♥……おまえのことをッ……ぁ…んっ♥…か、かんじているっ…と、いうの…にっ………」

 頭の中が快楽で流されないのだ。
 こんなにも頭の中が、蕩けそうなのに
 こんなにも昂ぶっているのに
 こんなにも熱くなっているのに!

 何かを考える余裕があることに驚かされる。

「ふ、ふ。魔界ハーブだよ。はぁぁぁ…。すごいよね…こんなにもキミのことを見ていられる余裕が…んっ♥ …あるんだから」

 以前、行商人がやってきたときに買っておいたのだそうだ。
 風呂の片隅を見てみると、小さな小皿の上で何かが燃えているのが見えた。薄い白線を立ち上らせながら、さわやかな匂いが風呂の中に広がっている。これで、理性を保ったままでいられるのだという。一方的な快楽を楽しんできたいつものセックスではない。これは、相手が楽しめているのか見ることが出来るみたいだ。
 ふふふ、考えたものだ。今日のこのひと時には、確かに丁度いい。
 いつもならば、赤い顔をしてよがっている彼の顔を見ると歯止めが利かなくなって…もっとイジメてやろうとか、もっとよがり狂っている姿を見てやろうとかそんな悪戯心が湧き上がってくるものだが…今日は違うのだ。わたしを…わたしで満足してくれているのかそれが見ていたい。
 いつもであれば、うつろな瞳のままわたしに犯されている彼の顔。今日は、きちんとした意志のようなものを湛えた瞳をしていた。それは、あの仲直りのキスの時の様な意思を持つ瞳。あの時、わたしはキュンとしたものだ。

 愛しい。こんなにも愛しい。

 まるで、初めて“恋”に目覚めたようなそんな気分だ。
 手と手を合わせ、目と目を合わせ、欲望と欲望をこの肌で感じながらも、相手のことを想い…そして…この心が触れて絡み合っているというこの実感…。これが…“愛”か。
 ああ、わたしは彼のことをこんなにも愛していたのだ。思えば、いままで彼のことを、まるで戦勝の品としか見ていなかったのかもしれない。初めの舞台上でのセックス…彼は泣いてた。あの時の彼…暴力に屈服する少年のようであったような気すら、今のこの彼とを比べると思える。そして、何も言わずにわたしの夫になってくれたのだ。感謝しなくてはな。


 と、そんな時…たぷんたぷんと揺れていた胸を摘もうとするように、腕が伸びてきた。
 考え事をするわたしの気を引こうとするかのように…。
 ふふふ。この胸で愉しみたいのだな?いいだろう。おまえがこの胸を痛く気に入っているのは承知のことだ。
 前は、おもわず叩いてしまったが…今回は、こんな香などといったお膳手をして喜ばせようとしてくれたのだ。
 はぁぁぁ♥、やさしくしてくれよ。
 わたしは彼の手を離し、揺れる胸を掴みやすいように押さえ、どんなことをしてくれるのか楽しみにした。

「ん、きゃあああぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 一瞬、戦慄くように手を動かした彼の手は次の瞬間、乳首を摘んだ。
 キュッと乳首を摘まれたわたしは、そのあまりの快感に少女のような叫び声を上げてしまう。
 と、同時にぐっと耐えるような声を出した彼。見れば、苦悶の顔をしている。
 耐えているのだ。あまりの快楽に驚いてアソコが伸縮したのだろう。
 我慢するように食いしばった口元。震える胸と摘んだまま動かない彼の指。
 その乳首の先から身体へとひろがる快感に、はしたなく声を響かせながらもっと快感を得ようと更に腰を激しく振ってしまう。
 乳首を抓まれたままの胸は不自然な動きで…タプンタプンと揺れる。その度に胸から雷でも走るように頭の中が真っ白になってしまうのだ。
 親指と人差し指で、木綿の綿から糸を紡ぐような動きで硬く勃起した乳首を責め立てて他の指では乳房を揉みあげる。互いから滲み出す汗が接着材になったかのように張り付かせますます肌が敏感になる。

 イイ!いいよぉ〜!!

 わたしは口からつばを飛ばすように、そんなことをひっきりなしに叫んでいた。
 彼も、わたしと同じように嬌声を上げながら、時々くぐもったため息のような音で息をしながらも、気持ちいいと叫んでいる。
 彼も感じてくれている。わたしを喜ばせようと必死になって腰を振ってくれている。
 大きく硬くなったオチンポ…中を削ろうとするかのように、ゴリッ…ゴリッと突き上げる。そのたびにお腹の中が熱い杭にでも突かれているような感覚に襲われる。子宮口すらノックするくらい大きくなったオチンポ。

 ああああ、あたってる♥ …あたってるよぅ…♥

 口からよだれが垂れるのも構わずに、わたしは彼が与えてくれるその感覚に酔っていた。
 


 限界が近いのか―
 歯を食いしばりながら小刻みに腰をつかい、限界のそのときまで頑張ろうとしてくれる。
 中の襞襞ひとつひとつが太くて硬くなったオチンポに細かくこね繰り回される。
 わたしは…胸を弄くる彼の手の上から自分の手を重ね、一緒になって胸を揉んでいた。

 すごい…すごいのぉ!!

 限界が近い!息を吸う間もなくひっきりなしに何かを叫んでいるが…何を叫んでいるのか―

「イ、イク!愛してるーーーー!!」
 すきッ…すきぃぃぃ!!おまえのこと…ん、んんんーーーあっん♥ …だいすきっッ♥♥♥

 その瞬間、わたしは絶対に口にしようと思っていたことを叫んだ。
 二人同時にすべてが突き抜けていった。たまりに溜まった感情と快感が突き抜けていく。
 そして…膣も子宮もお腹の中すべてへ注がれるその心。
 ああ、こんなにも愛を感じた…満足のいくセックスなど無かったかもしれない。彼のおかげだな♥

 愛している♥ ちゅ♥

 イッたその後、わたしは彼を抱え上げ騎乗から対面へと体位を変えた。
 角度が変わったことで感覚が変わったのか再びうめき声をあげる彼。再び、残り火のように注がれる精。
 ふふふ、汗まみれだなおまえの顔は。その赤く情気した顔…何度見ても心をくすぐってくれる。
 目が合う。切なげな顔…この顔は…キスを求めているときの顔だ。未だ、はぁはぁと大きく息をしているにも拘らず我慢できないといった顔をしているのだ。
 わかっている。ずっと口同士は離れ離れだったもんな。キスが好きなおまえ、わたしだって口が寂しかったのだ。

 顔を傾けると、たちまちうれしそうな顔をした。唇を…開いて……ん♥
 抱きかかえ直しながら、吸い込むように舌を絡めると、もぐり込みたいというかのように彼の抱きつく腕にも力が入る。

 幸せだ♥ 心をつなぎ、合わせてのセックス♥
 さぁ、つなぎ合おう。そして、溶けてしまおう。

 夜は始まったばかりなのだ。いつまでも求め続けよう…。








 その日、狩りの途中で若い戦士が男を攫って来た。
 新しい夫婦の誕生に、皆が祝いすぐ準備がなされて、祝いの宴が始まった。
 新たな戦士の誕生と、夫婦の誕生を祝う祭り。
 村の中央の舞台上では、成人となった誇りと夫婦となった喜びに、胸を張り笑顔で腰を振り続ける戦士。

 かつてのわたしを見ているようだ。成人となったその誇らしさ。新たな門出。夫婦の始まり。幸せの始まり。
 でも、違う。わたしは知った。本当の幸せを。恋を、愛を。そして…共に育むということを。

 ふっと、横を見れば…新たなる夫婦を熱っぽく見つめる彼がいた。かつてを思い出しているのかもしれない。
 わたしが見つめているのがわかったのか、ウインクして見せてわたしの手を取ると、舞台へと視線を向けた。

 それは、彼からの招待状。わたしは、身も心も弾むような気持ちでいっぱいになった。
 ふふふ、これがわたしたちの新たなる門出だ。
 寄り添いながら舞台へ。彼女らの邪魔にならないところで向かい合う。

 彼の瞳は揺れていた。
 見つめ合うわたし達。他にはもう何も見えない。
 そうして、わたし達は本当の愛で結びついた姿を見せようと、身体を重ねあうのだった。
12/12/30 23:29更新 / 茶の頃

■作者メッセージ
久しぶりに書いたけど…ブランクが長すぎていろいろとわからなくなってる。
エロありにしたけど、エロくもないし…。時間がもっと取れればなぁ…。

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