読切小説
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今年もトライアスロンの季節がやって来ました。
司会「さあ‼今年もやって参りました!第467回魔界地方市町村合同トライアスロン大会!今日も今日とて皆さん最後まで走りきりましょう‼」



A「……と始まって約二時間。そろそろゴールする選手が来るそうだ」
B「距離もそこまでありませんしね」
A「全く、嫌になるぜ。ここに来る奴ァ皆が皆カップルでさぁ」
B「そうですか」
A「こちとら彼女居ない歴=年齢だってのに」
B「童貞ですね」
A「ほっとけ!そういうお前はどうなんだよ!?今日ずっと独りじゃねえか!どうせお前も彼女がーー」
B「居ますよ?お嫁さん」
A「裏切られたあああ‼」
B「裏切ってないです。彼女は今、大会に出場してるんです」
A「ってことは選手かよ?」
B「はい」
司会「おおっと!今大会トップがとうとうゴールまで近づきました!」
A「おい、何だありゃ?」
B「お姫さま抱っこですね」

司会A「ゼッケン番号142番、デイヴィッド・プリスキンさん!抱き抱えているのはドラゴンの奥さんイヴさんです!」
司会B「デイヴィッドさんの今大会の目標は『奥さんに格好いい所を見せたい』だそうです」
司会「充分格好いいじゃないですか。奥さん耳まで真っ赤ですよ」

A「いちゃつきやがって」
B「って言うか良いんですか?奥さんって選手じゃないですよね?」
A「ゴール付近からは選手の家族だとか友人だとかも参加できるんだと。元はチャリティーイベントの一環だからな。一応」
B「へぇ。あ、後ろからも人が……」

司会A「おっと?後ろから物凄い勢いで追い上げるのはゼッケン番号221番、ジェイソン・ギャリックさん!」
司会B「今大会の目標は『奥さんの期待に添えること』だそうです」
司会A「外野でダークエルフの奥さんも応援していますね!」
ダークエルフ「ちょっとあなた、ここまで来たんだから1位取りなさいよ!」
ジェイソン「いや、トライアスロンって走りきるだけで充分じゃ……!?」
ダークエルフ「何馬鹿言ってんの!もし1位取れなかったら『優しく』してやるからね!
A「何大声で言ってんだあれは?」
B「優しくするってご褒美の様なーー」
ジェイソン「それは嫌だあああああああ!!!!!
司会A「おおっとぉ!?ジェイソンさん、デイヴィッドさんを追い抜き全速力でゴールしました‼」
司会B「関係者によりますとジェイソンさん重度のドMだそうです」
A「何だそりゃ……」
B「HENTAIですね」
A「おい、さっさとテープ回収しろ。ゴールテープ切りたいって選手も居るんだから」
B「はい」
司会B「続いてデイヴィッドさんもゴールです。抜かされたせいか若干微妙な表情です」
デイヴィッド「格好いい所見せようと思ったのに……」
イヴ「だ、大丈夫だ!充分格好よかったぞ!」
A「ドンマイ!」
B「ドンマイです!あれはあのHENTAIが悪い!」
ジェイソン「……なんかすみません」


司会A「時刻も午後2時に近づき、次の選手がゴールに向かいます!」
司会B「ゼッケン番号730番、ビリー・ワトソンさん。一見少年ですが私より歳上です」
A「は〜、マジか」
B「僕の親戚にも幼顔のが居ますよ。バフォメットが嫁なので夫婦ごっこしてる様にしか見えないんですよね」
司会B「今大会の目標は『子供扱いから卒業すること』だそうです」
B「あんな見た目ですもんね」
A「ってかあいつ、女多くないか?」
ワーム「ビリーくんファイト〜!」
リザードマン「ビリー、ラストだぞー‼」
デーモン「ゴールしたらご褒美のチューしてあげる〜!」
魔女「ビリーくんこっち向いて〜!」
ビリー「だー‼だから子供扱いすんなって!」
A「……無理だな。ありゃ」
B「運動会で頑張った男の子の扱いにしかなりませんね」
ビリー「てめえら聴こえてるぞコノヤロー!」


司会A「次の選手が来ました!ゼッケン番号69番、ベルゼブブのナターシャ・バートリーさん!」
B「あれ、ベルゼブブの割にはなかなか遅いですね」
A「そりゃ走ってるからな。足使うのは慣れないんだろうさ」
B「羽使えば良いじゃないですか」
A「それじゃ意味ないだろ」
司会B「ナターシャさんの今大会の目標は『素敵なお婿さんを見つけること』だそうです」
A「おいおい、この大会は婚活パーティーじゃねぇぞ。何寝惚けた事を」
ナターシャ「あんたに……決めたああああああああ!!!!!
A「え?何でこっちに向かって、おい、ちょっーー!」
ナターシャ「いただきいいい!!!!!」
A「わああああああ!!!!!」
司会A「なんとナターシャさんがスタッフを連れ去りましたあああ‼」
司会B「あれはお婿さん候補が見つかったんですね。お幸せに〜」
B「すみませ〜ん、ヘルプお願いしま〜す」


A「はぁ、はぁ、何とか……、戻って来たぞ!」
B「お疲れ様です。どうでした?ハネムーンは?」
A「さんざんだったよ。嫁が出来たのは嬉しいけどさ!」
B「良かったですね。もう次の選手で最後ですよ」
A「午後6時か。そろそろ暗くなってきたしな」
B「大会はまだ続くんですね」
A「最後の選手が来てやっと終わらせるんだよ。優しいもんだろ?」
B「そうですね。……ありがたいです
A「ん、何か言ったか?」
司会A「時刻は午後6時を過ぎました。午前8時から始まった今大会も、最後の出場者を迎え終わりを迎えようとしています!」
A「お、来たな!」
B「はい」
司会A「ゼッケン番号701番!おおなめくじのマミコ・ノジマさん!!!!!」
A「おおなめくじか……。遅い筈だ」
B「もうすぐゴールですよ」
マミコ「ハァ、ハァ、ハァ」
外野「ファイト〜!」
外野「もう少しですよ頑張れ〜!」
司会A「応援者の掛け声のなか、マミコさん、必死に走ります!」
司会B「マミコさんの今大会の目標は『完走して夫に褒めて貰うこと』です」
司会A「ここまで来たんです!夫さんももう待ちきれないでしょうねぇ‼」
A「ほれ、もう少し、最後だぞ‼」
B「頑張って!」
マミコ「ハァ、ハァ、がんば……る……‼」
司会A「人の足で言えば後二歩、……一歩!」
B「…………ゴールです!」
マミコ「……走ったぁ‼」
司会「ゴール、ゴールです!最後のランナー、マミコ・ノジマさん念願のゴールです!!!!!」
A「いやぁ、良かったなぁ‼……おい?」

B「肩、貸すよ」
マミコ「……うん」
B「……完走おめでとう。……頑張ったね」
マミコ「…………うん‼」



司会「さて、良い結果を迎えた所で第467回魔界地方市町村合同トライアスロン大会もこれにて終了です!出場者の皆様、本当にお疲れ様でした!」
16/08/26 06:10更新 / アスク

■作者メッセージ
つい先日地元でトライアスロンがあったので。
実際に居たんですよ。お姫さま抱っことか子供を連れてゴールするとか。

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