読切小説
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回数制限無限回
人間誰でも衝動買いの一つや二つしたことはあるだろう。
店で見かけたある品物が妙に気に入って深く考えず購入してしまい、頭が冷えた後で『高い金出してなぜこんな物を買ってしまったのか…』と後悔するアレだ。
そして今の自分も後悔こそあまりしていないものの、一時間ほど前に衝動買いしてしまった物品を前に首をかしげている。
そう、どう使うのか分からない、アラビアンなランプを前にして。



自分がそれを見かけたのは、近くの公園で数か月に一度行われる蚤の市でのことだった。
別に掘り出し物を探そうとかそういう気はなく、散歩がてらに眺めてみようか…程度の気持ちで露店が立ち並ぶ中を散策していたら、有名なアニメ映画にも出てくる『魔法のランプ』と同じ形をしたそれが目に入ったのだ。
そして一目見たその瞬間、無性にそのランプが欲しくて欲しくてたまらなくなった。
小学時代から高校生に至るまで貯めてきたお年玉貯金と引き換えにしてもかまわないと思えるほどに。
幸いなことにそのランプは手持ちの小銭数枚で買えるような値段であり、どんな顔だったのかも思い出せない店主からそれを買い取った自分は散策もやめて家に直帰。
簡易な包装をランプから剥ぎ取り、居間のテーブルの上に置いたところでふと我に返った…というのが今の状況である。

……いやほんと、どうしたらいいんだこれ。
ランプとは言うものの火の灯し方なんて知らないし、そもそも燃料がない。
この家ではそれこそインテリアにしかならないだろう。
まあガラクタ同然の値段だったし、年末年始ぐらいにしか返ってこない両親も無駄遣いだなんて小言は言わないだろうから大した問題でもないが。

とりあえず玄関にでも飾っておくか…と自分はランプを手に畳から立ち上がるが、その時ふと心に悪戯心が浮かび上がった。ごっこ遊びではないが、アニメの『魔法のランプ』のようにゴシゴシッとこすってみたのだ。
もちろんそんなことしたところで何かが起きるわけでもない…と思ったら、最大設定の加湿器のように物凄い勢いで煙が噴き出した。

えっ!? ナニコレ!? まさか本物の魔法のランプ!?
目を見開いてそう驚く自分の前で煙は人型を象り、見る見るうちに世にも可愛らしい少女の姿を現す。
ハーレムの女性が着るような露出の多い衣装。それを纏っている少女は閉じていた目を開くと快活な声で喋った。

「どうも初めましてご主人さまっ!
 わたしはランプの精霊、あなたの願いを三つ叶えましょう!」
ビシッ! と指を三本立てて宣言するその様はテンプレそのもののランプの精。
非現実的だ云々だ…はそこら辺に置いておいて、言葉通りならこれはとてつもないラッキーというべきだろう。
だが落ち着け自分よ、世界には猿の手のような落とし穴もある。
スマホの契約書の注意書きにくまなく目を通すような心持ちで臨まねば、破滅が待っているやもしれんぞ。

「んー? ご主人さまあんまり驚かないねぇ。こう言うと大抵の人間は大喜びではしゃぐって聞いたのに」
予想していた反応と違ったからか、頬に人差し指を当てて首をかしげる精霊。
自分はそれに『はしゃぐのは条件確認した後で』と答える。
それを聞いた精霊はちょっと不服そうな顔をした。

「むー、わたしは古い悪魔じゃないんだから罠なんて仕掛けないよぉ。
 まあいいや、質問があるなら何でも答えるよ。あ、これは『願い』のうちに入らないから安心してね」
どうやら単純な質問を『願い』とカウントするほど融通がきかないわけではないようだ。
ならば納得がいくまで訊かせてもらおう。やはり一番気になるのは『願いを増やすことはできるのか』だ。
自分は人間なら真っ先に思いつく強欲な願いを口にしてみるが、彼女は気を悪くする風でもなくそれに答える。

「もちろんオッケーだよ。十回でも百回でも好きなだけ増やせる。
 増やした願いでまた回数を増やすこともできるから、好きなだけ願いを叶えられるよ」
なんてガバガバな回数制限だ。それなら最初に三つの願いなんて言う必要なかったのではないのだろうか。そのように指摘すると彼女は照れ臭そうに言う。

「いやーそうなんだけど、これは伝統っていうか、儀礼っていうか、そういうものだからさ」
ただの口上であると説明し『アハハ』と笑う彼女の姿はとても可愛らしい。
……つい邪な願いが脳裏に浮かんでしまったが、頭を振ってその考えを振り払う。
では次だ。願いを叶えることによって他者へ被害は出るのか教えてもらおう。
例えば大金を願ったら両親が死んで多額の保険金が手に入るとか、世界一の富豪を望んだら全人類を抹殺して『あなたを世界一の富豪にしました』とか、そういったことがあるのかどうかだ。
今度の問いに対しては精霊は少し難しい顔をする。

「うーん、願いの内容によっては全くの無被害とはいかない場合もあるよ。でも命にかかわったり、人生が破滅したりするような被害は絶対に出ないから、そこは大丈夫」
ふむ、被害が出るにしてもそれは小さいものということか。
さらに次の質問をしよう。叶えられない願いはあるのかどうか。
映画では死人を蘇らせる、心を操るなどは不可能とされていたがその辺はどうなのだろう。

「ーーーないよ。本当に心の底から願うのなら、わたしに叶えられない願いはない」
陽性の笑みを浮かべていた精霊の口から突如こぼれ出た妖しい声色。
彼女は人外の存在であったと知らしめられ、ザワッと鳥肌が立った。
やはりコイツに願いを叶えてもらうのはマズイのでは…との思いが浮かぶが、彼女はこちらの心中を読んだかのようにコロリと雰囲気を戻す。

「なーんて言ってもねー、実は大きい願いを叶えるにはそれなりの時間をかけて魔力を貯める必要があったりするんだよねー。
 『願いは叶える…! しかし時期は指定していない…!』ってオチなんだよコレが」
やれやれ…という風に手を振る精霊。
そのセリフに今感じた不安は消えたが、同時に願いへの期待値がガタっと下がった。
だって『今すぐ十億円くれ』なんて願いは叶えられないわけだろ?
そう聞かれた精霊は素直にうなずく。

「うん、今すぐなんてのは無理。その願いを叶えたいならご主人さまはお金が手に入るまでの間、ずっと強い思いを抱いてないとダメなの」
その説明に一攫千金は無理だなと自分は諦める。どんな大金でもただの物にそこまで強い執念は持てない。
だがそうすると、今すぐ叶えられる願いって何があるんだ?
テンプレとはかなり異なって願いのシステムに、自分はどうすればいいのか途方に暮れてしまう。すると精霊は自ら例を口にした。

「とりあえず、わたしの体でできる願いは今すぐ叶えられるよ。
 家の掃除してーとか、ご飯作ってーとか、そういうのは今すぐできる。もちろん」
精霊はそこで言葉を切るとこちらに身を寄せてしな垂れかかってきた。
嗅いだことのない匂いがふわりと鼻に飛び込み、半裸の少女に密着されていることと相まって急速に心臓の鼓動が早まる。

「エッチなことも、できるよ」
『あなたの願いを叶えましょう』と言ってくれる美少女。
それを前にして年頃の男子なら考えずにはいられない邪な願い。
思いついても実際に口にすることははばかられるそれを彼女はささやく様に自ら口にする。

「ご主人さまも若い男だよね? わたしの体で気持ち良くなりたいって思ったら、いつでも願っていいんだよ? もちろんわたしは拒否なんてしない。ランプの精霊にとってご主人さまの願いを叶えるのは喜びなんだもの」
そういった願いは主という立場を利用したセクハラではないのか。そう思った自分の考えを精霊は完全に否定した。
自分は彼女に性欲を抱いていて、彼女の方もそれが満たされることを望んでいる。
ならばためらう理由もない。彼女の体をそっと離し、自分は上着のボタンに手をかけプチプチと外す。
それを見ていた彼女は好ましそうに目を細めると、己の胸元や股間をスッと撫でた。
すると水着同然の面積しかなかった布が煙になったように消え失せ、残ったのは耳がちょっと尖った全裸の褐色美少女。
人外の美しさを持った彼女は畳の上にぺたりと尻をつくと、後ろに回した両腕で上半身を支え股を開く。
生まれて初めてまともに見た女性器からは体液があふれていて、女を知らない自分にも『濡れている』というのが一目で分かった。

「ご主人さま…わたしは準備できてるよ……」
挑発するようにクスリと笑う彼女の姿。それを前にして自分はいよいよもって平静でいられなくなり、慌てたように服を脱ぎ散らかした。
そしてこちらも畳に膝をつくと、彼女の股の間に体を割り込ませる。
初体験の期待にかつてないほど硬直している男性器。その先端を精霊の膣からあふれる液体で湿らせた自分は、彼女を押し倒すように覆い被さる。

「あっ…! ご主人さまの、おちんちん…っ、入って、きたっ…!」
ずぶりという感じで初めて侵入した女性の体内。
熱くて柔らかくてぬめる肉が締め付けてくるというその感覚は似たものさえ味わったことがない。
当然それがもたらす快感も始めてなわけで、自分は男性器を根元まで埋め込んでしまう。
もう入らないところまで腰を密着させたところで、自分は体の下にいる精霊に意識を移す。

「あはっ、とっても大きいねご主人さまのおちんちん。わたしのおまんこの中、もうギュウギュウだよ」
ただ挿入しただけだというのに上気し汗ばんでいる精霊の顔。
目尻には汗でないものが光っているが、苦痛から出たものではなさそうだ。
痛みをこらえる相手に乱暴に腰を振るなんてあまりやりたくないのでそこは助かる。
そう伝えると、彼女は心底嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「そんな心配いらないんだけど、その気持ちはとっても嬉しいな。
 あなたが優しいご主人さまで本当によかったよ。うん、ますます好きになっちゃう。
 さあ、わたしの大好きなご主人さま、わたしの体で気持ち良くなって……」
首を上げてむちゅっとキスをしてくる精霊。
その態度に安心した自分は腰を引いて彼女の膣内から男性器を抜いていく。
すると男性器を逃がすまいとするかのように肉のひだがすがり付き、またもや快感が脳を侵食してきた。
そしてそれは彼女も同じようで褐色の肉体がブルブルと震える。

「あっあっ、引っ張られてるっ…!
 ご主人さまのおちんちんにおまんこ持ってかれちゃうよぉっ…!」
持っていくというのは言い過ぎだが、実際彼女の膣圧は性器同士が癒着しそうなほどに強烈だ。別に痛くはないしとても心地よいが『窮屈さ』のようなものは感じてしまう。
とはいえ、セックスというのはそういうものなのだろう…なんて考えたら精霊はそれを否定した。

「それは違うよっ…! 初めてだからわたしの体がご主人さまに馴染んでないだけなの…!
 動いてご主人さまっ…! そうすればわたしのおまんこはもっと良くなるからぁ!」
『わたしの肉体はこの程度ではないのだ!』と言わんばかりの念を感じる言葉。
それに促され、自分は再び男性器を挿入する。

「あうっ、ご主人さまの…太いの、また入ってきたっ! んんっ…! 広がってる…!
 ご主人さまのおちんちんで、わたしのおまんこ広げられちゃってるっ…!」
卑猥な単語を口にしながら身悶えする精霊。
確かにその膣内は先ほどと比べて少し緩くなっていたが、快感の強さが落ちたということはない。それどころか馴染むという言葉通り、より気持ち良くなった気さえする。
自分は彼女の両膝を手で押さえて広げ、腰を前後に動かし始めた。

「あ、あ、スゴイっ…! スゴイのっ、ご主人さまっ! ご主人さまが動くたびに、わたしのおまんこが伸びてるのっ! わたしの体っ、ご主人さま専用に変わっちゃってるよぉっ!」
ハッハッと息を荒げながら己の肉体の変容を口にする精霊。
その声にはセックスの快感と主の物になることへの幸福感が多量に含まれていた。
そうまで想われて性欲しか抱いていない自分はひどいと思わなくもないが、出会ったばかりなのでそれはしょうがない。
そして性欲の導くがままに自分は最初の願いを口にする。

「なっ、なに!? お願い!? 今!? 今お願いするのっ!?」
こんな場面で突如願いを口にされた精霊は息を弾ませて聞き返す。
自分はそれにうなずくと『最初の願い』を伝えた。
すると彼女は驚いたように目を見開いた後、アハハッと笑い声をあげる。

「いーよいーよ、ご主人さま! あなたの子供を産めばいいんだね!?
 『わたしを孕ませたい』ってのが最初の願いでいいんだね!」
『妊娠しろ』と命ぜられて大喜びする精霊。
女性として非常に重大なことなのにすぐさま快諾するあたり、彼女の価値観は人間とは違うのだろう。だからこそ条件確認はしっかりしておかないといけない。

「え、なに? 孕ませたいだけ? 結婚はしない? 手伝いはするけど子供はわたしが育てろ? なにそれ、そんなの条件になると思ってるの?」
人間の女性だったら絶対承諾されないであろう条件。
しょせんは性欲と支配欲から出た願い、やっぱりダメか…と思ったが彼女の思考はその遥か上を行っていた。

「そんなの条件でも何でもないよ! 結婚なんてどーでもいいし、子育てにご主人さまの手を煩わせるつもりなんて初めっからない! ご主人さまが願うなら何人でも産んで、何人でも育てるよ!」
『バカだなあ』と言わんばかりの笑い声を発する精霊。
自分が期待していた以上の返答を返してくれた彼女に、ますますもって欲情が高まる。
今繋がっている女は好きなだけ性欲のはけ口にしてよくて、避妊も全く気遣わなくていい。何も気にすることがなくなった自分は腰の動きをどんどん加速させ、快楽の頂へと近づいていく。

「あっ、ご主人さま! ご主人さまっ! おちんちんがスゴイ硬くなってるよっ! そんなにわたしを孕ませたいんだねっ!? おっぱいからミルク出させたいんだ!」
自分が腰を打ち付けるたびに揺れる褐色の乳房。やや低めな背丈に反してそれなりに大きいその膨らみ。彼女は自らそれに手を伸ばし揉みしだく。
フルフルと形を変える柔らかい乳房の中で唯一形を変えず硬く尖っている乳首。
いずれそこから母乳が出るかと思うと繁殖欲が非常に刺激される。
そしてその欲に後押しされるように、過去最高硬度に至った男性器の中を精液が上がってきた。

「ああっ、分かるっ! ご主人さまのおちんちんがまた太くなったのが分かるよっ! もう射精するんだねっ!? わたしに種付けしちゃうんだねっ! いいよっ、来てぇっ!」 
精霊は開いていた足でこちらの腰を押さえると、ビクン! と畳から背を浮かせてのけぞった。その瞬間に男性器の先端から精液が跳ね、すさまじい締め付けと快感が襲ってくる。

「ひぅっ! 出てるぅっ! ご主人さまの熱くてドロドロの精液が注がれてるよぉっ!
 わたしのおまんこの中でおちんちん暴れてるっ! もっと、もっと出してえっ!」
精霊の膣内でビクビクと脈動し精液を吐き出し続ける男性器。
こんな長時間の射精は経験がなく、長い絶頂に頭がくらくらとしてきた。
しかし腰だけは彼女を孕ませんとばかりに密着し精液を送っている。

「ああっ、子宮口抜けて中にも流れ込んでるっ! コレ絶対妊娠するよご主人さまぁっ! わたし孕んじゃうっ! あなたの種でお腹が大きくなっちゃうよぉぉっ!」
嬌声をあげてよがり狂う精霊。
少し行き過ぎとも思える乱れっぷりだが、そのさまがエロ可愛いと感じられて仕方ない。
自分は最後の一滴まで出し尽くすほどに、彼女の膣奥へ精液を注ぎ込んだ。
そして汗だくで髪も乱れた彼女の顔に自分の顔を寄せると、荒い呼吸を繰り返すその唇に深い口づけをする。

「んん…っ、ふぁ…つ、ちゅ……。ぷぁ………ご主人さま…大好き」
緊張の峠を越えて快楽の残滓にまどろむ顔になった精霊は好意を言葉にして示す。
チュッという軽い口づけで自分はそれに返した。

初体験の熱も覚めて完全に冷静に戻った後。
汗や精液で汚してしまった畳を前に、もっと場所を選べばよかった…と自分は後悔していた。一人暮らしだから大急ぎで後始末をする必要はないのだが、染みや臭いが畳に残ったりして、それが帰省してきた両親に見られでもしたら困るのだ。
第二の願いでこれらの汚れを綺麗サッパリ落としてもらうことはできないだろうか。
そう精霊に相談してみると、彼女は簡単にうなづく。

「それはすぐ叶えられる願いだねご主人さま。でも、その程度のことで本当に願いを使っちゃうのー?」
『いいのかなー?』と挑発的に笑う精霊。その笑みで『願いは三回まで』という原則を思い出した。
危ない危ない。いくらでも増やせるという前提でついその気になっていたが、回数自体はまだ増やしていないのだ。
自分は掃除の願いを撤回し『願いを一億回叶えてくれ』に変更。
精霊は納得したように首肯して、反則気味なその願いを叶える。

「はーい、ご主人さまの願いの回数をあと一億回にまで増やしました!
 さあさあ、次の願いをどうぞわたしにお申し付けくださいなっ!」
笑顔を浮かべたまま踊るようにくるっとターンを決める精霊。
その彼女に改めて畳の清掃を願うと、彼女は右手の人差し指をクルクルっと回す。
すると指先から星屑のような光の粒がこぼれ、それが畳の汚れに向かっていったかと思うと、何もなかったかのようにベタついた体液たちは消失した。
ランプから出てきたときを除き、初めて目にした超常現象に自分は『おおー』と感嘆の念を漏らす。

「望み通り綺麗にしたよご主人さま。それじゃ、次は何をしよっか?」
叶えられる願いは残り一億マイナス一回。
彼女に叶えられる範囲で何を願おうか…と考えていると、疑問がまた浮かんだ。
今までの願いは『叶えたらおしまい』の一回限りの願いだったが、期限なく持続する願いは可能なのだろうか?
例えば家政婦としてこの家で働けとか願ったら、掃除や洗濯をさせるたびにいちいち願いを消費することがなくなるとか。

「うん、それも問題なく叶えられる。っていうかわたしも何かするたびに願いの確認するの面倒だから、そうしてくれたほうが助かるかな」
言われてみれば彼女の方だって『願いを叶えますか?』といちいち訊くのは大変だろう。
こっちだってそんなやり取りを何度もしたくない。結局この件は家事全般を任せるという形で一括セットで願うことにした。



こうして一人暮らしだった我が家にランプの精霊という家政婦兼性処理役の少女がやってきたわけであるが、ほとんどトラブルは起きなかった。
彼女が人間なら『両親不在の男子学生が外国人の女の子を連れ込んで…』なんて噂がすぐ立ったことだろう。
もしそうなるなら常に彼女をランプの中で待機させて、必要なときのみ外に出すという寂しい同居生活になっていたはずだ。
しかし実際には姿を隠すどころか、白昼堂々と買い物にさえ出かけている。
近所のおばさんたちに出会っても普通に挨拶をしているし、おばさんたちもそれが当たり前のような対応だ。

「そりゃそうだよご主人さま。わたしの姿をよく見てほらほら」
そう言って己を見せびらかすように両腕を広げる精霊。自分はそれを見て『ああそうか』と納得する。
高い露出…は家の中だけで、外出時はまっとうな服を着ているので問題ない。
日本人の日焼けとは質が違う褐色の肌も砂漠地方に行けば大勢いるだろう。
白みがかったような紫の髪は目立ちはするが、染めましたと言えばそれで終わりだ。
だがピンと長く伸びた耳はどうやっても誤魔化せない。作り物に見えないそれは一目で人外の存在であることを表してしまう。

「この耳の違和感が無視されるんだもの、この家の住人が一人増えたぐらい気にもしないよ」
ランプの精霊の不思議な力を使ったということか。
自分は何も願っていないが、正体がバレてしまっては家事どころではないということで、拡大解釈して能力を発揮したのだろう。

「そういうこと。わたしが家政婦するのに必要だから、近所の人たちは違和感を感じないの。ついでに言うとわたしたちってエッチの時に結構大きい声出してるけど、それを無視させる効果も入ってるから」
さらりと出たその発言に心臓がドキリとした。
いや、大きい声は百も承知だが、外に漏れないようになっていると思っていたのだ。
性行為がバレないようにって願いもしてあったし。

「そんなことないよー。ご主人さまの『胎にいるうちに二人目を孕ませてやるー』とか、わたしの『まだおっぱい出ないよぉ』とか、そういった発言はぜーんぶ外にダダ漏れだよ? 誰も気にしてないから問題ないけど」
うわぁ…と自分は頭を抱えた。たとえ無視されていたのだとしても、今までの音声が全部外に漏れていたとか、恥ずかしくて死ねる。
しかしなんだってそんな風に願いが歪んで叶えられたんだ?

「それは魔力の節約とか、そういう事情でさー」
『それが何か?』という軽い口調で精霊は説明する。
なんでも彼女は『バレない=問題が起きない=無視されればいい』と解釈して、違和感を無視する効果に性行為の無視も追加してしまったらしい。
そうすることで魔力を節約しつつ願いを叶えられると考えたのだという。
確かに今の今まで問題なく生活できていたし、教えられなければ全く気付かなかっただろう。
だが、そういうった行為は手抜き工事のようなものだ。結果は同じでも願いの本意にそって叶えてもらわないと困る。
お説教というほどでもないが、自分はそう注意して彼女に遮音の願いを叶えさせた。

「はい、今度はちゃんと音が漏れないようにしたよ…」
ちょっと落ち込んだ様子で願いを果たした精霊に『よろしい』と自分は声をかける。
これで一安心…ではあるが、そもそもこうなったのは彼女の勝手な解釈が原因だ。
精霊とは羞恥の概念が違うということは分かっているが、彼女は露出することを恥ずかしいと感じないのだろうか?
いい機会というわけでもないが、そういったことを自分は訊いてみる。
すると彼女は彼女なりの観念を話し出した。

「他の人は知らないけど、ただ裸を見られるだけならわたしは気にしないよ。
 だってご主人さま以外の人間なんてカカシと同じにしか感じられないんだもの。
 ご主人さまだってカカシしか見てない部屋で裸になっても恥ずかしいとは思わないんじゃないかな?」
なるほど、主以外の男はそもそも眼中にないのか。だから恥ずかしくないと。
男としてそう思ってくれることは嬉しいが、だからといってヌーディストビーチでもないのに海で裸で泳ぐなんてことはしないだろうな。

「そんなことしないってば。それにただ見られるだけならともかく、欲情した目を向けられるのはわたしだって嫌だよ。わたしをエッチな目で見ていいのはご主人さまだけなんだから」
『そこはとても大事なところです』と言わんばかりに言い切る精霊。
自分が愛されている感があって色々な感情がこみ上げてくるが話は続ける。
つまるところ、肌をさらしたり性行為を知られたりすること自体は恥ずかしくも何ともないということか。

「うん、エッチしてるとこを見られたってわたしは全然恥ずかしくないよ。っていうか、わたしに欲情しないならむしろ見せつけたいかな」
おっと、なんか不穏な発言が出てきたぞ。それは露出癖ではないのか?

「そうかな? わたしの知り合いは多かれ少なかれ皆そうだよ? エッチを見せつける、知らしめるっていうのは、愛されているのを自慢することだから。
 いつもは無視されてるけど、ご主人さまのおちんちんでよがっている声をあげるときは、いつも思っているよ?
 『みんな聞いて! わたしご主人さまにこんなに愛されてるのっ!』って」
……またもや自分は頭を抱えることになった。
本人の中では異常ではないのかもしれないが、こちらから見れば立派な露出趣味だ。
だが彼女はその行為を幸福と感じており、無理にそれを抑圧させれば不満…最低でも残念には思うだろう。
これで苦情が着たり警察のお世話になったりするようなら否応なしだが、自分の精神的苦痛を除けば実害など何一つない。
自分が我慢するか、彼女が我慢するか。そんなつもりはないがまるで夫婦生活のようだ。

「……? どうしたのご主人さま。頭なんて抱えて調子が悪いの?」
精霊は心配そうに声をかけてくる。その中に含まれる気遣いは本心からの物だ。
こうも想ってくれる相手に不満を抱かせたくなどない。
自分は『ハァ…』とため息を一つつき、何でもないよと手を振った。そして遮音の願いを取り消すことを願う。

「え、いいの? ご主人さまは嫌なんでしょ?」
『いいからいいから』と自分は貴重でもない願いの一つを使い、家の状況を元に戻させる。そしてもう開き直ってしまおうと頭を切り替えると、精霊の手を取ってそんな広くない庭へと出た。
初夏の外気は生ぬるい暖かさで、裸になったところで身が震えたりはしない。
自分はここで事に及ぼうと彼女に伝える。すると彼女は驚きの声をあげた。

「ええーっ! いいのご主人さま!? ここ外から丸見えだよ!
 誰にも気にされないけど、わたしたちのすること全部見られちゃうんだよ!?」
正直あまりよくはない。だが彼女の趣味に合わせてやろうと自分は決めたのだ。
ホラさっさと脱いで、早く早く。
そう促すと彼女は最初少し戸惑ったようにしたが、すぐに調子を戻して裸になった。

「了解だよ、ご主人さま!
 わたしたちが愛し合っているところを、ご近所の皆様に見せつけてあげるんだねっ!
 今日はいつもよりも頑張って気持ち良くしてあげるから、期待してねご主人さまっ!」
精霊はそう言うとこちらの背に腕を回して抱き付きキスをしてきた。



自分が最初に精霊に願ったのは彼女を孕ませることだ。
当然ではあるが、その願いは時間とともに彼女の体を母としての物へ作り変えることとなった。
気のせい程度に出ていた腹は大きく膨んでいき、その中で胎児が育っていることを強く意識させる。
身長に比してやや大きめだった乳房はその重さを少し増し、先端から母乳を滴らせるようになった。
子作りの対象としては全く不適格な姿になったランプの精霊。
しかし彼女の色気と性欲は出会った頃とは比較にならないほどに増加し、自分もそんな彼女への欲情がとどまる所を知らない。
勢い任せに彼女を孕ませてしまったことを後悔したこともあったが、今となっては避妊をすることなどとても考えられない。
それどころか、今の子を産んだらすぐにでも次の子供を孕ませたいとさえ考えてしまっている。

「んっ…! あっ…! ご主人…さまっ! ご主人さまのおちんちん、奥に当たってるよぉっ!」
湯気が満ちて声が反響する浴室。
誰もが自然と裸になるその場所で、いつもと同じように自分は精霊とまぐわっていた。
彼女は壁に手をついた状態でこちらに背を向け、突き出された尻を自分がつかんで後ろから男性器を挿入するという体勢だ。
自分の腰と彼女の尻がぶつかり合うたびに、嬌声と肉を打つ音が浴室内に響き渡る。

「ああん、開いちゃう! そんな硬いおちんちんでおまんこほじくられたら子宮口開いちゃうってばぁ!」
臨月になって大きく膨らんだ彼女の腹。その中にいる胎児の重みで彼女の子宮は下がり、膣は浅くなっている。
以前と同じ感覚で腰を動かすと男性器の先端がすぐ子宮口にぶつかるのだ。
人間なら流産やらなにやらの危険があるが、人外である彼女と胎児にはまるで問題がなく、むしろ膣奥を激しく突かれることに強い快感さえ感じているらしい。
今の言葉も咎めるようなニュアンスはなく、ただ事実を口にしているだけといった感じだ。なので自分は遠慮なく腰を動かし、さらに揺れている彼女の乳房へ右手を伸ばしてぎゅっと握りしめる。
すると彼女はブルリと身を震わせて嬌声を発した。

「あっ、おっぱい握っちゃダメえっ! ミルクっ、ミルク出ちゃうからぁっ!」
口では文句を言う精霊だが、顔は笑みのままで本気で嫌がっていなのは明白だ。
そのまま褐色の胸を弄っていると、乳首の先端からポタポタと母乳があふれ、浴室の床に白色が加わった。
濡れた床ですぐ薄まっていくその色に彼女の肉体をこうしたのは自分だと強く思い起こされ、ますますもって興奮し腰に力がこもる。
何度味わっても飽きることのない彼女の肉体に、出産間近の妊婦とのセックスという背徳感。射精感がこみ上げ、彼女を壁に押し付けるようにして腰を最速で動かす。

「あっ、もう出すんだね…! いいよっ、たくさん出してご主人さまっ! 出産前の最後のエッチだよ! わたしはもうすぐお母さんになっちゃうからっ! ああっ…来てっ! おまんこの奥に出してぇっ!」
身長差からつま先立ちになっている精霊。彼女の望み通り、この一年で肥大化した男性器を根元までめり込ませた。
するとゴリッという抵抗を抜けて奥にある物に男性器がぶつかり、その衝撃で精液の堰が切れる。

「んああぁっ! ご主人さまのおちんちん子宮に入っちゃったよぉ! 赤ちゃんに精液かかってるっ! もっとちょうだいご主人さまっ! 赤ちゃん喜んでるのぉっ! あなたの精液でおまんことわたしを真っ白にしてぇぇっ!」
精霊は全身を強張らせ、倒錯した言葉を口走りながら快楽の極みに至った。
へその緒でつながっているからか、彼女は胎児の感覚でさえわが物として感じ取れるようだ。彼女の観念からすれば膣内射精を受けながら精液のシャワーを浴びるなど、天国にでも登るような気持ちかもしれない。
ここ最近で何とか耐えられるようになってきた快感の中でそんなことを思いながら、自分は彼女らに精液を浴びせた。

「あ…ふぅ…。ご主人さま、おちんちん抜いてもらえるかな?」
浴室の壁と自分の間でサンドイッチになっていた精霊は顔を振り向かせてそう言った。
自分はつま先立ちにさせていた彼女の足を床につけ、いまだに萎えていない男性器を彼女の膣から引き抜く。すると精液の混ざった液体が彼女の穴からビチャビチャと零れ落ち、彼女はまた壁に手をついて息み始めた。
この液体が何なのか、彼女の体がどうなったのかは、言われるまでもなく理解している。

「ん……産まれるよ、わたしたちの赤ちゃんが…。んっ、くぅっ!」
ギリッと歯をかむ音。それと同時に彼女の腹部がうごめき始め、さっきまで男性器を受け入れていた穴が広がりだした。

「う、う、んんんっ! 今、子宮口が広がってるよ…! ご主人さまがこじ開けた穴を頭が抜けようとしてるのっ…!」
身を震わせながら喋る彼女の声は快感の色が強く、苦痛など一切感じていない。
もちろん人間のように痛みでのたうち回られても困るからこの方がずっといいのだが、
快感に呻く裸の美少女が目の前にいるとなると、どうしても性欲が沸き立ってしまう。

「はぐっ! あ、あ、ひぃっ! 伸びてるっ! わたしのおまんこが伸びちゃってるよぉっ! ごっ、ごめんなさいご主人さま! おまんこ緩くなっちゃうかもしんないっ!」
普段は男性器を受け入れている膣だが、胎児が通ることで締りが悪くなるかもしれないと精霊は謝る。
だが自分が願えば治せるだろうし、仮に治せなくてもガバガバにはならないだろう。
経産婦の膣としてまた別の魅力が生まれるのではないかと思う。

「あ、ありがとご主人さま…! そう言ってもらえると…いいぃっ!」
腹部の膨らみがまたもや下がり、膣口がポッカリと開いた。
褐色の肌と違いピンク色をした膣肉が蠕動し、胎児の頭部を奥からひり出そうとしているのが見える。

「いぎっ…ご、ご主人さまっ! おまんこの中、今頭が通ってるのっ!
 ギチギチに伸びちゃってるのに、気持ち良くてどうにかなっちゃいそう! 出産ってスゴイのぉ!」
快感に悶えながら息み続ける精霊。その姿があまりにも淫らで、勃起している男性器に手が伸びてしまった。
彼女と出会ってから一度もしなかった自慰。自分はそのやり方を思い出すように手を前後させ始める。

「えっ、ご主人さま一人遊びしてるっ!? わたしの出産で欲情しちゃってるの!? もう、素敵すぎるよご主人さまってばぁ! 今のわたしがエッチに感じるだなんてっ!」
出産する傍らで自慰をされているというのに、精霊はとても嬉しそうに声を弾ませる。
まるで快楽による苦しみさえ忘れたかのように。
彼女の観念では主から性欲を向けられるのはこの上ない幸福だそうだし、子を産む姿にさえ欲望を抱かれるというのはそれほどの愛を受けていると感じているのだろう。

「はっ、はっ、ご主人さまがそうなら、こっちでっ……!」
壁に体重をあずけて息んでいた精霊。
胎児の膨らみはもはや下腹部に移動しているというのに彼女は歩き、蓋をされている浴槽の上に腰かけた。そして胎児によって広がっている女性器を見せつけるように股を開く。

「こっちのが…よく見えるよね、ご主人さま…!
 わたしと赤ちゃん見ながら、おちんちん弄ってっ…! んぐ…っ! ああぁっ!」
より自分が欲情できるようにと、精霊は背中でなく正面を向けた。
確かに彼女の言う通り、この方がより淫猥さや美しさを感じられる。

フェロモンをまき散らしているかのような、全身汗だくで濡れた肉体。
普段まとめられている薄紫の髪はほどけ、べた付く汗で褐色の肌に張り付いている。
身悶えするたびに震える乳房は母乳の雫を滴らせ、自らの肌を白く染める。
可愛らしく整った顔は強い快感に歪んでいて、涙を流して喘ぎながら嬌声を漏らす。

一年前は幻想の中にしかいないと思っていた非現実的な美少女。
そんな彼女が『ご主人さま』と呼んで愛してくれ、ついには自分の子供を産もうとしている。
あまりに倒錯したシチュエーションに性的興奮と手の速度は高まり、自分も股間を突き出して彼女に見せつけるように自慰を行う。
今の彼女の膣口は普段の締り具合からは想像もできないほどに広がっていて、薄紫の髪に覆われた胎児の頭頂部がついに外に出始めた。
胎児が産まれるのが先か、自分が射精するのが先か。
できれば一緒に達して、産まれたばかりの子供と産み落とした彼女に盛大に浴びせてやりたい。そんなことを思いながら手を動かしているうちに、ついにその時が来る。

「あぁぁっ! 出るっ! 出ちゃうよご主人さま! もうすぐ赤ちゃん出ちゃうのっ! もっと見てご主人さま! わたしがお母さんになるの見ながらおちんちん弄ってぇっ!
 あっ、頭抜けちゃっ…んああっ、産まれるっ! わたしのおまんこから赤ちゃん出てきてるっ! ご主人さま見てぇっ! わたしとあなたの赤ちゃんが産まれちゃうのぉっ!」
精霊は近所迷惑といえるほどの叫びをあげながら、全力で息みのけぞる。
頭部が完全に抜けていた胎児は強まった産道の圧によって肩からつま先までズルリと押し出され、浴室の床にぼてっと落ちた。
その瞬間に自分も射精し、壊れた水道管のごとく精液がビュルビュルと飛び散る。
勢いよく放たれた精液は彼女の顔から胸に腹、股間から伸びるへその緒までも汚し、量も十分なそれらは床に寝ている娘の体にまで降りかかった。

「あ…あ…ご主人さまの精液……熱い……」
疲れ切って浴槽の蓋の上にそのまま倒れこんだ精霊。
半ば放心状態のようだが、精液を浴びせられた彼女は微笑みを浮かべ、口元にかかった白濁液を舐め取る。無意識に行われたのであろうその動作。だがその仕草には今まで感じたことのない色気があった。
なんというか、快活で明るかった少女が爛れた雰囲気を漂わせる熟女になってしまったような風。
実際に彼女は母親になったわけだし、この一瞬で心境の変化があってもおかしくはない。
むしろ新しい魅力を身に着けたということで、今後に期待させてもらおう。

「はぁっ……気持ち良かったけど疲れたよ、ご主人さま」
数分寝転がっていたらある程度体力が回復したのか、精霊はダルそうに身を起こした。
そして床に足をつけて立ち上がると股間に手を伸ばし、娘と繋がっている肉の管を引っ張りだす。ズルズルと引き出されるそれは最後にメリッ…と引き剥がす音を立てて、胎盤とともに体外に排出された。
次に彼女は床に転がっている娘の腹部を指でスッと一撫でし、へその緒を完全に切断。
そして安らかな顔で眠っている娘を両腕で優しく抱き上げると、柔らかい笑みを浮かべてこちらに身を寄せてきた。

「はいご主人さま、これで最初の願いは完全に叶えたよ」
自分の最初の願いはこの精霊を孕ませること。それは達成されたと彼女は口にする。
最初の願いが果たされたから何かあるということはないのだが、あの時出会ったばかりの彼女に魅了されてこうなったんだよなあ…との感慨が胸中に浮かんだ。
自分はそんな思いを抱きつつ、産まれたばかりの子供の頬をそっと触れてみる。

「んふふ、可愛い? やっぱり可愛いよねご主人さま?」
自分がそう感じているだろうと確信したように言って精霊は笑う。
そして事実その通り、自分はこの娘に性的でない魅力を感じてしまっている。
以前に新生児時代に撮られた自分の写真を見たときは『赤ん坊なんてサルみたいで、どこが可愛いのかわからない』なんて親に言ったものだ。だが今目の前にいる子供は違う。
この子の容姿は精霊の美しさを赤子レベルに落とし込んだような感じで、サルだなんて全く思えない。
『子育ては精霊に丸投げして手伝いは最低限でいいや』と考えていたが、これなら自分も意欲を持って子育てに参加できそうだ。

「でしょー? 面倒なことは全部わたしがしてあげるから、ご主人さまはこの子に”愛情”をたーっぷり注いであげてね」
精霊は『愛情』の部分を意味深に強調して言うと、浴槽の蓋の上に娘を寝かせた。
そして自らの体を抱くように胸や腹に手を這わせる。
それでようやく気づいたが、あれほど膨らんでいた彼女の腹は、僅かなたるみもなく元の引き締まった状態に戻っていた。
どんな名医が見たところで出産経験があるなどとは気づかないだろう。

「最後が一人遊びじゃご主人さまは満足できないよね? 二人目、作っちゃおうよ……」
孕む準備はできていると言わんばかりに女性器からしたたる粘液。
悶え苦しむほどの快楽出産を味わったばかりなのに自ら子作りを誘う精霊の姿は、まるで性欲の権化のようだ。
そして自分の方も二度射精したというのに欲望はまるで衰えず、男性器を硬く屹立させながら彼女の唇を奪った。



ついに精霊は出産し自分は一児の父となったわけだが、生活の変化はほとんどなかった。
学校にいようが家にいようが娘の世話は精霊が一手に引き受けているし、人外の娘は人間の赤ん坊のように夜泣きなどでこちらの神経を削ることもしない。
強いて変化をあげるならば、ゲームなどに費やしていた時間が無くなり、代わりに娘を可愛がる時間が増えたことだろうか。

「うわー、本当に色々なものがあるねー」
春が終わり、梅雨に入るまでの陽気が強さを増す季節。
自分は精霊と娘を連れて、いつかのように蚤の市を訪れていた。
例によって目当ての品物などないが、店に並ぶ品々を眺めるだけでも結構面白い。
精霊は自分に連れられて今日初めて足を踏み入れたが、種々雑多な品物たちに興味を引かれているようだ。

「変な形した壺に十万円なんて値札ついてるけど、アレ買う人いるのかなあ?
 あの掃除機は新品みたいだけど、なんであんな捨て値なんだろうね?」
品物につける価格は出品者のさじ加減次第。
売り手と買い手が納得すればいいのだから、それなりのワケがあるのだろう。
そんなことを話しながら歩いていると、精霊がクイクイと服の袖を引っ張った。

「ご主人さまご主人さま。あれあれ」
そういって精霊が指さした先。そこには一軒の露店があった。
店主は席を外しているのか誰もおらず、品物は不用心に並べられている。
その品揃えの中に、去年衝動買いしてしまった物によく似たデザインのランプがあるのを発見した。

『もう一つ、買っちゃう?』と上目づかいで悪戯っぽく言う精霊。
自分はそれに『お前一人で十分だ』と返し、そのまま店の前を通り過ぎる。
彼女は満足げに笑い、こちらの腕にぎゅっと抱きついてきた。
19/04/17 19:38更新 / 古い目覚まし

■作者メッセージ
実際の比率はどうあれ、自分にはジーニーがトランジスタグラマーに見えてしまいます。


ここまで読んでくださってありがとうございました。

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