連載小説
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デート&デストロイ
気がつけば様々な人や魔物が逃げ惑い、泣き叫んでいる中に小官は立ってた


 「何をボーっとしている、逃げなければ私達もやられてしまうぞ」


声がした方に顔を向けると小官の許婚である秋(あき)が慌てた様子で小官の手を引いている

そうか、これはあの忌々しい日の夢なのか

何度目だろうか、この悪夢を見るのは

彼女に連れられるがままに逃げ惑う人々に混ざる


 「まったく、英雄の息子と魔学者の娘がこんなところで逃げ惑うハメになるとはな」


やめてくれ、逃げたってこの先に奴が現れるのだ

この夢の結末は決まっているのだ

秋が奴に殺され、小官が片目を潰されて苦痛にもがいている時だ

自分の意思とは関係なく勝手に体が先へ進んで行き、交差点にたどり着いた時

やつは派手な音をたてて交差点の真ん中に現れた

小官がこの世で最も憎んでいる男、教団の勇者

ニヤニヤと笑っている奴の顔を見た途端奴への憎悪の炎がメラメラと燃え上がっていく

奴は小官達を見つけるとゆっくりと歩いてくる

小官は秋を守るように彼女の前に立つ

やがて奴が小官の前にたどり着くと


 「浄化してあげます」


自分の得物である聖剣を振り上げ

いつもとは違い、そこで視界が真っ暗になった


















ベッドから上半身を一気に起こす

息は荒くなり、全身が汗でベトベトになってしまっている

何故いつもと違い中途半端なところで終わったのだろうか?

そんな疑問を脳裏に浮かべた途端


 「いきなり飛び起きないでほしいのであります………」


すぐ横から不機嫌そうな声が聞こえた

視界を横に向けると詩織がジト目で小官を見つめている

…………

確か、今日は休日だから小官と一日デートするからって詩織が昨日小官の家に泊まっていったのだったな

いきなり飛び起きて驚かせてしまったな

少し悪い事をしてしまったな


 「目が覚めたら随分とうなされていたので焦ったのであります」

 「私には甲殿を抱きしめるぐらいしか出来なかったのでありますよ……」


途中で目が覚めたのは詩織のおかげだろうか?

だとしたら本当に助かったな


 「嫌な夢を見ていてな、ありがとう、貴官のおかげで助かった」


そう言って彼女を力いっぱい抱きしめる

彼女は恥ずかしそうに


 「ちょっと痛いのであります///」


と照れている

感情が落ち着いてきたせいか愚息も起きてきた

小官が抱きしめている事で彼女の乳房が押し付けられているのもあり、あまり時間もかからずにガチガチになってしまった

昨夜随分と出したというのに、まだこんな風になるとは自分でも少し驚きだ

ベットの上、という限られた空間であり、更に密着状態にある詩織がそれに気付かないはずも無く


 「昨日私の中にあれだけ出したのにまだまだ元気でありますね」


と少し嬉しそうに小官に軽くキスをした

そのまま体を下のほうに持っていき、小官の愚息を彼女は自らの大きな乳房で挟み込んだ


 「甲殿は私のおっぱいが好きみたいだから今回はこれで奉仕するのであります♪」


数日前に彼女と初めて体を交えた時までは全然気がつかなかったのだが、彼女の乳房はかなり大きい部類に入る

まぁ彼女がサラシ+着痩せするタイプというコンボによって服を着ている間はほぼ全ての人が気付かないはずである

小官だけが知っている彼女の事と思えばなんだか嬉しいが

むぎゅっと効果音で付きそうなぐらいに小官の愚息を胸で押しつぶす

圧だけでもあまり経験のない男ならばすぐにイってしまいそうなほどの快楽が与えられるが、小官はそれ以上に彼女の手によって形が変えられている乳房に目が行った


 「おっぱいばかり見てもらえるのも嬉しいのではありますが、あんまり気持ち良くないのでありますか?」


小官が己の快楽よりも女性の神秘に意識を向けていたせいで、どうやら彼女はあんまり気持ち良くなかったものと勘違いしてしまったようだ


 「いや、かなり気持ち良いぞ、小官が貴官に見惚れていただけだ」


そう言うと彼女は少し照れたように頬を軽く掻き、パイズリを再開した

今度は上下に動かし愚息を扱きあげる

まるで膣内と勘違いしてしまいそうなほどに彼女の乳房の間は柔らかく暖かい

己が好いている相手にパイズリされることが嫌いな男などいるのだろうか、否、いるはずが無い

気がつけば小官は彼女の動きにあわせて腰を突き入れていた

まるで性交していると錯覚してしまいそうなほどの快楽に思わずうめき声が漏れる


 「ふふふ、気持ちよさそうでありますね、奉仕のし甲斐があります」


彼女は嬉しそうに笑みを浮かべ、動きを激しくしていく

傍から見れば自慰をしているようにも見えるほどに激しく己の胸を揉みしだき、体ごとを揺さぶりと懸命に奉仕する彼女の姿は美しく淫らである

小官は思わず彼女の胸の中で射精をしてしまった


 「はふぅ……やけどしてしまうそうなぐらいに熱いのであります……」


彼女もどうやら軽くイッてしまったのか少しぐったりしている

このまま本番に突撃してもいいのだが、そうしてしまうとデートの時間がなくなってしまうので我慢しておこう



小官達は一緒にシャワーを浴び、彼女が作ってくれた朝食をとった後に家を出た













まずは彼女曰く『おすすめ』の店に行くことになった

どんな店なのかはまったく教えてもらってないので楽しみでもあり不安でもある、まぁおすすめするような場所だから悪いことは無いと思うが……

小官はここに来てまだ日が浅い上に学校以外あまり外出していないので周辺の地理情報はまだそこまでわかっていないので彼女と二人で歩いていく事になった

彼女と他愛も無い会話をしながらしばらく歩いていくとどう見ても普通の一軒家にしか見えない建物の前で彼女が止まった


 「ここなのであります」


彼女はそう言ってなんの躊躇も無く中へ入ってしまった

小官も少々躊躇いながらも入ってみると、外見からはまったく想像の出来ない空間が広がっていた

壁には昔の時代に実際に使われていたような剣や弓、現在でも軍に使用されているような様々な兵器が掛けられ、その下にあるショーケースにはナイフやメリケンサック、小型のハンドガンやサブマシンガンが飾られている

外見よりも遥かに広いところからおそらく空間魔術でも使っているのであろう

周りに飾ってある武器を眺めながら奥に進んでいくとカウンターを挟んで詩織とドラゴンが会話をしていた

詩織は小官の姿を確認すると腕に抱きつきそのドラゴンに見せ付けるように向き直った


 「この人がさっき話した私の彼氏なのであります♪」


そのドラゴンはそんな彼女の様子に少々呆れたような視線を送ったあと、小官を品定めするように足元からじっくりと見てくる


 「貴様に勝ったということはそれなりに実力はあるのだろうし、見たところ悪いやつってワケでも無さそうだな」

 「あとそんな風に見せ付けるな、不愉快だ」


詩織にそう言い放ち、小官に握手を求めるように手を差し出し


 「ようこそ我が店へ」

 「ここはあちらの世界の昔からこの世界の現在まで古今東西ありとあらゆる武器をあつかっている武器屋『エメラルド』だ」

 「我はここの店長をやっているドラゴンの夏姫(なつき)エメラルドだ、よろしくな」


まさか武器屋があるとはな……確かに小官たちには『おすすめ』にもなるな

夏姫という名字を昔どこかで聞いた事がある気がするが、まぁおそらく関係ない人だろう

詩織よりもゴツゴツした手と握手をしながらそんな事を思った


 「この店に置いてあるもののほとんどは我が昔集めていたコレクションでな、我が気に入った客にしか売らないのだが詩織の男なら別に構わん、売ってやろう」


ドラゴンらしい高慢な態度だが自分の宝であるコレクションを他人に売り渡す、というのは中々居ないだろう

まぁ彼女なりの考えがあるのだろうからあまり詮索しないでおこうか


「エメラルド姉様は一人で店に居るときはこんな感じだけれど、彼女の旦那さんが居るときはデレデレになるのでありますよw」


詩織がこっそりと耳打ちをしてくるが、本人にも聞こえてしまったのか尻尾で叩かれてしまっていた

苦笑いしつつ回りを見ているとふと気になるものが視界に入った

形状だけで言うならばトンファーなのだが、通常のものよりかなり大きく妙にメカメカしい

取っ手に近い方、遠い方の両方の先端に穴が銃口のような穴が開いており、近接武器というよりももはや大型銃器といった方が正しいような気がするフォルムである

浪漫溢れる武器、という言葉がしっくりくる

中々面白いものなので今度似たようなものでも作ってみようかと思い、じっくりと観察をしていると尻尾で詩織を締め上げているエメラルド殿が彼女を放し、こちらを向いて


 「中々良いものに目を付けたな、それは前後への砲撃、パイルバンカーによる近接攻撃、砲身を使っての打撃、展開することによって盾にもなる代物だ」

 「だがすまないがそれは売り物ではないから売れない、我の愛する夫が弟子の為に準備した物を一時的にここに置いているだけなのでな」


ふむ、性能は恐ろしく良さそうではあるのだが生身の人間では扱うのが難しそうではあるな

まぁミノタウロスのような力自慢の魔物なのだろうな

しかし武器を使う、弟子、という事は何かの武術なのだろうが、随分近代的なのものを使うのだな

その武術について興味が湧いたので詳細を聞こうかと思ったのだが、エメラルド殿がこれ以上は詮索するな、と睨んできたので仕方ないので引き下がるとする

その後小官と詩織はそれぞれの好きな武器についての会話を交えつつ買い物を楽しんだ

小官はあちらの世界の魔導具を、詩織は小ぶりのナイフを購入して店を出た












現在は甲殿と個人経営のハンバーガーショップで昼食をとり、学校の近くのゲーセンに向かっているのであります

甲殿が店員の目の前で「こんなジャンクフードより詩織の手料理のがずっとかうまい」なんて不満げに呟いたので店長のドワーフさんがキレて「ならうまいと言わせてやるぞこの野郎!!」と色々なハンバーガーを食べるハメになったのであります………

どれもおいしかったし自分の料理を褒めてもらえたのは嬉しいけれど、少し罪悪感があるのでありますよ………

甲殿も反省しているみたいだし、なんだか逆に店長と仲良くなったみたいで結果オーライでありますけどね

でも、彼が他の女性と仲良くしているのはやっぱりなんだか嫌なのであります………

私の少し拗ねたような雰囲気を感じたのか甲殿が急に抱きしめてきた

そして私の耳元で囁いた


 「友と恋人は違う、分かるだろう」


歩道のど真ん中にもかかわらずそんな行動をとっている彼に周囲からは「バカップル乙」「もげろ」などの声が聞こえてきたり、他のカップルが同じように抱きしめあい始めたりした

中にはディープキスをし始めるカップルなのも出てきて桃色の空気が漂い始める

流石に甲殿もそのままだとマズイと思ったのか私の手を掴みそそくさとその場を抜け出した

彼も少し恥ずかしかったのか顔が赤くなっていた













ゲーセンには着いたのだけれども、なにやら駐車場の辺りが騒がしい

少々気になるのでそちらの方に向かってみると数人の男が一人の男を囲んでいた

とりあえず詩織には念のため先に中に入って待ってもらうように言っておく

まったく……どこの街でもこのような奴らはいるものだな

更に近づいていくとそいつらの容姿も明らかになっていく

囲まれている方の男については他の奴らで見えないが、囲んでいる側はどれも同じような格好をしている

見るからに頭の悪そうな格好と時代遅れというかもはや化石レベルのリーゼント等の髪型

しかし、彼らの背中部分には共通して教団のシンボルがプリントされていた

………詩織との情事などであまり進んでいなかったが、小官がこの地に来る事になった理由を思い出す

ちょうど良い、囲まれている男を助けるついでにこいつらに『聞いて』みるか


 「これよりぃ、俺達が主神様の名の下にぃ、裁きを下すぜぇ」


リーダー格のような男が鉄の棒のようなものを持って囲まれている男に言い放つ


 「つーことで痛い目に合いたくなかったら金を出せ」


別の男がバットを突きつける

小官は彼らへの憎悪を抑え、ばれないようにリーダー格の男の後ろに回りこむ


 「残念ながら君たちにお金を渡すつもりは一切無いし、逆に痛い思いをさせるよ?」

 「まぁ君たちのような残念な頭じゃそれを理解できないだろうけどね、ていうかお金が欲しいならこんなバカなことしてないでちゃんとバイトして稼いだらどう?」

 「あれ?もしかして日本語も理解できないほどのド低脳だったの?グロンギ語で喋った方が良い?」


囲まれている男が挑発的に言った

しかし、この声は聞いたことがある

否、つい昨日学校で聞いたばかりだ

小官は全然気がついてないリーダー格の後頭部を殴り飛ばし


 「リントの言葉……いやせめてオンドゥル語で話してやれ」


そいつに言い放った


 「ログビボゲバギドゴログベどベ(もう聞こえないと思うけどね)」


流暢にグロンギ語を喋っているこいつは予想通り親友の護だった

しかし、教団のやつに喧嘩を売るとはなかなかやるな

良いセンスだ


 「舐めやがって!!!」


護を囲んでいた一人が彼に殴りかかるが、彼は軽く受け流しよろめいたそいつの後頭部に肘鉄を食らわせる


 「特殊だけど一応武術を習ってるからこの程度のやつなら僕でもいけるね」

 「対応した武器を今持ってないのが痛いけどね」


面倒だ、と言いたげな顔をして言い

小官の方に向き直り


 「ハンドガンを二丁ほど持って無い?もってたらちょっと貸してくれない?」

 「別に無くても良いけど今週は僕のやってるやつでイベントがあるから早い目にやり始めないと交代制じゃないからできないんだよ」


彼の言葉に武術とハンドガン?と思ったがとりあえず懐にしまってあったM1911を投げ渡した

彼はそれを受け取り、二丁共に弾数を確認する


 「これなら反動も大きめで良いね」


そうしてそれをトンファーのように持ち、


 「ちょっと手荒に扱っちゃうからごめんね」


小官にそう言い、銃身で近くに居たやつを殴った

………細かい事は気にしないでおこう

小官は腰のポーチにしまっておいたデザートイーグルを取り出し、護を後ろから狙っていた奴の頭に打ち込んだ

気持ちの良い強めの反動が腕を伝わる

マグナムやハンドガンはあまり使わないが重火器とはまた違った反動もたまには良い

そう思いながら小官に向かってバットを振り下ろそうとしてた奴の股間を蹴り上げた
















群れるだけしか脳のない馬鹿どもを全員片付け、気絶して倒れている奴の背中に座りながら護の顔を見る


 「意外に強いのだな、奇妙な戦い方だが近接戦ならば小官よりも強そうだ」


彼は小官にM1911を手渡し、頬をかきながら言った


 「家事やサバゲー合間にとある人に鍛えてもらってるからね、DQNとか教団の下っ端程度には負けないよ」

 「ていうか結構ボコボコにしちゃったけどこいつらどうしよう……」


……彼も早くゲーセンに入りたがっていることだし小官の考えているこいつらの後処理や、やることには護に見られては困るので退場してもらおう


 「こいつらの後処理については小官がやっておこう、貴官は先に中に入っておくと良い」


そういうと彼は「悪いね、じゃあお先に」といって店の中に入っていった

……とりあえず周りに人は見当たらないが人払いの装置を周囲に設置する

そして最初に気絶させたリーダー格の男を起こす


 「貴様に聞きたいことがある」


奴は今の状況を理解していないらしく、わめき散らす


 「うるせぇ!魔物の手先め!」


小官は護の使っていたM1911のマガジンを取替え、そいつの額に突きつける


 「こいつには今、ヒールペインのかかっていない弾丸が込められている、つまり引き金を引けば貴様の脳漿がぶちまけられるだろう」

 「貴様に拒否権など無い、質問はすでに『拷問』に変わっている」


流石に理解したのか黙って頷いた

小官はそのまま続ける


 「この地域にある貴様ら教団の支部の場所を教えろ、それだけで良い」

 「教えてくれたなら貴様ら全員五体満足のままにしてやる、答えないのなら」


そう言って残っている左手でそいつの首を横になぞる

その言葉に奴は青ざめ、ガタガタと震えながら答えた


 「あっ……あそこにある無人ビルが見えるよなっ……あっ……あのビルの地下にあります……」


ふむ、意外に簡単なところにあるのだな

小官はそいつを殴って気絶させ、ポケットから携帯電話を取り出す

別に警察に通報するわけじゃない

小官はとある人物に電話を掛けた


 「もしもし親父殿、教団の糞野郎を十名ほど確保したからそっちで回収しておいてほしい」

 「デビルバグの巣にでも放り込んでおいてくれ、あとそいつらからターゲットの場所を聞き出した」

 「もう少し調べてからそっちに情報を送るから、それぐらいの時期乗り込む」


電話の相手は「わかった」とだけ言い、通話が切れる

小官は気絶している馬鹿どもをそのままに店の中に入っていった

後処理は親父殿がなんとかしておいてくれるだろう、そう思って

しかし、小官はずっと自分を見ていた気配に気付かなかった
11/08/10 23:24更新 / 錆鐚鎌足
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■作者メッセージ
機械化された武器には浪漫があります、砲撃機能付きのトンファーや槍とかブースト機能付きハンマーや斧とか折りたたみ機能付きの剣とか

ちなみに護は不良や教団関係者には今回のようにバカにするように喋るようです

甲の一人称の誤字を指摘してくれてありがとうございます、視野の狭い作者ですので誤字脱字があった場合指摘していただけるとありがたいです

バ「そういうところはもう少ししっかりチェックしておくべきじゃな」

サ「ご主人様は昔からテストとかでも見直しはほとんどしてなかったらしいですしね」

書き上げた満足感でどうもその点は怠ってしまうのですよ……

バ「内容はともかく構想、執筆、見直しがこういうものの鉄則じゃとわしは思っておるが反論はあるかの?」

申し訳ございません……

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